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シトロエン クサラ ピカソ新車試乗記(第323回)

Citroen Xsara Picasso

(2.0リッター・4AT・299万2500円)

2004年06月25日

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キャラクター&開発コンセプト

4年遅れの日本上陸

2004年6月1日に日本で発売されたクサラピカソは5人乗りのミニバン。シトロエン言うところの「モノスペース・セダン」で、ベースはその名の通りクサラだ。2000年から発売された欧州では、4年間で85万台の大ヒット。日本導入が遅れたのは、ATモデルが昨年まで無かったことや今年春のフェイスリフトを待ったことに加えて、あえて日本への輸出を急がなかったためだろう。

特徴は全長4.28mと小柄ながら室内が広いこと、使い勝手の良さ、そしてモノフォルムの個性的なデザインだ。もちろん、シトロエンらしい乗り心地の良さもセールスポイントだ。ライバルはルノーセニックII(日本未導入)、VWゴルフ・トゥーランなど。つまり、このクラスはCセグメント(ゴルフクラス)の代理戦争の場でもあるのだ。

なお、商標の関係で、クサラピカソは公的にはただの「ピカソ」とは表記できず、かならずクサラピカソとしなければいけないようだ。

価格帯&グレード展開

モノグレードで300万円弱

日本仕様は2.0リッター・4ATの1車種のみで、車両価格は299万2500円。大型ガラスサンルー、アルミホイール、クルーズコントロールは標準装備で、オプションはレザーシート(12万6000円)のみ。

パッケージング&スタイル

ホイールベースを220mmストレッチ

全長4280×全幅1755×全高1640mmのボディは、クサラセダン(実は5ドア。全長4190mm)よりちょっと長く、クサラブレーク(全長4370mm)よりちょっと短い。見た目よりコンパクトだ。ホイールベースは220mmも伸ばされて2760mmと長い。トレッド(左右タイヤ間の距離)は大差ないが、全幅が45mmも広がり、おかげで正面からだとウナギのようにほぼ「丸」に見える。

日本では珍しくないモノフォルムだが、個性的に見えるのはディテールが面白いからだ。傘の骨のように下に向かって広がった細いピラー、とぼけたフロントフェイス、傾斜の強いリアウインドウ、どの角度から見ても丸いシルエットなど。憎めない風貌だ。

見晴らし良好。旧き良きフランス車風

細いAピラー、巨大な三角窓、高い視点によって、見晴らしは抜群にいい。着座位置がクサラより大幅に高いことの悪影響はなく、シフトレバーや手動式のパーキングブレーキも操作しやすい。ステアリングはわずかにチルト(上下調節)可能。小物入れも豊富だ。

デジタルのセンターメーターは、平均/瞬間燃費や航続距離などを示すオンボードコンピューター付き。温度計風の水温計がキュートだ。逆に使いにくいのは、パワーウインドウスイッチ(センターコンソールに配置)やトリップメーターのリセットボタンが遠いことくらい。全体に、旧き良きフランス車風だ。

贅沢な5人乗り

80mm伸びた室内長、70mmワイドな室内幅、80mm増えた室内高により、5人乗りとしては贅沢な広さ。クサラに比べて全高が220mmも増えたのに、室内高の伸びが80mmに留まるのは、サンルーフと二重フロアのせいか。センタートンネルはなく、フロアは完全にフラットだ。アームレストが邪魔で、ウォークスルーは難しい。

柔らかく分厚いスポンジのシートは、かつてのフランス車ほど絶妙な座り心地ではないが、それでも独特。ドイツ車あたりと比べると、その差は国境一つ挟んだ国同士とは思えないほど大きい。ベロアシートの手触りもフレンチだ。

快適で明るい雰囲気の後席

3分割の後席は、どこに座っても座り心地がいい。大人3人にはギリギリの横幅だが、2人もしくは子供3人なら文句なしに快適なはず。クッションもたっぷりしているし、見晴らしもいい。後席用テーブルも少々重いものに耐えられる作りだ。ただし本来は子供用であるせいか、テーブルにはクサラピカソの絵が描かれている。ノートパソコンを置いて仕事する雰囲気ではない。

中央席を倒せば、ドリンクやパソコンなどが置けるテーブルに。取材用のメモを書き留めるのに便利だった。左のクォーターウインドウ脇に12V電源あり。リアウインドウは4/5くらいまで開く。

日本仕様はシトロエンが「スカイルーフ」と呼ぶ大型ガラスサンルーフを標準装備。前が電動、後ろがハメ殺しのタイプで、同じPSAグループのプジョー307SWが持つ固定一枚モノの「パノラミックサンルーフ」とは別種のものだ。むしろ、ルノー・アヴァンタイムのものに近い。ルーフの大半がガラス張りとなり、とても明るい雰囲気で、光を薄く通すサンシェードが付く。6月とは言え気温30度近い日に乗ったが、日差しは特に気にならなかった。

使い勝手抜群の後席

2列シートと割り切ったことで、550リットルの大容量を確保した荷室。後席は1/3づつ前方にタンブルできるし、いざとなったら取り外しも可能。その場合の最大容量は2128リットルだ。ちょうどいい感じの床の高さ、傾斜したハッチゲートによる大きな開口部(開閉時の張り出しも少ない)と使い勝手がとてもいい。さらに、シート最後端で650mm、前にスライドして790mm、タンブルさせて1310mm、取り外せば1540mmと、必要に合わせて奥行きが変えられる点もいい。荷室高も1070mmとまずまず(いずれもカタログ値)。

右側のプラスチックのカゴはキャスター付きのバスケット「モジュボックス」。取り外して使うというよりは、買い物袋などを放り込むのに便利だ。

基本性能&ドライブフィール

今や貴重な柔らかさ

走り出してすぐに分かるのが、フランス車らしい乗り心地の柔らかさだ。ただし、これはデビューが6年前のクサラそのものの乗り味でもあるので、そういう意味では少し古いと言えるかもしれない。

もちろん、凹凸を飲み込むようによく動くサスペンション、揺れをすぐに押さえ込むダンパーなど、理屈なしに良い点もたくさんある。185/60R15という細く、大径のタイヤも良い印象の要因だろう。いつもの試乗コースにある段差は、ボディが弱いクルマだと「バキッ」、それなりにしっかりしたクルマでも「ダンッ」という感じで乗り越えるのだが、クサラピカソは何事もなく通過する。

おそらく、パッと試乗して気になるのはパワステ(可変アシスト付き)の重さだろう。今時の軽さに慣れた人だと「よっこらしょ」という感じ。と言っても、先々代VWゴルフ(ゴルフ3)と同じ程度だ。

動力性能は十分

プジョー/シトロエンでおなじみ2.0リッターエンジン(137ps、19.8kg)は低速から力があり(タコメーターがないので回転数はよく分からないが)、街乗りならパワー不足は感じない。回せば音は高まるが、基本的には高回転まで滑らかで静かなエンジンだ。

フランス車と言えば回転を高めに維持する例の4ATだが、クサラピカソもその癖を残すとは言え、それほど気にはならなかった。エンブレを効かすこの変速マナーが良いという意見もあるし、低めのギアを維持するスポーツモードはキビキビ走らせるのに向いている。シーケンシャルのマニュアルモードをあるが、上まで引っ張れば自動的にシフトアップする。

山道から高速までそつなくこなす

山道もそれなりに走ってしまうのは、さすが欧州車。ロールはそれなりだが、グラッとこずに、安心して走れる。重めのパワステがこういう場所では生きてくる。基本的には徹底した安定志向で、タックインを誘ってもリアタイヤはビクともしない。さらにだめ押しでESC(横滑り防止装置)を標準装備する。

高速巡航でもエンジン音は低く、乗り心地もフラットで快適。直進安定性も優れている。120km/hあたりから高まる風切り音が、唯一惜しい部分。これがなければ150㎞/hでの巡航も何ら問題ない。

ここがイイ

誰が見ても個性的(言い方を変えればヘン)なカタチ。特に斜め後方から見た、鼻がつまったような8ライトのサイドビューは相当に異様。当たり前にカッコよくなりつつあるシトロエンでなく、古き良き伝統の異形は素晴らしい。シトロエンはこうでなくちゃ。

同様に、ふんわり柔らかな乗り心地も最新のシトロエンのものではなく、いわゆる昔からのシトロエンの味だ。これが新車で買えるところにクサラピカソの意義がある。パワー感もまずまずあるから、結構元気に走り回れる。

フロントシートバックにあるテーブルは上に引き出して倒すタイプで、がっちりしていて実用的だ。リアセンターシートバックも倒すとテーブルになり、後席は実用的でよい。

ここがダメ

ホイールベースが長いせいか、ボディが小さい割に小回りが効かない。クサラのカタログには5.4mとあるが、クサラピカソには記載なし。感覚的には6m近いと思う。

試乗車ではドアパネルあたりがギシギシ鳴ったり、エンジンルームから高周波系の音が聞こえたりと、このあたりも古き良きシトロエン風。ATのシフトプログラムも62㎞/h前後で4速に入る昔からのパターンで、日本でよく使う速度域での頻繁なシフトチェンジには不満が残る。もっとも、シフトショックはほとんど気にならないから、意識しなければいいのだが。

後席シートが3つとも同じ座り心地なのはいいのだが、実質的には二人しか乗らないことが多いはずで、そうなるとちょっと座面が小さめで、左右ドアにも近く、狭く感じるのが残念。設計の新しいオペル・メリーバの、左右にスライドするシートを知っているだけに、もう一工夫欲しくなってしまう。例えば2座だけ取り付けられるとか。

総合評価

モノフォルムセダンは90年代後半から2000年くらいにかけて大流行した。ルノー・セニックがその火付け役で、日本車でも98年8月にはトヨタのナディアが、12月には日産ティーノが登場している。クサラピカソもこの流れにあるクルマと言えそうだ。しかし、今やナディアもティーノも、ラインナップから消滅。このカタチはセダンとしてはたいへん合理的で利用価値の高いスタイリングなのだが、3ボックスセダン、ワゴンといった伝統的なカタチに分類されないだけに、結局理解されなかったことが現在の状況に直結したのだろう。

しかしその意味では、アバンギャルドを旨とするシトロエンにはたいへんふさわしいカタチといってもいい。個性的であることがシトロエンの大きな価値なのだから、C3に代表される新しくても割に普通なカタチのシトロエンではないことは、クサラピカソの現時点に置ける存在意義だ。

シトロエン好きにとっては、乗ればすぐわかるシトロエンらしさも嬉しいはず。ちょっと古くさいことは確かだが、まったりとした乗り心地、ヌメーっと走るフラットな乗り味、凝ったデザインながらプラスチッキーなインテリアの質感。50年も前にできたハイドロニューマチックサスペンション以降、シトロエンの乗り心地は神格化されてきたが、ハイドロを使わないクサラにもこの乗り味を再現しようと努力した痕跡が残っている。クサラピカソも同じだ。

BXには3年乗ったし、XMにも結局2年乗った身としては、このシトロエンの味を忘れることができない。実は今もまた欲しいのだが、やはり機械としての出来や信頼性に毎回泣かされ続けてきたゆえ、いまいち踏み切れないのだ。こうしたシトロエンの良さと悪さはかつては必ずセット販売されていた。一方、最新設計のシトロエンに乗るとシトロエンの良さが薄まり、悪さも改善され、結局おもしろみというか趣味性がグッと減少したようにも感じる。

いずれにしてもクサラピカソには、シトロエンの伝統が残っている。これを良しとするかどうかが、このクルマに対する評価を分けるはず。画家のピカソの絵も今見ると、確かに凄くアバンギャルドだけどやっぱりどこか古くさい。クサラピカソもまさにそんなクルマだ。


試乗車スペック
シトロエン クサラ ピカソ
(2.0リッター・4AT・299万2500円)
●形式:GH-N68RFN●全長4280mm×全幅1755mm×全高1640mm●ホイールベース:2760mm●車重(車検証記載値):1360kg(F:830+R:530)●乗車定員:5名●エンジン型式:RFN●1997cc・DOHC・4バルブ直列4気筒・横置●137ps(100kW)/6000rpm、19.8kgm (190Nm)/4100rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L●10・15モード燃費:ーkm/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/65R15(MICHELIN ENERGY XSE)●価格:299万2500円(試乗車:同じ ※オプション:ー)●試乗距離:約100km ●車両協力:渡辺自動車 シトロエン名古屋中央

公式サイトhttp://www.citroen.co.jp/index.html

 
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