ITS DAYS開設にあたって

カテゴリ:編集部より / 2004年10月18日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

株式会社デイズ 代表取締役社長 水野誠志朗

 もう30年以上、ほぼ毎日クルマに乗っている。私の住んでいる名古屋では、18才になればクルマの免許を取って自分のクルマに乗るのがごく当たり前だ。もちろん公共交通機関はそれなりにあるので(最近、地下鉄も全国初の環状線になった)、クルマなしで生きることはムリではないが、クルマが無くては若者らしいの遊びの範囲がぐっと縮まってしまう。

 むろん若者に限らず、名古屋で生活をしていく上では何はともあれまずクルマだ。最近近所に大型のショッピングモールが完成したが、市内にもかかわらず巨大な型駐車場を備えている(にもかかわらず最近は大渋滞)。そんな名古屋圏の移動手段は公共交通機関3に対しクルマの比率は7という。しかし18歳以上を対象にすれば2対8、いや1対9くらいにはなるように思える。それなりの大都市(名古屋市の人口は約200万人)でありながら、クルマでの移動があたりまえの街なのである。

 こうした名古屋でクルマに乗る自由、モビリティーの素晴らしさを30年も享受してしまった私にとって、クルマのない生活は想像もできない。数年前に亡くなった父親もクルマ歴30年以上の人で、死ぬ前に病気になってクルマに乗れなくなった時、それこそ手足をもがれたように精神的に落ち込んだものだ。乗れなくなったので愛車を手放したのだが、そのときの悲しそうな顔を忘れられない。父も私もクルマは手足、あるいは自分の分身という感覚があるのだ。

 そんな私は仕事としてクルマに乗るようになってから、実に多くのクルマに試乗してきた。その上で思うことは、ここ10年ほどで走る、止まる、曲がるといったクルマの基本性能は、普通に走る限りもはやなんら不満がないところまで完成したということだ。更に、広さ、乗り心地、ユーティリティといったそれ以外の性能も、最近は不満らしいものがないところまで来ている。私が免許を取った頃の、性能の不十分なクルマはもはやどこにもない。特に最近の新型車はコンセプトを競い合ってこそいるが、クルマとしての性能には不満など全く見あたらないのだ。手足としてのクルマは、もう十二分に完成の域に入っている。

 しかし、クルマに乗っていて大いなる不満がある。それは車内でインターネットがつながらないこと。机の前に座っていればわかる様々な情報が、ハンドルの前に座ったとたん、ブラックアウトしてしまう。カーナビはもちろんつけてあるので、経路検索や渋滞情報くらいは手に入るが、いわゆるテレマティクスの時代はいつになってもやってこないのだ。

 また生活がクルマ中心だから、カーライフがさらに便利になるという点でも不満が多い。ETCはやっと名古屋高速全域で使えるようになったが、有料駐車場やドライブスルーではいつになっても使えない。さらにクルマの事故は日常茶飯事ゆえ、安全面はもっともっと充実して欲しいところ。追突、出会い頭の事故をなくすこと、狭い路地でボディをこすらないこと、なんてことはここまで進化したクルマにとって、ごく普通のこととなっていてもいいと思うのだが。

 私はもちろんこれから死ぬまでクルマに乗り続けていきたいし、乗り続けなくてはならないから、エネルギーや環境に対する対策も重要だと思う。つまり、走りとユーティリティの面で完成したクルマを、環境に優しく情報ネットワークにつながった事故を起こさないネクストジェネレーションへと進化させる必要がある。それがつまりITSという技術がやれることなわけだ。

 そうして進化していったクルマはどうなるか、というと、私はロボットになると思う。乗りこんで自由に安全に、人の能力の不足を補いながら快適に移動させてくれるクルマ=モビルスーツ的なロボットだ。トヨタのコンセプトカーPMや、人が乗り込める2足歩行ロボットなどはかなりそれに近いものといえるだろう。

 父が病気になった時、もしクルマがそこまで進化していたなら、愛車との悲しい別れはなかったはず。いや病気になった父を愛車が病院へ毎日通院させてくれただろう。そんな未来は夢? いや、夢ではないはず。なぜなら走りへの不満がなくなった現在のクルマは、そちらの方向へ進化しない限り、商品としても辛くなりつつあるからだ。クルマ作りもビジネスである以上、今後魅力的なクルマは ITS装備が充実したものとなり、それを生かすための社会インフラも整備されざるを得ないだろう。

 私が年老いて父のような病気になったとき、愛車と別れなくてもいい時代がやがて来るはずと信じ、その先駆けの技術をいくつもみせてくれるITS世界会議に心躍らせて出かけてみた。はたして、そこには確かにクルマと車社会の未来があった。だがそれに反して、ITSはあまりに地味で、人知れない技術だとも再認識した。そこでwebマガジン MOTOR DAYSの一部をITSに特化させ、多くに人にわかってもらえるよう、サイト作りを続けていくことにした。第11回ITS世界会議愛知・名古屋2004開催の今日、webマガジン「ITS DAYS」も創刊としたい。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.motordays.com/days/adm_tools/mt/mt-tb.cgi/92

 

現在の位置:ホーム > ITS DAYS > ITS DAYS開設にあたって