ITSセミナーin愛知「ゼロエミッションITSへの挑戦」

カテゴリ:講演・セミナー / 2011年01月18日

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愛知県ITS推進協議会、東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター(ITSセンター)、愛知県立大学の3者共催となる「ITSセミナーin愛知」が18日、開催された。場所は愛知県立大学・長久手キャンパス講堂。メインテーマは「ゼロエミッションITSへの挑戦」。
東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター長・須田義大氏と、愛知県立大学学長・佐々木雄太氏による開会挨拶でセミナーは幕を開け、全3部、約5時間に渡ってITSにおける最新の取り組み報告などが行われた。
総合司会として会場を取り仕切ったのは、東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター客員教授・田中敏久氏である。


【第1部:東京大学ITSセンターの取組み】

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「サステイナブルな交通システム」
須田 義大 東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター長・教授

渋滞予測等に使われる交通シミュレーターと、車の運転を仮想体験できるドライビングシミュレータを連結させ、より臨場感の高いシミュレーションを可能とする実験装置が紹介された。これにより、さらに多様なドライバ特性を把握することができる新たな交通実験ツールとしての役割が期待できるとのこと。また、ジェットコースターの理論を使ったエコライドという乗り物や、自転車とセグウェイを足して2で割ったパーソナルモビリティビークルなどが紹介された。

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「ITS時代の交通管理と評価」
桑原 雅夫 東北大学大学院情報科学研究科 教授
東京大学生産技術研究所先進モビリティ研究センター 兼任教授

現在は別々に存在する「プローブ情報」「信号情報」「車両感知器」の各情報を統合することにより、プローブ車の周囲を走るプローブを持たない車両の挙動が推測できる、という研究が報告された。交通情報全体の質を高め、また全国規模でシミュレーションを行っていくことで、将来的には「交通情報基盤センター」を作りたい、との目標が紹介された。

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「ITS情報空間(現在、過去、未来)」
池内 克史 東京大学大学院情報学環・生産技術研究所先進モビリティ研究センター 教授

車の現在位置といった情報をクラウドコンピュータ上の仮想空間に投影する構想が披露された。これにより、ビルの影から侵入する車の存在をあらかじめ知ることができる、といった事例が紹介された。また、単なる3次元ではなく時間軸も加えた4次元空間とすることで、たとえば専用メガネで遺跡の風景と過去あった建物のイメージを重ね合わせて見られるなど、観光資源の活用にも有効である、とした。ITSは、様々な情報を可視化することで正しい判断を促す「人間主体のITSシステム」が重要である、との発言で締めくくられた。


【第2部:地域におけるITS研究の取組み】

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「Light Deviceでつながる車」
森川 高行 名古屋大学大学院環境学研究科 教授

ITSは、実はインターネットなどの外部とのネットワーク接続があまり進んでいない分野でもある。クルマと道路・情報・エネルギーネットワークとつながるための端末として、現在普及が進むスマートフォンなどの軽量・フレキシブルなデバイスを活用する「Light Device(軽量なデバイス)」構想が紹介された。また、車載情報を制御するCANからデータを取得して、より高度なプローブ情報を収集・活用する仕組みなども紹介された。

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「ITSによる自動車交通の省エネルギー化と環境負荷低減」
津川 定之 名城大学理工学部情報工学科 教授

エネルギー消費を抑え、CO2排出量を削減する上で、言うまでもなくITSは欠かせない重要技術のひとつだ。たとえばITSによる渋滞緩和効果で都市内の平均速度(約20km/h)が1km/h上がると、全体の燃費が3%向上する、といった試算がここでは紹介された。他にも、トラックの隊列走行による燃費向上等の取り組みが紹介されるなど、ITSの重要性が改めて浮き彫りになった。同時に、ITSの定量的効果を明らかにすることも必要である、と締めくくられた。

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「交通事故死ゼロへの挑戦-ドライバモニタリングによる快適・安全・安心技術の開発-」
小栗 宏次 愛知県立大学情報科学部情報システム学科 教授

医療系の人体モニタリング技術を、運転中のドライバーのモニタリングに活かした取り組みを行っている。2010年にはドライバーの生体モニター情報と運転シミュレータをリンクさせた装置を導入。ドライバーの「漫然度」を数量的に表すことで、予防安全装置を適切に動作させる、といった取り組みが紹介された。


【第3部:国の機関におけるITSの取組み】

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「警察によるITSのこれまでの実績と今後の展開」
渋谷 秀悦 警察庁交通局交通企画課長補佐

新交通管理システム(UTMS)の導入実績に関する紹介が行われた。豊橋市では、緊急車両の走行に合わせた信号システムの連携制御が既に行われており、今後各地への展開が進むものと思われる。また安全運転支援システム(DSSS)への取り組みも積極的に行なっている旨が紹介された。DSSSは「レベル1」と呼ばれる情報提供サービス(ビーコンユニット付きカーナビですでに実用化)に加え、路側側からの交通情報を適切に判断する「レベル2」のサービスも整備が進んでいる、とのことだ。

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「ITSにおける電波利用システムの最近~東海総合通信局の取り組みを中心に~」
加藤 博 総務省東海総合通信局無線通信部長

ITSを技術的に支える電波には、おなじみのETC(DSRC)やVICSをはじめ、プリクラッシュセーフティに用いられるミリ波レーダーや、車車間通信、路車間通信といったものが挙げられる。これらの電波の適正かつ活発な利用を促すための取り組みが紹介された。

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「中部地域における次世代自動車クラスター形成とITSの活用」
岡田 武 経済産業省中部経済産業局地域経済部長

経済活動の国際化・グローバル化に伴い、日本国内の企業は単なる技術開発競争から、協調できるベース部分は各社が協調する、という新たなモデルの導入が必要である、とする考え方が紹介された。オープンプラットフォームによる共通化と企業間競争をうまく両立させることで国際競争力を高めるのが経済産業省の狙いであり、ITSでも、こうした新たなモデル構築に向けた取り組みが重要である、とする見解が紹介された。

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「ITSスポットサービスの普及促進に向けた取り組みについて」
菊地 春海 国土交通省中部地方整備局道路部長

交通情報の収集エリアをより広域にし、安全運転支援やプローブ情報の活用、ネット接続サービスの充実、といった新しいサービスを実現する「ITSスポット」の取り組みが紹介された。ITSスポットに対応する次世代方カーナビの新たな普及を目指す、とする旨が紹介された。

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「自動車運送事業におけるITSの取り組み 」
前田 陽一 国土交通省中部運輸局交通環境部長

環境負荷を抑え、安全性を高めたASV(先進安全自動車)の紹介が行われた。ASV車両に対する優遇措置などを通じて、交通問題の解決を図っていきたいとする旨の趣旨が紹介された。


今回のセミナーは、日本のITS施策の現状が概ね分かる、かなり充実した内容が展開された。参加者も、一般応募者の300名に加え学生も約100名が参加する盛況ぶりだった。特に東京大学ITSセンターの研究内容はどれも質が高くパワフルで、興味が尽きない。ITSのさらなる活性化を目指す愛知県下の産・官・学にとっても素晴らしい刺激となったのではないだろうか。

【安原武志@DAYS inc.】

 
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