第87回 クルマ不況のあとでやってくる世界は誰のもの?

カテゴリ : その他クルマの話題 / 日時: 2008年12月20日

 

▲わずか半年足らずで、いきなりとんでもない不況である。その最大の問題はクルマが売れないということだろう。いかに日本の経済・社会がクルマに依存していたかがつくづく再認識されたはず。今回の不況はクルマ不況と命名すべきだ。こういうときこそ政治がまともであって欲しいものだが、不況以前から政治はとんでもない状況だったのだから何をか言わんや(オバマに光明が見いだせるという点でアメリカがうらやましい)。このまま行けば日本社会が崩壊すること必至である。

▲国内でクルマが売れないのは、マインドの問題が大きい。何も大不況と叫ばれている今買わなくても、と皆が顔を見合わせている。同時に現実に買わなくても特に大きな不満がないということがそれを後押ししている。大半の人が性能がよくて壊れないという現在所有しているクルマに文句がないのだ。この不況感ゆえ、例え車検時期が来ても、もう一度車検をとって乗るだけ。9年落ちのクルマですら、もう2年は絶対に乗ろうと思うはず。たいしてボロくもないのに査定はほとんどつかないという、もはやタダ同然のクルマゆえ、あとは乗れば乗るだけお得ということになるのだから。

▲メーカーはいいクルマを作ってきたことを後悔しているかも知れない。商品を売るコツは適当な寿命を設定し、そこで壊れる・陳腐化するように仕掛けることだ。「ソニー爆弾」なんて言葉もあったくらいで、電化製品の寿命は結構短い。また使えても陳腐化してしまうのだ。しかしクルマはすっかり長寿命商品となってしまった。数十年前仕事で何台も使っていたスズキの軽のエンジンは、7万㎞くらいでどのクルマも一度壊れたものだ。今そんなことがあれば、大変な問題となるだろう。いずれにしても今のクルマは壊れない。さらにぶつけたりしない限り見てくれもそう悪くならない。うちのヴィッツなど8年間ワックスをかけたこともないが、洗車さえすればまだ十分きれいだ。

▲ということでメーカーは大変なことになっている。海外で売れないのは上記のような理由ではないと思うが、こと国内は上記の理由ではないか。国内はさらにもう一つ理由があると思う。それはクルマのIT化の遅れだ。家電的なIT機能を強化できないまま来てしまったクルマは、陳腐化することがない商品となってしまった。わずか10年でこれだけ世の中のIT化が進んでいるのに、クルマは10年前のクルマでも今のクルマでもほとんど機能に差がない。今やほとんどの家庭で、そしてほとんどのケータイでインターネットが見られるのに、クルマの中は10年前と同じだ。カーナビも10年前は無理としても8年前くらいのものならまだ十分使えたりするのだから、もう何ともならない。

▲そうはいってもここ数年のうちには確実にクルマは売れるようになるだろう。それが景気のせいか、あるいは本当にクルマが寿命を迎えて壊れ始めるからか、画期的なクルマが登場したからなのかはわからないが、クルマ無しでは人類が生存できない以上、いずれ確実にクルマは売れ始める。その時笑うメーカーはどこか。

▲それはトヨタしかあるまい。今期はついに赤字転落といわれているが、一説では内部留保は12兆6658億円もあるらしいし、ハイブリッドなどの環境自動車の開発でも完全に先行している。またモーターデイズの試乗記で書いたとおり、iQという今までにないパッケージングのクルマの開発にも成功している。今後iQのパッケージングとハイブリッドを組み合わせた環境に「超」優しいクルマを作れれば、ぶっちぎりだ。しかも北米のビッグ3は放って置いても消え去りそう。何もしなくても世界一の座が転がり込んでくる。

▲そう考えると、この不況はトヨタにとって計算済みなのではないか、などと勘ぐってしまう。トヨタ帝国を打ち立てるための「ガラガラポン」。終わりの始まりだ。そう長い時間を経ないうちにライバルが消え去り、他メーカーを傘下におさめ、創業家の豊田章男氏が社長に就任して旗印となり、世界一のメーカーとなって地球規模で環境カーを作り、売りまくる、そんなビジョンが見えてくるのだ。章男氏にしても一度どん底まで落ちたところで就任すればあとは成長させるだけだから、仕事はしやすいはず。

▲まあ今はそんなことをいっていられるほど悠長な状況ではないし、下請けや関連企業にはさらに過酷な現実が降りかかってきている。小社を含め生きるか死ぬかの状況だ。ただこの不況は例えば広告宣伝に関わる我々には産業構造の大変革、革命の時期に思える。放送や新聞といった旧メディアが衰退し、ネットを中心とした新たなメディアがいよいよ力を発揮するようになるのではないか。小社もそこに関わっているだけに、期待と不安は大きく交錯している。数年後、トヨタはまず生き残っているが、うちが生き残っている保証は全くないのだから。

 
 

月別一覧

 

現在の位置:ホーム > 編集長コラム 水野誠志朗'sトーク > クルマ不況のあとでやってくる世界は誰のもの?