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マツダ ロードスター VS新車試乗記(第387回)

Mazda Roadster VS

(2.0リッター・6AT・260万円)

2005年10月15日

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キャラクター&開発コンセプト

16年間で72万台を生産

初代ロードスター(NA型)が登場したのは1989年。コンセプトは1960~70年代の英国製オープンスポーツの翻案だったが、そのほとんどがすでに市場から消え去っており、結果として日米欧で爆発的にヒットした。当時、日本では販売チャンネルの関係でユーノス・ロードスターを名乗り(2代目からはマツダ・ロードスター)、欧州ではマツダMX-5、北米ではマツダ(MX-5)ミアータと称した。

98年1月に登場した2代目(NB型)は外観をほぼ一新したが、基本設計は初代を踏襲。この2世代でロードスターは72万台以上を生産。「2人乗り小型オープンスポーツカー生産台数世界一」としてギネスブックの記録を更新中、という話はさておき、クルマ自体の魅力で世界から高く評価された稀な日本車となった。

完全新設計、「人馬一体」は継承

そんなわけで2005年8月に発売された3代目(NC型)は、言わば16年振りの全面変更モデルだ。RX-8の技術を応用した新設計シャシーに、アテンザ等と共通の新世代MZR系の2リッターエンジンを縦置きで搭載。一方で、初代からの開発コンセプトである「人馬一体」、そして手頃な価格の軽量オープンスポーツという性格は守った。

メインマーケットはやはり米国や欧州。国内の目標は月間360台と少ないが、発売後1ヶ月の受注台数は約1900台と好調だ。マツダによると、従来は約5割が20~30歳代中心の独身層だったが、新型は若年層から団塊の世代まで幅広いという。

価格帯&グレード展開

全車2リッターで220万~260万円

3グレード展開で、標準車「ROADSTER」(5MT:220万円、6AT:230万円)と「RS」(6MT:250万円)、そして「VS」(6MT:250万円、6AT:260万円)となる。エンジンは全車2リッター(MT:170ps、AT:166ps)だ。1.6リッター車があった初代前期型や2代目とは違い、アンダー200万円モデルが無くなった。一方で、253万500円からスタートする身内のRX-8と価格帯がわずかにオーバーラップする。

立ち上がり1ヶ月の内訳は、RSとVSで約7割。標準車に30万円プラスするだけで、ディスチャージド・ヘッドライト、フルオートエアコン、6速MT(MT車)、トルク感応型LSD+ビルシュタインサス+17インチタイヤ(RS)、シートヒーター付きレザーシート(VS)などの装備が加わるから、むべなるかな。今のところ待望の6速を得たAT車が約4割、MT車が6割という。

パッケージング&スタイル

サイズを守って理想を追求

ボディサイズ(カッコ内は先代比)は全長3995mm(+40)×全幅1720mm(+40)×全高1245mm(+10)。全長は4メートル未満を死守し、全幅もこの側突基準の厳しいご時世に40mmアップに抑えた。ホイールベースは2330mm(+65)に伸びたが、スタビリティとパッケージ重視の現代の基準から言って、この数値はきわめて短い。エンジン搭載位置は従来より135mmも後ろに移動し(フロントホイールセンター基準)、オーバーハングも短くなった。こうした操縦性第一の理想主義的な設計は、少量生産車ならともかく、今時の量産車では他にほとんど例がない。

初代に回帰しつつダイナミックに

キュートさと力強さを兼ね備えたエクステリア。全体的にも部分的にも、初代NA型への回帰が強く感じられる。夜間走りすぎて行くのを見ても、一瞬(インチアップした)NAと見分けが付かないほどだ。フェンダーのサイドターンシグナルランプ(オレンジ色の丸いレンズ)は3世代共通パーツという。

質感は大幅に向上

目覚ましく品質感が向上したインテリア。RX-8と似た雰囲気で、もはや文句をつけるところは見当たらない。ドアも「バムッ」とロードスターらしからぬ音で閉まる。先代までの特長だった3角窓は小さく退化。フロントウインドウは基部を後方に9cmも下げて、角度を3度も起こした。これによって先代より視界が広くなり、ヘッドクリアランスも稼いだ。試乗車はVSで、馬の鞍をイメージしたサドルタン色のレザーシートと内装、タン色の幌が付く。

チルトステアリングを採用

運転席に座った感じは、思わず笑ってしまうほど従来のロードスターそのもの。ボディが大きくなった割に室内はタイトで、足を前に投げ出す感じも今や貴重だ。新型では上下32mmのチルトステアリングが付き、対フロア比の着座位置もかなり低くなった。これによって自然なドライビングポジション、というかステアリングとの位置関係が可能に。スプリング式のクッションフレームを採用したシートによって座り心地も良くなった。ただしを座面高を調整するリフターの類は備わらず、小柄な人や低いクルマに不慣れな人は座面が低すぎると感じるはずだ。

収納は一長一短

細かいところではサンバイザーが樹脂製の一体物なのが面白い。ドリンクホルダーはセンターコンソールに2つ、両ドアに1つずつの計4個備わるほか、小物入れは多い。ただし、シートバックの裏側にはスペースがほとんど無く、その辺がスカスカだった従来車と違って、脱いだコートやヘルメットといった大物は置けない。

幌は手動だが着座したまま開閉可能

軽量命のロードスターゆえ、幌の開閉は手動のみ。最近主流になったZ字型に畳み込むタイプだ。操作は頭上のロック解除ボタンを押しながらレバーを反転。バコッと斜め後ろに引き上げて後方に畳むだけで、シートに座ったまま慣れれば電動より速く開けられる。座ったまま閉めることも出来るが、ちょっと腕力がいるし、やりにくいので降りてやった方が簡単だ。

スペアタイヤは省略、バッテリーは移設

アルミ製トランクリッドの下の荷室容量は150リッター。スペアタイヤの代わりにパンク修理キット(写真の赤黒のバッグ)を装備し、従来はトランク内にあった高価なシールドバッテリー(2万円はする)を止めて、一般的な汎用バッテリーをエンジンルームに置く。見た目はかなりすっきりした。

基本性能&ドライブフィール

MZR系2リッターを縦置きで搭載

試乗車はVSの6AT。搭載する2リッター「LF-VE型」エンジンは、アテンザの2リッター(150ps)と基本は同じもの。ロードスターへの搭載にあたって縦置きに改変し、使用燃料のハイオク化と出力の向上(MT車:170ps、AT車:166ps)を施してある。今までロードスターが使いつづけてきたB系エンジンは基本設計が1989年のファミリア用まで遡れる古いユニットだが、ついにチェーン駆動のMZR系に移行したわけだ。先代比わずか+10kgの車重1100kgに、パワーは166ps(AT車)。パワーウェイトレシオは6.6kg/psとスポーツカーらしい数値だ。

ただ、今回試乗したAT車では、やはり弾けるような加速感はない。もう少しスカッと吹け上がって欲しいというのが、スポーツカー好きの本音だろう。

アイシンAW製6ATを搭載

このアイシンAW製の6ATは普通にDモードで流す限り、燃費対策だろう、どんどんシフトアップしてゆく変速プログラムで、力感は回転数相応に薄まってしまう。こうなると、エンジン回転を少し高めに保つ「Sモード」に入れたくなるが、このロードスターにはそれが備わらない。マニュアルモードがあるから十分だろうという考えなのだろうが、それだと自動シフトアップしないので、やはりATとしては使いにくい。

エンジン音はシャーンと上まで回るMZR系に共通のもので、従来ロードスター(特にNA)のアコースティックでラフなサウンドからすると、すっかり洗練されている。ただ、チョイ乗りした6MT車と比べるとパワー感やレスポンス、高回転での伸びで少なからず見劣りする。ロードスター用にサウンドチューニングしたという乾いた排気音は6MT車では気持ちいいが、ATでは少々メリハリがない。

ワインディングではクイックに変身

ロードスターの生命線とも言えるハンドリングは、VSの6ATに限った話となるが、まずペースを上げると街乗りでは想像できないほどクイックになる。やや重めの油圧パワーステアリングをわずかに切り込むだけで、ノーズは敏感に反応。前輪のグリップでグイグイ曲がるのではなく、ショートホイールベースの後輪駆動車らしく、ボディ全体で、ヒュッと方向を変える。マルチリンクのリアサスはそれによく付いて行くが、アクセルオンを維持していないとギャップやうねりで耐え切れなくなった時にリアがトンッと小さく横っ飛びする。おそらく足回りやタイヤ(ADVAN A11A)がコンフォート志向な点や、RSに標準装備(VSのMT車にオプション)のトルクセンシング式スーパーLSDがAT車に無いせいもあるだろう。走りにこだわる人はやはりMT、特にRSが良さそうだ。

GT的な使い方も可能に

一方、高速走行時の安定性や快適性はしっかり確保されている。特に、試乗したVSは乗り心地がとてもよく、ピッチングはほぼ皆無。6速トップならエンジン音も十分に静かだ。NAはもちろん、NBでも高速長距離ドライブは振動や騒音、そこはかとない緊張感で疲れたが、新型ならGT的に遠出もできそうだ。また、従来モデルはオープンで走った時の風の巻き込みが激しかったが、新型は風の流れがかなり整理されて、ほとんど気にならない。その気になれば150km/hでも「我慢」の要らないオープンドライブが可能だ。

ここがイイ

まずはロードスターという月販360台のクルマを世に出すマツダに拍手と感謝。初代以来10余年が経ち、その間多くのフォロワーを生んだという点では、このクルマこそ今や(クルマのタイプとしての)ロードスターの本家だ。キュートなデザイン、作りの良い内装、ボディ剛性の向上を基本とした快適性の目覚しい向上。今や貴重なスポーツカーらしい「視点の低さ」など、国産スポーツカーには珍しい、ポルシェのような正常進化型モデルチェンジだ。

フロントスクリーンが立ち気味で、上端が頭のかなり前方にあり、頭上のオープン感覚がたっぷりある。さらに風の巻き込みが見事にないことで、オープン走行の楽しさはトップクラス。

ここがダメ

VSの6ATにあるステアリングシフトスイッチは、左右いずれのパドルを引いてもシフトアップ、親指で左右いずれかのボタンを押せばダウンとなる。一般的なパドルのようにダウンのつもりで左パドルを引くと、逆にアップしてしまう。この点は慣れで解消するとして、改善して欲しいのがマニュアルモードに入れないとステアリングシフトスイッチが有効にならないこと。レクサスISの時も書いたが、スイッチを操作すれば暫定的にマニュアルモードに移行、というポルシェのティプトロニックSの方法がベストだと思う。

幌のロックレバーのヒンジ部分には小さな窪みがあり、ここに指を入れてレバーを操作すると、スプリングの力によってかなりの力で挟んでしまう。手動幌のオープンカー暦15年のデイズスタッフも早速やってしまった。特に注意書きもないし、子供が誤って触ることもあり得るので、何らかの対策が必要と思う。

ヘッドクリアランスを稼いで、大柄な欧米人や海外で特に厳しい横転テストに対応するためだろう、シート座面は低く落とされている。ポジション的にはかなり特殊。ステアリングのテレスコもできないからポジションはいま一つ決まらない。大きく張り出したセンタートンネルからは熱が伝わり、夏場は暑そうだ。

総合評価

スタイリングは素晴らしい。いろいろ制約がある中で、ここまでのスタイリングを作り出せるマツダのデザイン力は、いつもながら絶賛に値する。2代目より初代に似ているし、顔付きもマツダの5角形グリルにとらわれていないのがよかった。しかもフロントスクリーンがずいぶん前に出て、立てられたことによって、オープン時の頭上開放感はMR-Sなみ。大柄な人はシートを下げることで頭上の開放感が出せるが、小柄な人や女性でも頭上に何もない感覚が味わえる。オープンも手動ながらすごく簡単。「いつでもオープン」が楽しめる。

いつでもオープンという点では、オープン走行時の風の巻き込みの処理も秀逸だ。150㎞/h走行時でもオープンでいられるから、速度によってクローズドにする必要が事実上なくなった。また、オープン時でもエアコン起動状態が普通とされ、7つのモードで夏は頭上方向が涼しく、冬は足下方向が暖かく設定できる。エアコンを必要としない時期の試乗だったのが悔やまれるが、真夏でもオープンが可能だとしたら、画期的といえるだろう。ただ、かなり座面が下げられていて、ドライビングポジション的には体格を選ぶものとなっているが。

軽量化を優先して手動とされた幌だが、とはいえ、やはりここはオプションでいいから電動トップが欲しいと思う。運転席に座ったまま、サンルーフ感覚で気軽に幌を開閉できるのは、オープンカーを求める人にとっては最高の装備だ。その便利さ、楽しさは50km/h以下なら走行中でも開閉できるポルシェのオープンモデルがいい例。うまくやれば重量増も価格アップも最小限で収まるはず。また窓は少し下げておかないとトップが開きにくい。オープンカー乗りには常識でも、やはり自動の方がユーザーの間口は広がるというものだ。

このようにロードスター(車名ではなくタイプ)の要件の一つであるオープン走行に関しては、記憶にある限り最良のモデルだ。将来的にはエアカーテン機能でも開発して、少々の雨は空気の壁で跳ね返すなんて仕組みがつけられるとうれしいところ。乗り心地もいいし、VSの場合は内装のおしゃれさも魅力だ。

もう一つの要件である走りに関しては、まったく新しくなったロードスターに思い描いていた像と、VSのラグジャリー志向の実像には少し隔たりがあった。エンジン特性、直進性、コーナリング性能共にあまり感動するほどではないし、特にフロントサスのがっしり感がなく、少しワナワナした感触すらあった(試乗車個体の問題か)。どこまでもオンザレール感覚を貫くスタビリティ重視の車両が大半を占める昨今、DSC(オプション)のないVSの場合、かなり唐突にリアが流れ出す。これは少なくともVSの性格にはあっていないと思う。

やはり6MTしかないRSこそが本来のロードスターなのだろう。おしゃれな女の子のための6ATタウンオープンカーではなく、ワインディング命のクルマオタクのためのクルマ。限界域を楽しむFRスポーツ。初代のプリミティブさを少し取り戻したのが3代目だ。今や時代はスタビリティを確保した上で楽しく走るというクルマが主流になった。その時代にあえてプリミティブさを打ち出すことは意義深い。クルマ好きとしては強く支持したいところだ。

スポーツカーとオープンカーは本来一致しない。スポーツカーを追求すればクローズドボディとなるのは、先代ロードスターの限定車やポルシェケイマンが立証している。新型ロードスターはオープンカーとしてすごく優秀なVS、スポーツカーとして優秀なRSという2台ではまったく違う評価になりそうだ。今回乗ったVSは6ATのライトウエイトオープンカーとしてならどんどん欲しい気持ちが膨らんできた。その場合、DSCはもちろんつけたいし、カード型のインテリジェントキーやBOSE専用DVDナビもぜひ欲しい。マツダは他メーカーに先駆け、トヨタのテレマティックス「G-BOOK ALPHA」の採用を決めたから、それが搭載できるようになったらこれもぜひ欲しい。こういった装備が増えたことこそ、フルチェンジのメリットだ。


試乗車スペック
マツダ ロードスター VS

(2.0リッター・6AT・260万円)
●形式:CBA-NCEC●全長3995mm×全幅1720mm×全高1245mm●ホイールベース:2330mm●車重(車検証記載値):1100kg (F:-+R:-)●乗車定員:2名 ●エンジン型式:LF-VE●1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・縦置●166ps(122kW)/6700rpm、19.3kg-m (189Nm)/5000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L●10・15モード燃費:11.8km/L●駆動方式:後輪駆動●タイヤ:205/50R16(YOKOHAMA ADVAN A11A) ●試乗車価格:264万2000円(含むオプション:BOSEサラウンドシステム&7スピーカー、6連奏CDチェンジャー)●試乗距離:約160km ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

公式サイトhttp://www.mazda.co.jp/

 
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