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プジョー 206新車試乗記(第76回)

Peugeot 206

 

1999年05月28日

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キャラクター&開発コンセプト

欧州激戦区に投入されたプジョーの新ドル箱

206は106と306の中間、すなわち欧州ではBセグメントに属するコンパクトハッチバックカーで、ルーテシア、ポロ、ヴィータがライバルと自称する。ということは当然ヴィッツもライバルになり、現在最もホットなジャンルのクルマということだ。'80年代の大ヒット車205を受け継ぐモデルというと分かりやすいが、106と306自体小型車であり、206のポジショニングは非常に微妙。新しいシリーズと理解すべきだろう。

個性的なスタイルのボディは、軽量かつ高剛性で、数多くの安全装備を施し、21世紀の新しい小型車の基準を提案している。なお、プジョーのラインナップはピニンファリーナによるデザインが多いが、206のデザインは完全な社内設計だ。コンピュータ設計によるデザイン手法をこの206にプジョーで初めて採用したという。

まず日本へ導入されたのは、1.4リッター(74PS)と1.6リッター(88PS)の2種類のエンジン搭載車で、それぞれに3ドアと5ドアが設定される。ギアボックスはスポーツ志向のプジョーらしく全車に5速MTを設定し、1.4リッター車には4ATも用意される。1.6リッターにまだATがないのが販売的にはやや辛いかも。ハンドル位置は全車右となる。2.0リッター(137PS)のS16は6月日発売だ。

価格帯&グレード展開

ライバル多数、価格は競争力のある165万円から

ベースグレードの1.4XT(3ドア)の165万円から最上級グレードのXTプレミアムの189.5万円と、国産コンパクトカーと比べても競争力のある、魅力的な価格だ。なお、2リッターのS16は200万円半ばくらいになりそう。さらに昨年のジュネーブショーでお披露目されたスチールトップを持つオープンモデル、”20♥(20ハート、あるいは20ラヴ?)”の市販化も計画されているらしい。

なお、安全装備ではデュアルエアバッグ、ABS、シートベルトプリテンショナー、盗難防止装置、リアフォグランプは全車標準で、最上級グレードのXTプレミアムにはサイドエアバッグも標準となる。

パッケージング&スタイル

プジョー初のデジタルモデリングを採用、強い個性をアピールする吊り上げすぎ? の猫目(ヘッドライト)

飛び抜けた個性で強いインパクトを放つボディだが、サイズは全長3825mm×全幅1670mm×1440mm、とヴィッツよりも215mm長く、スターレットくらい。ホイーベースは2440mmで、このクラスとしては異例に長い。プジョー独特の吊り目、大きなライオンマークでプジョーのアイデンティティをしっかり踏襲しながらも、コンピュータを駆使した複雑な曲面をもつデザインは、プジョーに新しいデザインの風が吹き始めたことを物語っている。

この206の小悪魔的な可愛らしさは、日本人には抵抗がないようで、概して評判はいい。斬新すぎるカタチを毛嫌いする日本市場でも、これなら十分通用するデザインといえるだろう。先代205といい、この206といい、プジョーはハッチバックによくもこう個性的なデザインを提案できるものだと感心してまう。

全体的なインパクトだけでなく、フォグランプをバンパー中央部に組み込ませたり、リアのウインカーレンズを真っ赤に染めたり(106同様)、ドアミラーの上部にボディ色を施すなど、様々な工夫をみることもできる。ライバルのルーテシアがタヌキ系のほほんデザイン、こちらはキツネ系キリリデザインと見事に分かれた(共に限られた舞台でよくここまでやるものです)。

ケレン味のないインテリアデザイン、ステアリンググリップの太さがいかにも走り志向

「コンピュータを駆使した巧みなパッケージングによってコンパクトながらも乗員に十分なスペースを与えることに成功した」というふれこみの室内空間は、ミニバンタイプの国産コンパクトカーに慣れてしまったせいか、それほど広いと感じるわけではない。しかし後席の足元スペースは十分に確保され、えぐられたドアトリムにより、窮屈な感じはしない。ヴィッツのガランとした空間と、ルーテシアの「普通の空間」の中間ぐらいといったところ。

インパネデザインは、最新欧州車一連の曲面を多用したデザイン。シボ加工はやや荒い感じだが、質感そのものはずいぶん高まっている。かなり硬めのシートは、伝統的フランス車の持つ大きなものではなく、かなり小ぶり。しかしキチンと座れば座り心地は悪くなく、背中もしっかりと包んでくれる安堵感のあるもの。また、助手席の座面部を跳ね上げると隠しポケットがあったり、グローブボックス蓋の裏側に実際に使うに耐えるカップホルダーがあり、サングラスやペンのホルダーも用意されるなど、かなりいろいろ頑張った形跡を見つけることができる。ドアにもペットボトルホルダーがあり、特に不便はないだろう。

右ハンドル化でワイパーは国産と逆位置にあるが、アームのリンクに工夫があり、大きく窓が拭き取られ、視界が広いのは気に入った。反面、楕円型のサイドミラー(電動リモコン付き)は面積が小さく見にくい感じがした。運転席サイドウインドウは上下動共にワンタッチ仕様だ。

メーターはバイク風のそれぞれがつながった4連。しかしカーナビ画面はどこに付けたらいいか、ちょっと迷ってしまうインパネだ。エントリークラスに当たる206にも、グリップの太いしっかりしたステアリングを採用していることをはじめ、プジョーの一貫したスポーティーなこだわりはしっかりと受け継いでいる。ゲート式ATシフトは操作の節度感と、夜間の照明が欲しい。メーター内にはインジケータがあるが、シフトの根本の表示部分は明かりがないので違和感があるのだ。

基本性能&ドライブフィール

エンジンは1.4リッター直4SOHC(最大出力74PS/5500rpm、最大トルク11.1kgm/2600rpm)と1.6リッター直4SOHC(最大出力88PS/5600rpm、最大トルク13.5kgm/3000rpm)の2本立て。全車に5速MTと、1.4リッター搭載車のみに9つの走行モードを持つ学習機能付き4ATも用意される。プジョー車は日本でもMTの販売比率が高く、この206にもMT仕様の設定を重視しているようだ。なお、2.0リッターのS16にも当然5MTが搭載されている。

キビキビと走り回るプジョーのお家芸

試乗したのは1.4リッター搭載のAT車(5ドア)。わずか74PSにしかすぎないが、走る楽しさを身上とするプジョーだけに、この206にもそれが踏襲されている。パワー的なアドバンテージはないが、プジョーの持ち味は何といっても”軽さ”。アクセルのわずかな踏み込みに機敏に反応して、出足は鋭く、軽々と走り出す印象だ。低回転域から持てるトルクを存分に発生しているので、出だしの加速は過剰ともいえるほど勢いがある。エンジンの吹け上がりもよく、ベタ踏みすれば6000回転域まで一気に上昇する。スタートから息をつかず70km/hくらいまで一気に加速して巡航に入ると、大変気持ちがよい。ただ、9つの走行モードを持つ学習機能付きAT(ルーテシアと同じものらしい)というのが曲者で、エンジンを常に高回転で維持しようとするのだ。S(スポーツ)モードもついているが、最初はそれが入っているのかと思ったほど。普通にアクセルを踏むと60km/h前後ではなかなか4速に入ってくれない。ちょっと前のフランス車によくあった高速型のセッティングかと思ったが、わずかにアクセルを控え目にすればちゃんと入る。そのあたりのさじ加減というか、アクセル加減はちょっと微妙だ。

下り坂や減速時では見事にエンブレを効かせてくれ、むやみなアクセル操作を低減させてくれるのは確かに有り難いのだが、それゆえ40~50km/hというあたりの走りはややギクシャクしがち。

要はスポーツモード入りっぱなしに近い状態の高回転維持(スポーツモードにするとさらに引っ張る)がATのスタンダード状態ということ。このATを上手く使い、メリハリのきいたMTのような走りをせよ、とプジョーは主張しているのだろう。やはりコンパクト・プジョーの主張は明確であると納得せざるを得ないところだ。ルーテシアのゆったり感とは好対照。今回は乗ってないが、5速マニュアル仕様により近いATといえそうだ。

ステアリングは中立付近でやや軽めで、グッと切りこむと手応えのあるもの。エンジン音がちょっとノイジーだが、プジョーを買う人にとってはこれはさして気にならないはず。むしろスポーティーに聞こえるだろう。ほどほどのロールに対して、粘りのある安定性を見せてくれるコーナーリングだが、スポーツカー的な刺激はなく、そう面白いという感じはなかった。また乗り心地を含め、その足回りの印象にはフランス車的な「ゆるさ」がなく、ビシッと引き締まったもの。シートといい、この足といい、206はフランス車好きのイメージとは違う、インターナショナルなクルマだ。ゆえに日本を含めた数多くの国で受け入れられる可能性が高いということだろう。フランス車度(というものがあるとすれば)では高い順にいうとルーテシア、ヴィッツ、206となり、トヨタ車よりフランス車度が低いように感じられた。

高速道路では110~130km/hくらいがエンジンの鼓動が感じられ、心地よい巡航速度。それ以上になるとタイヤの接地感がやや希薄になり、若干緊張を強いられる。まあ、日本の高速道路では別に問題はないし、乗用速度域が心地よいというのは素晴らしいことだ。

ここがイイ

何といってもそのスタイル。ヴィッツも素晴らしいが、それに勝るとも劣らない個性的で斬新な、しかも飛びすぎておらず万人受けする可能性を残したナイスなデザイン。特に5ドアがいい。ハッチバックのデザインなど、誰がやってもたいして変えようがないと思われていたが、最近のクルマはどれも見事に変身している。その好例が206だろう。

ここがダメ

明らかにダメ、という点は特に見当たらないが、全体にケチを付けようと思えば付けられるのは確か。例えばATにしても、MTがあるのだからATはもっと穏やかなプログラミングの方がいいともいえるし、ブレーキもかなり唐突に効くタイプなのでもっとじんわり効いて欲しいとか。ただこれは好みの問題なので、それが嫌なら別のクルマすればいいだけ。

総合評価

小型車ブームの中、価格も安いし、カッコもいいし、ブランドイメージもオシャレで文句なし、とくればヒットを約束されたようなもの。若い女の子からオッサンまで、誰が乗っても似合いそうな許容範囲の広さがある。

他の輸入車に比べてプジョーの販売が好調なのは、日本ではブランドイメージが非常にいいからだ。取り立てて目立った車種がなかったにもかかわらず、プジョーというブランドだけがどんどん良くなってきている。これは不思議。205がブランドイメージを確立したとインポーターはいうが、あの時代、プジョーにはまだそんなイメージはなかったと思う(友人が買った605など、エンブレムをプジョーと読んでもらえず国産新型車とよく間違われたものだ)。そうした「よく分からないまま良くなってきたブランドイメージ」に見事にフィットする新型車を、この期に投入できるあたり、お見事としかいいようがない。206は、「やっぱりプジョーはいい」とブランドイメージ確立に間違いなく貢献するだろう。

 

公式サイトhttp://www.peugeot.co.jp/cars/showroom/206/

 
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