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プジョー 1007 1.4新車試乗記(第410回)

Peugeot 1007

(1.4L・5速セミAT・199万円)

革命の国から
両側電動「引き戸」のクルマが
やってきた!

2006年04月08日

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キャラクター&開発コンセプト

「両側電動スライドドア」のコンパクトカー

「プジョー初の4桁数字」が車名の1007は、その名の通り従来のラインナップに収まりきらないニューモデル。一番の特徴はコンパクトカーで初めて両側電動スライドドアを採用した点だ。助手席側だけならトヨタ・ポルテ(2004年)、あるいは両側(手動)スライドドアならスズキ・アルト(1988年)があったが、「両側」で「電動」は市販量産車では1007が初だろう(BMWのオープンスポーツカー「Z1」(1989年)は「上下」電動スライドドアだったが)。

着せ替え可能なインテリア、高い衝突安全性

インテリアトリムが工具なしで簡単に“着せ替え”できる「カメレオ」コンセプトも面白い。7エアバッグを装備し、欧州の衝突安全テスト「EuroNCAP」で最高評価の5つ星となった受動安全性の高さもクラス破りの性能だ。

元々は2002年のパリショーに出展されたコンセプトカー「セサミ」(ゴマ。仏語でセザム)が始まり。欧州では2004年に発売開始。2005年には5万 3800台を世界で販売したという(同年の206は67万6500台)。日本では05年の東京モーターショーで参考出品され(写真)、2006年3月4日に発売された。

価格帯&グレード展開

1.4(199万円)と1.6(229万円)の2車種

日本向けは「1.4」(199万円 ★今回の試乗車)と「1.6」(229万円)で、いずれも5速セミAT車のみ。いわゆる2ペダルマニュアルはプジョー車では今回が初という。

1.4と1.6の違いは、モールの非塗装/同色、エアコンのマニュアル/オート、15インチ鉄ホイール/16インチアルミといったところ。1.6にはさらにサンルーフやESPのセット(20万円)が追加できる。

パッケージング&スタイル

軽自動車並みのホイールベース

全長3730mm×全幅1710mmはヴィッツ並みだが、全高1630mm)は10センチくらい高い。というか、実車はもっと大きく見える。常識外れの寸法や面構成で「コンパクトカー」と呼ぶのがためらわれるほど。プジョーはマルチパーパスビークルと呼んでいる。ホイールベースに至ってはたったの 2315mm。今どきの軽自動車より短い。

ポルテと比較すると、シルエットは予想以上にそっくり。平面が間延びして見えるポルテに対して、1007はリアのガーニッシュやモールといった小技がスパイスのように効いて引き締まって見える。
ピニンファリーナとのコラボレーション

デザインは刑事コロンボの愛車「403」(1955年)以来、長年のパートナーであるピニンファリーナ社との共同作業。横から見ると大口径の砲弾みたいで妙にカッコいい。メーカー自身は「アローライク(矢のような)フォルム」と呼ぶ。

ドアミラーの幅プラス約1センチ

ドアはリモコン操作もしくはドアノブを引くと約5秒で電動で開く。閉める時は、リモコン操作もしくはインパネのスイッチ(外からは、ドアを閉める方向に力を掛けると作動する)。外側への張り出しは183mmで、ドアミラーの幅プラス約1センチが目安だ。もちろん、狭い駐車場でドアを開けやすいのがメリットだ。ポルテ同様、後ろにははみ出さないし、走行中(時速5km/h以上)はボタンを押しても作動しない。

ただ、通常のドアと違って張り出しは自分で加減できないので、クルマを止める時にギリギリに寄せないように注意が必要だ。

独特の空間が広がる前席

岬のように突き出したセンターコンソールや広いダッシュボードなど室内のデザインは独特。ポルテやホンダ・モビリオを思わせる広々した空間だ。ステアリングのチルト/テレスコが可能。また、ステアリングコラムエアバッグ(膝を守るいわゆるニーエアバッグ)を含む7エアバッグの装備も、このクラスでは珍しい。助手席シートは前に折れてテーブルになる。

着せ替えできるインテリア

面白いのは「カメレオ(Cameleo)」コンセプトという、着せ替えできるインテリアだ。カラーの部分(全部で18ヵ所)を全12色用意されたカメレオキット(各3万1500円)に工具なしで簡単に交換できる。例えば、インパネ上部はベルクロ(マジックテープ)で止まっているだけし、吹き出し口のベゼルは1/8回転回すだけで外れる。シート(背もたれと座面)はファスナー(簡単に外して洗える)、ドア内張り部分は軽くツメで止まっているだけだ。ボディカラーも全12色(うち1色は今夏に導入)なので、12×12=144通り以上のカラーコーディネイトが可能。器用な人なら自分オリジナルのカメレオキットも作れそうだ。

上半身は広々、足元はギリギリ

ボディ全長が短いから仕方ないが、後席へのアクセス性は一般的な3ドア車と似たようなレベル。玄関みたいに後席に出入りできるポルテのようにはいかない。開口幅はポルテの1020mmに対して、920mmと10センチ短い。

いったん後席に座れば天井が高く、腕まわりにも余裕がある。フットルームは大人男性だとギリギリなので、前席の人はちょっと気遣いが必要だ。法規上、後席は横幅の関係で2人乗りとなる。

大容量モノスペースからタンブルまで

天地に余裕があるので荷室容量は325リッターとVWゴルフ並み。さらに助手席や後席の背もたれを前に倒せば、大きなモノスペースが現れる。欧州車のセオリー通り、タンブル(前に転がすように折り畳む)も可能だ。

意外なのは、ゲート開口部に高いシル(梁)があること。荷物の積み下ろしに不便なので欧州車も国産車もあまりやらないが、これはやっぱり剛性を確保するためだろうか。この点はポルテも同じだ。

基本性能&ドライブフィール

日本仕様はセミATのみ

試乗したのは価格が安い方の1.4。 5速セミAT「2トロニック」なのは1.6と変わらない。プジョー車で初というセミATだが、すでに同じPSAのシトロエンC3(プルリエル)やその他、多くの欧州車で採用済みのものなので、特に目新しいものではない。ATモード付きなので、ほとんど普通のAT車のように乗れるが、一つだけ注意したいのはクリープがない点だ。坂道発進ではハンドブレーキ(もしくは左足ブレーキ)を使う必要がある。パドルシフトまであるが、このクルマには不釣り合い。それでも時にスポーティな気分(あくまで気分)になれるから、ないよりはあった方がいいか。

街中でキビキビ走るローテクパワー

206でおなじみの1360cc直列4気筒は、今時珍しいシングルカムの2バルブというローテクユニット。73馬力、12kg-mとスペックは非力だが低速トルクは力強く、1230kgという重めのボディを街中でスイスイ走らせる。常時パドルシフトの操作を受け付けるので、普段はATモードに入れっぱなしで必要な時だけパドル操作、という使い方がベストだ。最近のセミATは1007に限らず変速制御がかなり巧みで、特にダウンシフト時のブリッピングは見事。変速スピードも並みのマニュアル車より断然速い。

一方、16.8kg/psというパワーウェイトレシオ通り、アクセル全開でもダッシュは効かない。最大出力5400回転、最大トルク3300回転という数値の通り、おいしい回転域は現代の水準よりおおむね1000回転低く、6000回転まで回す気にならない。しかし、だからこそクルマに急かされる感じがなく、それでいて自然とキビキビ走れてしまう、いかにもプジョーらしいエンジンとも言える。アイドリング時のエンジン音が、欧州車らしからず驚くほど静かなのもいい点だ。2バルブを侮るなかれ、というところ。

さすが4桁車名?の重厚な走り

エンジンもさることながら、一番の驚きは重厚な走りだ。このサイズ、この背の高さにして「あれっ」と思うほどしっかり走り、開口部の大きなボディはミシリとも言わない。ホイールベースはワゴンRより短いが、ピッチングもほとんどない。ロードノイズも小さく、遮音性も高い。両側スライドドアでEuroNCAPで5 つ星を取るためにガンガン補強を入れたら結果こうなった、というところだろうか。

フラットアウトで快適かつ安定

最高速はUK仕様の1.4で164km/h(102mph)、1.6で188km/h(117mph)。実際は150km/hくらいが実用巡航速度という感じだったが、この領域でもコンパクトクラスらしからぬ静粛性と直進安定性がある。小排気量車でも常にアクセル全開でオートルートを突っ走るのがフランス車の流儀らしいが、1007にもそれがしっかり当てはまる。

ここがイイ

単なる変り種コンパクトカーではなく、ずっと上の上級車レベルの作り込み。C3プルリエルやランチア・イプシロンのような、富裕層のカジュアルな足という感じだ。EuroNCAPが5つ星、7エアバッグ標準という安全性の高さも好感が持てる。またカメレオキットで内装色のアレンジが変えられるのも楽しい。こういう遊びは最近の日本車ではなぜか行われない。

思いつく限りの細かなユーティリティーが用意されているのもいい。グローブボックスには照明があるし、シートアンダートレイとか助手席シートバックテーブルとか。後席には床下収納があるし、アームレストにまで小物入れがある。さすがにゴミ箱まではないが、欧州車も便利になったものだ。何より気に入ったのが、後席を見るための小さなミラーがルームミラー上部にあったこと。子供をリアに乗せたときには、このミラーが実は必需品。昔ミニバンに乗っていたときには、オートバックスで買ってきて取り付けていたので、その便利さを実感している。

余分なところにお金を掛けていないから出来た199万円という価格。その割にまるでクラス感がないから、パッと見、300万円といっても通りそうだ。電動スライドドアのパフォーマンスは衆目を集めるし、これで200万円未満なら実にリーズナブルと言っていいだろう。エンジンもはっきり言って1.4で十分。ちょっと非力なエンジンで走る。これぞフランス車。燃費も良さそうだ。

ここがダメ

左右ドアの開閉ボタンはダッシュボード右端という、ちょうど初代ホンダ・ステップワゴンのパワーウインドウスイッチの場所にあり、おかげでうっかりするとガラスを開けるつもりでドアを開けてしまう。パワーウインドウボタンは欧州車(あるいは欧州向け日本車)によくあるようにセンターコンソールだが、これがややこしく、3日間という短い試乗期間では何度か間違えたり、間違えそうになったりした。室内側のドアとウインドウのスイッチの位置関係には、もう少し配慮が欲しい。

同じくドア関係だが、クルマを離れる時にウインドウが開いているのを見つけると、ちょっと面倒なことになる。ウインドウを閉めるには、
1、再び電動でドアを開ける。
2、シートに座り、ドアを電動で閉める (開いた状態ではパワーウインドウが作動しない)。
3、キーを差してイグニッションをオンにする。
4、センターコンソールのスイッチで、パワーウインドウを閉める。
5、電動でドアを開ける。
6、キーを抜き、車外に出る。
7、再び電動でドアを閉める。
以上だ。急いでいなければいいが、遅刻しそうな時はかなり面倒。できればガラスウインドウも(ドイツ車によくあるように)リモコンキーで閉められるといい。

あと、これは慣れの問題かもしれないが、ドアを開けた時にうっかりガードレールか何かに当てそうなのが心配。電動だからそのあたりの加減が難しい。

総合評価

ホイールベースが短いのにゆったりとした実にフランス車らしい乗り心地は、フランス車好きにはたまらないだろう。最近のプジョーはドイツ車風のシャープな乗り味になり、往年のフランス車風味が薄れてきていたが、このクルマには懐かしさすら感じてしまった。反面、最近のキビキビしたフランス車になれた人には、そのトロさが辛いかもしれない。

ダッシュボード上は奥行きがあり、ここにモニターを置けばアフター物のナビがいい位置にセットできそうだ。というのも、コラムリモコンの純正オーディオがついているから、これを外すのは惜しいし、オプションとなっているエクリプスやソニーのインダッシュナビは、画面が立ち上がるとエアコン吹き出し口やハザードスイッチまでを覆ってしまうから、あまりおすすめできない。ただ、ハザードスイッチはそのためか、右下にもう一つ付いている。

さて総じてすごく良かった1007だが、最大の課題は「スイッチ」だと思う。運転席側ドアが電動でしか動かないから、5秒待たないと外へ出られないし、ぶつからないかどうか少し開けて確認することもできない。ポルテのようにメインスイッチをオフにして手動でも開けることが出来れば、そうした不満は解消できるはずだ。バッテリー上がりの時には手動で開けられるようだから、これはスイッチ一つで改善できる問題ではないだろうか。また、後部座席にも安全装置付きのスライドドアスイッチが欲しい。せっかく電動なのだから、後部座席から操作できると乗り降りはずいぶん楽になる。

ポルテが運転席をスライドにしなかったのは「開閉に時間がかかるから」と、まさに1007の問題点を当時指摘してのことだったが、実際にはユーザーの違和感を恐れたからだろう。運転席までスライドドアで出入りするクルマの出現というのは、クルマの歴史の中では革命的なこと。失敗も十分考えられただけに、トヨタは「逃げた」と思われる。ポルテは好調に売れているようだが、両側スライドドアだったら果たして売れたかどうか。ユーザーは基本的に保守的だ。

そうした保守性を打破するのはやはり日本車ではなく、かの国のクルマということになる。伝統的に「変な」クルマを作るフランス車だからこそ出来た革新性、という意味で1007は素晴らしい。しかし自由の国フランスのクルマの割に、電動という先進部分・理想部分にこだわって(あるいは慣れてなくて)不自由さを生んでしまったのは残念なところ。革命の理想を求めて先走り過ぎたジャコバン派(ロベスピエール)みたいなものだ。このコンセプトなら電動しかないと決め込まず、手動でもできるフレキシビリティを残すことこそ真の民主主義だ、じゃなくて、真のユーティリティーカーだ。

というわけで、コンセプトや乗り心地から、果ては不満点に至るまで、実にフランス車らしいフランス車が1007だ。デイズスタッフからは(プジョー製)「小型アヴァンタイム」という声も。500万円でアヴァンタイムを買うのは辛かったが、200万円で1007を買うのはそう無理がないはず。ぜひ日本でも売れて欲しいものだ。

試乗車スペック
プジョー 1007 1.4
(1.4L・5速セミAT・199万円)

●形式:GH-A8KFV●全長3730mm×全幅1710mm×全高1630mm●ホイールベース:2315mm●車重(車検証記載値):1230kg(F:730+500)●乗車定員:4名●エンジン型式:KFV●1360cc・直列4気筒・SOHC・2バルブ・横置●73ps(54kW)/5400rpm、12.0kg-m (118Nm)/3300rpm●カム駆動:タイミングベルト●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/41L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:185/60R15(BRIDGESTONE TURANZA ER300)●試乗車価格:199万円(オプション:- )●試乗距離:約160km ●試乗日:2006年3月●車両協力:株式会社ホワイトハウス プジョー ディーラー ネットワーク

公式サイト http://www.peugeot.co.jp/cars/showroom/1007/

 
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