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日産 スカイライン 2000GT RB25DE仕様新車試乗記(第453回)

Nissan Skyline 2000GT RB25DE version

(2.5L・直6・5MT・732万9000円)

今回は番外編!
いにしえのL型エンジンを
日産最後の直6「RB」に換装。
近代化された名車ハコスカの走りはどうだったか?

2007年03月03日

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キャラクター&開発コンセプト

RBエンジンで近代化した「ハコスカ」

今回、番外編として採り上げるのは、いわゆる新型車ではなく、通称「ハコスカ」と呼ばれる3代目スカイライン2000GT(GC10型・1968~72年)に、1990年代の日産を代表する直列6気筒エンジン「RB」を搭載し、近代化を図った車両。

愛知県岡崎市にある旧車専門店「ロッキーオート」(0564-58-7080)が製作・販売するもので、ベース車両のボディにフルレストアと補強を施した上で、RBエンジンと共に、エアコン、パワステ、4輪ディスクブレーキ等を装着したコンプリート車になる。同店は初代フェアレディZ(S30型・1969~78年)等も含めて、この15年ほどでおよそ100台近くのRB搭載車を製作したという。

オリジナリティか、リアリティか

稀少価値の高いビンテージカーの世界では、オリジナリティを損なうモディファイやエンジン換装は一般的ではないが、一方でクルマ好きの間には「憧れの旧車を普通に乗り回せたら」という思いが根強くある。60~70年代の日産車が得意なロッキーオートがこうした車両を作るようになったのも、そうした声に応えるためだ。また現実問題として、1960年代の国産ビンテージカーをオリジナル通りにレストア(復元)するのは、部品調達や費用の点から極めて困難になりつつある、という事情もある。

「RB」エンジンとは?

形式名「RB」(アールビー)は、1980年代後半にデビューした日産の直列6気筒エンジン。それまでの「L型」に代わるもので、性能的にも世界トップクラスの直6となった。

採用例としては、7代目~10代目(R31~R34)スカイライン、同時代のローレル、初代セフィーロ、初代ステージアなどなど。2リッターDOHCの「RB20DE」、2.5リッターDOHCの「RB25DE」、GT-R用の2.6リッターツインターボ「RB26DETT」など、様々なバリエーションがある。ちなみにDEはDOHC、DETはDOHCターボ、DETTはDOHCツインターボを意味する。

価格帯&グレード展開

オーダーメイドで600万円くらいから

ロッキーオートのコンプリート車は、基本的にはカスタマーの要望に応じて、ベースボディをレストアおよび補強し、搭載するRBエンジンの種類やエアコン、パワステ、希望によってはオートマチック等の装備を選定してゆくオーダーメイド車。よって価格はマチマチだが、大体600万円ぐらいがスタート価格とのこと。さらに内外装のフルレストア、RB26DETTを搭載するなどして1000万円近い予算で「理想のハコスカ」を依頼する例も珍しくないらしい。

今回試乗したのは、いずれもRB25DE(2.5リッターNA)仕様の1972(S47)年式スカイライン、および1975(S50)年式フェアレディZの2台。価格は共に732万9000円だ。どちらもエンジン本体はノーマルだが、6連スロットル、スポーツインジェクション、ステンレス製等長エキマニ&マフラー、サスペンションキット、オートエアコン等を装備した上で、公認(改造申請)を取った車両。昔のL型エンジンと異なり、排ガス検査も余裕でクリアするという。

パッケージング&スタイル

コンパクトなのに存在感あり

試乗したのはハコスカの2ドアハードトップ2000GT(KGC10)をベースに、外観を「GT-R」仕様としたもの。

ボディサイズは全長4330mm×全幅1665mm×全高1370mm(標準GT-Rの数値)と、現行カローラより一回り以上小さい。が、その小ささとは裏腹に、今回の車両のように極太タイヤを履き、ローダウンされたスタイルは端正で、独特の存在感がある。ちなみに箱スカは当初4ドアのみでスタートしており、レースで伝説を作ったのも4ドアGT-R(PGC10)がメイン。2ドアハードトップのGT-R(KPGC10)は1970年からとなる。

GT-R仕様とは?

「GT-R」仕様とは、要するに普及グレードだった「GT」を、レース用ベース車として開発された「GT-R」(S20エンジン搭載)に似せたもの。その改造ポイントについては専門誌が詳しいので深くは触れないが、簡単なところでは「GT-R」エンブレムを貼り、専用メッシュグリルに変更。さらにボディを加工してリベット止めリアオーバーフェンダー(2ドアハードトップのみ)とし、リアウイング(GT-Rの純正オプション)を付ければ、ほぼGT-Rそっくりとなる。さらにリアウインドウを熱線無し・無色タイプに交換すれば、さらにそれっぽくなる。

今回試乗したGT-R仕様は、車高、タイヤ&ホイール、ボディ同色のオーバーフェンダー(本来はツヤ消し黒)、マフラー以外は、ノーマルのGT-Rに近い、いわゆる「GT-R改」仕様。ほぼこのままの状態で公認(改造申請)済みとなっている。

工作は昔のままだが、すぐに慣れる

水平基調の角々としたダッシュボード。当時のクルマはスカイラインに限らず、今見るとアンティークのような作り。もちろん工作精度やスイッチの節度感、機能性などは現代のクルマとは比較にならず、ステアリングが少し遠めなのも気になる。言うまでもなく、このクルマの内装はレストアを完全に行ったものではなく、これ以上の仕上げはオーダー次第。

当時の雰囲気を生かした計器類

ダッシュボードやメーターの外観は基本的に当時のハコスカ2000GTと同様のもの。速度計は240km/h、回転計は8000rpmまで刻まれる。ちなみにGT-R用の回転計は10,000rpm スケールだ。円筒形フードが付いたハードトップ用メーターは計6つ。回転計、速度計、アナログ時計、油圧計、水温計、燃料計。なお、ハコスカは当時すでに純正オプションで「ステレオ」や「クーラー」を用意していた。

さりげなくオートエアコン装備

クーラーと言えば、試乗車はフルオートエアコンを装備。本来はAMラジオがある場所に、空調の操作パネルがきれいに収まっていて、違和感はまったくない。センターコンソールのオーディオはさすがに違和感アリアリだが。前席には、とりあえず、という感じでレカロシート。これが乗り心地にかなり効いている。

実用的なパッケージング

後席は、おそらくオリジナルのまま。座ってみたら、クッションが今時のクルマにない「フカフカ」系で、意外と快適だった。クォーターウインドウのおかげで閉所感もなく、エアコンも付いているのでけっこう実用になる。

トランク内部もきれいに仕上がっているが、防振材やカーペット等はとりあえず無し。いざとなればスペアタイヤも積めるように、くぼみとネジ穴が残されている。

左隅にバッテリーが見えるが、本来のハコスカではエンジンルーム内に配置される。奥に見える黒いのが燃料タンク。ちなみに2000GTは50L、GT-Rは100Lタンクだ。

基本性能&ドライブフィール

フルレストア&強化ボディに、現代のRBユニット

試乗したのはハコスカ最終の1972年式・2ドアハードトップ・2000GT(KGC10)に、2.5リッター直6・DOHC・4バルブ「RB25DE」(R34世代のもので200ps、26.0kg-m)を積んだもの。

エンジン内部に手は入っていないが、スポーツインジェクション、6連スロットル、ステンレス製タコ足、ワンオフマフラーといった吸排気系でライトチューンされた仕様で、シャシーダイナモで250ps以上をマークするという。オリジナルのL20型はハイオク仕様で120ps、17.0kgmだから、馬力にしておおよそ倍以上。S20搭載のGT-R(160ps)と比べても1.5倍で、むしろ当時のGT-Rワークスカー(200~240ps以上と言われる)に匹敵する。

変速機はオリジナルの4速MTに換えて、RB20DET(R32スカイラインGTS-tなど)用の5速MTギアボックスが移植されている。車重はノーマルの箱スカと大差ない1100kg+とのこと。現代の2Lクラスに比べてかなり軽い。

キャブ車みたいなインジェクション

「ジーー」という電磁ポンプの音を確認した後、キーを捻ると少し長めのクランキングでエンジンは「ボボン!」と轟然と掛かる。強化クラッチのミートポイントは少し高めだったが、発進はイージーで、エンストの心配はまったくない。

走り始めの第一印象は「排気音がでかい」。マフラーの抜けが良く、直6独特の「ファァァーーーン!」という金管楽器の大合唱を堪能することになる。ファンネル剥き出しなので、吸気音は「ズボンズボン」とかなりのもの。軽量フライホイールのおかげでレスポンスは抜群によく、スロットルペダルを足先で弾くだけで「ファン!」と鋭く吹け上がる。ヒール&トゥーが面白いように決まる。

正確に言えば、3000rpmあたりまでは、ずぼらなペダル操作をすると「ボボボッ」とややカブリ気味になり、キャブ車みたいでもある。しかし決して乗りにくくはなく、一種の演出のようにも思える。

パワステ装備、エアコンも効く

「乗りやすい」という印象は、R33用ユニットを使った油圧パワステの存在も大きい。旧車といえば「重ステ」(もはや死語か)だが、この箱スカでは、なんと普通にステアリングが回せる。ステアリングフィールは現代の基準で言うと少々ダルだが、十分に許せるレベル。

また、オートエアコンもスイッチ一つで当然のように効く。エンジンがRBなので当然だが、水温も適正のまま。アイドリングはACのオフ・オンに関わらず1100rpmくらいと少し高め。

乗り心地も、まあ問題ない。強化ボディとは言え、基本的には30年以上前のモノコックに、前ストラット、後セミトレーリングアームのアーム類もそのままであり、そこに極太タイヤとローダウンと来れば、そうとうハードそうだが、実際には普通に走れてしまう。特に段差での突き上げは拍子抜けするほど小さい。そのあたりは車高調キットに加えて、ボディ補強が大きいそうだ。

回せば速い。ワインディングも楽しめる

3000~5000rpmくらいでも十分に速いが、本領発揮は5000rpmから上。排気音がもう1ランク甲高くなり、7000rpmあたりまで一気に吹け上がる。ほんの少し中吹かしを入れつつ、出来のいいギアボックスでカチッとシフトアップ。再び「ファファーン!」と加速する。250psに1100kgということだが、体感上でも5kg/psくらいの速さがある。

ただ、全体にギアリングが低いので、絶対的な速さよりも、打てば響くような反応の良さが楽しいタイプ。そういう意味では「ハチロク」やユーノス・ロードスターのようなライトウエイト系に、超強力なエンジンを積んだヤツ、という感じ。LSDの助けもあって、2速なら安心してリアを振り出せるほどコントロール性も高い。

ブレーキはフロントがR32 GTS-t タイプM用の4ポッドキャリパー、リアはオリジナルのドラムに換えてR30用のディスクに変更してあり、少々飛ばす程度なら効きは十分。ただ本格的にワインディングを楽しむには、効きもタッチも少々物足りない。ただ、オリジナルのブレーキとは比べ物にならないし、このリアディスクブレーキの公認も簡単に取れるものではないそうだ。

かなりレーシーなS30

一緒に試乗した1975(S50)年式フェアレディZ(S30型)も、ハコスカと同じRB25DE仕様だが、試乗した印象はだいぶ違っていた。

まず、Zに付いているOS技研製の強化クラッチはいかにもダイレクトで、発進時に少し神経を使う。まあ、そうは言っても、1回エンストすれば学習できるレベルで、逆に慣れてしまえばシャキッとしたつながり感が気持ちいい。燃料が少々濃いせいか、エンスト後の再始動性がよくなかったが、これもちょっとしたコツで解消できる。

 

排気音はハコスカに輪をかけてデカく、心なしか加速の方もより刺激的だった。箱スカよりZの方がボディが短く、車重も若干軽いせいかもしれないが(オリジナルのZは1040kgだが、試乗車は1000kg+あたりとのこと)、吸排気系のセッティングやパーツの差がメインだろう。

ボディ補強はハコスカより入念で、サスペンションもアラゴスタの特注品とのこと。ブレーキは即サーキットで使えるくらい強力だった。パワステはややフィールが曖昧だったが、まさか電動パワステとは後で聞くまで気付かなかった。

今回試乗した2台に関しては、ストリートで気楽に乗れるのがハコスカ、サーキットで楽しいのがZ、という感じだったが、実際にはオーナーの好み次第で仕上げることになる。

ここがイイ

エンジンが変わったおかげで不満ない動力性能を得たこと。

エンジンが変わったおかげでオートエアコンまで付いていること。

エンジンが変わったおかげで排ガスがクリーンになったこと。

エンジンが変わっても、ちゃんと「旧車」していること。

ここがダメ

年式ゆえのドアやウインドウなどのフィッティングはやはり気になる。当然ながら保管には雨風が完全に防げるガレージが必須だろう。

総合評価

ハコスカが現役(新車購入可)だった頃に乗り回していた人は、現在55才以上だと思う。そうした人はたぶん、昨年登場した新型スカイラインを試乗して「こんなのはスカイラインじゃない」と思ったはず。そして「ハコスカはあの頃・・・」と口から蘊蓄が出るはずだが、GT-Rでさえグロス160馬力に過ぎないことを思えば、それも遠い日の美しい思い出が半分以上を占めているのではないだろうか。

また30代、40代のハコスカファンは、ハコスカに現実に乗れなかったがゆえに、数々の伝説に彩られたその記号性に今も憧れるわけだ。メディアに持ち上げられ、博物館や旧車イベントでひな壇に飾られたハコスカは、メディアによる情報の再生産(メディアがおいしいと伝えた飲食店を、また別のメディアがおいしいと伝え、それを見た別のメデイアが・・・と情報が再生産されること)によって、稀代の名車となっていった側面は否めない。

とはいえ、ハコスカの実力はノスタルジックなクルマの中でもやはり圧倒的で、しかもGT-Rでなければ庶民でも手に入ったクルマであるあたりも、様々な著名旧車とは異なるところだ。トヨタ2000GTなどはいわゆるスーパーカーの一台であって、手の届くものではなかったし、それは旧車となった今でも同じだ。その点ハコスカは、今回試乗したクルマのように昔も今も手が届く存在だ。現実に乗って楽しい名車という意味で、ハコスカはまさに希有の存在といっていいだろう。

そんなクルマであるだけに、今も普通に乗り回したいという欲求の強いクルマでもある。それを実現させた今回の試乗車の完成度は素晴らしい。まったく普通に乗れるという点はもちろん、現代のクルマと互する「走る楽しさ」や「走行性能」を備えているあたりは、さすがこの道一筋の製造会社のノウハウゆえのこと。また、排ガス対策やブレーキなど、環境や安全に関する基本性能が高められていることも、この手のクルマを長く生かし続けるためには素晴らしいことだと思う。また価格は高いが、かえってその価格がこのクルマの価値をより高めている。300万円台なら相当の人が欲しいというはずだが、その結果として数が増えれば、それだけ価値は落ちてしまう。やはりこういうクルマは分かっている人の密かな楽しみであるべきだと思う。

新型MINIが発売されたが、基本的なスタイリングは先代のBMW MINIを引き継いでいる。先代MINIはさらにその前のクラシックミニのスタイリングをリスペクトしたもの。つまり1959年のデザインが最新型に生きているわけだ。またスマートは8年前に登場したクルマだが、その新型も先代スマートをやはり踏襲している。つまりいいデザインは引き継がれてゆくという伝統が輸入車には見られるのだが、日本車にはそれがない。それはたぶん、スクラップ&ビルトを繰り返してきた日本人の歴史的気質に起因すると思う。このことは繰り返しモーターデイズで書いてきたが、今回ハコスカに乗って、より強くそれを感じてしまった。

ハコスカに現代のエンジンを載せると、こんなによくなる。となれば古き良きデザインを生かしてメーカーが現代の技術で作り上げれば、さらによいクルマが生まれるだろう。そしてそれはたぶん相当なヒット車になるはず。そんなクルマ作りの手法やそれによってできあがったクルマをよしとするかは意見が分かれるところだが、元気のない国内自動車市場に活を入れられるのは、たぶんハイテクカーではなく、リスペクトされたノスタルジックなクルマだ。それができるのは団塊の世代がまだ運転を続けられる、ここ10年が最後のチャンスだと思う。

試乗車スペック
日産スカイライン ハードトップ 2000GT RB25DE仕様
(2.5L・直6・5MT・732万9000円)

●形式:- ●全長4330mm×全幅1665mm×全高1370mm(参考値)●ホイールベース:2570mm●車重:1100kg+(参考値)●乗車定員:- 名●エンジン型式:RB25DE ● 2498cc・直列6気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ● 250ps/6500rpm、29.6kg-m/ -rpm(参考値) ※ノーマルRB25DE(R34用):200ps/6000rpm、26.0kg-m/4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50 L ●10・15モード燃費:- km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●タイヤ:前195/50R15、後225/50R15(Falken Ziex ZE329/ZE512)●試乗車価格:732万9000円( 備考:1972(S43)年式ベース、オートエアコン、パワーステアリング装備、公認済み) ●試乗距離:約60km ●試乗日:2007年3月

※参考スペック
1970 日産スカイライン ハードトップ 2000GT 【GT-R】
(2.0L・直6・4MT【5MT】)

●形式:KGC-10 【 KPGC10 】●全長4330mm×全幅1595mm×全高1375mm 【全幅1665mm×全高1370mm】●ホイールベース:2570mm●車重:1080kg 【1100kg】●乗車定員:5 名●エンジン型式:L20 【S20】● 1998cc・直列6気筒・OHC・2バルブ・縦置 【1989cc・直列6気筒・DOHC・4バルブ】●120ps/6000rpm、17.0kg-m/4000rpm ※ハイオク仕様車【160ps/7000rpm、18.0kg-m/5600rpm】●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50 L 【100L】●駆動方式:後輪駆動(FR) ●タイヤ:6.45S-14-4PR ●1970年当時の新車価格:- 【154万円】●最高速(メーカー発表値):175km/h 【200km/h】

 
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