Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ジャガー XJ8

ジャガー XJ8新車試乗記(第272回)

Jaguar XJ8

(3.5~4.2L-SC・6AT・833万~1253万円)

2003年06月14日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ジャガーのサルーンと言えば…

2003年5月31日に日本で発売された新型XJは、1968年にデビューした同シリーズの7代目。今回は9年振りのフルモデルチェンジとなる。目に見える大きな特徴は、ボディを大きくして室内を広くしつつ、従来のスタイリングをほぼ守った点。そもそもXJは初代からほとんどスタイルを変えず、居住性の向上を主な課題として発展してきた。外観キープは今回に限ったことではない。

見ただけで分からない点は、ボディがアルミ製モノコックとなったことだ。アルミボディのセダンは他にアウディA8があるが、A8がスペースフレーム構造(アルミフレームに、アルミ外板を溶接)であるのに対して、XJはアルミモノコックを採用し、しかも各パーツの接合方法には一般的な電気溶接ではなくリベット(全部で3180本!)とエポキシ接着剤を併用する。この方法だと補修(パネル交換)も容易だという。

ボディの組み立てはイギリスはキャッスル・ブロムウィッチのジャガー工場。第二次大戦時にドイツ軍からイギリスを守った名戦闘機スピットファイアが生産された場所だ。

価格帯&グレード展開

833~1253万円の4グレード

日本導入モデルはおなじみV型8気筒「AJ-V8」搭載車で展開し、スーパーチャージャー装着モデルも用意。変速機はSタイプで採用済みのZF製6速AT。全車にエアサスを標準装備するなど、電子制御系も最新となる。

グレードは4種類で、新設計3.5リッターV8を積む「XJ8 3.5」(833万円)、4.2リッターV8の「XJ8 4.2」(993万円)、V8にスーパーチャージャーを追加した「XJR」(1193万円)、そしてXJRと同じエンジンで後席を豪華仕様とした「スーパーV8」(1253万円)だ。

エントリーグレードからトップまで400万円以上の開きがあるが、外観や内装にあからさまな差別化はない。XJRには19インチホイールやブレンボブレーキ、「スーパーV8」には後席にDVDプレーヤーなどが付く。本国にある3.0リッターV6(240馬力)搭載モデル「XJ6」は、ひとまず導入されない。

パッケージング&スタイル

大きくはなったが、ちょっと普通にもなった

サイズは全長5090mm×全幅1900mm×全高1450mmと一回り大きくなった。特に全高が90mmも高くなり、全幅が100mmもワイドになったのは大きい。高さは今までが極端に低かったのだが、それこそがXJのカッコ良さでもあった。バランスを取って幅も広がったわけだが、普通っぽくなった印象は否めない。

細かい点では、メッキのフロントグリルが従来の縦溝タイプから、70年代までの格子タイプに戻った。レトロっぽくてカッコいい。「ひょっとしてこれもアルミか」と期待したが、やっぱり樹脂だった。

インテリアは、やや画一的に

室内はウッド&レザーの定番。Xタイプやマイチェン後のSタイプとほぼ共通のデザインで、トップモデルらしい問答無用の高級感やクラフツマンシップは残念ながら感じられない。樹脂(ダッシュ上面など)や合成皮革を多用するなど、耐久性を重視し、仕上がりのバラツキを無くし、生産性に配慮したところが感じられる。ただし、ダッシュ中央のアナログ時計は、XJだけの嬉しい装備。

電気仕掛け満載

という具合に見た目はコンサバなインテリアだが、操作系はけっこう電気仕掛けだ。Sタイプと同じ電気式サイドブレーキ(基本的に自動)、8ヵ所も電動調節できる前席、電動調整式ペダル(64mm動く)、電動チルト/テレスコ付きステアリング、タッチパネル式DENSO製DVDナビ(全車標準)、一部グレードに設定/標準装備される電動リクライニング/ランバーサポート付き後席、ヘッドレストにモニターを埋め込む後席用6.5インチモニター(左右合わせて2個)、DVDプレーヤー&オーディオ、マイクロレーダー波を使った「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(スロットルとブレーキで車間を自動制御)などなど、日本車並みか、それを越える電装が盛り込まれている。

広くはなったが、ムードは失った

XJの特徴でもあり短所でもあった後席の狭さは、新型で解消された。モデルチェンジの度に「広くなった」と言われてきたXJだが、今度こそ本物。なにせホイールベースは3035mmと、ストレッチバージョン並み。キャビン容量も30~40%拡大したという。確かに後席には余裕があり、広さが何よりも評価されるアメリカでは歓迎されるだろう。しかし、欧州や日本ではどうなのだろうか? 「アンティーク家具に囲まれた小部屋」的な雰囲気は失われたように思う。

同じく狭いことで有名だったトランクも15%アップの470リッターと平均的になった。ただし、実際に見た感じはまだ天地が浅く、平べったい。大型スーツケースなど、嵩張るものを積むのは苦手だろう。

基本性能&ドライブフィール

3.5でも十分に走る

今回は箱根で行われた合同試乗会で全4グレード中の3グレードに試乗した。最初に乗ったのは「XJ8 3.5」(267馬力)。従来のV型8気筒のストロークを縮めて、4196ccから3554ccに縮小したエンジンを積む。

まず乗り込もうとした瞬間、ドアの軽さに「アルミだなあ」と思う。実際、ドアの単体重量は鉄製の約半分らしい。中に座ると意外に見晴らしは良く、1900mmというボディ幅は気にならない。最小回転半径も5.7メートルとボディサイズの割に悪くない。

曲がりくねった箱根の山道をゆっくり走る限り、3.5リッターでもパワー不足は感じない。加速時は確かにシュンシュン回転を上げるが、静粛性は十分に高い。試乗会場が箱根だけに高速でワインディングを走る機会もあった。そういった場所ではボディの身軽さが印象的。あまりロールを感じさせず、スーと滑らかに旋回してゆく。この感じは他の大型セダンにはない、独特のものだ。メーカー発表の最高速は242km/hだが、そこまで出すにはそうとうエンジンを回す感じになるだろう。

「アルミ」で本当に軽くなったのか

ところで、軽い軽いと言われる新型XJは本当に軽いのか。モノコック自体は従来比で40%軽いと言うが、実際の重量は1680~1760kg。実は従来モデルは1730~1770kgだったので、絶対的には(サイズや装備の増加を無視すれば)それほど軽くなっていない。

 「競合他車に比べて最大で200kg軽い」というメーカーの主張はどうだろう。例えばBMWの735i(3.6リッターV8)は1900kgなので、確かに200kg軽いと言える。メルセデスのSクラス(3.7・V6~5.0・V8)は1780~1850kgなので、これと比べると約100kg、一回り小さいセルシオ(4.3・V8)の1780~1840kgとでも、やはり100kg以上軽い。装備の差はあるが、新型XJがライバルより軽いというのは確かなようだ。

「アルミ」は体感可能か

従来のスチールモノコックに比べて60%アップというボディ剛性だが、実際のところ、荒れた路面でもボディはミシともバタとも言わない。それにしても、なんとなく鉄モノコックのような「シナリ」が無いように感じられるのは気のせいだろうか。アルミ合金はスチールに比べて比重以外にも弾性率が大きく異なるという特徴があるようだが・・・。そもそも、全車標準の電子制御エアサス独特のフィーリングがそこに加味されてるので、どこまでがアルミモノコック特有のモノなのか分かりにくい。ユーザーにとってはトータルで良ければそれで良いわけだが。

間違いのない「4.2」

次に乗った「XJ 4.2」(304馬力)は、もっともバランスが取れたモデルという感想を持った。「3.5でも十分」と思ったが、4.2に乗ると「やっぱりこっちがイイ」と素直に思う。3.5のように回転でパワーを稼ぐ感じがなく、線の細さがない。交差点を曲がってアクセルを踏んだ時に期待通りに加速するのは4.2だ。セルシオからの乗り換えなら、やはりこの4.2以上がお勧め。メーカー発表の最高速はリミッターが作動する250km/hだ。

重厚感があるのもこの4.2だ。操縦性に落ち着きがあり、コーナリングの自由度も高い。意外なのは、3.5でも4.2でも車両重量は同じであること。さらに意外なのは10・15モード燃費は、4.2の方が優秀なことだ。3.5のみ最終減速比が低いといったギアリングが一因だろう。

スピットファイア vs.フォッケウルフ?

最後に乗ったのはイートン製スーパーチャージャー付きの「スーパーV8」(406馬力)。XJRと違い、足まわりは基本的にスタンダードに近いようで、乗り心地はとてもいい。タイヤもNAと同じ18インチのピレリ・パワジー。走りも街乗りなら「4.2よりちょっとトルキーかな」と思うくらい。パワー/トルクともに約30%増し(重量は5%増し)だが、そもそも4.2が十分に走るから大差はないように感じる。

一方、高速道路ではスーパーチャージャーが本領を発揮。キュイーーーンという過給音を聞きながらの全力疾走はちょっとクセになりそうだ。メーカー発表の最高速は自然吸気の4.2と同じ。つまりリミッターが作動する250km/hだが、確かにそれくらいは楽に出そうだ。暴力的な加速ではなく、キャビンはあくまでも平穏だが、常識からすれば過剰な性能ではある。言うなれば、追い越し車線でメルセデスのS600LやS55AMG(いずれも500馬力)に追いつかれても、受けて立つジャガー。あるいは、フォッケウルフを迎え撃つ、現代のスピットファイア。

ここがイイ

大きく、高くなっても伝統のスタイリングは誰が見てもジャガー。アイデンティティ、ブランドこそ現代のクルマにとって最重視すべきもの、ということがよくわかっていると思われる。

アルミボディをはじめとする斬新なハードウェアへの取り組みも、たいしたものというべき。10年近くこのボディを使うという前提があるが故にできたことだろう。数年でモデルライフを終える他の高級車ではできないことだ。

音声認識機能付きDVDナビやスーパーV8に標準のバックレストに仕込まれた後席ディスプレイ、レーダークルーズ、ダイナミックスタビリティコントロール、電動ペダル、電動パーキングブレーキ、前方後方センサー、オドメーター巻き戻し不可のメーター類、セキュリティシステム、乗車姿勢モニタ用の超音波センサーなど、かなりのハイテク装備が盛り込まれているのもいい。伝統的な高級感だけで勝負せず、こうした現代のクルマに重要な装備を正面から取り上げているのは評価できる。

ここがダメ

アイデンティティを守ったスタイリングは、しかし、ちょっと太ってしまった。ナローなボディラインを失ったことで、何人かのジャガーファンは去るかもしれない(それ以上に新たなファンが増えるのもまちがいないが)。

DVDナビはともかく、リアのディスプレイは操作が難しかった。いろいろいじってみたが、取扱説明書なしでは思ったように使いこなせなかったのだ。高級車オーナー(年齢も高いはず)は特にハイテクに疎いはず。ユニバーサルデザインとまでは言わないが、直感的に使いこなせるようにして欲しいところ。

電動ペダルも、もう少し前に出てきて欲しい。小柄な日本人が乗ったときにでも、シートをあまり前に出さなくて済むように。車外から見た時に、この手のクルマのシートが前の方に位置しているのは美しくないのだ。

モーターデイズとしてダメだったのはレーダークルーズを試し忘れたこと! 大失敗。

総合評価

ジャガーはメルセデスやBMW、セルシオといった、いかにも権威的な高級車(あるいはあまりにストレートすぎる高級車)のブランドに抵抗感を示す人のためのブランドかもしれない。同じ金持ちでも、ちょっと普通じゃない方の仕事(クリエイター関係など)をしている人とか、資産家の遊び人とかが求めるクルマだろう。これがマセラティとかになると、ちょっとエンスー掛かってきて「オネーちゃん」ウケも悪くなるため、その意味では絶妙なスタンスを維持している。

高級時計のようなものなら伝統的な機械仕掛けの味だけでも売れるが、クルマはそうはいかない。伝統を維持しながらも最新技術を盛り込む必要があり、その意味でXJは、ハイテクを前面に押し出しすぎたBMWの7シリーズよりうまく仕上がっているように思う。開発陣のねらい通り、広い室内、高い安全性、高いパフォーマンスに加え、ハイテクデバイス・ハイテクエンターテイメントがバランスよく盛り込まれ、それが嫌みにならない程度にアピールされている。増えた装備の重さはアルミボディの軽さが相殺し、軽快感のある走りまで実現した。ブランド力を含め、久々にちょっと欲しくなった高級車だ。

ただ、Xタイプをそのまま大きくした(これは逆で、XJを小さくしたのがXなのだろうが)ようなスタイリングはやや興ざめ。ジャガーは別にそう広さを求めなくてもいいと思う。広いクルマは他にいっぱいあるのだから。

試乗車スペック
・ジャガー XJ8 3.5
(3.5リッター・833万円)

●形式:GH-J72RA●全長5090mm×全幅1900mm×全高1450mm●ホイールベース:3035mm●車重:1680kg●3554cc・DOHC・V型8気筒・縦置●267ps(196kW)/6250rpm、ーkgm (339Nm)/4200rpm●10・15モード燃費:7.1km/L●タイヤ:235/50ZR18(ピレリ P6000 POWERGY)●価格:833万円

試乗車スペック
・ジャガー XJ8 4.2
(4.2リッター・993万円)

●形式:GH-J72SA●4196cc・DOHC・V型8気筒・縦置●304ps(224kW)/6000rpm、ーkgm (421Nm)/4100rpm●10・15モード燃費:7.5km/L●価格:993万円
※他の項目は上に同じ

試乗車スペック
・ジャガー Super V8
(スーパーチャージャー付き4.2リッター・1253万円)

●形式:GH-J73TA●車重:1760kg●4196cc・DOHC・スーパーチャージャーV型8気筒・縦置●406ps(298kW)/6100rpm、ーkgm (553Nm)/3500rpm●10・15モード燃費:6.7km/L●価格:1253万円 
※他の項目は上に同じ

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧