第72回 旗竿、鳴り物のない球場は素晴らしい

カテゴリ : カルチャー / 日時: 2008年04月02日

 

▲野球シーズンの開幕である。私の好きな中日ドラゴンズは昨年、ついに念願の日本一に輝いた。それはそれで悪い話ではないが、あまり勝敗にはこだわらないのが私の野球の見方だ。勝負事なので、どちらかに肩入れしてみないとおもしろくないゆえ、ドラゴンズびいきという程度。それより、選手一人一人のプレーを、また勝負の流れを楽しむ。

▲特にドラゴンズは荒木・井端という守りの職人技がみられるのが楽しい。実は先日も開幕第3戦を見に行ったのだが、途中、広島ランナー一塁の場面で、井端が地上すれすれのライナー性の当たりを「わざと落として」ゲッツーをねらった。さも取り損なったような芝居を打つ井端を審判もしっかりみていて、「わざと」と判定。シングルアウトとなったが、これなど相当集中してみていないと見逃してしまうところ。こういうニュース映像では見られない生のシーンを楽しむのが野球の醍醐味だと思っている。

▲しかしながら球場へやってくる多くの人は、贔屓チームの応援をすること自体を目的としているようだ。特に私設応援団という外野の一角を陣取っている人たちの、鳴り物入りの応援は、個人的にはとても好きになれない。こうした団体と暴力団にどういう接点があるのかよくは知らないが、今年のナゴヤドームでは暴力団排除の一環として、私設応援団が鳴り物、旗振りを自粛している。自粛がいつまで続くのか知らないが、少なくともオープン戦と先日の試合を見る限り、騒がしくなく、それでも観客各々が盛り上がっている球場が心地よい。

▲広島の応援団は変わらず笛太鼓を鳴らし、立ち上がったり座ったりを集団で繰り返していたが、あれをやっている人はなかなか試合をしっかり見ることなどできないと思う。先ほどの井端のプレーなど絶対に見逃しそうだ。まあ思いっきり汗をかくという点では終わった後の爽快感はあるはずだし、昨日のような負け方をしてもストレスはたまらないかもしれない。しかし野球を見に来ているわけではないな。

▲そういう静かな球場で、以前からあればいいのにと思っていたことが、今年は一つだけ実現していた。それは打席にはいる前に、打者の当日の成績が大型液晶に表示されること。観客はスコアブックをつけているわけではないから、打者が前の打席でどうだったか、きちんと覚えているわけではない。しかし3打数0安打の打者の4打席目は期待できるわけだし、あるいは3打数2安打の打者が3安打打つことは結構あるわけで、そういう読みを楽しむことができる。できれば今後、投手のデータも出してくれるとうれしいが。

▲そうやって球場側がエンターテイメント性を高めるよう努力すれば、笛太鼓がなくても十分野球を楽しめるのではないか。先日は久々に内野席を買って入ったから結構な出費だった。その値段分は十分楽しめた内容の試合だったから許せるが、多くの人は球場へ来たことを楽しんでいるだけで、かけた費用分、野球そのものを楽しんでいるようには思えなかったが、どうなのだろう。ショーアップすることがすべていいわけではないが、そろそろ勝敗だけで野球を見せるのはやめた方がいいのではないか。戦力を補強しまくって勝敗にばかりこだわっているから、巨人戦は人が入らないと思うのだ。そんな巨人は最強戦力ながら開幕4連敗(4月1日現在)をしてしまい、これで関東地方の野球人気は今年もますます落ちるはず。

▲最近は試合に使われているボールが選手から観客席によく投げ入れられるようになった。それでも一試合につき五球くらいか。ピッチャーの投げた新品ボールはワンバウンドして汚れたらすぐ交換されるから、あの汚れたボールをもっと観客に投げ入れて欲しいものだ。ボールが一個いくらか知らないが、手に入れた人にとっては一生ものの記念品となる。そしてその日のゲームに関して様々な人々に語れるいい機会になるはず。そんな簡単なことで野球はもっと盛り上がると思うのだが。

 
 

月別一覧

 

現在の位置:ホーム > 編集長コラム 水野誠志朗'sトーク > 旗竿、鳴り物のない球場は素晴らしい