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アラコ エブリデー コムス新車試乗記(第171回)

Araco Everday Coms

(0.29kw×2・68万5000円)

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2001年05月12日

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キャラクター&開発コンセプト

ランクルの生みの親が手がける、超小型電気コミューター

エブリデー・コムス(以下コムス)を開発したのはアラコという会社。トヨタグループの一員として内装品(特にシート)を手がけるほか、「ランドクルーザー」を開発・生産する名門メーカーだ。一方で、トヨタ車の福祉車両「ウェルキャブ・シリーズ」や、自社ブランドとして高齢者向きの電動三輪車・四輪車「エブリデー・シリーズ」を開発・生産するなど、積極的な事業展開を行なっている。それら長年培われたクルマ作りの技術力を活かし、新しい市場を開拓するために誕生したのがコムスだ。

コムスを一言で表せば、「1人乗りの超小型電気自動車」となるわけだが、法的には「第一種原動機付自転車(四輪)」という種別に属する。一方、道路交通法上では「自動車」扱いとなる。言い換えれば、登録上は「原付」、実際の道路上では「クルマ」と同じ扱い。具体的には普通自動車免許が必要だが、ヘルメット着用の義務はなく、代わりにシートベルト着用は必須となる。ターゲットユーザーには個人はもちろん、宅配業やリゾート施設などの法人を想定しているようだ。

価格帯&グレード展開

補助金制度を利用すれば50万円ほどで購入可能

屋根付きの「ベーシック」(68万5000円)とオープン仕様の「オープン」(66万5000円)の2つが用意される。同類他車には、光岡自動車の「MC-1LEV」(67万8000円~)、タケオカ自動車の「ミリュー」(68万6000円)」などがあり、性能と価格のバランスはどれも似たり寄ったりだ。その中でコムスのセールスポイントとなるのは、1充電あたりの走行距離と主バッテリーの寿命だ。

また、拡販にあたり強力な武器となるのが充実した販売網だろう。取扱店はカローラ店を中心とする全国約150のトヨタディーラーと60の提携販売店。もちろんそれらの販売店ではアフターメンテナンスも行ってくれる。すでに昨年の夏頃から発売されており、販売台数は6ヶ月間で約300台。月にして50台。これはトヨタ・スープラとほぼ同じ数字で、かなり立派な実績といえよう。

このクルマの経済上のポイントは「登録上は原付」ということ。普通のクルマと違い、重量税、取得税は不要。車検も不要で、車庫証明も不要。購入時に必要なのは、自動車税2500円/1年と、自賠責保険9500円/2年だけ。あと消費税ぐらいだ。電気代は1kmあたり約1円とされる。ざっと計算するとスクーターの約3分の1、軽自動車の約6分の1ということになる。

もうひとつ、ライバルで注目しなければならないのが、ホンダの屋根付き原付スクーター「ジャイロ」(40万9000円)だ。EVではないが、用途はほぼバッティングする。原付免許で乗れるし、何より価格が安い。しかし、コムスには補助金制度がある点を忘れてはならない。「環境にいい」クルマとして購入時に国から15万円の補助金がもらえるのだ(一定の条件を満たせばだが)。これを考慮すると、コムスの実売価格は53.5万円だ。

パッケージング&スタイル

グッドデザイン賞受賞の秀逸なデザイン

ボディサイズは全長1935mm×全幅955mm×全高1600mm(オープン仕様は全高1570mm)。専有面積は軽自動車のおよそ3分の1だ。軽量化を図るため、ボディは全面樹脂製で、フレームは全てアルミ合金。ヘッドライトは一灯で、ピザの宅配用などに使われている屋根付きの原付スクーターを4輪にしたようなカタチ、と思っていいだろう。そのスタイルはSF映画から飛び出してきたような、近未来のコミューターという感じ。オープン仕様のほうもバギー風でなかなかカッコイイ。人目に付くことは間違いなく、走る広告塔としても活躍できるだろう。

世界初のホイールインモーターを採用

非常にスリムなため、一見軽そうに見えるが、車重は270kgと意外に重い。そのうち半分は、主バッテリーとモーターの重さによるもの。主バッテリーには低コストの鉛電池が6個使われており、1個当たりの重さは15kgだから計90kgだ。モーターは20kgのものが2個で計40kg。都合130kgとなる。それぞれの搭載位置は主バッテリーが床下。そしてモーターはナント、左右後輪ホイールの中に埋め込まれている。これは市販車としては世界初で、資料の駆動方式の欄には「後輪ホイールイン直接駆動」と記述される。

フロアは完全なフラット設計で、乗り降りしやすいばかりでなく、買い物袋程度の荷物を載せるにも都合がいい。最大積載量は30kgで、異なるサイズの収納ボックスを2つ用意し、宅配業務にも対応している。ペラペラのシートは樹脂製で、ヘッドレストは別個になってフレームに取り付けられている。スライド機能やリクライニング機能はないが、クルマの用途を考えれば不満はないだろう。なお、安全装備としてシートベルトは付くが、エアバッグはない。エアコンもヒーターもなく、クルマとしての快適性はほぼゼロに等しい。

ワイパーも装備。豊富なオプション

メーターは液晶のデジタル表示で、シフトポジション表示も備わっている。キーの差込口はフツーのクルマ同様、ステアリングコラムの右側。「D(ドライブ)・N(ニュートラル)・R(リバース)」のシフトスイッチは、キルスイッチ風になっており、インパネ左側に付く。シート左側には、ステッキタイプのサイドブレーキが備わる。

ワイパーも付いており、走行中なら多少の雨でも濡れる心配はないとのことだ。それでも心配性の人のために、横回りを覆うキャンバス地のカバーも用意されているが、装着方法や乗り降りなど、使い勝手が良くなく、何より見た目が損なわれる。ま、それでもヒーターがないので秋冬は必需品といえるだろう。この他、トップシェードガラス、スノーチェーン、デッキガードなど、全14ものオプションが用意され、その中にはセンターキャップ、ロッカープロテクターといったドレスアップパーツまでも含まれている。

基本性能&ドライブフィール

充電方法は家庭用コンセントにつなぐだけ

コムスの開発には、「松下電器(パナソニック)」、「ブリヂストン」、「アイシンAW」など、大手メーカーが携わっている。そうしたメカニズムのなかで最も注目したいのが、左右後輪のホイール部にモーターを直接組み込んだクラス初の駆動システムだ。モーターおよび電子制御部分はアイシンAWとの共同開発によるもの。モーター本体は直径30cm、厚さ10cmほどのコンパクトサイズで、後輪タイヤの空洞部にスッキリと納められている。ホイールインモーターのメリットは、ドライブシャフトなどが不要になり、パッケージングの自由度が増し、伝達ロスが小さな点だ。EVとしては理想の構造といわれており、今後の発展が注目される。

充電方法は家庭用コンセント(100V)につなぐだけ。インパネ下には見慣れたプラグがあり、どこの家庭にもある延長コードを差して行う。1充電での走行距離は約60km。フル充電に要する時間は8~10時間だ。電気代は1kmで約1円と、バイクの3分の1程度で済む。主バッテリーは、パナソニックと共同開発した鉛電池だが、密閉タイプでメンテナンスフリーだ(補水不要)。寿命も同類他車と比べれば約1・5倍と長い。しかしそれでも2年を目安に交換しなければならず、その際にかかる費用はおよそ15万円。もちろん負担するのはユーザーになる。ランニングコストで元をとることは考えない方がいいだろう。やはりカネ勘定でEVに乗る、という情況に至るまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。

なかなか快適で爽快

走らせる手順はフツーのクルマと同じ。キーを回してシフトスイッチをDにすると同時に、駆動力がタイヤに伝わる。これがいわゆるクリープ現象となり、フツーのオートマ車と同じような感覚で発進することができる。定格出力は0.29kw×2個。1psにも満たないが(最大トルクは未発表)、体感的には満足できる加速をみせる。全体としては、50ccスクーターをちょっと超えるぐらいの速さと思えばいいだろう。ただ40km/hあたりからの加速は、最高速の50km/hまで1秒につき1km/hといった感じで、とたんに鈍くなる。絶対的な速度が出ていないせいもあり、乗り心地は悪くない。背のあるウインドウシールドによって風の巻き込みもほとんどなく、なかなか快適で爽快だ。リゾート施設やテーマパークでの楽しい乗り物としてピッタリだと思う。もちろん宅配事業にも最適だと思うが、普通自動車免許が必要なだけに、原付免許の高校生がバイトするピザの宅配業などへの普及は難しいだろう。

回生ブレーキを採用。左右の駆動力も制御する

12インチのタイヤは、このクルマのためだけにブリヂストンと共同開発した特注品。開発の目的はもちろんグリップ力ではなく、転がり抵抗を抑えるためだ。サスペンションも凝っており、ダブルウィッシュボーンを採用する。ブレーキは4輪ドラム式で、制動時に発電を行なう回生ブレーキを採用する。これによって燃費性能は約1割向上し、クラストップレベルの航続距離を実現したという。

コーナリングはホイールインモーターのメリットを活かし、ハンドルを切ると内輪と外輪で駆動力が変わるという、最新のランエボさながらの芸当を(あちらは4輪制御だが)披露する。効果のほどは体感できないが、操縦性はさらに高まっているのだという。

もちろん、だからといってこのクルマが無茶な走りに耐えられるわけではない。ブレーキの制動力は、非常に頼りなく、まるでチャリンコ並。いくら低重心とはいえ、タイヤのグリップ力がないので、それなりに速度を落としてハンドルを切らなければならない。のんびりとした田舎道なら爽快に走らせることができるが、交通量の多い幹線道路ともなれば、自分が怖いだけでなく、走っている人にも迷惑をかけるなど、問題が多いのは事実だ。やはりクルマというよりも、原付に乗っているという心構えが必要だろう。

ここがイイ

完成度の高さはさすがトヨタ系企業。同様のミツオカ製原付自動車(ガソリン車)にも乗ったことがあるが、作り込みの良さは完全にコムスの勝ち。ボディの剛性感、ステアリングやシートの出来の良さ(といっても低価格軽自動車並だが)、さらにクルマとしての完成度(試作車的ではなく安心して乗れる)は、さすがにランクルのアラコが作っただけのことはある。

価格的にも現実味があるし、国土交通省の認証車にもなっており、先に紹介したゼロEVサンバーなどと比べるとユーザーサイドの安心感が高い。また、全国どこでも近場のトヨタディーラーで買えるため、EVの普及という点では現在最右翼の可能性を持つ車両だ。

ここがダメ

法律的には最高60km/hが制限速度なのだが、コムスは最高速が50km/hに制限されている。現実の路上で、この10km/hの差は大きい。60km/hなら後続車がついてきてくれるが、50km/hだと必ず抜かれるため、常に抜かれることを考えながら走らざるをえず、かなり怖い。車幅が約1mあるため、幅の狭い道路で抜かれるのは、冷や汗ものだ。考え方の問題だが、スピードは出るにこしたことはない。むろんこの件は電池の持ちと密接な関係があるのだが。

高速(というほどでもないが)でのコーナリングの安定感は、2輪車や3輪車にかなわない。トレッドの狭さ、サスペンション・ストロークの無さがモロに出て、これまたかなり怖い。そんな走り方をしないのが原則だが、ピザ屋のバイクはかなりハデな走りをするだけに、ちょっと心配だ。

総合評価

多くのEVはまだ趣味の域を出ていないが、コムスは現実的な乗り物として通用する。ホイールインモーターなど、投入されている様々な技術はたいへん高度なものだし、乗り物としての完成度も高い。何よりEVをビジネスにしていこうという姿勢は、親会社トヨタを上回るものだ(e-comというトヨタの二人乗り軽EVは、ナンバーがついてはいるが、現在は実験車両の位置付けだ)。さらに改良され、進化していくコムスに期待したい。

そしてお金に余裕があれば、オープンタイプを購入したい。フロントスクリーンはなく、完全に体が風にさらされる。ノーヘルで時速50キロを自由に公道で楽しめる唯一の乗り物だ。

家庭用100V電源で夜間に充電しておき、昼間は通勤の足に使うなんて使い方をすれば、理想的な地球に優しい乗り物になるだろう。現在の電気が発電方法を含め、本当にクリーンエネルギーなのかについては議論があると思うが、少しはマシという点だけでもコムスの価値はある。企業イメージのアップという広告効果を鑑みて、余力のある企業(もちろん役所も)には大量購入して欲しいものだ。

        

   

 
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