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BMW 135i クーペ新車試乗記(第508回)

BMW 135i Coupe

(3.0Lターボ・6MT・538万円)

小粒でホットなFRスポーツ、
伝説の「マルニターボ」が
帰って・・・・・・来たのか!?

2008年04月25日

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キャラクター&開発コンセプト

1シリーズに加わった2ドアクーペ版


2007年の東京モーターショーに展示された軽量コンセプトモデル「BMW 1 Seiries tii」

欧州では2007年6月、日本では2008年2月26日に発売された「1シリーズ・クーペ」は、BMW・1シリーズ(2004年9月に日本発売)の2ドアクーペ版。従来の1シリーズは3ドア(日本未導入)と5ドアのハッチバックだったが、クーペはリアウインドウを固定とした完全な2ドアクーペ。遅れて3月26日に発売された4シーターオープン「1シリーズ・カブリオレ」(2リッター直4・6ATから導入)のクーペ版とも言える。

今回導入された「135i」は、「335i」譲りの3リッター直6・直噴ツインターボ(306ps、40.8kgm)を搭載したもの。駆動方式はもちろんFRになる。

スモールBMWでターボと言えば・・・・・・


BMW 2002 turbo(1973年)
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

BMWの小型2ドア車でターボといえば、初の量産ターボ車となった「2002ターボ」(1973~74年)だろう。2002ti の発展型にKKK製ターボチャージャーを搭載し170psとしたもので、当時としては驚異的な最高速211km/hを誇った。加えて物々しいエアロパーツやオーバーフェンダー、後の「M」につながる青、紺、赤のストライプ、真っ赤に塗られたメーターパネル等の意匠も強烈で、日本車にも大きな影響を与えた。

価格帯&グレード展開

クーペはひとまず135iのみ。MTとATの両方あり

今回日本に導入されたクーペは「135i」のみで、6ATと6MTの両方を用意する。いずれも右ハンドルのみで、価格は以下の通り。

■ 135i クーペ (3L直6ターボ・6AT)  549万円
135i クーペ (3L直6ターボ・6MT)  538万円 ※今週の試乗車

なお、欧州には3リッターNAの「125i」(218ps)のほか、新開発の可変ツイン・ターボ付き2リッター直4コモンレール式ディーゼルの「123dクーペ」(204ps)、そして同じく2リッター直4ディーゼルの「120dクーペ」(177ps)などもある。

カブリオレはNAの2リッター直4を導入


BMW 120i Cabriolet
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

搭載エンジンは異なるが、ほぼ同時期に「1シリーズ・カブリオレ」も発売された。こちらはこのクラスで事実上唯一の4シーター・FRオープンとなるもので、流行のメタルトップではなくソフトトップ(幌)を採用する。もちろんフル電動で開閉し(所要時間は約22秒とのこと)、さらに約40km/hまでなら走行中でも操作可能とのこと。パワートレインは「バルブトロニック」の2リッター直4(156ps、20.4kgm)と6ATとなる。いわば「ミニ3シリーズ・カブリオレ」。

■ 120i カブリオレ(2L直4・6AT)  434万円

パッケージング&スタイル

外寸はハッチバックとほぼ同じ

ボディサイズ(5ドアハッチバックの130i比)は、全長4370(+130)×全幅1750(同)×全高1410(-5)mm、ホイールベースは2660mm(同)。全長はクーペの方がちょっと長いが、ほぼ5ドアと同寸になる。プラットフォームは構造的に3シリーズ用シャシーのWB短縮・サスペンション改変版と言える1シリーズ系そのもの。Cd.値はハッチバック(0.29)より悪化して0.33。

前後重量配分(ほぼ)50:50を今回も死守

前後重量配分は車検証数値で52:48(790kg:740kg)で、実際にはこれに、少なくともドライバー1名分の体重が加わるが(燃料の重さは車重に含まれる)、いずれにしてもBMWが理想とする50:50に近い。長大な直列6気筒エンジンと2基のターボチャージャーを積む非トランスアクスルのFR車で、ここまで帳尻が合うのは基本設計が良いからだろう。

インパネまわりは従来の1シリーズと共通

ダッシュボード周辺のデザインも従来の1シリーズとほぼ同じ。135iクーペはさすがに500万円台だけに、電動昇降式のHDDナビ、iDriveコントローラー、電動レザーシートが標準で備わる。ドアはサッシュレスで、開閉時に「カシャッ」と少し下がる機能も備わる。これはBMWがE36型3シリーズクーペの頃から採用していたもの。

日本仕様の135iに標準装備される「Mスポーツ・パッケージ」の極太レザー・ステアリングは、「アクティブステアリング」によって低速時(駐車時など)にロック・トゥ・ロックが2回転以下の超クイックレシオになり、逆に高速域ではスローになる。

フルバケット要らず?のスポーツシート

同じく「Mスポーツ・パッケージ」の本革スポーツシート(シートヒーター付)は、乗降の妨げになるサイサポート(thigh=腿、手動調整可)こそ控えめだが、電動調整式のサイドサポートが後ろから腰を両手でワッシと支え、強いホールド性を発揮する。またBMWらしく座面の長さ、腰の後ろの電動ランバー(オプション)も調整可能。 いわゆるリクライニング機能付きのセミバケットシートとしては最上の部類では。

一方、右ハンドルで、運転席左側にトランスミッションが侵入してくる非トランス・アクスルの小型FR車ゆえに、ペダル類はやや右にオフセットしている。特に左足はフットレストとクラッチペダルの間がタイトで、革靴だとやや踏み替えがしにくい。とはいえ、どうしても気になるほどではない。

2+2というよりフル4シーター

ホイールベースが1シリーズと同じだけに、後席も十分使える。身長170センチくらいだとルーフに頭が触れるが、着座姿勢はクーペの後席としてはまっとうな方。クッションの厚み、横方向の空間もまずまず。フットルームも写真では狭そうに見えるが、実際には十分あり、つま先を前席シート下に入れることもできる。乗降時には前席シートを電動で前に動かすことも出来るから、2ドアとしては乗り降りもしやすい。乗車定員の通り、フル4シーターと言える。

ハッチバック譲りの積載性

荷室容量は370リッターと、ハッチバックを上回る広さ。さらにシングルフォールディングでトランクスルー出来るのが大きな売り。なにしろベースは1シリーズハッチバックだから、スルー部分の開口部は広く、段差も小さい。クーペ化したことで剛性確保もしやすかったはず。

 

ランフラット標準なのでスペアタイヤはなく、床下には1シリーズ・ハッチバック同様にバッテリーが右側に「埋まって」いる。マフラー・サイレンサーは左側のもう一段下に配置され、後方に2本出しされる。

基本性能&ドライブフィール

エンジンは335iクーペと一緒

今回試乗したのは6MT。エンジンは先にも触れた通り、335iの3リッター直6・直噴ツインターボの「N54B30A」(306ps、40.8kgm)そのもの。車重は1530kgで、例えば日産フェアレディZやポルシェ911(997型)と大差なく、335iクーペより約100kg軽い。パワーウエイトレシオはジャスト5kg/psだが、それより特徴的なのは1300回転から5000回転までの全域で、40.8kgmの超フラット極太トルクを生み出すところ。その特性はクラッチをつないだ瞬間から体感できる。

パワー感は大排気量車のようにナチュラルで、ターボラグは事実上皆無。予備知識なしだとターボだと気付かないかも。0-100km/h加速は5.3秒とあるが、暴力的な感じは皆無。これは過給圧とスロットルの電子制御で、最大トルクの上限をきっちり「400Nm(40.8kgm)」にならしていることが大きい。出力特性が回転数に応じて変化してしまうNAユニットでは、こうはいかない。

大人しいサウンド、ランフラットの弱点を克服した乗り心地

全開加速時にクォーーーンと響くクセのない音はV6でもV8でもなく、直6特有のもの。ただし音量や刺激はかなり控えめで、自然吸気・直6の旧M3(E36やE46系)の弾けるようなレスポンス、サウンド、高回転でのドラマチックな盛り上がりを期待すると拍子抜けする。エンジンはどちらかというと表に出ていこない。

標準装備の「Mスポーツ・サスペンション」のスプリングレートはいかにも高そうで、ツギハギだらけの道ではボディが律儀に揺すられるが、上下動や振動は残らないので気にはならない。フロントは215/40R18、対してリアは極端に太い245/35R18だが、乗り心地に関してはランフラットタイヤの弱点をほぼ克服している。快適性の高さは、この135iクーペの意外な一面。

思うがままに加減速し、思った以上に曲がる


(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

いつものワインディングも走ってみたが、ちょっとやそっとで限界はまったく見えず。感覚的にはドライバーが思うように加速し、思うように減速し、そして「思った以上に」よく曲がる。コーナーリングに関しては例のアクティブステアリングが相変わらず曲者(くせもの)で、慣れるまでは切り過ぎないように注意が必要。サーキットではいざ知らず、少なくともフルパワーをかけきれない一般のワインディングでは、コーナー侵入時の回頭性の高さが目立った。いずれにしても、135iの操縦性を存分に味わうには、1周あたり1分未満で回れるようなミニサーキットに行きたいところ。出力特性がフラットでシャシー性能が高いので、例えばかつてのMクーペ(Z3ベースのクーペにM3のエンジンを載せたもの)などより、安心して振り回せるかもしれない。

センターコンソールの「DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)」ボタンをオンにすれば、多少のホイールスピンを許し、後輪を流すことも出来る。このモードは、低ミュー路や不整路で、TC(トラクションコントロール)の介入が激しい時や、サーキットでタイムを狙う場合に使う。

最高速は250km/hで制限。10・15モード燃費は6MTで9.4km/L

高速道路では交通量が多く、満足に走れなかったが、高速域ではステアリングの敏感さが気になり、またFR独特の特性もあって安心感は少なかった。最高速はリミッターで制限される250km/h(欧州仕様と共通)。

今回は120kmを試乗。最後に車載燃費計は5.6km/Lを指していたが、たびたびの全開加速と別件の撮影を含む数値なので、実際にはもっといいはず。特に直噴ターボユニットが得意とする高速巡航燃費はいいと思われる。10・15モード燃費は9.4km/L。

ここがイイ

自由自在の運動性能、6MTの設定や装備など

かつてのランエボやインプレッサのように、5ナンバー並みのサイズ感で(全幅は1750mmあるが)、自由自在の運動性能を味わえる。正直、強烈な印象はないが、これだけ小型のFR車で40.8kgmのターボパワーをしっかり受け止めている点はすごい。

BMWらしい高い質感と6MTの存在、さらに右ハンドルを用意していること。反転して高い位置に出てくるナビ画面は、1シリーズ系ダッシュデザインのいいところだ。またオプションだが、サーモグラフみたいな「パーク・ディスタンス・コントロール」画面も分かりやすかった。車両前後にある障害物への距離を、色分布表示とアラームで知らせてくれる。

ここがダメ

未だ使いやすいとはいえないi Drive(特にナビの操作)、小柄な人にとっては遠いシートベルトアンカー、空調をかけても足下にこもる熱、ちょっと太すぎのステアリング、ペダルレイアウトなど、今ひとつしっくりこないコクピット。右コーナーではピラーがかなり視界を妨げる。

せっかくのクーペなのだが、スタイリングは中途半端な感じ。惚れ惚れするような、一般的なカッコ良さこそ、この手のクルマにとって大きな価値になると思うのだが、残念ながらそれはない。北米の女性向けスタイリングといわれているが、その通りだと思う。

総合評価

予想とは違った

小さめのクーペで、300ps超えで、FRで、とくれば、これはもう乗ってすぐ面白い! となるはず。ところが実際に走り出してみると、パワー感は思いのほかジェントルで、乗り心地もきわめて良く、意外や普通のクルマという印象だ。これがまさに今のクルマ作りの作法なのだろう。それゆえに、右ハンドル化によるクラッチペダルの踏みにくさ(足の引っかかり)とか、サポートの強いシートの窮屈さとか、本来なら「走りのクルマ」にとって良さとなるべき部分が妙に気になってしまう。こんな尖った性能のクルマの割には、街中を快適に走ることができるのだが、といってタウンカーとしてはなんだか乗りにくいのだ。

ところが、高速道路からワインディングという非日常的な空間(これが日常という人もいるが)に持ち出すと、確かに生き生きとしてくる。存分にストレートシックスのパワー感を味わい、どんなコーナーも軽々とクリアし、大パワーながら危なげない走りでどこまでも楽しめる。挙動はまさに今や貴重な、軽量FR車そのものだ。

とはいえ、さすがに超高速域では直進性が厳しくなるし、素晴らしくよく曲がるこの回頭性とあり余るパワーを存分に発揮できる道など、そうはない。ワインディングで軽く汗をかくなら、ここまでのパワーはいらないし、ここまで曲がらなくてもいい。どんなコーナーも軽々と回ってしまい、かえって面白みがないのだ。その意味では、相当なウデを持つドライバーが相応な場所でタイムを狙ってこそ、意義のあるクルマといえるのではないか。

キャラクターと性能との乖離(かいり)

元々この1シリーズのクーペはカブリオレも含めて北米で、洒落た女性の足として売られるもの。しかし女性にはハッチバックが売れる日本のような市場でとなると、BMWとしてはこれを「走りの」クルマとして男性向けに仕立てる方を選んだのだろう。

しかし昨今のこと、暴れん坊にはできない。全域でトルクを出して大パワーのピーキーさを押さえ、様々なスタビリティ・コントロールで安全性を確保し、街中でも乗りやすさを出して、それでもFRらしさをきちんと残す、となるのは当然。その意味では1.5トンの車体を1.2トンくらいに感じさせる、ものすごくよくできたFR車だが、パワーがありながら制御されすぎ、限界も高すぎ、乗り心地も良すぎ。その意味で、クルマ好きにとってスパルタンな印象の強い「2002ターボの再来」といわれても今ひとつピンとは来ない (もちろんBMWはそうは言っていないが)。

つまりはクルマのキャラクターと走りの性能がアンバランスなのだ。あるいは「そこが面白い」といっておおよそ550万円を出せる人向けのニッチなクルマといえる。フルタイム4WD+DSGのアウディTT、ミッドシップ+水平対向6気筒のケイマンといった同価格帯のニッチな車群の中にまたひとつ、新たな個性が投入されたことは大いに歓迎したい。性能から考えると結構割安な価格だと思うし、日本のメーカーではとても作れない類のクルマゆえ、クルマ好きとして諸手はあげないまでも片手はあげて歓迎したいところだ。

試乗車スペック
BMW 135i クーペ
(3.0Lターボ・6MT・538万円)

●初年度登録:2008年2月●形式:ABA-UC35 ●全長4370mm×全幅1750mm×全高1410mm ●ホイールベース:2660mm ●最小回転半径:5.4 m ●車重(車検証記載値):1530kg( 790+740 ) ●乗車定員:4名●エンジン型式:N54B30A ● 2979cc・直列6気筒ターボ・DOHC・4バルブ・縦置 ● 306ps(225kW)/ 5800rpm、40.8kgm (400Nm)/ 1300-5000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:9.4 km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット/後 5リンク式マルチリンク ●タイヤ:前 215/40R18/後 245/35R18( Bridgestone Potenza RE050A ランフラット)●試乗車価格:- 万円( 含むオプション:-円 )●試乗距離:約120km ●試乗日:2008年4月 ●車両協力:名鉄AUTO

 
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