▲このところ各種メディアで私の住む名古屋の特集記事が多い。不況の中、元気な企業が多いだとか、東京進出を果たしている名古屋ブランド・商品が多いだとか。トヨタの好調や来年開かれる国際万博の愛地球博(業界別称はトヨタ万博)、中部新国際空港セントレア(業界別称トヨタ空港)の開港といった産業界の好調さが特集が多い要因だろう。
▲最近東京圏に進出して好評とされる名古屋ものとしては、中古ブランド品ショップのコメ兵、幻の手羽先の山ちゃん、みそかつの矢場豚、郊外型コーヒーショップのコメダ、あんかけスパゲティのパスタ・デ・ココといったあたり。このパスタ・デ・ココはカレーのココ壱番屋の別業態。そもそもココ壱番屋は名古屋(愛知県一宮)が発祥の地で、名古屋ブランドの一つだ。
▲というわけで食に関するブランドが多いのだが、実は文化的な分野で画期的な業態を展開する企業やビジネスフォームにも名古屋発のものが多い。遊べる本屋「ヴィレッジバンガード」、業界2位のビデオレンタルチェーン「ゲオ」、そして最近大流行のマンキツことマンガ喫茶。もしかすると私もやっていたかもしれないこれらの商売の、誕生時代の話をしよう。
▲私は20数年前、今で言うところのフリーターで、当時はプーとかプー太郎と呼ばれていた無職の人だった。タウン誌などに記事を書きながら、何とかおもしろい商売をしてみたいといろいろ考えていた頃、思いついたもの、あるいは時期を同じくして始まったものが上記の3つの仕事だ。
▲まず総合サブカルチャーショップ。サブカルな雑誌、マンガ、本、レコード、雑貨を集めた変な店は、バンドマン崩れの私には、個人的にもとても欲しかったもの。ならば作ればと思い、そうしたものを集めた古書店で働いてみたこともある。これを大規模展開したのが菊池さんの書店「ヴィレッジバンガード」だ。今や全国津々浦々にあり、売上高112億、昨年の売上高伸び率20.4%、新設店舗数は書店業界トップという。
▲初めてできた名古屋市天白区の店へは良く通ったものだ。倉庫を改造した店で、クーラーががあまり効かなかった。私が当時作っていた自動車雑誌もよく売ってもらった。今より本屋の色が濃く、マリファナ吸引具など、結構危なげなものも売っていた。それが今やジャスダック上場企業だ。
▲ビデオレンタルのゲオは今年社長が亡くなったが、後を引き継いだのは私と同じ年齢、同じ大学出身の創業メンバー沢田喜代則氏。貸レコード屋を1980年に始めたのがこの仕事のきっかけらしい。当時、私はレコード共同購入サークルを作って、貧乏な若者が集まってマイナーなレコードを一枚でも多く購入しミュージシャンに貢献しよう、という動きをしていた。貸しレコードではミュージシャンが儲からない、と考えたからだ。
▲結局、そのあたりの考え方の違いが、沢田氏と私の現在の差を生んだのだろう。何か共産主義的な私(笑)と資本主義の沢田氏。しかも彼は創業社長の下で二番手の位置について仕事をしてきた。そして東証一部上場、1200億円近い売上のゲオグループは業界2位へ。こうしたゲオからミュージシャンが恩恵を被っているかはちょっと分からないが、ビデオのクリエーターなどは明らかに恩恵を被っているだろう。
▲最後はマンガ喫茶。これも発祥は名古屋といわれている。確かに若い頃、喫茶店が多くてサービス合戦が厳しい名古屋の喫茶店で、マンガを多く置き、その分コーヒー代を高くした店が登場していた。そして、倉庫を借りた大型店で、マンガばかりでなく雑誌や本を置いて時間制で読ませる店が20数年前にできている。これなど、完全に今のマンガ喫茶と同じだ。むろん、当時はインターネット端末などなかったが。
▲これら名古屋発の文化的業種は今や巨大産業になった。ここまで育った原因はこれらが文化不毛の地と呼ばれた名古屋で、住んでいる人の欲求に基づいて誕生したからだろう。確かに東京には当時、文化的なものがすでにいろいろとあった。ゆえにこうした産業は生まれなかったのであり、文化の格差がこうした新しい産業形態を生んだと言える。そしてそれらは、同様に文化の少ない地方へと広がっていった。気づけばこれらすべて全国区である。
▲これにはクルマが大きく絡んでいる。クルマの街名古屋では、本屋もビデオ屋も喫茶店も、東京のように電車や歩きで行くことはなく、大型郊外店へクルマで出かける。そしてそれは全国の地方でごく当たり前の風景だ。名古屋で成功した郊外型文化的ショップの形態が全国へ広がったのは当然のことと言えるだろう。日本全体としてみれば東京こそ特殊な街なのである。人口で全国の10分の1となる名古屋圏は、まさにプチ日本、日本社会の縮図なのだ。
▲そんな中で、私は出版をやっている。文化不毛の地であった名古屋には出版も無かったのだが、今では結構多い。中でもクルマ情報出版のプロトコーポレーションは全国展開・上場を実現して名古屋ブランドでは一番伸びた。しかし同じクルマ関連出版でもうちは小さいまま。共産主義的な私に問題があるのだろうか(苦笑)。











