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日産 スカイライン クーペ 350GT新車試乗記(第259回)

Nissan Skyline Coupe 350GT

(3.5リッター・6MT・356万円)

2003年03月08日

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キャラクター&開発コンセプト

北米では「インフィニティG35クーペ」

新型Zから遅れること半年、2003年1月16日から発売された新型スカイライン・クーペは、スカイライン・セダンの2ドア版だ。プラットフォームとVQ35DEエンジンを共有する2ドアクーペ、という点では、新型Zの「2+2バージョン」とも言える。国内向けの車名は「スカイライン」だが、北米市場では昨年11月に「インフィニティG35 スポーツクーペ」として発売済み。現地での最大のライバルはBMWの3シリーズだ。

ターゲットには40代後半の男女を想定。販売目標台数はグローバル(北米・日本)で1万6500台/年を掲げるが、おそらく大半は北米向けとなるだろう。実際、アメリカでの立ち上がりはZと共に絶好調だ。この手の中/大型クーペの需要はアメリカでは非常に大きく、ヒットすれば文字通りドル箱となる可能性がある。

価格帯&グレード展開

価格は325~356万円

5速AT(325万円)と6速MT(339万円)があり、さらに17万円アップで「プレミアム」仕様(本革/人工スウェードシートやBOSEサウンドシステムなどを装備)を用意。5速ATは17インチホイールで、6速MTモデルには18インチホイールと金色のブレンボ製キャリパーが標準で備わる。

Zと互角、ライバルはBMWか

新型Z(300~360万円)とは価格的にはほぼ横並び。違いは、名前、スタイル、「スポーツカー度」、そして乗車人数(二人乗りか四人乗りか)や居住性だ。一方、国産のライバル車は、クーペが軒並み販売中止になった今、事実上不在に近い。性能上の仮想敵はBMWの330Ci(560~580万円)だが、価格帯から言えば4気筒1.8リッターの318Ci(396~443万円)、アウディTTクーペ・1.8T(399万円)あたりか。

パッケージング&スタイル

似て非なる

存在感のあるデザインはセダンに似てまったく非なるパーツで構成。これはBMWの現行3シリーズクーペの手法。3シリーズクーペも相当カッコいいが、スカイライン・クーペもなかなか。サイドにキャラクターラインを入れなかったところに、日産デザインの自信が感じられる。6MT仕様に標準装備の18インチホイールとブレンボキャリパーが迫力。LEDが円状に並んだ小振りのL字型リアライトユニットが、妙にカッコいい。

セダン>クーペ>Z

サイズ(セダン比およびZ350比)は、全長4640mm(-35、+330)×全幅1815mm(+65、同)×全高1395mm(-75、+80)。つまりスカイライン・クーペは、セダンとZの間を行くサイズだ。ただし、ホイールベースは2850mm(同、+200)で、クーペとしては異様に長い。後席の十分な足元スペース、高速安定性やピッチング防止などを考えると、あえて短くしなくても、というところか。

着座位置も同じく、セダン>クーペ>Z

セダンと共通インパネの室内は、Zより高い質感。クーペ化にあたって50mm低くされた着座位置(R34 GT-Rと同じという)がスポーティ。Zのような閉所感はなく、助手席も快適。「プレミアム」仕様の本革/パールスエード(新素材の人工スエード)製シートは座り心地が良く、17万円余分に払ってもこちらを選びたい、と思わせる。リクライニングのみ非電動。ステアリングはメーターとともにチルト(上下)するが、テレスコ(前後調節)は出来ない。

アメリカンサイズ

切り立ったフェンダーと高めの視点でZより前方の見切りは良く、Zでは絶望的な後方視界は問題のないレベルになっている。Zにある巨大なリアストラットタワーバーはなく、ボディ全体(特に下まわり)で剛性を確保する。ただし、後退時は要注意。リアバンパー中央が尖っているため、余裕を持たないと当てそうになる。1815mmの車幅も一般の駐車場では気を使う。「アメリカ向け」を意識する瞬間だ。

一方、トランクは天地が狭く、容量も249リッターと小さい。同クラスのセダンの半分くらいだろう。いちおうゴルフバッグは2個入るらしいが、入れ方のコツを書いた注意書きトランク内にわざわざ貼ってあるくらいだ。大型スーツケースだと1個でも「入れてみないと分からない」という感じ。

基本性能&ドライブフィール

豪快な加速はZと同じ

試乗車は6速マニュアル車。大柄なボディだが、小回りが効いて意外に乗りやすい、ということにほっとする。3.5リッターの低速トルクは強力で、クラッチも軽く、発進で気を使うことは一切ない。ひとたびアクセルを踏み込めば、Zと同じようにグワーーーンと豪快に加速する。Zより90kg、つまり大人1.5人分増えた車重のせいか、1速、2速では少し重い感じだが、3速、4速全開時の加速は圧倒的。5速にシフトアップする前に、早くもリミッターが効く。

6速トップなら、100km/hを約2100回転で粛々と走る。また、そこからシフトをサボってアクセルを踏むだけでも、不満のない加速をみせてくれる。メーターを振り切ってもエンジンは余裕たっぷりだ。

「フラットライド」ここに完成!

真骨頂は乗り心地。特にフラット感だ。ピッチングの気配がわずかにあったZに対して、スカイラインのフラット感はセダン譲り、もしくはセダン以上だ。18インチの薄いタイヤにも関わらず、路面の凹凸はほとんど伝えてこない。轍に多少ステアリングはとられるが、それを除くとほぼ完璧と言える。

一方、ステアリングを切った時の前輪の反応は、最初はびっくりするほど鋭い。スムーズな乗り心地からは想像できない、軽量スポーツカーのような動きを見せる。そのせいか飛ばした時は、Zと同じ種類の緊張感を少し感じた。

シフトノブの振動とVDC

気になったのはシフトノブの細かな振動。他の部分が洗練されているだけに最後まで慣れなかった。この1点だけで「オートマの方が良いかも」と思ったほど。シフトフィーリングはしっかりしている、というか、新車であることを考慮しても少々固めだ。

もう一つ、VDC(ヴィークル・ダイナミクス・コントロール)の効き方にも違和感があった。この手の電子制御ディバイスは今や当たり前になりつつあるが、スカイライン・クーペ(6MT車)のVDCの介入はやや大げさで、スムーズさに欠ける印象だ。

アメリカでは優等生でも

6MTモデルの10・15モード燃費は9.3km/L、5ATで8.6km/L。V8搭載車の多い北米では、性能に対して燃費は優秀、と評価されているが、ここはガソリン小売価格がアメリカより2倍以上高い日本。しかも、VQ35DEはその麻薬的なパワー感ゆえ、実燃費は伸び悩む、という印象が否めない。今回は約160kmほど走行したが、大人しい走りではないとは言え、5km/Lは確実に下まわってしまった。

ここがイイ

カッコイイでしょ、これは。北米市場狙いとは言え、日本ではそう売れそうもないこのクラスのクーペを国内にも投入した日産に拍手。RVブームの次に来るものがスポーツカーブームだとすれば、「2002年から2003年にかけて日産がZ、スカイラインクーペと次々に投入したことが、このブームを作った」と後世の雑誌には書かれるはず。

頭上はリアウインドウとなってしまうものの、後席足下はセダン並みに広く、小柄な人ならそこそこ快適に乗っていられるリアシートは、やっぱりあると便利。特にコアターゲットの40代は、子離れしたとはいうものの、時に子供(高校生や大学生)を乗せる機会もあり、2シーターのZではつらい。Zはカッコイイが非日常的、スカイラインクーペはカッコよくて日常的。一家にそう何台もクルマは持てないから、中高年にはおすすめのクルマだと思う。もう一台、安めのミニバンでもあれば、完璧なカーライフだろう。お父さんの通勤車はもちろんミニバンの方ですが(笑)。

ここがダメ

実用面で不満だったのは、後席ウォークイン用の助手席電動機能。助手席背もたれの大型レバーを運転席から操作すると、背もたれが倒れ、シートが前方に移動する。この機能はたいへん有効だが、動きが遅い。特に雨の日、リアシートに入ろうと傘を閉じて待っていたらすっかり濡れてしまった。手動で素早く動かせる機能も欲しい。

スカイライン350GT-8にあったパドル式8速チェンジCVTが設定されていないこと。試乗車は6MTだったが、今さら、という感が強かった。セダンにはないこの6MTは「クーペならMTでなきゃ」という中高年層のマーケティングから搭載されたもの。その層へはCVTでは訴求しにくいということだとは思うが、今さらMTに乗りたい人も少ないのでは(奥さんが乗ることも多いだろうし)。このクルマの性格からしてATが一番似合うと思うが、だとすればマニュアル5速より、パドル8速でしょう。コストがかかる割に売れないのはわかるが、エンジンからプラットフォームまで、もともとそんなにコストがかかっていないと思われるので(内装の質感もこのクラスとしては“並”)、ここはぜひ奮発して欲しい。

このVQ35DEというエンジン、性能は抜群だが、問題は音とフィーリングで、打楽器系のドュルルルルル…という音は好みが分かれるところ。レッドが始まる6500回転を飛び越えてからも、エンジンはストレス無しに吹け上がるが、良く出来たスポーツカーのように高回転で音がソプラノに変化するとか、レスポンスが劇的に鋭くなるとか、そういったドラマはない。マフラーを交換するだけで印象は大きく変わるかもしれないが、やはりノーマル状態でそれを達成して欲しい。

総合評価

セダン登場時にも思ったのだが、スカイラインと命名することに、このクルマの大きなムリがあると思う。テレビCMでも歴代の車両を出しながら、しきりにスカイラインであることを主張するが、スカイラインファンの「頭の固い」中高年には逆効果。スカイラインとするなら、サーフィンラインと丸目4灯テールを復活させ(今回は2灯が丸目風になったが、日産ではスカイラインの伝統を意識してはおらず、デザイン性や視認性からたまたまこうなったと明言する)、それらしいデザインにすれば、この性能、この出来の良さなら十分受け入れられるだろう。

さらに言えば、走り屋をはじめとする若いスカイラインファンはR32の復活を夢見ているわけで、彼らにはライトウェイトな2+2こそがスカイライン。で、やはりこれは違うとなってしまう。そんな意味ではネーミングで損をしているクルマではないだろうか。

思うにこのクルマは、インフィニティG35という名のアメリカンクーペとして出すべきではないだろうか。トヨタがレクサス店を立ち上げてトヨタの名を消し、新たな市場を開拓しようとしているように、今後は日産もインフィニティを立ち上げてもいい。ただ、厳しいのは現時点が日産というブランドが復権途上であり、しかもかつてインフィニティという名のクルマを出してあまりいいイメージを残せなかったこと。そうした日産の負の遺産が、G35というカッコイイクーペのセールスにいささかなりとも影を落としていると思うと、残念でならない。

どの角度から見てもこれだけカッコいいクルマはそうないし、よく走り、快適で、安い(ほぼ同じ排気量で、同じ6気筒で、同じようなコンセプトのポルシェ911は、10年落ち! の中古車でも同程度の価格だ)わけで、あとはブランド(というかネーミング)次第だと思う。8速CVTを載せたおりには、インフィニティ名で出しませんか? 「インフィニティ350GT-8」これ、カッコイイです。買いたいです。


試乗車スペック
・日産 スカイライン クーペ 350GT

(3.5リッター・6MT・356万円)
●形式:UA-CPV35●全長4640mm×全幅1815mm×全高1395mm●ホイールベース:2850mm●車重:1550kg(F:840+R:710)●エンジン型式:VQ35DE●3498cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・縦置●280ps(206kW)/6200rpm、37.0kgm(363Nm)/4800rpm●10・15モード燃費:9.3km/L●タイヤ:225/45R18/245/45R18(ブリヂストン POTENZA RE040)●価格:356万円(試乗車:388万円 ※オプション:DVDナビ 20万円、サンルーフ 9万円など)

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/

 
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