視覚障害者が外出をためらわないように
目が不自由な方にとって、外出先における「トイレ」問題は大きなハードルである。トイレがどこにあるか分からない状態では、街を自由に歩き回るのもままならない。外出を不安に思うあまり、室内に引きこもりがちになってしまう、というケースもある。
総務省・東海総合通信局における今回の社会実験は、GPS機能付の携帯電話を使い、最寄の公共個室トイレまでを音声ガイドでナビゲーションする、というもの。さらに個室トイレ内の状況を音声案内し、視覚障害者の利便性を高めようというものだ。
GPS付携帯電話を使ってトイレへ誘導
今回の実験では、実際に視覚障害者の方々に協力してもらい、GPS機能付き携帯電話を操作してもらいながら、あらかじめ登録されたいくつかの公共トイレへの誘導が試みられた。
具体的には、あらかじめ「トイレ情報管理サーバー」にトイレ情報を蓄積しておき、視覚障害者が持つGPS携帯電話による位置情報に応じて最寄のトイレ情報(ガイダンス音声ファイル)を抽出する。携帯電話に向けて音声ファイルをダウンロードする、というイメージになる。実際に視覚障害者に同行し、実験の様子を順次追っていこう。
トイレがある最寄の建物情報として「栄・三越」が案内された。音声案内の通りに、三越ライオン口から建物に入る。 |
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建物内では、引き続きエレベーターで2Fへ、という案内に従い、エレベーターに乗る。エレベーターを降りて左方向に進めばトイレの入口がある。 |
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目的のトイレの前で、再度【トイレ管理情報サーバー】にアクセス。個室の位置や数、和式か洋式か、トイレットペーパーや水洗レバーの位置などの音声ファイルをダウンロードして利用する。 |
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取材に同行させていただいた視覚障害を持つ方の意見は、概ね次の通りであった。
(1)携帯電話の操作インターフェースが不統一なため、操作が分かりにくい。音声ファイルをダウンロード中はその旨を案内するなどのインターフェースが望ましい。
(2)目的地まであと何メートルか、というレベルの詳細情報を教えて欲しい。
(3)ただ単に右、左、という指示ではなく、具体的な目標物に向かって右か左かという情報であるべき。
視覚障害者の現実に即した、もっともだと思わされる意見ばかりである。実験後にはアンケートも実施されており、上記以外の課題も含めてとりまとめられ、次回以降の実験に生かされていく予定だ。
今回は音声ファイルのダウンロードという手法が用いられたが、仮に携帯電話に音声読み上げシステムが備わっていれば、Web閲覧と同様のイメージでテキストファイルを表示するだけで済むため、より開発は容易になると思われる。
いずれにせよ、視覚障害者がスムーズに利用できるようになるまでは、まだまだ改善が必要だが、少なくとも今後のステップへ向けての課題が見えてきたことは確かだ。
たとえば視覚障害者がトイレの場所を通行人に尋ねる、というシーンひとつをとっても、トイレがどの建物にあるか、という情報をあらかじめ知った上で尋ねるのと、知らずに尋ねるのとでは、まったくハードルが違う。視覚障害者の利便性向上に向けて、確かな手ごたえと可能性を感じた社会実験だった。
【安原武志(DAYS Inc.)】
