第78回 クルマのためにバスを見直そう

カテゴリ : ITS関連 / 日時: 2008年07月28日

 

▲クルマを生業とするものとして、クルマに厳しい時代がやってきたからと思いたくはないのだが、最近なんだか公共交通機関を使って移動することが増えている。特にバス。うちの会社は地下鉄駅から徒歩20分もかかり、歩くのは現実的ではない。しかし名古屋独自の基幹バス・バス停が会社の目の前にある。このバスが実はとても便利だ。2停先で地下鉄に乗り換えることもできるし、そのまま乗っていれば名古屋の繁華街の錦や栄、そして名古屋駅にも直通している。地下鉄と比べると少しだけ時間がかかるのは残念だが。

▲正式名「市バス基幹2」は道路中央の専用レーンを走る市営バスで、名鉄バスも乗り入れている。道路の真ん中にシェルター状のバス停が作られ、そこで乗り降りするという特殊なもの。バス専用レーンは朝晩の通勤時間帯は一般車両乗り入れ禁止、その他の時間帯も多くの人が走行を躊躇するので、バスは軽快に走る。ただこのレーンのために一般車の右折が特殊であったり、レーン自体がかなり無理なカーブを描いていたりするので、事故がかなりある。会社の前でも今までどれだけの事故を目撃したか覚えきれないほど。実際、愛知県警も事故が多いことは議会で認めている。

▲そんな問題はあるものの、このバスの仕組みは悪くない。会社の前のバス停はだいたい5分間隔でバスが走っている。朝晩の通勤時間帯は乗ったことがないのでわからないが、昼間はそう混んでいなくて座れる。バス停では3つ前までのバス停を発進した通行情報も提示されるから、時刻表どおりに走ってなくてもそう苛立たない。乗車料金は一律200円。ユリカという前払いカードを使うと、地下鉄などの乗り継ぎ時には割引され120円になる。しかも名古屋市はバス事業に関して黒字計上している。大変うまく回っている仕組みだ。

▲むろん不満点もある。まず何より、バスは馴れないと本当に乗りにくい。どこへ行くのに、どのバスに乗ればいいのか、それが何時に走っているのかといったあたりは、鉄道と違って情報が少なすぎる。また栄で地下鉄に乗り換える場合は、終点まで行かずその一つ前で降りるとすごく近くて楽、というような情報も知りようがない。よく乗る人は皆知っていることのようだが、そんな案内はバス内にないし、アナウンスもない。今時クチコミだけの情報というのは何だかな、である。

▲また市バスは降りるときにユリカを機械に通すだけだが、相互乗り入れしている名鉄バスの場合は乗るときにも通さなければならない。これも教わるまでさっぱりわからなかった仕組みだ。最近は乗り降りしやすい低床バスが多く「人に優しい」が売りだが、「初めて乗る人にはぜんぜん優しくないぞ」と言いたい。せめてバス停に乗り方ガイドを掲示すべきだろう。

▲さらに市バスと名鉄バスの連携の悪さが最悪。時刻表を見る限り、ほぼ同じ時刻に走らせている時間帯もあり、二台のバスが連なってやってくることも多々ある。例えば23時台など両社が2本ずつ走らせているので、15分に一台あると思うと大違い。22時14分に市バス、15分に名鉄バスが来るのだ。当然ながらどちらかのバスは「誰も乗らない」のである。どうしてこういう無駄でおバカなことがまかり通っているのか、まったく理解できない。

▲というようにいろいろ問題はあるが、さらに使い勝手を改善すれば、かなり便利な乗り物になるだろう。バスはインフラ整備が少なくてすむゆえ、公共交通機関としてまだまだ可能性のある乗り物だ。積極的に乗り方を広報活動し、ITを利用して使い勝手の改善をしていくべきだ。例えば世のすべてのバスの動きをGPSでつかみ、それを利用者の携帯へ配信する仕組みを一元化することはそんなに難しいことだろうか(基幹バスはすでにできている)。また市営バスも名鉄バスも時刻表がネットで見られるのだが、それがとても見づらくわかりにくい。まずはこのあたりを早急に改善すべき。またナビタイムなどの乗換案内サービスもバスの時刻表に早く全対応すべきだろう。

▲大金をかけて鉄道を作らなくても、IT対応したオンデマンドバス、さらにはオンデマンドタクシーなど道路を使った公共交通インフラを再構築すれば、名古屋のようなクルマ社会でも、もうちょっと公共交通機関がうまく使われるようになるだろう。さらにこれにパーク&ライドやカーシェアリング、乗り合い自家用車やレンタル(共用)自転車といったあたりを組み合わせて、無駄のない「自家用車を含めた」公共交通インフラを作れたら、という夢を見る。クルマばかり乗っていた自分が電車移動を厭わなくなったのは、ネット上に乗換案内サービスができたからだ。これがない時代は電車など乗りたいとは思わなかった。一刻も早くそうした情報インフラが整備されていくことを望む。

▲つまりそれは、「自分のクルマ」をやめることではない。自分のクルマに乗る自由を確保するために、エネルギーや環境面での無駄をなくしたい、ということ。必要に応じて効率的な移動手段を利用する自由を確保したいということだ。電車やバスがあるからクルマなど乗らなくてもいい、自家用車は環境の敵だ、などという偏った方向へ世の中が傾いていかないように、様々な移動手段を自由に自在に乗りこなせる、そんな仕組みをITと広報活動を通じて作らないといけないと思う。

 
 

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