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日産 スカイライン 250GT新車試乗記(第181回)

Nissan Skyline 250GT

(2.5リッター・4AT・280万円)

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2001年07月21日

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キャラクター&開発コンセプト

「R」から「V」へ変わった11代目

ここ数年、販売低迷を続ける日産を代表する、ストイックなグランドツーリングカー「スカイライン」。11代目となる新型スカイラインはアイデンティティだった丸型テールランプ、直列6気筒エンジンを捨て、型式も“R”から“V”へと変更。ハード面は全く別物となって登場した。継承されてるのはFRの駆動方式と、世界最高水準の走行性能をめざすというコンセプトだけと思っていいだろう。

で、結局のところこのクルマは、99年の第33回東京モーターショーに参考出品されたコンセプトカー「XVL」の市販化バージョンでもある。当初から、これをスカイラインとして開発を進めていたのか、それとも、後から「スカイライン」という名を付けたのかは定かではないが、今はスカイラインという名で目の前にある。エンジンは直6に代わってV6となり、2.5リッターと3.0リッターの2つが用意される。ボディは4ドアのみで、これまであった2ドアは廃止された。

従来のような国内専用モデルではなく (GT-Rなどは、ごく一部の右ハンドル諸国に輸出されていたが)、新型は北米に輸出されることもニュースのひとつだ。国内においてはトヨタ・マークIIやヴェロッサあたりと競合するわけだが、日産自身が標的としているのはズバリ、BMW3シリーズやベンツCクラス。なお、国内の月販目標は2000台。先代がセダン、クーペ合わせて1000台前後だったから、かなり強気の数字だ。

価格帯&グレード展開

価格は265~333万円で、先代よりおよそ30万円アップ

グレード構成は全7タイプ。駆動方式はすべてFRで、3.0リッター+5ATの「300GT(325万円)」、2.5リッター+4ATの「250GT(280万円)」「250GTe(265万円)」に大別される。「300GT」「250GT」にはそれぞれ内装の違いによる「Pコレクション」「Sコレクション」を8万円高で用意。シート&トリム地が標準のスェード調トリコットなのに対して、P&Sコレクションはエクセーヌ+合皮(Pはベージュ、Sはブラック)となっている。さらにPコレクションにはよりシックで上質な風合いの本革+サプラーレシートもオプションで選ぶことができる。まずエンジンを選んでから内装を決めるといったグレード構成だ。

パッケージング&スタイル

理詰めの新生代FRシャシー

ボディサイズ(先代比)は全長4675mm(-30)×全幅1750mm(+30)×全高1470mm(+95)。ホイールベースはシーマ並みの2850mm(+185)と極端に長くなった。ロングホイールベース化の目的は、居住性の向上とフラットで良質な乗り心地の実現。「前のモデルの反省から、55mm短縮しました」という先代の方便をわずか3年で否定したとも言えるが、実際にはそうではない。スカイラインが生き残りを賭けて変わったのではなく、XVLにスカイラインの名を継承させた。そう考えた方が自然だろう。

ヘッドライトを上下2段としたのは、単に新鮮味のある表情を演出するためだけでなく、理詰めで導びかれたものだ。高い位置にキセノンロービームを置くことでドライバーの視線に近い照射が可能となり、視認性を大幅に向上させている。また、ヘッドライトの上端から盛り上がるフェンダーの峰は、車両感覚を把握する助けともなる。どことなくポルシェの臭いが感じられるのはチーフエンジニアがレース畑出身だからか。

“FMパッケージ”がもたらしたもの

新型スカイラインが謳う“FMパッケージ”のFMとは、“フロントミッドシップ”の略。エンジンの重心を前輪軸よりも後ろ、従来よりも車体中央側に寄せている。その狙いはいうまでもなく重量配分の適正化と、ヨー慣性モーメントの低減だ。前後の重量配分は先代の56:46から58:48と、おおむね維持。フードパネル裏側の遮音材には、誇らしげに“ADVANCED FRONT MIDSHIP”の文字が刻まれている。重量配分の適正化には、アルミ製ボンネットフードの採用やガソリンタンクを後席下部に配置するなどの対策も貢献している。

そんな理詰めのデザインから受ける印象だが、確かにスタイルは激変しており、新生日産の姿勢が十分に伝わってくる。フロントまわりは個性的だし、前後オーバーハングの短い塊感のあるデザインは、21世紀のクルマらしい。が、かつてのスカイラインがうちに秘めていた男気がないというか、インパクトがないというか、正直、硬派ではないという感じも受けてしまう。

空力も極めて優秀

空力特性がいいのも特徴で、Cd値は先代の0.33から0.27までに大幅に低減され、しかも三次元リアスポイラーとフロントサイドフェアリングを付ければ0.26と、インサイトの0.25に迫る超優秀な数値を誇る。さらにボディ下面の空気流をコントロールすることで、高速時に車体が浮き上がろうとする力をゼロにすることにも成功。これは量産セダンでは世界初という。高速燃費の向上、風切り音の低減、ブレーキ冷却の効率化など、速度が上がれば上がるほどその真価が発揮される。なんでも日産がル・マンから撤退したことで、用済みとなっていた風洞実験施設を利用しまくり、徹底的に研究したのだとか。

リアのL型テールランプもこれまた合理的な考えに基づくものだ。一般的な白熱球の約100倍という反応速度の高輝度LEDを採用し、後続車に減速・停止の意志を瞬時に伝えられるようになっている。それは高速走行では約5mの車間距離に相当するのだという。もちろん省電力化にも一役買っている。そもそも、往年のスカイラインがテールランプを丸形としたのは、照射技術が今ほど高くなかった時代に被視認性を高めるためだった。

チルトステアリング&チルトメーターを採用

上がブラック、下がベージュの上下2分割構造のT字型インパネは、モダンで整然とした印象。照明はイエローオレンジで統一。ナビモニターは上下方向のスライド格納式を採用しており、見やすさと未使用時のスッキリとした見た目を両立している。これはたいへんいい。

ドラポジの自由度はかなり高く、身長145cmから192cmの幅広い体格に対応するという。運転席側の電動シートスライド量は240mm、上下調整量は先代の約2倍にあたる60mmだ。加えてステアリングを上下にチルトすると、メーターも一緒に上下するステアリング連動式のメーターも採用する。これもル・マンで使われているアイデアで、ステアリングに隠れてメーターが見にくくなる、という問題を解消している。ただ、現実にはメーター上部が見にくく、総じてポジションがきまりにくい印象があった。

「シーマ並の居住性」を重要項目に開発された室内は外観同様、先代までとは一線を画す広さだ。単に広いだけではなく、助手席に座る人がくつろぎやすいようにと、クッションは運転席よりも柔らかめ。後席とのコミュニケーションを容易にするため、ヘッドレストを左側にオフセットするなど、随所に工夫が凝らされている。

ハイデッキでガソリンタンクをシート下に配したことによりトランクルーム容量もシーマ並となり、先代より+53リッターの475リッターを確保している。

基本性能&ドライブフィール

直6を捨てて得たものは

試乗したのはVQ直噴の2.5リッターモデル。車重は1470kg。先代(2.5リッターNAの4ドア)と比較すると40kg増となる。エンジン性能が15ps/1.5kgmアップだから、パワー/トルクウエイトレシオはほぼ同じと考えていいだろう。

V6エンジンは型式こそY34(グロリア/セドリック)に積まれるものと同様だが、新型スカイラインが積むのは、その進化型。吸気連続可変バルブタイミング機構が油圧式から電気式のeVTCに進化したのが大きな特徴だ。これによってスペックはY34比で、2.5リッター(215ps/27.5kgm)は+10ps/0.5kgm、3.0リッター(260ps/33.0kgm)は+20ps/1.5kgmを達成している。組み合わせられるミッションはオートマのみで、2.5リッターが4速AT、3リッターが5速ATだ。

実際に2.5リッターを走らせれば、もちろん必要十分以上の加速力があり、実用上は何ら問題ない。ただ、「スカイライン」と名乗る限り、やはり「体感的な速さ」にも期待してしまうところ。それがアクセルを踏み出したとたん「フィーリング的に速くない」のは少々残念な部分だ。2000回転前後のトルクが薄く、力強さが伝わってこない。あるいはこのクルマがローレルであったなら、許せたかもしれない。

10・15モード燃費は、それぞれ12.0km/l、11.6km/l。どちらもクラストップレベルで、しかも燃料タンクが80リッターもあるため、航続距離は非常に長い。ただ、排ガスのクリーン性能は現行規制値レベルに止まっている。日産の顔としてさらなるクリーン化を期待したいところだ。

ボディの揺れを一切シャットアウト。クイックなハンドリング

走りにおいてのセールスポイントは、先代が「剛性」だったのに対して、新型は「フラットライド」だ。GT-R・Mスペックで先行投入されたリップル・コントロールショックは、路面の細かな振動を吸収し、乗り心地、接地性、ステアリング・インフォメーションの向上につながるという。実際、乗り心地は先代のゴツゴツとした硬さやザラッとした雑味が徹底的に排除されている。全体には大人の感性に訴えるようなシットリとした乗り味だ。これは素晴らしい。

ロック・to・ロックは2.8回転とかなりクイックな設定で、ステアリング操作に対してシャッキリと小気味の良い反応性を示す。シットリした乗り心地と、ドライバーのイメージにピタリと一致するハンドリングを両立しており、これはどのクルマにもない新しい感覚だ。足回りはプラットフォームの新調に合わせて、ダブルウィッシュボーンからマルチリンクに変更。タイヤは3リッターが215/55R17、試乗した2.5リッターは205/65R16だ。ワインディングでは適度な刺激とクルマを操る喜びがあり、高速ではフラットで素晴らしい直進性を発揮し、どこまでも走り続けたくなる。

ここがイイ

大きなボディを感じさせないクイックで気持ちいいハンドリング。絶妙の乗り心地。出し入れしやすく、見やすい位置のナビ画面。近所の(きれいな)公衆トイレまでガイドしてくれるDVDナビ。FR車らしからぬ広い室内もグッド。特にリアシートのシートバックがリクライニングするのはいい。トランクが広いのもいいが、ロックがスイッチ式なのも使いやすい。フューエルリッドが集中ロック連動なのも便利。

ここがダメ

2,5リッター用のATは、4速では役不足。マニュアルモードも完全固定式ではないので、操る楽しさ半減。エクストロイドCVTとまでは言わないが、せめて3リッターと同じ5速ATが欲しいところ。3リッターモデルはまだ試乗してないが、やはりベターな選択はそちらだろう。さらに言えば3.5リッターが国内でもほしい。新型スカイラインの2.5リッターでは明らかにエンジンよりシャシーが勝っている。このシャシーにはモアパワーがふさわしい。

パイピングがオシャレで見てくれのいいシートだが、どうにもポジションがきまらなかった上、座り心地もいまいち。シートを高くするとペダルが踏み辛くなるのも気になった。ペダルが、足を投げ出し気味にして踏むというレイアウトになっていて、結局シートをほぼ一番下の位置にセットすることになる(背が低い人は特に)。せっかく自由度の高い調整機構を持っていても、それがフルに生かされていないのは実に惜しいところ。体格の問題なのか、久々に体に合わないシートだった。またステアリングとメーター部の連動はあまり意味がない。ペダル、シート、ステアリングがバラバラに自由に動き、その人にあったベストポジションを作れるようにすべきだと思う。

もうひとつ指摘したいのが、座面の張り出し部分にある電動シートスイッチだ。慣れれば問題は解消するのかもしれないが、スライドしたいのにリクライニングしてしまう、といった具合にスイッチを押し間違えてしまう。また、開閉式のドアポケットやドリンクホルダーの作動性など、300万円相応のクルマとしては質感が足りないのも不満。

総合評価

試乗後、スカイライン党の人々をはじめ、ふだんあまりクルマに興味のない人からも「どうだった?」と質問を受けることが多い。みんなスカイラインがどうなったのか、とても気にしているのだ。そしてスカイライン党には「いいクルマだけど、きっと気に入らないよ」と答えることにしている。スカイライン党の多くは、この新型に?を投げかけるだろう。どう見てもこれは伝統のスカイラインと呼べる代物ではない、と。それは正しい。このクルマはスカイラインの皮をかぶったニューセダンなのだから。

ではなぜにスカイラインなのか。それはスカイラインがビッグネームだから。このクルマにローレルと名がついたら、RV全盛の昨今、誰も振り向かないだろう。スカイラインだから、みな気にする。そして何人かはその価値を認め購入するのだ。スカイライン党は買わないかもしれない。しかしそれはかまわない。R33やR34を、スカイライン党は買ってくれたのか。R34の出来はともかく、スカイライン党が愛しているのは古いスカイライン像であり、今のスカイラインではないのだ。復刻でもすれば買ってくれるかもしれないが、何を出してもスカイライン党はもはや買わない。日産はそれをマーケティングしたのだと思う。だから、話題性のあるスカイラインの名前でニューセダンXVLを出したのだ。伝統のスカイラインはR34で終わった。

そこでまずスカイラインであるかないかという部分を離れて、このクルマは評価しなくてはならない。まず古い直6にこれ以上手を入れて、環境対策を行なうより新しいV6を作った方が安上がりで、いいものができる。特に安上がりであることは今の日産にとって命題だ。直6でなければならない、という人はトヨタ車を買うしかないだろう。そのV6はたいへん気持ちよく回る。ただし前述のように2.5では役不足。剛性感より、しなやかさを持たせたというボディのハンドリングは、繰り返すが素晴らしい。こんないい足は他にはちょっとない。室内も広く、快適性は十分。走りに振ってセダンらしさをなくした旧スカイラインとは、セダンとしての仕上がりは比較するまでもない。輸入セダンに十分タメが張れるというか、このクルマもCクラスよりいいと思う。

プラン半ばのゴーンによるNRP(日産リバイバルプラン)を、スカイラインは端的に象徴している。誰もなしえなかった改革を実現したことで、いよいよ革新的な製品が世に出始めたのだ。それは伝統とはすっかり乖離したもので、世の中が受け入れるかどうかが、いよいよ正念場となる。改革を叫び、実行することは簡単(実際には簡単ではないが)だが、結果を出すことはたいへん難しい。例えば小泉内閣はまだ改革を叫んでいるだけだから、とても簡単な初期段階にすぎない。日産が結果を出せるかは、このスカイラインの販売動向が象徴するだろう。


      

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
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