第92回 電気自動車は管理社会の乗り物!?

カテゴリ : クルマ / 日時: 2009年08月03日

 

▲今や世の中、ハイブリッドでなければクルマにあらずというくらいの勢いだが、ハイブリッドのないメーカーの巻き返し策としては電気自動車がまたまた賑やかになってきた。とても安いとはいえない三菱の軽サイズ電気自動車iミーヴを企業が大量購入し、これ見よがしな導入式を行ったりして話題となっている。そんな中、日産が来年発売する予定として登場させたリーフは、ついにVWゴルフと同様のCセグメントで登場し、確かに電気自動車の本命といえそうだ。このサイズならファミリーカーとして、また商用車として実用になる。価格はやや高くなるが燃料代が安くなるのでガソリン車と同等の価格に等しい、という展開のようだが、はたして今後、電気自動車は一大ムーブメントになるだろうか。

▲電気自動車普及のためにはなんといっても電池が課題だ。電池の素晴らしいヤツが新開発されれば話は別だが、残念ながら今のところは電気自動車のほとんどが航続距離にして100km程度しか走れない。日産リーフも160kmとしているが、実際にはもう少し短くなるだろう。100km程度の距離は、連続走行すればわずか1時間にすぎない。多くのクルマが年間1万km未満(一日30km未満)しか走っていないのは事実だが、それは毎日短距離のみを走っているわけではない。時にロングドライブに出ることもあってのトータル数字だろう。長距離を走れないという意味で、まさにチョイノリとしてしか利用できないのが電気自動車の現状だ。

▲チョイノリコミューターとして使うにしても、ちょくちょく充電しなくてはならないのは荷が重い。ガソリン車は400km程度は無給油で走れるから、一日30km程度の走行なら二週間に一度ほど給油すればいい。電気自動車は理論的には4日に一度程度でいいことになるが、4日目など充電量は相当心細いだろうから、結局ほぼ毎日充電することになるだろう。携帯電話の普及し始めた頃、電池の性能が低くて毎晩充電したものだが、それはそれは面倒だった記憶がある。小さな電話端末でもそうだったのだから、クルマとなればきちんとした一戸建てに住み、電気設備のあるガレージを用意し、毎日規則正しい生活をしている人でもない限り、なかなか毎日の充電は難しいのでは。私はたぶん無理。

▲このため、急速充電インフラの充実が望まれるが、これも相当な労力と資金が必要だ。どこに作るか、誰が建設代金を負担するか、経営的に成り立つかなど課題山積み。さらに充電はガソリンを入れるより時間がかかるから、施設の利用待ち渋滞も生まれそうだ。また、例えば30分で急速充電できるとして、その30分をどこでどう待つか。どう使うか。給油はごく短時間でできるからいいが、充電は気の短い人、忙しい人には無理だと思う。

▲ここに来てまたまた取りざたされている電気自動車も、15年ほど前に性能的にはもう十分完成している。当時あったトヨタのRAV4 EVはとてもいいクルマだった。今ほど世論が盛り上がらず、インフラもまったく普及しなかったため、すぐたち消えてしまったが、今回は果たしてどうだろう。ハイブリッド車と異なって電気自動車は日々の走行(電池状態)を管理することが求められる。クルマを管理することは実はとても面倒なこと。乗りっぱなしの私にはやっぱり無理だと思う。

▲となればやはりレンタカーあるいはカーシェアリングといった管理された環境下でこそ、電気自動車は意味を持つ。日産のリーフではデータセンターと通信してバッテリーや走行の管理をするようで、これは10年前には考えられなかったことであり、たいへん素晴らしい仕組みだ。となればこれをもう一歩進めて、カーシェアリングまでをビジネス化した上で売れないものだろうか。そこまでパッケージ化した商品なら電気自動車は普及させられると思うが、個人に管理させるのでは10年前のようなことになりそうな気がしてならない。

▲個人がクルマを持つのは移動の自由を得るためだと思う。しかし、システムによるコントロールを必要とする電気自動車は、当面、自由のための道具にはなり得ない。モーターで走る乗り物は大好きなのだが、自由のための乗り物でないなら魅力は半減だ。リーフはデータセンターとの通信というモビリティの新しいスタイルを提示しているが、自由とのトレードオフにならないようにするためには、もう一歩の進化が必要だろう。そしてそのもう一歩の進化はこの10年、あまり進んでいないように見えるのが残念なところだ。

 
 

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