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BMW 120i新車試乗記(第343回)

BMW 120i

(2.0リッター・6AT・366万5000円)

2004年11月20日

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キャラクター&開発コンセプト

後輪駆動の5ドアコンパクト

ビー・エム・ダブリュー株式会社は2004年10月9日、BMW「1シリーズ」を日本で発売した。BMWのボトムレンジはこれまで現行3シリーズ(E46)を3ドア化したようなti(ティーアイ)だったが、今回新たに専用設計の5ドアコンパクトを開発。アルファ147やアウディA3、あるいは新型ゴルフといった強豪がひしめく「プレミアム」Cセグメントに進出した。今後もっとも伸びると言われている有望な市場だ。

特徴は何と言っても、BMWがこだわるFR(フロントエンジン・後輪駆動)である点。今時のコンパクトカーはFF(前輪駆動)が完全に主流だが、「駆けぬける歓び」がモットーのBMWにとって、同クラスになく、高級車と同じ駆動方式は差別化を図る上で強力な武器になる。メルセデス・ベンツがAクラスをFF車としたのとは対照的だ。

日本カー・オブ・ザ・イヤーで特別賞を受賞

デザインはもとより、室内の広さや使い勝手の良さが重視されるこのクラスで、日本の市場でも「FR=走りの良さ」がどこまで訴求力を持つか、そのあたりが興味深いところ。2004年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーでは特別賞「Most Fun」を受賞している。

価格帯&グレード展開

FR代はおよそ30万円?

全車右ハンドルの6速ATで、グレードは3種類。エントリーグレードの「116i」(1.6リッター、115ps、288万8000円)、中間の「118i」(2.0リッター、129ps、324万5000円)、最上級の「120i」(2.0リッター、150ps、366万5000円)。「FR代」というと変だが、おしなべてライバルのFF車より30万円くらい高い印象だ。変速機は全車6速ATと5シリーズ並み。マニュアルギアボックスは今のところ用意されていない。

316ti(1.8リッター)/318ti(2.0リッター)もおおむね300万円台で似たような価格だが、ドアは3つだけでATも1段少ない5速。クラスは上かもしれないが、今買うなら1シリーズというのが一般的だろう。

パッケージング&スタイル

サイズ以上の存在感

ボディサイズは全長4227mm×全幅1751mm×全高1430mmと、次々に発売されている欧州Cセグメントカー(A3、ゴルフ5、アストラ…)とほぼ同じ大きさだ。しかしそう見えないのは、FRらしい長いノーズやダイナミックなデザインのせいか。感覚的にはボルボV50やアルファ156スポーツワゴンのようなクラス感がある。

ほぼ50:50を踏襲

オーバーハングは短いが、ホイールベースは2660mmと長い。前後重量配分は当然50:50を謳っており、車検証数値も700kg:670kgとだいたいそれを裏付ける。資料にはFF車を引き合いに出して1シリーズなら「ノーズ・ヘビーを感じることはありません」とある。Cd値の0.29は、空力に不利なハッチバックでは自慢できる数字だ。

充電式のリモコンキー

最近のBMWの流儀に則って、ダッシュボードは左右シンメトリーに弧を描く。シンプルでスポーティなデザインだが、高級感は全般に低く、質感フェチのアウディには負けそう。しかし、豊富なオプションを用意するのがBMWのやり方で、1シリーズでも予算と時間が許せばシート素材(レザーや各種ファブリック)からトリム(パネル類)まで様々な色や素材がチョイス出来る。

ブロック形状のリモコンキーは充電式。とりあえず電池切れの心配はなさそうだ(バッテリーが死なない限り)。センターコンソール脇に差し込むと「カシャン」とフロッピーディスクのように自動的にマウント。その後、隣のスタートボタンで始動する。横長のオーディオ表示モニターは大昔のラジオを思わせてユニークだ。

エアコンは最近多い自動内気循環システムを採用。汚れた空気(一酸化炭素、酸化窒素、エタノールなどの汚染物質)の汚染濃度が一定の基準に達すると、自動的に内気循環モードに切り替える。

後席は乗り降りがしにくい

ドライブトレインが室内に浸食する分、しわ寄せがあるのは仕方ない。大柄な欧米人でも頭がつかえないようにヒップポイントは低いが、シートがしっかりしているので救われる。一番困るのは乗り降りで、ボディ剛性を重視したサイドシル(ドア下の敷居)がかなり高く、足が引っかかる。ルーフが低いので頭にも注意。大切な人を何度も乗り降りさせるのはちょっと気が引ける。

クラス初のランフラット

荷室は予想外に広い。2:1分割の背もたれを倒すだけでフラットな床がさらに広がる。この広さには秘密があり、実はZ4などと同様、ランフラットタイヤを標準装備するので、スペアタイヤがない。床下にはバッテリーと車載工具、その下にはデフがある。

基本性能&ドライブフィール

数字以上のトルク感

試乗したのは「120i」。118iと同じ2.0リッターエンジンだが共鳴過給吸気システム(DISA)の有無などで21psと2.0kgm多い、150psと20.4kgmを発揮する。ダブルVANOSに加えて、スロットル・バタフライを排除したバルブトロニックだ。 BMWの定石通り、エンジンは前車軸の後方、バルクヘッドにめり込ませて縦置きする。エンジン前方はスカスカだから、衝突基準さえクリアすれば直列6気筒も積めそうだ。

アクセルを踏んだ瞬間、トルク感がけっこうあることに驚く。1370kgの車重は軽くないが、そのボディを3000回転あたりからグーンと前に押し出す力感が気持ちいい。上まで回し切った時の加速感はパワーウエイトレシオ(9.1kg/ps)相応だが、実用域の速さは十分。

扱いやすいエンジン、小気味よい6AT

エンジン振動の小ささも好印象だ。今時の欧州車の4気筒エンジンはおおむね低振動だが、120iのエンジンはそれに加えてウォーンという澄んだ音と伸びの良さがある。ホンダのタイプRのような高回転での鋭さはないが、たいへん扱いやすく、ドライバーにストレスを与えないエンジンだ。また、6速ATとのマッチングもいい。小排気量エンジンのパワーをうまく引き出して、加速やレスポンスが途切れることがない。MTモードはBMW流の「押してダウン、引いてアップ」だが、慣れればかなりMTに近いフィーリングでシフトチェンジが出来る。

怖くなるくらいニュートラル

一番驚くのは剛性感だ。今時、剛性の高さにいちいち驚いていられないが、それにしてもこれはスゴイ。5シリーズ以上かも。でもって操縦性はそうとうシャープだ。FFでシャープなのは何とかなるが、FRだと本当に気が抜けない。低速の山道を「駆けぬける」のは、かなり手に汗にぎる。6気筒ではなく、軽い4気筒なので、ノーズはミッドシップかリアエンジンのように軽い。アンダーステアは感覚的に皆無で、試した限りではオーバーステアにもならない。2速全開で白線に後輪が乗ると、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)の作動ランプがパパッと瞬くが、姿勢は崩さず、失速もしない。怖くなるくらい、ひたすらニュートラルステアだ。

この時も、CBC(コーナリング・ブレーキ・コントロール)が、コーナリング中のブレーキでも内側の前後輪ブレーキ圧をわずかに下げて、スピンしそうになるのを抑え、EBD(エレクトロニック・ブレーキ・フォース・ディトリビューション)が前後の制動力を最適に分配しているはず。FRというローテクな基本性能を、こうした先端技術でバックアップするところが今風だ。

エフアールのMINI?

足まわり(前:ストラット、後:新開発の5リンク)が少し固いせいかランフラットのせいか、足元がバタバタするのはやや気になったが、乗り心地は悪くない。この乗り味は何かに似ている…と考えていてハタと思い当たったのは、同じBMWのMINIだった。クイックなのにリアが粘るところなどもよく似ている。

1シリーズが面白いのはもっと高速のシチュエーションだ。曲がりくねった都市高速などを走っていると、ハッチバック車であることをいつの間にか忘れて「法定速度を大きく上回る速度」で、いつまでも走っていたいと思わせる。その時のスタビリティ、不快な振動・ノイズの低さ、思い通りにクルマが生き生きと、繊細に動くさまは、確かにFRならではの醍醐味だ。

ここがイイ

ランフラットタイヤでもあり足は柔らかくないのだが、乗り心地は悪くない。しかも素晴らしいフットワークをみせる。FRらしい素直でシャープな回頭性、車重に対してちょうど良いトルク、リニアなパワー感など、過不足ない感覚だが、実はかなり速く走れてしまう。そんなところでどんな人が乗っても小型FR車の楽しさを堪能できるだろう。シフトショックもほぼなく、適切なギアをスムーズに選ぶZF製6速ATの出来も素晴らしい。

足が見事についてくるオンザレールのコーナリング感覚は、高速コーナー、高速レーンチェンジでも同じ。小型FRながら直進性は問題なく、150㎞/hを超える速度域でもまったくリラックスして走ることができる。5速0.867から6速目の変速比は0.691と相当なオーバートップなので、高速巡航中のエンジン回転がかなり抑えられ、静粛性も高い。Dレンジからシフトを左へ倒せばD-Sモードになり、ちょっと一速だけ落としたいとき便利だ。

夜間は天井からシフトあたりを照らす赤い常灯スポットLEDがいいムード。シートそのものはあまりいい印象がないが、あちこちが膨らむ強力なランバーサポートがあってこれはかなり効いた。内気循環ボタンがステアリングにあるのも便利。いつものようにBMWマークを押せばロックできるリモコンキーは、わかりやすくていい。

メンテナンスコストを抑える姿勢もいい。ベルトではなくチェーンでカムを駆動するのは珍しくないとして、ウォーター・ポンプといった補機類に使われているベルト類やATオイルも交換不要を謳う。リモコンキーもイグニッション・スイッチから常時充電される蓄電池を使うから、煩わしい電池切れがなくていい。

ここがダメ

ルックスに関して、様々なインプレッション記事ではあまり正直な感想をきけないが、おそらく誰もがあまりいいとは思っていないはず。実に個性的だが、他のBMW車同様、かなり先に行ってしまったデザインだと思う。内装も布シートの試乗車の場合、価格からすると相当チープな印象を受けざるを得なかった。革内装に変えたくなるが、そうするとさらに価格が上がる…。ナビはiDrive仕様が用意されるようだが、日本で使うなら店頭のアフターパーツの方が使い勝手がいいはず。ところがインパネ形状は後付ナビには絶望的だ。

路面の細かい凹凸は拾わないが、大きなうねりでかなり揺すられるのが気になる場面も。FRゆえ室内はあまり広く感じられない。特に運転席左足あたりのスペースがミニマムなのは、右ハンドルだからと我慢しなくてはならないのか。

そのほか、左手で上の方へ差込むリモコンキーやその上にあるスタータボタンは正直使いにくかった。どうせキーをささなくては始動できないなら、やはり今までのクルマ同様に右下にあるべきだろう。マニュアルシフト操作は押し上げてシフトダウンなので、マニュアルレンジに入っていないにもかかわらず、ついシフトを押し上げてニュートラルに入れてしまうミスを何度か犯してしまった。これは同じようなゲートを採用する他メーカー車でも同じだ。

総合評価

走りの印象はまさにBMW。とても楽しく、久々にたっぷり堪能させてもらった。ただ、どこまでもニュートラルで安全、それでいて結構楽しいという実にわかりやすい走りは、人によってはあまりに優等生的に感じられて反発があるかもしれない。もっとパンチの効いた走りが欲しい、腕を要求されるクルマに乗りたい、という人が本来、BMW好きには多いのではないか。

このクルマは、誰もがFRらしさを楽しめ、使い勝手もいいコンパクトなFR・5ドア車なわけで、「数を売りたい」というBMWの思惑によって作られている。ラインナップを広げ、低価格の小型車もたくさん売って会社規模を確保し、世界の自動車市場で独自のスタンスを維持していきたい、というBMWの拡張路線そのもののクルマだろう。

低価格といってもこのクルマの場合、他と比較をすればかなり高い。その価格をつけられるのはブランド力ゆえ。そのブランド力で得られる価格上昇分のほとんどを、走りの質に振り向けており、それでもって走りのBMWというブランド力を維持しようとする戦略だ。ただ、乗っていると内装などに価格相応の豪華さは感じられず、走りと豪華さのバランスはもう少し取ってもいいのでは、と思えてくる。小さな高級車で走りもいいとなれば、FFのゴルフには負けないはずだが、現状はゴルフの方がリッチな感じがしてしまう。走りはこのクラスで上位、内装は下位というのが1シリーズの現状だろう。

試乗車スペック
BMW 120i
(2.0リッター・6AT・366万5000円)

●形式:GH-UF20●全長4240mm×全幅1750mm×全高1430mm●ホイールベース:2660mm●車重(車検証記載値):1370kg (F:700+R:670)●乗車定員:5名●エンジン型式:N46B20B●1995cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・縦置●150ps(110kW)/6200rpm、20.4kgm (200Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L●10・15モード燃費:12.4km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:205/55R16(Continental PremiumContact SSR)●価格:366万5000円(試乗車:375万9500円 ※オプション:マルチファンクションスポーツ・スポーツレザーステアリング 2万1000円、メタリックペイント 7万3500円)●試乗距離:約150km ●車両協力:Nagoya-Minami BMW

公式サイトhttp://www.bmw.co.jp/Product/Automobiles/1/

 
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