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日産 スカイライン 350GT-8新車試乗記(第216回)

Nissan Skyline 350GT-8

(3.5リッター・エクストロイドCVT・366万円)

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2002年04月13日

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キャラクター&開発コンセプト

8速MTモード付「エクストロイドCVT」を採用

直6を捨ててV6となり、FM(フロントミッドシップ)パッケージと呼ばれる新シャーシで生まれ変わった新型スカイライン。しかしこのセダン不況下、あえて捨てなかった(あえてつけたともいえる)スカイラインの名をもってしても、販売台数はパッとしない。デビュー直後の7月こそ4625台と多かったが、8月で1769台と早くも2000台を割り、さらに9月: 1870台、10月: 1380台、11月: 1274台、12月: 894台、1月: 733台、2月: 1352台…と、当初の月販目標2000台を下回っているのが現状だ。

こんな状況下で今年2月に追加されたのが、3.5リッターV6エンジンを搭載した350GT-8だ。これを聞いて、「スカイラインにV8搭載か!」と勘違いした人は少なくないだろう。しかしこの「GT-8」の8が意味するのは日産が誇る「エクストロイドCVT」による8段!マニュアルモードのこと。ちょっと人騒がせなネーミングだ。

価格帯&グレード展開

新型スカイラインのトップモデル

新型スカイラインはデビュー当初、3.0リッターの300GTと2.5リッターの250GTをラインナップ。遅れて4WDの250GT FOURが追加されている。300GTと250GT FOURは5AT、250GTは4ATだ。

今回追加された350GT-8は、北米版スカイラインであるインフィニティ G35(2002年3月から発売)と基本的に同じ3.5リッターV6を搭載。G35が5ATなのに対し、350GT-8には世界で初めてグロリア/セドリックで採用された「エクストロイドCVT」を搭載する。新型スカイラインのトップモデルとなり、価格は366万円。300GT(325~333万円)の約30万円アップだ。

350GT-8専用装備は、エクセーヌのブラック内装、ユーロチューンド・サスペンション(ブッシュ類も含む)、レイズ製17インチ5本スポークアルミ、専用17インチタイヤ、高性能ブレーキパッド&ローター、VDC(ヴィークル・ダイナミックス・コントロール)、アクセルとブレーキペダルのアルミプレートなどとなる。

パッケージング&スタイル

一見普通だが、17インチホイールが迫力

パッケージングは至極まっとうで、先進的だ。最大の特徴は2850mmというクラス最大級のホイールベースで、例えばサイズ的に1クラス上のBMW・5シリーズでも2830mm、メルセデス・ベンツのEクラスでも2835mmに過ぎない。それでいて全長が4675mmと5ナンバーサイズ並みに短いのは、オーバーハングがこのクラスのセダンとしては極めて短いからだ。また、CD値0.27という空気抵抗の低さや揚力ゼロを実現した空力特性、前後50:50に近い重量配分なども基本設計の良さを物語っている。

レイズ製17インチホイールを装備

「スカイラインらしくない」という文脈で語られることが多いパッケージング&スタイルだが、デザインも日産の願うとおり、高い品質感やスポーティさを備えていると言っていいだろう。基本的なシルエットはドイツ系セダンの最新トレンド、すなわち低いノーズ、丸みを帯びたルーフライン、ハイデッキを踏襲するが、垂直に並ぶヘッドライト、ポルシェ911風に盛り上がったフェンダーの峰、片側18個のLEDで構成されるリアのテールランプなどは個性的だ。

GT-8にはそこにレイズ製17インチホイールが加わり、とても精悍に見える。ホイール一つでずいぶん変わるモノだ。他に外観で通常モデルと違うのは、リアのエンブレムやラジエイターグリル、ヘッドランプのインナーパネルがスモークメッキされていることぐらいだ。

なお、先月(2002年3月)の米国ニューヨークショーで発表されたクーペバージョンの「インフィニティ G35クーペ」は、切り詰められたオーバーハング、低いルーフ、張り出したフェンダーを備え、よく見るとテールランプも丸形になっている。「こーいうのが欲しかったんだよー!」っていう人、多いのでは。トランスミッションは5ATの他、6MTも装備。新型Zとちょっとキャラかぶってるんじゃない? と思うほどスポーティだ。最近の日産のデザインはかなり「きてる」と思う。アメリカでは11月の発売予定だ。

チタン調センターコンソールを装備

インテリアではチタン調センターコンソールが「特別感」をアピール。他のスカイライン同様、とてもモダンなデザインだ。センターコンソール上部からせり上がってくるナビのモニターもスタイリッシュだ。各スイッチは基本的に使いやすく、インターフェイスも優れている。アルミ製のアクセル&ブレーキペダルも見た目、操作感ともグッドだ。300万円台後半のクルマと考えると高級感で物足りないかもしれないが「新しさ」は伝わってくる。ただしシートの腿のサポート部にあるパワーシートのスイッチなど、初めてだと戸惑う部分もある。

基本性能&ドライブフィール

トルキーでレスポンスに優れた3.5Lエンジン

走りにおけるこの350GT-8のポイントは3つ。エンジン、名前の由来でもある8段マニュアルモード付きエクストロイドCVT、そして専用チューンの足回りだ。

まずはエンジンについて。350GT-8は、インフィニティG35(260ps/6000rpm、36.0kgm/4800rpm)と基本的に同じ3.5リッターV型6気筒(VQ35DE)を搭載する。ただしGT-8の方は272ps/6000rpm、36.0kgm/4800rpmとよりハイチューンだ。VQ35DEと言えば、国内ではエルグランド用(240ps/6000rpm、36.0kgm/3200rpm)が思い浮かぶが、もともとは北米向けのアルティマ、マキシマ、インフィニティI35(日本名:セフィーロ)用のユニットで、アメリカ人好みのトルクフルな走りを身上とする。

実際に乗った印象もまさにアメリカンで、V8を思わせる「ドロドロッ」としたフィーリングがワイルドだ。まさに「GT-8」というネーミング通り? キャビンにかすかに侵入するエンジン音も豪快だ。悪く言えば遮音がいま一つ、とも言えるが、クルマ好きたるもの、このスポーティなフィーリングにワクワクしないではいられない。もちろん高回転域もよどみなく回る。 そもそもこのVQエンジンは、北米で自動車業界誌を発行するワーズ社の「10ベストエンジン」賞を10年連続受賞という、非常に評価の高いエンジンだ。アメリカの有力自動車誌「ロード&トラック」も、G35登場のリポートで「ついにあのVQエンジン搭載のFR車が現れた!」と喜んでいる。ちなみに2002年度の「10ベストエンジン」受賞エンジンは他に、BMW・330Ciの3.0リッター直6、同じくM3の3.2リッター直6、メルセデス・ベンツの5.0リッターV8、ポルシェ・ボクスターの2.7リッター水平対向6気筒などなど、いずれも名機ばかりだ。ともすると日本では「直6に比べて回転フィーリングの粗いV6」などと語られがちなVQエンジンだが、北米では絶賛に近い。

燃費は同じスカイラインの300GTが10・15モードで10.8~11.6km/リッターであるのに対し、350GT-8は9.0km/リッターと一気に大食いとなる。重量的には30~60kg程度の差しかなく、350GT-8が燃費に有利なエクストロイドCVTであることを考えると、その差は無視できないが、これはむしろ300GTの燃費が優れている、と考えるべきだろう。350GT-8の9.0km/リッターという数字も、同クラスのドイツ車やアメリカ車に比べればかなり優れているからだ。

http://www.industryclick.com/ ワーズ社「10ベストエンジン」(英語)

エクストロイドCVTは完璧な仕上がり

エクストロイドCVTは小型車に多いベルト式CVTと異なり、ディスクとパワーローラーを使う無段変速機だ。そのウリは変速ショックのない滑らかな走り、燃費の向上、ベルト式CVTでは難しい大型車やスポーツカーへの搭載だ。その完成度はセドリック/グロリアですでに証明済みだが、今回はセド/グロのターボエンジンに代わって3.5リッター自然吸気エンジンとの組み合わせだ。結論から言って、そのマッチングはなかなか素晴らしい。変速時のレスポンスは素晴らしく、変速ショックもほぼ皆無だ。通常のトルクコンバーター式ATの約半分の、0.2秒で変速を完了するという。

今回の350GT-8では、ステアリングから手を離さず変速できるパドルシフトも採用されている。F1やフェラーリ360モデナなどで使われているものだが、350GT-8のものは革で丁寧に覆われており、ステアリングとは連動しない固定式。ステアリングを回した時も手が届きやすいよう、パドルは上下に長く、見た目はかなりレーシーだ。右側のパドルはシフトアップ、左側ならダウンという操作方法も分かりやすい。

「世界初!」と声高に訴える8段変速に関しては、なにぶんトルクたっぷりの大排気量エンジンとの組み合わせゆえ、使い方によっては存在価値を感じにくい面もある。そもそもCVTのマニュアルモードの変速段数はコンピューターのプログラミング次第で10段だろうが20段だろうがいくらでも増やせるわけで、「ならいっそ、8段にしてみようか」という安易なノリも感じないではない。しかし、エンジン回転など状況に合わせて変速比が微妙に変化するあたりはテクノロジーの進化を象徴したもので、20世紀のクルマとは違うことを主張している素晴らしいものだ。

その走りは自在。スカイラインという名がここに来て生きた

Dレンジで走る限り、大きなトルクのゆったりセダンという感じなのだが、マニュアルモードに入れるとその印象は一変する。パドルシフトを積極的に使わなくても、アクセルを踏み込めば自動的にシフトダウンするが、積極的にパドルを使えばその楽しさは格別だ。8速ということは70㎞/hあたりまでの速度でも4速くらいまで使いこなせる。シフトミスしても許容範囲が広いのもありがたい。低い速度域でマニュアルモードが使えるATは他にないから、これは新感覚だ。スバル・プレオの7速CVTもこの感覚に近いが、あちらは絶対的なトルクがないため、テレビゲーム的なリアリティの無さが気になる。しかし、GT-8の場合はちゃんとクルマを操っている感触がある。

そしてフロントミッドシップのおかげで、ノーズの重さを感じることがなく、挙動はたいへん素直。回頭性もすこぶるよく、パドルをカチカチやりながらワインディングを走れば、これぞ新時代スポーツドライビング! 日産の言う「エクストロイドCVTはATではなく進化型MT」という言葉も素直に納得できる。

高速巡航においても、加速が欲しければ何も考えずに感覚だけで左パドルをカチカチすればいい。強力な中間加速が得られ、矢のような直進安定性で突き進む。150km/hオーバーの世界でも素晴らしい安定感・フラット感でクルーズできる。編集部にある10年前のポルシェ911とは、もはや比較にもならない。

ここがイイ

今までのモヤモヤを吹き飛ばす快作。272馬力を発生するVQエンジンの豪快なパワー感は圧倒的。それをフォローする8速エクストロイドCVTも言うことないし、サスペンションはしなやか。今までの直6スカイラインの血統は完全に途絶えているが、これぞスカイラインと言ってもいいスポーツイメージを持つ。

それでいてエンジンは★★★の超ー低排出ガス仕様。おまけに国土交通省の衝突安全テストでは国産車で3車だけの★★★★★★評価(最高レベル)。コンソールからニュッとせり上がってくるカーナビもたいへん見やすい。

ここがダメ

シートがちょっとなじめなかった。どこがいけないというわけではないが、ずっと座ってい続けたくなる心地よさがないのは、このクラスとしては物足りない。また左足のふくらはぎあたりが床のふくらみにふれるのも感触が悪い。

センターコンソール部分のチタンカラーだが、最近の流行とはいえちょっとチープな感じがしてしまう。木目パネルは似合わないが、これがいいとも思えない。何かスペシャリティーカーらしい、別の提案が欲しいところだ。

総合評価

米国で発表されたクーペは丸いテールランプとか。スカイラインを名乗る以上、いずれセダンもそうなりそうな気がするが、もはやこのクルマはスカイラインの血統とは別のクルマゆえ、スカイラインと名乗るべきではなかったように思う。スカイラインでないとすれば、新しい上級スポーツセダンの提案型商品として、素晴らしい出来だ。8速モードCVTも、パドルスイッチも、見事な身のこなしも、21世紀のスーパースポーツセダンとして、既存のクルマをことごとく凌駕する。「スポーツ走行ならMTじゃなきゃ」とか「VDCが効いちゃおもしろくない」とか、いろいろウンチクはあるだろうが、速く、楽しく、安全に(しかも市街地ではラクに)走れることが、これからのスポーツカーだろう。そうした要件の大半を満たすのがこのクルマだ。

ボディラインは美しいと言える領域に達したデザインワークだし、スモークメッキされたグリルもより控えめな印象で、エグさもイヤミもない。4人乗車なら居住性も悪くない。アメリカでは40才前のリッチ層を狙うようだが、アナウンスさえうまく行けば、日本でもスカイラインファンが戻ってきそうだ。


      

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
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