「予防安全技術の動向と今後の展望」をテーマとする講演(愛知県ITS推進協議会主催)が2008年6月10日(火)、ミッドランドスクエア(名古屋市中村区名駅)にて行われた。
交通事故分析の現状と課題
今回の講演は「ITSあいち県民フォーラム 2008」として行われたもの。講師には愛知県立大学・情報科学部教授の小栗宏次氏、そして科学警察研究所・交通科学部・主任研究官の荻田賢司氏が招かれた。
冒頭ではまず小栗氏が、環境問題や若者のクルマ離れ、交通事故など昨今のクルマ社会が抱える負の部分に触れ、それらを打開する手段の一つとしてITSの役割を指摘。それを受けて、交通工学や交通事故分析の専門家である荻田氏が、事故分析の現状やあり方を紹介。その中で、個々の安全対策(車両側で言えばABSやESCなど)の効果測定の難しさ、統計を主とした現状の分析・定量化に課題があることを指摘した。
続けて今後の対策として、映像記録型ドライビングレコーダーをはじめ、速度、加速度、各種操作系や装備の動作状態を記録するEDR (イベント・データ・レコーダー)、交通事故自動記録装置(TAAMS)等を用いた交通事故の「可視化」を挙げ、それらの有用性と課題(プライバシー問題など)を示した。
居眠り検知の次は、ドライバーの行動予測
後半は再び小栗氏が登壇し、「ドライバモニタリング、行動予測はどこまで進んだか」と題して、同氏が目下積極的に取り組んでいる研究が紹介された。
ドライバーの顔をモニタリングする画像処理技術はすでにおなじみのものだが、さらに居眠り運転の前段階にあたる漫然運転もしくは正反対の「急ぎ状態」などを検知するための生体信号(心拍変動、脈拍、体表面温度、脳波、血流など)の解析といった最先端の研究を実験データと共に紹介。中には音楽による眠気遅延(音楽アクティベーション)を測定する、という面白い実験もあった。ちなみに嫌いな(dislike)音楽と好きな(like)音楽というパラメーターで実験すると、好きな音楽の方が眠気を防ぐのに効果があるとのこと。
こうしたドライバモニタリングや行動予測技術は、予防安全システム自体がユーザーに違和感なく受け入れられるための技術でもあると、小栗氏は指摘。これはITSを研究する上で軽視されがちなポイントだが、「商品」であるクルマを開発するメーカー、そしてそれを選ぶユーザーにとっては共感を得やすく、同時に現実的なアプローチを示したといえる。
【丹羽 圭(DAYS)】
