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第27回 G-BOOKはクルマの未来を切り開くか

カテゴリ : ITS関連 / 日時: 2002年10月24日

▼新通信サービスG-BOOKを搭載するトヨタの新型車WiLLサイファが登場した。通信機能こそがクルマの新しい世界を開くと固く信じている私としては、ついに、というか、やっと初めの一歩が踏み出されたと言う感が強く、けっこう感激している。今までにもいろいろあったじゃないか、という声もあると思うが、G-BOOKが基本的に違うのは、ウィンドウズCEで動いているということだ。

▼G-BOOKはCEパソコン、つまりPDAと同じものといってもいい。そしてなにより優れている点はKDDIの第3世代携帯電話サービス「CDMA2000 1x」を用いた通信モジュールを内蔵していること。つまり通信機組込みのPDAであり、しかもこの通信部はモジュール化してあるため、今後ハードウェアの交換が可能であるという点だ。PDAに通信カードを刺した状態と思ってもらえればいい。ただこの部分で残念なのはデータ通信はできても、音声通信はできないこと。音声通信のためには携帯電話を別につなぐ必要がある。

▼そういうわけでG-BOOKはPDAにできることがだいたいできる。スタイラスがない代わりに画面はタッチ式だ。メールやweb閲覧が可能で、もちろんカーナビとしての機能も十分。地図はSDメモリーカードにインストールされて供給され(全国版が無料)、必要に応じて、街の端末(コンビニなどにある)で最新のものに書き換えることができる。書き換えると言えば、CEのバージョンアップもこの方式で行われる。今までのカーナビとは違いOSがバージョンアップできるゆえ、今後の可能性は高い。webブラウザはポケットIEであり、とにかくすべてにおいて自由度が高いのだ。

▼利用者登録により電子決済もできるから、有料コンテンツはその場で決済可能だし、サイファの購入にあたって用意された走行距離(使用量)に応じて課金する、まるで携帯電話のような新型個人向け車両リースに対しての、走行距離情報送付や決済もこの端末から可能。将来的にはクルマのメンテナンスから車両管理までが可能になるはずだ。調子の悪い部分が自動的にメールされ、音声で読み上げられ、さらには工場予約までがシームレスに行われるという可能性を持っている。クルマのロボット化の第一歩が踏み出されたわけだ。

▼ウィンドウズPCをクルマに持ち込みたいと常々思っていた私にとって、こんないいものはない。むろん自前でカスタマイズする自由度は今のところないが、コンテンツの方はG-BOOK-MLというHTML似の言語で開発でき、PC、ケータイ、PDAでもアクセスできるコンテンツを作ることができる。自分のサイトを作っておくことも可能になる。つまり、やや特殊な部分が残っているもの、ほとんどPCと同じ世界であることがおわかりいただけるだろう。

▼このサービスを低価格で若者向けのWiLLサイファというクルマに標準装備したことは、トヨタのうまいところだ。新サービスをまず高級車に搭載して、裏にはまった先例は多い。こうしたことは若者を中心にしか広がらない。他に使うとすればマニアックな私のような人間か。ただ、サイファはかなり奇抜なデザインゆえ、オヤジの私としては、何か違うクルマにも載せてもらいたいと願わずに入られない。そこで「後付カーナビのようなG-BOOKの可能性は?」とトヨタにたずねると、けして否定はしないものの、当面登場しそうもない。というのも月1500台の販売目標であるサイファだけで、確実にシステムの推移を見守りたい、ということのよう。急激にG-BOOK会員が増えると、何が起こるかわからないので怖い、というのが本音のようだ。

▼G-BOOKに近いことができるのは、G-BOOK開発にも大きく関わっているデンソーが出したPDAカーナビなので、まずはこれをいろいろ試してみたいところだ。ウィンドウズCEベースのカーナビは今のところ他にはこれしかない。コンパックのPDAにしか対応していない現状を何とかしてくれるのなら、個人的には早めに購入したいのだが。PDA=カーナビ、これはかなり理想に近いのだ。(ただ私はPDAでなくPCの人。いつも所持しているVAIO-Uのカーナビソフト「ナヴィン・ユー」は専用GPSアンテナしか対応していない。PCカード経由のGPSアンテナは持っているのに!)

▼最後にG-BOOK最大の問題点を指摘しておこう。それはすべてのIT系事業が同様に抱えるプライバシー保護の問題だ。いよいよクルマがネットにつながることで、クルマの運行記録はどんどん外へでていくことになる。何月何日にどこにいたなんてことが、いよいよばれてしまう可能性があるのだ。こんなおいしい情報を警察が放っておくことはないし、ハッキングもありえるだろう。ネット社会最大の問題点であるプライバシー保護の問題。ことクルマの情報に関して、トヨタという一企業がそれを握ることになってしまうとすれば、これにもちょっと怖さを感じてしまう。

▼便利さに反比例するプライバシー保護に関しては、早い時期に社会問題化させ、人々の意識を高める必要がある。そんなことをすれば、システムの急速な発展に水を差すという声もあるだろうが、この問題は本来、システムの発展と歩調をそろえて議論していくべきだろう。いっそトヨタにゆだねてしまう、というのも一つの解決法ではあるのだが。

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