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フィアット パンダ新車試乗記(第330回)

Fiat Panda

(1.2リッター・5速セミAT・157万3950円)

2004年08月21日

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キャラクター&開発コンセプト

初代は合理性を徹底追及

1980年デビューの初代パンダは、G・ジウジアーロが設計・デザインを行ったことで有名だ。マッチ箱のようなボディは、生産性をとことん追求したもの。イタリア人にとってもっとも安いクルマであり、生活に密着したクルマだった。日本では英国のミニ、フランスの2CV、ドイツのビートルなどと並ぶ個性派輸入車として、並行輸入を含めればおそらく1万台以上が売れたヒット車となった。正規輸入は98年までだが、イタリアではその後もベストセラーのプントに次ぐ売れ行きで、累計400万台以上を記録した。右の写真はモデル末期のものだ。

結局、昔の名前で

フィアットは2002年12月のボローニャ・モーターショーで、ニューパンダの元となる小型SUVコンセプト「シンバ」を発表。翌年3月のジュネーブショーでは市販型「Gingo」を登場させた。ところが、この名が「Twingo」に似ているとクレームが付いたことから、9月に発売された時の車名は市場の期待通り?パンダに落ち着いた、という非公式の話がある。経緯はともかく、経営危機のフィアットにとっては頼みの綱の新型車だから、聞き慣れない名前より「パンダ」を使うのが販売的には賢明かもしれない。

欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得

ニューパンダは2004年の欧州カー・オブ・ザ・イヤー(http://www.caroftheyear.org/)を獲得。昔から大衆車の評価が高い同賞だけに、1クラス上の室内の広さや高い実用性、経済性が得点を稼いだようだ。ちなみに2位はマツダ3(アクセラ)とVWゴルフ5、4位トヨタ・アベンシスと日本車が続く。フィアットの受賞は95年の初代プント、96年のブラーボ/ブラーヴァ以来。81年当時、先代パンダは次点に終わっている。

日本での発売は2004年7月31日。名車パンダを襲名した新型は、日本でもその人気を受け継ぐことが出来るか。年内の目標販売台数は1,000台。

価格帯&グレード展開

標準車は157万3950円

日本仕様はエンジン1種類の2グレード。標準車「ニューパンダ」(157万3950円)と豪華版「ニューパンダ-Plus」(169万9950円)となる。「Plus」の内容は、大型電動サンルーフ「スカイドーム」や5:5分割可倒式リアシート、ルーフレールなど。

ダブルサンルーフ、今と昔

スカイドームはランチア・イプシロンも同じ名称で用意するもので、屋根の70%を覆うガラス製のダブルサンルーフだ。前が電動でスライドし、後ろは固定となる。いずれも格納式サンシェードを備え、日差しが気になる時はそれを引き出せば良い。車重は20kg増加するが、実質10万円と思うとちょっと欲しくなる。先代パンダのダブルサンルーフも当時画期的だったが、初期のものはキャンバス幌を巻き上げるタイプだった。

パッケージング&スタイル

ヴィッツより小さい

ボディサイズは全長3535mm×全幅1590mm×全高1535mm。なんとヴィッツより約100mm短く、幅は70mmも狭い。軽自動車より一回り大きいが、全高が適度でバランスが良い。先代パンダは全長3405mm×全幅1510mm×全高1415mmと、ほとんど今の軽自動車と同寸だった。考え方によっては、今の軽自動車が先代パンダに追いついたと言える。やっぱり先代は偉大だった。

ストイックではなく今風

クルマに詳しくない人からは「これのどこがパンダなの!」と怒られそうな四角いボディ。その点では先代パンダ譲りだが、デザイン的に先代と直接つながる物はない。

ジウジアーロ・デザインの先代パンダは窓を全て平面ガラスにしたり、ボディ外板に樹脂パーツを多用するといった生産性重視のデザインが、一種の機能美を放っていた。なにしろコストダウンと軽量化を兼ねて、ドアハンドルさえなく、ワイパーも1本。一方、新型のデザインはそこまでストイックではなく今風。新しいミニやビートルのようにレトロデザインでもないからそれほど個性的ではないが、リアサイドウインドウにルーフが垂れ下がる処理は新しいアイデアだ。

明るい車内、燃費計の備え

またまた先代との比較で申し訳ないが、アイディア満載の先代に比べて、割と普通になったインパネ。ポンポン物が放り込める棚、その棚に沿って左右にスライドする灰皿(取り外すことも増やすことも出来た)などは消え、代わりに助手席エアバッグが登場。シフトレバーは現代的にインパネから生える。

先代パンダ(初期モデル)の、パイプに布を張っただけのハンモックシートから見れば、立派かつ平凡なシートだが、座り心地はいい。視点は高いが、ヴィッツのように小さなシートの上にチョコンと座る感じがない、というのはイプシロンと同じ感想。ステアリングが遠いなど、ポジションを合わせ切れない感じはあるが、軽い電動パワステもあってこれはこれで慣れてしまう。

シートファブリックの色はイエローとブルーがあり、どちらもイタ車らしく明るく楽しい。大衆車らしからぬドライブコンピューターを備えるのは高く評価したい。複雑な燃費エンジンより、コスト数千円(数百円?)の燃費計の方がよっぽどエコランには効くし、運転も楽しいからだ。ダッシュ中央の2DINスペースは、カーナビを付ける時に便利そう。イタリアでこのクルマにカーナビを付ける人はいないだろうが…。

安全装備はクラスを越えて充実。両席エアバッグ(助手席キャンセラー付き)に加えて、シート組み込み式のサイドエアバッグ、ロードリミッター&プリテンショナー付き前席シートベルトを標準装備する。欧州にあるカーテンエアバッグは見送られたようだ。

やせ我慢なしの十分

ホイールベースはたった2300mmだが、室内は広く感じる。アップライトな姿勢や切り立ったサイドウインドウなどのせいだろう。軽自動車だと「あともう少し」と思う広さだが、幅で100mm以上余裕のあるパンダなら、やせ我慢せずに十分。軽自動車が4畳半なら、新型パンダは6畳といったところだ。大人2人を並べて側面衝突を考慮すれば、全幅1600mm弱はミニマムな数字だろう。

後席は2人掛け。つまり軽自動車と同じで4人乗りだ。天井が適度に高く、広々感がある。前席下に足が突っ込めるので、足元にも余裕あり。リアウインドウはもちろん?手動。輸入車の場合、下手なパワーウインドウより、この方が壊れなくて良い、という考え方もある。

後席はシングルフォールディング

荷室容量は206リッターとヴィッツ並みだが、四角い形状で使いやすい。先代パンダの後席は、取り外せてレジャーシートにもなったが、新型は固定。シングルフォールディング(背もたれを倒すだけ)で畳んで860リッターに拡大できるが、段差はバッチリ残ってしまう。日本車のような、そして先代パンダのような工夫はない。

少し不便を感じたのは、後席が一体型だとロックを左右同時に外すため、荷室側に回って両手を使う必要があること。左右分割なら片側ずつ片手で倒せるので、この点はやはり「Plus」がいい。

基本性能&ドライブフィール

楽しく賢い「デュアロジック」

フィアットが「デュアロジック(Dualogic)」と呼ぶ2ペダル・マニュアルは、ランチア・イプシロンの「D.F.N.(Dolce Far Niente、無為の楽しみ、という意味らしい)」と同じ物。シフトレバー周辺のパーツも共通だ。アルファロメオの「セレスピード」と構造や操作方法が少し違うが、マニュアルギアボックスをアクチュエーターで自動シフトする点は変わらない。

残念ながら、セミAT共通の2速シフトアップ時の失速感は、このパンダにもある。クリープがないのも坂道発進が苦手な人にはハードルだろう。ただ、失速感はアクセルを少し戻すか1速で引っ張らないといった工夫をすれば気にならない。坂道発進も左足ブレーキさえ覚えれば何のことはない。逆にコツをつかめば、マニュアルベースならではのダイレクト感が気持ちいい。個人的には、先代パンダにあったCVT(無段変速)よりこっちの方がいいとさえ思う。

ATモードも巧みで、加速したいときは間髪を入れずキックダウンしてくれる。加えてATモード時でもマニュアルシフト出来るのが良い(しばらくしてATに自動復帰する)。メーターには常に何速で走っているか表示されるので(写真は1速の状態、夜間)、緻密な変速制御が分かって楽しい。

エコモードボタンを押すと、シフトパターンは見事に変わり、3000回転も回らないうちにシフトアップしていく。これなら確かに燃費に貢献しそうだが、かったるい。走りを全く意識しない人ならこのモードの意味はあるが、そうでない人はこのモードで走ることはないだろう。

スペック以上の力強い走り

エンジンは1240ccの直列4気筒SOHC(60ps、10.4kgm)。最近のエンジンはシングルカムでもほとんど4バルブだが、これは珍しい2バルブ。リッター当たり50馬力未満、パワーウエイトレシオ:15.7kg/psのロースペックだが、実際には数字以上によく走る。

似たスペックの1.0リッターヴィッツ・4AT(70ps、車重900kg前後)と比較しても、動力性能はほとんど遜色ない。エンジンはリミッターが効く6500回転までよく回り、回した時にヒステリックな音を出さないのはパンダの良い点だ。

欠点はロードノイズ

運転感覚は、1クラス上のプントベースで「小さな高級車」を目指したランチア・イプシロンとよく似ている。身近なところでは、ヴィッツなどにも近い。つまり、柔らかいサスペンションでロールは大きいが、乗り心地はかなりいい、というもの。ホイールベースが短いのにフラット感が高く、つまり上下に揺すられない。軽い電動パワステをさらに軽くする「CITY」モードもイプシロンと同じだ。慣れるとこれがけっこう楽ちんだ。

イプシロンと差が付いたのは静粛性。最大のノイズ源はロードノイズで、これが街乗りでもかなり耳に付く。省燃費タイヤのせいもあるとは思うが、やはり遮音材の質や量がイプシロンとはかなり違う感じだ。

高速走行もそこそここなす

柔らかい足まわり、155/80R13の細いタイヤ、軽い電動パワステとあれば、山道での走りは期待できそうにない。実際その走りはタイヤサイズが同じ普通のヴィッツやパッソと似ている。安定はしているが、アンダーステアがたいへん強く、楽しくはない。

100km/h時のエンジン回転数は2750回転あたり。120km/hから風切り音が急に高まるが、エンジン音はけっこう低い。最高速は欧州仕様(5MT)の発表値で154km/h。メーター読みでもそのあたりまで出るのを確認した。60馬力を使い切り、多少うるさいのを我慢すれば、日本の高速道路の右車線を走り続けるのは無理ではない(違反ですが…)。

ここがイイ

日本では軽自動車の枠があるゆえできない「理想の小さなクルマ」を実現していること。軽の幅をもうちょっと広げて、もうちょっと大きなエンジンを乗せれば、完璧な小さなクルマになるのに、という思いを、軽自動車の枠がないイタ車ゆえ実現している。パッソよりまだ小さいが、クルマとして必要な事項はすべてそろっているわけで、つまりは軽自動車の理想型だ。

そこに載った60馬力と思えない、元気で静かな伝統のファイアエンジンは、確かに古くさいがまあこんなもんでしょ、という意味で、このクルマにマッチしている。

ここがダメ

そんなファイアエンジンゆえのプレミアム指定はさすがにこのご時世では辛いところ。イラク戦の影響で誰かが儲けているので、ガソリン、最近ホント高くなってます。

何より、ベルトーネデザインといわれるエクステリアデザインはどうにも魅力に乏しい。特にフロントまわり。例えば初代パンダのような左右非対称グリルとか、楕円ライトとか使えば、もうちょっと個性を出せるはずなのだが。左のドアミラーがAピラーの影になって少し見にくいのは右ハンドル化の弊害か。

総合評価

初代パンダの出た頃は、ゴルフⅠや赤いファミリアが一世を風靡した時代。当時の若者「シティボーイ」には、それらとひと味違うパンダの小粋さが、とても新鮮に映ったものだ。平板のボディパネルや窓ガラス、バンパーとボディサイド下半分を覆った無塗装樹脂(黒)。初期は空冷もあったから、非対称に薄いスリットが入っただけのほぼグリルレス。外観は確かにツートンだったから、四角いのにパンダといわれても納得できるかわいさだった。タイヤが細くて小さく、リフトアップされたように腰高で、ホイルハウスがスカスカ。シャコタンなど全く似合わないのも、「シティボーイ」ウケした部分だ。

内装は前述のように、今で言う無印良品のようなシンプルさがオシャレだった。屋根は前後別々に丸めて開けるキャンパス地のダブルサンルーフ(これも日本車にはなかったもの)があり、こいつを開けて三角窓から風を入れれば、クーラーなど要らなかった。ダイハツネイキッド(絶版・涙)にも通じる、剥き出し感、道具感は独自。ミニ、ビートル、そしてパンダがオシャレ系の御三家だった。

そんな初代のイメージからするとジンゴをパンダに改名して欲しくなかった。ニューミニやニュービートルのように、旧パンダのデザインテイストを活かしたニューパンダなら、相当食指が動いただろう、というのが、ジジイになった元「シティボーイ」の感想。しかし、そんなジジイが今さら小さなニューパンダのユーザーとなるワケもないから、欧州イヤーカーの選択理由のごとく、良くできた真の小型車として評価するべきだろう。これに乗る人は若い人だろうから、欧州では日本の軽のように使われるはず。その意味では十分よくできたクルマだ。

ニューミニやニュービートルは大きくなってプレミアムなクルマとして復活しただけに、ヒットを記録できた。しかし初代パンダのコンセプトに変な付加価値は似合わない。大きくてプレミアムなネイキッドカーなんてあり得ないだろう。「生活の道具」がパンダのコンセプトという意味では、ニューパンダもコンセプトを正直に引き継いでいる。ダブルサンルーフだってある(後ろは開かないが)。そこは正しい。だからこそ、もうちょっとカワイイデザインを与えて欲しかったと思うのだ。パンダという名に変えるのなら、もう少し時間さえくれれば、グリルレスとツートンボディくらいは手に入れたのに、とフィアットのデザイナー部門は悔やんでいるかもしれない。

試乗車スペック
フィアット パンダ

(1.2リッター・5速セミAT・157万3950円)
●形式:GH-16912●全長3535mm×全幅1590mm×全高1535mm●ホイールベース:2300mm●車重(車検証記載値):940kg(F:-+R:-)●乗車定員:4名●エンジン型式:188A4●1240cc・SOHC・2バルブ・直列4気筒・横置●60ps(44kW)/5000rpm、10.4kgm (102Nm)/2500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/35L●10・15モード燃費:ーkm/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:155/80R13(CONTINENTAL EcoContact EP)●価格:157万3950円(試乗車:同じ ※オプション:ー)●試乗距離:約200km ●車両協力:アルファロメオ 西名古屋

公式サイトhttp://www.fiat-auto.co.jp/

 
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