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ジャガー Sタイプ新車試乗記(第227回)

Jaguar S-Type

(2.5~4.2L-SC・6AT・525~960万円)

2002年07月06日

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キャラクター&開発コンセプト

外観ほぼ同じで、中身を一新

Sタイプは日本では1999年に発売されたジャガーの中型サルーン。'89年にフォード傘下となったジャガーが、リンカーンLSのプラットフォームを使って開発したものだ。往年のジャガーの名車「マークII」のイメージでデザインされたSタイプだが、リンカーンとの部品共有によりジャガーらしさという点でアピール度が低かったのは残念ながら否めなかった。

というような評価は当のジャガーも認識していたらしく、今回のマイナーチェンジでは不評だったインテリアを一新。BMW7シリーズに次いで採用されたZF製・6速ATや電気式パーキングブレーキ、そしてフロントサスのアルミ化やXタイプで採用した7インチ・タッチパネル式DVDナビ(DENSO製)などなど、最新の装備を投入。専用パーツが劇的に増えて、大きく生まれ変わった。

その他、エントリーモデルとして2.5リッターV6モデルが設定された他、高性能モデルとして「R」を出したのもポイント。ジャガーとしては、かなり気合いの入ったリニューアルとなった。

価格帯&グレード展開

グレードは5つ。価格は525~960万円

今回のトピックの一つがエントリーモデル「2.5 V6」(525万円)の追加。エンジンは基本的にはXタイプと同じだが、FR用に縦置きとなる。ちなみにXタイプの2.5リッター豪華版「2.5 V6 SE」は485万円で、その差は40万円とかなり詰まった。しかもXタイプの「3.0 V6 SE」(535万円)は、そのSタイプを上回っている。Sタイプ最大のライバルはXタイプ? いや、実際には見た目でSタイプの方がかなり上級に感じられるので心配はなさそうだ。

その上に続くのが「3.0 V6」(620万円)、「3.0 Sport」(670万円、9月2日発売)、そして従来の4.0リッターV8から排気量がアップした「4.2 V8」(745万円、同発売)、さらにそのV8にイートン製スーパーチャージャーを装着した「R」(960万円)だ。406ps、最後の「R」は、56.4kgmというスーパーカーもビックリな大パワーを発揮し、「ジャガー史上、最もパワフルなサルーン」を謳う。

ジャガー・ジャパンが想定するライバルは、Eクラス、5シリーズ、アウディA6。ちなみにイギリスの某自動車誌は、現地価格が完全にオーバーラップするレクサス・GS300/430(アリスト)の名を挙げている。

パッケージング&スタイル

エクステリアはそのままに

ボディサイズは従来と変わらず、全長4880mm×全幅1820mm×全高1445mm、ホイールベース2910mm。XJより小さいが、堂々たるものだ。外観デザインの変更点もわずかで、一番分かりやすい違いがジャガーの顔マークが従来のボンネット先端から、ラジエターグリル頂上部に移動したという微妙さだ。他はドアミラー形状変更、ウインドウ下端のメッキドアモール追加といった程度。ただしスーパーチャージャー付の「R」については、餅焼き網のようなメッシュグリルやHIDランプで凄みのある顔つきになっている。このグリルに付け替えて「なんちゃってR」仕様にする人が現れるかも。

ちなみに、イギリス車をデザインさせたら随一のイアン・カラムが'99年からジャガーのデザイン部門トップに座り、カッコいいスタディモデルを次々に発表している。これから出てくるジャガー・デザインには要注目だ。

室内はXJ&Xタイプ風に大変更

今回の改良で最大のポイントは室内、特にダッシュボードとセンターコンソールのデザイン変更だ。「ジャガーらしさ」にこだわったそれは、XJや昨年登場したXタイプとほぼ同形状。結局、オーソドクスなところに落ち着いたということになる。実際、従来モデルのインテリアはフォードっぽさ(リンカーンっぽさ)が明らかで、質感・形状とも「ジャガーらしさ」からほど遠かった。言葉を換えれば、それだけのことでかなり損をしていた。新鮮味はないが、こういった期待通りのデザインこそ、ジャガーの進む道だろう。

ただし質感に関してはもう一踏ん張り欲しい。例えば、同じデザインモチーフのXタイプに比べて、「明らかに1クラス上のレベル」とは言い切れない感があるからだ。レザーもしくは合成皮革のいずれも、質感が今ひとつ。コンソール周囲にはちゃんとレザー(合皮)を縫い合わせたステッチがあってちょっと嬉しいが、全体としてはデザインに素材感が負けている感じがする。

後席は広いが、トランクの狭さは相変わらず

室内空間は前席こそ普通だが、後席の空間は足元、頭周りとも余裕たっぷり。この後席居住性は、Xタイプを明らかに上回る部分だ。反対に、狭いのがトランク。容量はVDA方式で400リッターと、Xタイプの452リッターの9割以下。このクラスとしてはかなり狭く、特に高さがない。デザイン優先の結果だろう。

基本性能&ドライブフィール

“エントリー”モデルでも最新装備てんこ盛り

実際の試乗は、新しく加わったエントリーモデル「2.5 V6」(525万円)を中心に話を進めたい。エンジンはXタイプと基本的に同じだが、出力は少し上がって204ps/6,800rpm、25.5kgm/4,000rpm。変速機は従来のJATCO製5速ATに代えてZF製6速AT(6HP26)となり、型式名から分かるようにBMW・新型7シリーズに初めて搭載されたものと同じだ。一気に500万円台のクルマまで6速AT化が進んだことになる。

ポジション合わせはすべて電動(運転席8ウエイ、ステアリングのチルト/テレスコ)。オプションとして「電動可動式ペダルシステム」もある(5万円)。これはモーター駆動でペダルを68mmスライドさせるもの。同様のものがトヨタ・ブレビスで存在する。今回試乗したSタイプには搭載されておらず残念ながら試せなかった。ノーマル状態ではアクセルペダルが遠く感じられたので、小柄な人は追加したいオプションだ。

やはり7シリーズにもあった電気式パーキングブレーキ(EPB)も採用されている。7シリーズではステアリングコラムのレバー先端というややわかりにくい場所に付いていたが、Sタイプではシフトレバー後ろという、当たり前の場所になっている。見た目はオシャレで操作もしやすいが、作動音が無いので、やや心許ない。しかし世の流れとしては、いずれ一般化してゆくものだろう。力は要らないし、操作そのものがスマート。アクセルを踏めば自動解除されるので戻し忘れも発生しない。あとは人間の慣れ次第か。

軽快で楽しい「2.5 V6」

「2.5 V6」を走らせて印象的なのは、スムーズな乗り心地とシュンシュンと回るV6エンジン。車重はXタイプの1620kgより60kg重い1680kgだが、2名乗車でもパワー不足は感じない。それどころかマニュアルモードで積極的にエンジンを回して走りたい気分になり、結果的にはスポーティで活発という印象を持った。排気量の小さな下位グレードの方が好印象というのはよくある話だが、「2.5 V6」はやはりお勧めだ。

このクルマに乗る前に、スポーツサスペンションの付いた「3.0 スポーツ」(243PS/6800rpm、31.6kgm/4100rpm)にも乗った。確かに、車格に見合ったゆったり感はこちらの方に分がある。しかし「どうしても3.0リッターでなくては」と思うほどでもなく、また、乗り心地の点でも標準サスペンションが良いと感じた。「3.0 スポーツ」でもハードと言うほどではないが、ラグジュアリーカーらしい快適性(特に後席について)はそれなりに犠牲となる。

6速ATは文句なし。ただしインパネにモード表示が欲しい

おなじみJゲートの左側に「2-3-4-5」と数字が並ぶ6速ATの変速は素晴らしく滑らか。このレベルが一般化したら変速ショックなどという言葉は死語になりそうだ。活発に走るならゲート左側でマニュアルシフトも良い。ただしXタイプ同様、インパネにインジケーターが無いのは、ギアが多いだけにやはり不便だった。技術的にもコスト的にも大したことではないと思うので、ぜひ付けて欲しい。

ちなみにこのAT、2速でレッドが始まる6,500rpmまで回すと約110km/h。自動シフトアップは行われずリミッターが作動する。トップ6速の100km/h巡航は1750rpmとかなり低い。「4.2 V8」と「R」のみ最終減速比が異なるが、他はすべて同じギアリングである。

意外にもジェントルな「R」。加速時のジェットサウンドは癖になりそう

短時間ながら「ジャガー史上最もパワフル」という「R」(960万円)にも乗った。「XJR」「XKR」に続く第3のスーパーチャージャーモデルで、406ps/6100rpm、56.4kgm/3,500rpmというスーパーなスペックに胸をときめかせながら乗ったのだが、結論から言うとドライブした感じはまったく凶暴ではない。乗り心地も予想より割と普通で、高性能スポーツカーにありがちな始終タイヤがビシバシいったり、グイグイお腹をゆするような動きもない。

一方、高速道路でアクセル全開にすると「ヒュイーーーン」とか「キュイーーーン」と表現するようなスーパーチャージャーらしい音をキャビンに轟かせながら、「R」はやっぱりスーパーチャージャーらしく息の長い加速を見せる。その加速感と音は何となくジェット旅客機で離陸する時のようで、実際かなり速いはずだが、体感的にはあまり速さを感じなかった。ジェントルなスポーツカー、と言える。ただ、後席に長時間家族を乗せるのは、さすがにちょっとつらいかもしれない。

ここがイイ

記憶にある限り、市販車としてはトヨタブレビスに次いで2番目に装備されたペダルの位置調整装置。小柄な人がシートを前に出して乗る高級車というのはあまり格好のいいものではないので、これはうれしい。

デンソー製のDVDナビはタッチパネルで使い勝手がいい上、インパネセンター高めにあって、輸入車の中ではたいへん使いやすいもの。インパネ変更のメリットはここにもある。とにかく全てがよくなっている。旧Sタイプオーナーには申し訳ないが。

ここがダメ

マイチェン前モデルではいくつも不満があったものの、ことごとく改善されているため、目立った不満は感じられなかった。ただ、逆にいえば本文に書いたように、ジャガーのイメージからくる、「匂い立つような高級感」が感じられなかったのは残念。このクラスは今やメルセデスでもそういう高級感が消えゆく方向にあるから、ライバルと比較すれば問題はないのだが。

総合評価

Sタイプの改良によって、X、S、XJというラインナップがかぶらず無理なく整理されたことになる。とにかくこれまでのSの評判は芳しくなく、上級のSタイプの値段と一番安いXJの値段がかぶることもあって、どうせならXJを、となっていたようだ。実際、そういう理由でXJを買った友人がいる。デビュー時に乗ったSタイプは、フォードの意向が入りまくりという印象で、かなりチープな印象が否めなかった。「Sタイプだけは要らない」という友人に反論するのは、ちょっとムリがあったのだ。

しかし新型のSタイプなら、「古くさいXJより、DVDナビもついてお買い得なSタイプもいいよ」とアドバイスできる。Xタイプはいかにも小さく、ジャガーの名が付いているだけの新しい乗り物という感じだが、Sタイプなら購入して運転席に座ったときに、その新しいインテリアの恩恵でいかにもジャガーを買ったのだという満足感が味わえるだろう。

6速ミッションやボタン式パーキングブレーキ、ペダル類の調整機構、DVDナビなど、さりげなく使い勝手のいいハイテクが盛り込まれているのも評価したいところ。2.5ではSモードやマニュアルゲートを使ってのマニュアル走行が楽しかったが、これはSタイプとしては邪道かもしれない。どうせなら今回は乗れなかった「4.2 V8」あたりを、優雅に乗りこなしたいものだ。


     

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
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