▲恒例のモーターデイズ・カー・オブ・ザ・イヤーを書こう。今年の候補はレクサス IS350とスイフトだろう。COTYで評価されたロードスターは正直なところまったく候補に入らなかった。乗って楽しいロードスターは走り好きのためのクルマ。社会的な背景を考えると、流行とかとは無縁な孤高の存在で、出来はともかくイヤーカーとしてはふさわしくないと思う。輸入車ではシトロエンC4だが、これも間もなく出るであろうC6を東モで見てしまった現在、すっかりC6にお株を奪われてしまっている。
▲RJCのイヤーカーとなったスイフトは、実際良かった。ノーマルはほぼ1年前に乗ったクルマでもあり、やや印象が希薄になっていたが、スポーツが絶妙なタイミングで発売されたおかげで、「素」の良さを再認識してしまった。ベーシックカーながらスズキこん身の一台という意味で、全てにおいてしっかりしている。日常で使いやすいサイズ、走る、曲がる、止まるの基本が良くできており、足として良し、走り込んで良し、と価格に反比例して充足感が高い。
▲ラクティスやノートも悪くないが、ややギミックが過ぎる。スイフトはほとんどギミック無し。ごく当たり前のベーシックカーで、コンビニへの買い物から長距離高速巡航まで不足無し。「クルマというものはもうこれで十分じゃないか」と思わせてくれる。しかしそれが唯一の欠点とも言え、乗っていると次はこんなクルマに買い替えようという向上心すら失わせる感がある。
▲つまりスイフトは最近の流行の言葉で言えば「下流」(下流社会/三浦展著・光文社)のためのクルマだ。価格は高くもないのに充足感がああり、人から見られることもなく、逆に後ろ指さされることもない。それでいてなかなかいいクルマという客観評価もあり、もっといいクルマに乗りたいという意欲をわかせない。たいしていい個人の経済状況ではないが、何となく毎日楽しく生きていられ、向上心をあまり持たない「下流」の人にはぴったり。今の時代の気分を反映するという意味でまさにイヤーカーだ。上流車を持たないスズキだからこそ出せたクルマとも言える。
▲これに対してレクサスIS350は上流のクルマだ。さほど大きなクルマでもなく、見たところたいして高級車でもない。しかも走りはハイテク仕込みのスポーツ志向。そして上流の人しか買えない価格。もっと費用対効果の高いクルマはいくらでもある中、あえてこのクルマを選んで買う人は、相当なお大尽だと思う。下流の人は入ることすらためらわれるショールームで、「走り、安全、通信の3大ハイテク満載」のIS350を買うことは、まさに上流の密かな愉しみ。クルマ業界で今年最大のトピックもやはりレクサスブランドの立ち上げといえ、レクサスは世相を映す鏡でもある。
▲もう少しIS350について追加すれば、圧倒的なパワーを電子制御して路面をトレースする能力、人工的かもしれないがそれを感じさせない走りの楽しさの演出、安全性に対するハイテク、3年間使い放題の情報系ハイテクなど、クルマがロボットになっていくための第一歩を示している。今後これにハイブリッドが載れば、クルマはいよいよ次の次元に進化を始めたといえるだろう。いわば向上心の塊。さらに高みを目指したい上流の人にふさわしいクルマといえる。
▲つまりスイフトよりIS350に今年のイヤーカーの軍配をあげたい。これはクルマも社会も向上して行ってほしいという気持ちも込めて。さらに下流の人が何かの機会にIS350に触れ、こんな世界があることを知ってもらいたいという期待も込めて。しかしまあ、スイフトでもまったく不満はないから、下流の人が下流にとどまるのも致し方ないところなのかもしれない。「人生いろいろ、幸せいろいろ」と某首相がいっていた(か?)とおり、上流で向上心を持って日々に追われるより、気楽に毎日が過ごせた方が幸せなのかもしれないのだ。「日本チャチャチャ」と複雑な思いでつぶやく21 世紀になって早5年目の暮れであった。











