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MINI クーパーS新車試乗記(第307回)

MINI Cooper S

(1.6リッターSC・6MT・260万円)

2004年02月27日

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キャラクター&開発コンセプト

約1000台/月の絶好調

43年振りのモデルチェンジで登場したNEW MINI。2002年3月2日(ミニの日)の発売以来、販売は絶好調だ。登録台数は02年(3~12月)が1万と75台、03年が1万2569台とコンスタントに1000台/月を売り続ける。しかも、供給が需要に「少しだけ」追いつかないという理想的な状態をキープ。日本における全アウディ車に匹敵するこの数字を、ほぼ単一車種で達成するのだからすごい。今年3月には日本デビュー2周年を記念して、中間グレードのクーパー(CVT)とトップグレードのクーパーS(6MT)に限定車(それぞれ300台と200台)を用意した。

スーパーチャージャー付きのトップモデル

今回2周年となるミニの日にちなんで今回試乗したクーパーSは、2002年5月に追加発売されたホットモデル。ベース車とほぼ同じ1.6リッターエンジンは、スーパーチャージャーで過給されて163馬力を発生する。260万円のシリーズ最高価格とマニュアル(6速)だけの設定にも関わらず、販売の約2割を占める人気モデルだ。

ミニと言えばクーパー

ちなみに残りの6割はクーパー(ほとんどCVT)、ベーシックモデルのワン(One)は2割に過ぎないという。「ミニと言えばクーパー」、そして「クーパーと言えば、あの白い屋根」ということで、とにかくクーパーと名の付くモデルが圧倒的人気だ。しかし、その起源であるクラシックMINI初期の「クーパー」は、元々はF1コンストラクターのジョン・クーパーが手掛けた極めて特別な高性能バージョンに端を発する。特に64年、65年、67年のモンテカルロラリー総合優勝で、「ミニ・クーパー」の名は不動のものとなった。市販車とレーシングカーが限りなく近かった時代の話であり、当時のクーパーと今のクーパーとでは、意味するところがかなり異なると言える。

価格帯&グレード展開

「S」はマニュアルのみ

発売から2年経っても、基本ラインナップには変更なし。ONE(MT/195万円、CVT/205万円)、クーパー(MT/225万円、CVT/235万円)、そしてクーパーS(260万円)の3グレードで展開する。クーパーSは6速MTのみなので、AT限定では乗れない。2周年記念限定モデルはクーパー(CVT)とクーパーS(6MT)のみで、それぞれ249.8万円と279.8万円だ。

大まかにグレード間の違いを整理すると、ONEの90psに対して、クーパーは116ps(コンピュータープログラムの違いのみ)。サスペンションは10mmダウンされ、よりハードになる。クーパーSもエンジンの基本は同じで、そこにスーパーチャージャー(機械式過給器)を加えて163psを発揮。足回りなどは当然さらに強化される。

パッケージング&スタイル

赤いバッジとツインマフラーが高性能の印

サイズは全長3655mm×全幅1690mm×全高1425mm。専用バンパーによって、クーパーよりわずかに長く(+30mm)、大径タイヤによって約10mm高いが、幅とホイールベース(2465mm)は変わらない。クーパーSの特徴は、ボンネット上の冷却用インテーク、専用バンパー、クロームメッキの給油口、ツインマフラー、リアスポイラー、そして「S」のバッジなど。試乗車のホイールは標準の16インチだが、17インチホイール&205/45ランフラットタイヤもオプションで選べる。

メタル調&メッキパーツを追加

メッキパーツがそこかしこに配されるクーパーSの室内。もともと質感の高いミニだけに、フィニッシュは抜群だ。ただし「マグネシウムグレイ」と呼ぶ艶消しメタル調パネルの独特の仕上げ(ヘアライン処理とはちょっと違う)は、ちょっと汚れたように見えてしまうのが微妙なところ。

シート座面高はラチェットレバーで簡単に上下し、調整範囲はとても広い。MINIの背もたれ角度調整レバー(座席中央側)は少々特殊で、最初はややとまどうが、欧州車に多いダイアル式ではなく、レバーで一発で倒せるので便利だ。ステアリングはチルトだけ(回転計と一体)だが、ドラポジに関してはまあ不満ないはずだ。シートを前に出すと、シートベルトに手が届きにくいのがささやかな難点だ。

空間で+2以上、乗り心地で4人乗り未満

2人掛けの後席はワンタッチで前席の背もたれが倒れ、前にスライドするから、乗り降りもしやすい。座面、背もたれ、ヘッドレスト、すべてちゃんとしたサイズだ。ただしヘッドルームはギリギリで、横方向の余裕はあまりない。走り始めると、ボディがしっかりしていて意外に不快感はないが、上下にかなり揺すられる。

サスペンション設計とデザインを優先した結果、ヴィッツより狭めの荷室容量は150リットル。もちろん、後席を倒せば、そこそこの大物が積める(最大670リットル)。バッテリーはクーパーSのみ、重量バランスとエンジンスペースの関係でフロントから荷室に移動している。

基本性能&ドライブフィール

低中速トルクで勝負

エンジンを掛けた瞬間、マフラーから野太いサウンドの演出。MINI用の通称「ペンタゴン」ユニットは、BMWとクライスラーが共同で開発したチェーン駆動のSOHCエンジンだが、クーパーS用はそれにスーパーチャージャーを追加し、 最大0.8barで空気をシリンダー内に押し込む。それに伴い、ムービングパーツは専用品に交換され、圧縮比は10.6から8.3に引き下げてある。

アクセルを踏み込むとスーパーチャージャー特有の「ミーーン」という音とともに力強く加速。メーター内にあるオレンジ色のDSC作動表示が明滅して、前輪がグリップを失っていることを知らせる。ターボのようなタイムラグはまったくない。4000~5000回転以上ではやや平板な回り方だが、低中速トルクは十分。レッドゾーンは6750回転からだ。

ホイールスピン vs. ESC

6速MTの操作感は良く、シフトミスはまずあり得ない。そもそも下からトルクがあるから、2速か3速に固定したまま、かなりの加速が味わえる。パワーがあるだけにESC(横滑り防止装置、BMWが言うところのDSC)の介入はかなり頻繁で、タイヤが温まるまでは、ESPオンでも2速の立ち上がりでも内輪がキューンとホイールスピンする。そんな時もトルクステア(加速時にハンドルが取られること)があまり出ないところがいい。

マルチリンクサスペンションを持つリアの限界がとても高く、タックイン(アクセルオフでクルマが内側に巻き込む動き)もほぼ出ない。ESCもついているから、基本的にはアンダーステアだけ、というかオーバースピードにだけ注意して走りばいい。オプションの17インチ仕様だともっとシャープで「カート」感が強いようだが、今回の16インチ仕様は寛容で、乗り心地も悪くなかった。

得意の追い越し

6速トップの100km/hは2500rpm強。この回転ならこもり音もなく、快適にハイウェイクルーズ出来る。追い越し加速は強力で、3速、4速で全開にすれば、右車線のキープは造作ない。ただし、こうした高速域ではボディが小刻みに跳ねて安定しない感じがあり、少なくとも荒れた路面だとけっこう緊張する。140~150km/hあたりなら、適度な緊張感が心地いいが、180km/hあたりでは手に汗握るという感じだ。

メーターは240km/hまでだが、メーカー発表の最高速は218km/h(クーパーの18km/h増し)。さらにメーカー保証付きの純正オプション・チューニングキット、その名も「ジョン・クーパー・ワークス(JCW)・チューニング・キット」(クーパーS用で69万8000円)を装着すれば、過給圧0.8→1.0barで200ps/6950rpm(+37ps)、24.5kgm/4000rpm(+3.1kgm)が得られる。

ここがイイ

旧ミニのイメージを見事に引き継いだボディデザインと、BMWクォリティの仕上げは不満のないところ。旧ミニではコーチビルダーにしかなかったカブリオレが正式に発表されたが、この勢いではワゴンすら出てくるのではと思う(カントリーマンみたいだったら、おもしろいのだが)。

NAのハイパワー版みたいなスーパーチャージャーゆえ、往年のクーパーSらしい雰囲気がでた。野太い排気音、足は硬めだが悪くない乗り心地、クイックなハンドリングも昔のミニのよう。カチッとしたシフトフィールは昔と違うが、むろんこちらの方がいい。

ここがダメ

タコメーターが目の前にあるのは気分がいいが、センタースピードメーターへの視線移動ははっきり言ってムリ。無くすにはもちろん惜しいデザインなので、出来ればこれとは別に運転席正面にデジタル表示を付けるか、センタメーター部分にナビを入れてツインメーターをステアリングの前に持ってくるオプション仕様がベター。クーパーSはそれほどスピードジャンキーなクルマではないが、これだけの高性能車だとスピードの出し過ぎには注意したいもの。

天井中央にルームライトがあるが、運転席の上にスポットライトがないため、ちょっと不便だった。パワーウインドウやフォグなどのスイッチも同じものが並んでいるため、直感的には識別しづらい。

総合評価

2002年3月のデビュー当時のMOTOR DAYS試乗記では「『コンパクトなボディそのままに先代の魅力と最先端の技術を盛り込む』という開発陣のテーマが成功したかどうかは、ひとえに日本市場での今後の売れ行きが示すはずだ」と書いたが、2年たってみれば新型MINIはまずまず成功を収めていると言えそうだ。

それはやはりネーミングを含めた緻密なマーケティングの賜だろう。車名はMINIだが、実際このクルマはミニ・クーパーなのである。旧ミニの時代から、女の子(今やおばさんだが)はミニ・クーパーに憧れていた。クーパーという、事実上なんら関係ない名前をてらいなくつけてしまうあたりが、伝統を生かすというより、マーケティングの結果といえる。そうしたネーミングや、旧型に似せたデザイン優先のスタイリング、などの結果で成功した事実は、クルマがもはやハードウェアの善し悪しでなく、カッコがすべて、ということを端的に示している。日本車も早くこの路線をとるべきだ。

とはいえ、往年のミニを彷彿する走りもクーパーSでは十分に感じられた。レーシングカートのようなハンドリングのクイックさ、十分な加速力。スピード域は昔のミニの倍近いが、ほぼ同様の楽しさがある。なかなかイイのだ。ただ、しばらく乗っていて感じたのは、絶対的な安心感があるだけに、熱くはなれないということ。一つ間違えたらヤバイという、昔のミニのようなリスクと隣り合わせの楽しさはない。速くて楽しくて安全なクルマに何が文句ある、と怒られそうだが、人間たまには火遊びもしてみたいもの。例えばポルシェのGT3 RSあたりは60km/hでも緊張感があるたいへんやばいクルマ。クーパーSはそういうクルマではない、ということだ。

試乗車スペック
MINI クーパーS

(1.6リッターSC・6MT・260万円)
●形式:GH-RE16●全長3655mm×全幅1690mm×全高1425mm●ホイールベース:2465mm●車重(車検証記載値):1180kg(F:730+R:450)●エンジン型式:W11B16A●1598cc・SOHC・4バルブ・直列4気筒スーパーチャージャー・横置●163ps(120kW)/6000rpm、21.4kgm (219Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L●10・15モード燃費:11.6km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:195/55R16(GOOD YEAR製 EAGLE NCT5)●価格:260万円●試乗距離:約120km ●車両協力:MINI名古屋守山

http://www.mini.jp/公式サイト

 
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