第76回 本当に欲しいものが手に入れられない、と歌ってみた

カテゴリ : 社会 / 日時: 2008年07月04日

 

▲名古屋の有名私立校に東海高校・中学という学校がある。海部元首相の出身校だが、地元ではいわゆる中高一貫のエリート校として、多くの秀才が集まる学校だ。ここで年一回、サタデー・プログラムと称して土曜市民公開講座が行われている。政治経済から医学・福祉・趣味まで様々な講演が原則無料で行われるのだが、今回これに初めて参加してみた。というのも、政治評論家森田実、元自民党幹事長野中広務、新党日本代表田中康夫という今や反体制(笑)の三氏の講演が続けて聴けたからだ。

▲話の内容は三氏とも多岐にわたるため割愛するが、その中で三氏に共通していた話題に関して、どうしても何が本当だかわからないと思うことがあった。それは国の財政赤字が深刻なのかどうかということだ。「マスコミが伝えない真実」というテーマの森田氏は「借金はあるが、国は金を持っているから問題ない」という。「老兵はかく語りき」というタイトルの野中氏は「借金といっても海外に対してあるわけじゃなく、国債など国民が持っているだけだから借金とはいえない」という。ただ田中氏だけは「凄まじい勢いで借金が増えているのでこのままではまずい」という。さて、どの意見が正しいのか。

▲まあ、借金があることだけは確かだろう。それが増えていることもまた確かだろう。しかしこの「日本国経営上の借金」のとらえ方は大変難しい。会社の場合なら借金と資産でバランスがとれれば、借金も健全経営のうち。悪徳高金利の金貸しで借りてでもいない限り、大きな問題ではないし、たとえ経営が行き詰まっても資産を処理することができれば何とか持ち直せる。日本国はこれがどうなっているか、に関してどうも誰もはっきりしたことを言わないのだ。借金はし続けていると思うが、どう使うか、使いたいか、ということでこの問題はどうとでもとらえ方が変わるから、誰も見解は述べられないということか。

▲年金に関してもサイトという雑誌が書いていたが、年金積立金というものが150兆円もあって破綻しないらしい(http://www.mhlw.go.jp/topics/nenkin/zaisei/tsumitate/index.html)。これは東京新聞=中日新聞も書いていた。しかしそんな大金があるという話が一般にあまり出てこないのはなぜか。年金が破綻しなくてきちんと受け取れそうなら、私も文句を言わない。もらえそうもないと煽るから、年金制度なんかやめてしまえと思うわけで、一体本当のところはどうなのだろう。事実をなぜ公開しないのだろうか。いろいろと資金運用をしているようだが、それに何か問題があるのか?

▲つまりこれら国の金のすべてを官僚というものが管理していて、彼らが国民はもちろん、与党政治家にも自分たちに都合よく説明し、国のためというお題目で「うまく」運用しているから、というのが衆目の一致するところのようだ。講演をした三氏もそう指摘している。つまりは有能な事務方が見えない権力を握っているという、まあ、江戸の昔からよくある話に落ち着くわけだ。税金も控除だなんだとよく分からない取り決めがあって、その上ですべてが計算されている。とんでもない金額と多くの人が関わっている国家予算や年金ともなればなおさら。素人にもわかりやすくといっても、それはたぶん無理なのだろう。官僚組織は一般の人によく分からない仕組みを作ることに長年努力してきたのだから。

▲そして、お金というものは見解が違えばまったく違うとらえ方になる。ブランド好きがブランド買いに使うお金は、まったく興味がない人から見たら無駄金にしか見えない。つまりはお金の価値というのはかなり相対的なもの。使う人の価値観で、お金の価値は大きく異なる。そのため単なる数字だけを公開すれば、考え方の差によっていかようにも批判されるだろう。それゆえ官僚としては、できるだけ本当の数字を公開したくないということのようだ。

▲同様に、大マスコミもこれらに関して詳細に報道することはない。真実を報道するという建前においては、こういう曖昧な(ややこしい)話は報道すると自己矛盾を起こすからだろう。真実は見解次第ということでは、とても原稿は書けないし、その解説を始めたら新聞の紙面程度ではとうてい無理。事実を短くわかりやすく書く、考えなくても分かるように伝えるという新聞や放送のスタンスではできないことだ。といって今やたいして売れない雑誌でもたぶん無理。またWebで書いたところで、いわゆる権威はないから所詮「与太話」にしかならない(新聞社が紙でやれないこういったことをWebでやり始めたら、かなりおもしろい可能性があるが、金にならないことは彼らもやるまい)。

▲結局国民は、こんなメディア社会なのに大事なことがよく分からないまま放置されている。政府系の組織のWebを見てもさっぱり分からないが、前述のようにマスメディアが報道できない以上、ローコストに作成できるWebというメディアで、誰かが詳細かつ「よく分かるように」解説してくれないものだろうか。マスコミはあてにならないゆえ、もはやWebしか頼るものがない。そのためなら、多少のお金を支払ってもいい。そう、有料でもいいから本当に正しいと思える、そして本当に役に立つサイトが欲しいと切に思う。個人ブログのようなものがいくらあったって、欲求はどうにも満たされないと、佐野元春の歌を口ずさみながら思うのだ。

 
 

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