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ジャガー Xタイプ エステート 2.5 V6 SE新車試乗記(第329回)

Jaguar X-Type Estate 2.5 V6 SE

(2.5リッター・4WD・545万円)

2004年08月07日

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キャラクター&開発コンセプト

ジャガー初のステーションワゴン

ジャガー初の小型サルーン、Xタイプが登場してから3年。2004年7月17日に追加されたのが、ジャガー初となるエステート(ステーションワゴン)モデルだ。基本メカニズムは従来のサルーンと同じで、2.0~2.5リッターのV6エンジンや4WD(2.5リッターモデル)といった駆動系も共通。Bピラーより後ろが専用ボディとなり、ルーフレールをはじめ570点以上の新設計パーツが与えられたという。

2001年のデビュー以来、Xタイプの販売は好調で、さらに今回のエステートは、豪華サルーンばかりだったジャガーにとって、初めてレジャー要素を持ったモデルとなる。

価格帯&グレード展開

490万円と545万円の2グレード

グレードは前輪駆動の「2.0 V6 SE」(490万円)と4WDの「2.5 V6 SE」(545万円)の二つ。サルーンの同グレードより20~25万円高い。また、エステートはレザーシートなどの装備が付いたSEグレードのみで、ベーシックグレードやスポーツグレードはない。

ライバルはメルセデス・ベンツのCクラス・ステーションワゴン、BMWの3シリーズ・ツーリングといったところだが、身内(フォードのPAG傘下)のボルボV50も挙げておきたい。

パッケージング&スタイル

英国車らしく上品なスタイル

サイズは全長4730mm×全幅1790mm×全高1485mm。サルーンに比べて45mm長く、65mm高いが(ルーフレール分)、雰囲気はおおむね同じだ。ご存じの通りシャシーはフォード・モンデオと共有するが、そんなことを感じさせない優雅なスタイルだ。ただし、リアデザインにはあまり特徴がなく、クルマに詳しくない人はジャガーであることに気付かないかもしれない。

ホイールベースは2710mm。室内の広さや雰囲気は、後席も含めてサルーンと大差ない。真横もちょっと個性に欠けるが、英国車らしく上品だ。試乗車のブルー系ボディカラーはXJなどにも用意される「ジルコン」だ。

サルーンとほぼ同じ室内

ステアリングなど多少の意匠違いはあるが、それを除けば現行サルーンとまったく同じと言っていい室内。インパネのデザインは初期のSタイプの反省を生かし?遠回りせず旧XJをそっくり真似たもの。「重み」や「本物感」こそないものの、ジャガーらしさが手軽に味わえる。もちろん、ウッドパネルは本物のウッドだし、レザーシートは標準装備だ。細かいところで、Xタイプはマイナーチェンジで全車センターコンソールに2個分のカップホルダーが付いた。

全車純正のDVDナビはタッチパネルの7インチモニターを持つ。社外品の付け方に悩むよりはマシだし、それなりに使えるものの、当然ながら最新型に比べると機能は見劣りする。こうしたデジタル系機器の進化はクルマの進化より遙かに速いから、その対応は悩ましいところだ。また、時計がナビモニターの中の小さな表示しかなく、かなり困った。XJみたいなアナログ時計が欲しいところ。

リアゲートはガラスハッチ付き

往年のスポーツカーであるEタイプの横開き式を除けば、ジャガー初となるテールゲート。ガラス部分だけ開けることも出来て便利だ。後席は7:3のシングルフォールディングで、ヘッドレストを外さずに簡単に畳める。その時の容量はクラス最大級の1415リッターを謳う。リアサスはマルチリンクゆえ荷室への張り出しが少なく、横方向に余裕のある荷室だ。通常状態の荷室容量は415リッターで、小物入れの仕切りを外せばゴルフバッグが横に積めるという。とても実用的なトランクだ。

荷物の飛び出しを防ぐパーティションネットも標準装備。フックや床下収納なども当然ながら備えており、よく工夫されている。イージークローザーの設定がなく、完全に閉まったかどうか分かりにくいのが、ちょっと残念。。

基本性能&ドライブフィール

サルーンと大差ない走り

試乗車は2.5リッターエンジン(198ps、24.9kgm)を搭載する上級グレード。サルーンより50㎏重いが、運転した感じは従来のXタイプとほとんど同じ。可もなく不可もない、といったパワー感だ。3000回転以下の低速トルクは細いが、すぐにJATCO製オートマチックがキックダウンして4000回転以上に跳ね上げる。そこからレッドゾーン手前までフラットに回るが、回り方はやや重々しい。

少々気になったのは、アイドリング時の振動とノイズだ。輸入車のV6搭載車の平均レベルではあるが、国産の6気筒車に比べると明らかにステアリングやダッシュに伝わる微振動が大きく、ウーという唸り声も大きい。渋滞が多い日本では気になる部分だ。また、相変わらず計器内にシフト表示がないのも不便に感じる。

モンデオ譲りのしっかり感

逆に走り出してしまえば、まずまず快適。エステート化による音の侵入は全く感じられず、後席にいてもエステートであることを忘れてしまう。静粛性は特に高くないが、エンジン音もロードノイズも同じ程度で、うるさくはない。乗り心地もやはり特に滑らかではないが、これも取り立てて不満を言うほどではない。

走りで特に優れているのは、FFのサルーン2.0でも感じられたスタビリティの高さ。このあたりはフォードが開発したプラットフォームの素性が良い意味でダイレクトに出ている部分だ。とはいえESC(横滑り防止装置)は3.0 Sportを除いてXタイプではオプションとなり、最新のクルマとしては不満が残るところ。

スポーツ路線ではない

通常では駆動力の40%を前輪に、60%を後輪に振り分ける“トラクション4”だが、街乗りでは4WDであることをほとんど感じさせない。それではと、いつもの山道も走ってみたが、こうした低速ワインディングではパワステが軽すぎる上にレスポンスも遅く、加えてサルーンより柔らかいサスペンションでクルマが前後左右に大きく揺れてしまい、ペースを上げられない。スポーツカーのように素晴らしくシャープなハンドリングのセダンやミニバンが最近は多いが、Xタイプエステートは明らかにそういう路線ではない。

とにかくひたすら安定志向なので、パワーとのバランスで言えば、ESCを搭載しないのもしかり。ひたすら安定志向のステア特性のままワインディングを抜けていくと、メーカー初のレジャーカーを作ったジャガーの姿勢が見えてくる。人と荷物を積んで、レジャーポイントへ安全に運ぶ、それがRV本来の姿。今後スポーツワゴンも作るかもしれないが、まずはこの基本を押さえた、ということなのだろう。

ここがイイ

Xタイプのスタイル、ブランドイメージ、価格にひかれつつも、ワゴンが無いという一点で踏ん切れなかった人に「待望のモデル」を提供したこと。中東の富豪向けにXJのワゴンなんてのも、かつてカスタマイズされたくらいで、ワゴン需要は洋の東西を問わず、とにかく高い。いずれSタイプのワゴンも登場するはずだが、まずはその露払いというところ。

また荷室の広さ、ガラスハッチ、豊富な荷室用オプションなどワゴンとしてまじめに作ってあるところもいい。荷室下の小物入れなど、後発だけあって装備面では不満がない。

ここがダメ

リアのスタイリングはちょっと没個性。荷室サイズとのトレードオフで、こうしたごくスタンダードなワゴンスタイルになったとは思うが、もっとプレミアム感が欲しい。またセダン同様、走りはあまりに個性がなさすぎ。2.0と較べれば2.5のパワー感は不満はない程度に引き上げられてはいるものの、まさに不満がないというレベルで止まっている。

総合評価

プレミアムブランド車では一般にワゴンの方がよりプレミアム感が高い。特に小さいサイズでは。これは中古車になったときに明白で、例えばメルセデスのCクラスあたりでは、セダンの中古車よりワゴンの中古車の方が圧倒的に人気が高く、新車時の価格差以上の価値が残存する。ボルボもここまで躍進したのはワゴンがあったがゆえだろう。

で、プレミアムブランド「ジャガー」初のワゴンをXタイプに設定したことは、マーケティング的にはちょっと遅い。いや、セダン登場から3年たっているから、てこ入れとしてはちょうどいいか。このやり方、メルセデスのW202(旧Cクラス)と同じ。小型セダンのモデルサイクル後期はワゴンボディにして売りまくろう、という手法だ。

発売3年のXタイプセダンは、まあ成功したクルマと言っていいだろう。ジャガーというブランド車に手が届く価格で乗れるという点、サイズが日本で乗っても気にならないギリギリの大きさという点、最近のクルマでは珍しい、ふんだんな木目パネルや革のインテリアが分かりやすいイギリス趣味を表しているという点、などなど。奥さんでも乗れるジャガーゆえ、都市の中流サラリーマンのファミリーカーや若手ビジネスマンの足としての地位を得た、と思う。これにワゴン(イギリス流に言えばエステート)という「付加プレミアム価値」が付いたわけだから、あと数年、好調に売れ続けるのではないか。乗り心地、動力性能、静粛性など、セダンに劣る部分など何もないのだし。

とはいえ、実際に乗ってみると、動的な高級感は日本の最新2.5リッター車に較べ、勝っているとは言い難い。例えばXタイプセダンの場合、同じ2.5リッターのクラウンアスリート(367.5万円~)と乗り較べたりすると150万円もの価格差があるにもかかわらず(カーナビや革シートなど厳密に見ていくと価格差は縮まるが)、アスリートの方がいい。しかもXタイプエステートともなると価格は545万円もする。かなり高い感は否めない。

しかしクルマは新車価格で比較できない。クルマ好きはあまり購入時に売るときのことを考えないことが多いが、たいがい高いクルマは売るときにも高く売れるものだ。特に人気車は値が落ちにくい。むろん絶対的に高価なクルマの方が毎月の値落ちは大きいが、それでも不人気車に較べれば、悪くなかったりする。例えばこのエステートでは2.0と2.5の価格差は55万円だが、おそらく今後の人気は2.5の方があると思われるので、売るときには2.0より数10万円高いはず。となると、新車時の価格差は無いに等しく、パワーがあって余裕の走りができる2.5の方が断然お買い得だ。同様にセダンより25万円ほど高いエステートの方がセダンよりその価格差以上に高く売れることは間違いないだけに、結局お買い得と言うことになる。

では次にクラウンアスリートと比較しよう。例えば5年乗ってXタイプエステートが200万で売れたとすると、5年で345万円の値落ち、1年では69万円だ。同様にアスリートが100万円で売れたらなら1年の値落ちは53万円ほど。Xタイプエステートとアスリートの差は、月にして1万円ちょっとにすぎない。月1万円の差でジャガーのワゴンに乗れるのなら、例え走りに、より高級感があるにしてもアスリートなんか買ってる場合じゃないでしょ、と考えるのはごく自然だろう。つまりジャガーというブランド品購入の際に100万円以上余分に払えるかということではなく、月々わずか1万円余分に払えるか、という問題なのだ。

つまり上級ジャガーと較べれば手頃な価格のXタイプエステートは、付加価値をより加えることで、ジャガーというブランドを月1万円の価値にしたクルマということもできる。古くからのジャガーファン(本当のお金持ち)にしてみれば高級ブランドの切り売りにも思え、心境は複雑だと思うが、市場経済の中でブランドを守って生き残るためには、こうしたやり方しかないのかもしれない。老舗にこだわって頑なになったブランドは座して死を待つことになるのが、最近の経済事情だ。

というわけで、Xタイプの中で最もバリューフォーマネーなクルマが2.5リッターのXタイプエステートだ。むろん、ブランドに価値感を持たない人にとってのバリューフォーマネーは他にもある。1万円の差でブランドを買う気のある人になら、Xタイプエステートは最もおすすめできるだろう。

試乗車スペック
ジャガー Xタイプ エステート 2.5 V6 SE
(2.5リッター・4WD・545万円)

●形式:GH-J51XA●全長4730mm×全幅1790mm×全高1485mm●ホイールベース:2710mm●車重(車検証記載値):1670kg(F:980+R:690)●乗車定員:5名●エンジン型式:XB●2494cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・横置●198ps(145kW)/6800rpm、24.9kgm (244Nm)/3000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/61L●10・15モード燃費:7.9km/L●駆動方式:フルタイム4WD●タイヤ:205/55R16(Pirelli P6000)●価格:545万円(試乗車:554万4500円 ※オプション:メタリック塗装 9万4500円)●試乗距離:約180km ●車両協力:渡辺自動車 ジャガー名古屋中央

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
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