キャラクター&開発コンセプト
207シリーズのワゴン。206SWの後継
2008年4月1日に発売された「207SW(ニーマルナナ・エスダブリュー)」は、207ベースの小型ステーションワゴンモデル。先代206SWの後継モデルとなる。
207シリーズとしてはハッチバック(3ドアと5ドア)とクーペ・カブリオレの「CC」に続く第3のモデル。プジョーは「ライフスタイルワゴン」と呼び、機能的な荷室を備えるのが特徴だ。年内の販売台数は207SWシリーズのみで1500台を予定している。
プジョーとシトロエンのインポーターが統合
これまでPSA プジョー・シトロエン・グループの輸入業務を行ってきたプジョー・ジャポン株式会社とシトロエン・ジャポン株式会社は2008年2月26日、両社の統合を発表。4月1日から「プジョー・シトロエン・ジャポン株式会社」として正式に業務を開始した。
これに伴って販売車種の見直しが行われ、シトロエンのC2、C3、C3プルリエルの日本国内での販売を終了。プジョーは比較的小さな1007、207、307、新型308、407、シトロエンはC4、C4ピカソ、C5(新型も控える)、C6という具合に、中核クラスをオーバーラップさせながら大小で棲み分けることとなった。
価格帯&グレード展開
ハッチバックとの価格差は少ない
日本導入モデルは、1.6リッター直4(120ps)+4ATの「207 SW」と1.6リッター直4ターボ(175ps)+5MTの「207 SW GTi」の2グレード。ボディカラーは前者に8色、後者に6色。内装は前者に3種類(黒ファブリック、黒レザー、ベージュレザー)、後者に1種類(黒レザー)。全車右ハンドルで、パノラミックガラスルーフ(電動シェード付)が標準となる。
今回試乗した207 SWと207 Cieloとの価格差は5万円。207 SW GTiと207 GTi(後者はパノラミックガラスルーフ非装備)との価格差は15万円しかない。あくまでスタイルや機能性で「お好みの方をどうぞ」ということになる。
■207 SW 1.6L直4(120ps)・4AT 269万円/290万円(レザー内装)
■207 SW GTi 1.6L直4ターボ(175ps)・5MT 335万円
なお、207シリーズの現ラインナップは以下の通り。
■207 1.6L直4(120ps)・5ドア 234万円(5MT)/239万円(4AT)
■207 Cielo 1.6L直4(120ps)・4AT・5ドア 264万円/279万円(レザー内装)
■207 GT 1.6L直4ターボ(150ps)・5MT・3ドア 264万円
■207 GTi 1.6L直4ターボ(175ps)・5MT・3ドア 320万円
■207 CC 1.6L直4(120ps)・4AT 309万円/330万円(レザー内装)
■207 CC Premium 1.6L直4(120ps)・4AT 344万円
■207 CC GT 1.6L直4ターボ(150ps)・5MT 344万円
パッケージング&スタイル
パッケージング的には「207のワゴン」、デザイン的には「小型407SW」
ボディサイズ(207ハッチバック比)は、全長4150(+120)×全幅1750(同)×全高1535(アルミ製ルーフレール込みで+65、絶対ルーフ高の差は+40)mm。ホイールベースは2540mm(同)。ボディ前半は同じなので、全長の+120mm分はすべてリアオーバーハングの延長分となる。要するに「SW」の見どころはMINIクラブマン同様、ボディ後半部だ。
そのリアスタイルは普通の207とかなり印象が異なり、むしろ「ミニ407SW」といった感じ。Z字型のリアクォーターピラーや切れ長のリアコンビランプがプジョー「7番台」のスポーティなデザインとマッチしている。
前席まわりは207シリーズでほぼ共通
前席の環境やデザインは基本的にハッチバックと同じ。今回試乗したベーシックグレードのシート生地は、ところどころ光沢のある独特のファブリックで、ドアトリムにも使われる。空調吹き出し口やセンターコンソールの縁取りはメタル調パネル。ベーシックグレードはアルミ調、GTiはマットグレー色となる。
エントリークラスでも装備を省かないのはプジョー車らしいところ。オートエアコンは左右独立調整式、ヘッドランプもワイパーもオートで、何とバックソナーまで備える。
フロントシートは、見た目も座った直後の印象も普通だが、走り出すと座り心地のよさが実感できる。一つ上の307クラスでも通用するシートだ。
居住性より積載性?
一方で辛口になってしまうのが、意外にもリアシート。まず背もたれが立ちすぎの着座姿勢があまりに苦しい。座った瞬間、思わずリクライナーを探してしまう。クッションも平板で薄い。ハッチバックは3ドアでも5ドアでも、ストローク感のある快適な座り心地だったのだが。
ハッチバックとSWでこうした違いが生れたのは、シートの折り畳み方法がハッチバックではダブルフォールディング、SWでは背もたれを倒すと座面が連動して沈み込む、プジョー言うところの「ワンタッチフルフラット可倒式」という具合に、まったく異なるから。言うまでもなく後者は一部の国産コンパクトカーでおなじみの方式で、主なメリットは床面をフラットにしやすいことにある。デメリットはリアシートのクッション(特に座面)が薄くなりがちな点だが、これはリンク機構がかさ張るためだ。
リアシート位置をハッチバックより後退させただけあって、足元は広く、ハッチバック系より大面積(約1.1平方メートル)のパノラミックガラスルーフが付く。しかもハッチバックで手動だったガラスルーフのシェイドは、SWでは電動となっている。
安全装備に関しては、6エアバッグ(前席前面×2、前席サイド×2、カーテン×2)は当然として、後席に3人分のフォースリミッター付き3点式シートベルトを与えた点が画期的。シートベルト警告灯も5人分備える。
荷室フロアはほぼフラット。3つ折トノボード、ガラスハッチ付き
荷室容量はハッチバックモデルの270Lに対して337Lと、2割増し。床面は完全にフラットではないが、ステーションワゴンらしい眺めとなっている。さらに広い開口部、3つ折りタイプのトノボード(後席からも開閉できる)、低い敷居、その敷居部分のステンレス製プレート、そしてガラスハッチ機能などなど、「あったらいいな」の機能がすべて揃っている。
床下には小物収納スペース、そして簡単な工具とジャッキがあり、そのまた下にスペアタイヤが収まる。ちなみに以前試乗したハッチバックのスペアタイヤはフルサイズだったが、SWではテンパーとなっている。
基本性能&ドライブフィール
基本的にはハッチバックと同じ
試乗したのは1.6リッター自然吸気エンジン(120ps、16.3kgm)のベーシックグレード。エンジンは207ハッチバックのベーシックグレードと同じで、つまりMINIの「クーパー」とも同じ、BMW言うところの「バルブトロニック」ユニットだ。ただし変速機はアイシン製6ATを採用するMINIと異なり、従来通りの4AT、通称「AL4(エーエルフォー)」となる。車重は207 シエロ(5ドア)の1280kgより40kg重い1320kgだ。
乗り始めの印象は、当然ながら207ハッチバックに近く、トルキーな直4エンジン、なかなかシフトアップしないAL4のシフトスケジュール、そしてギア比に至ってはまったく同じだ。街中では2速主体で、たまに3速という感じ。4速トップに入ることはまずない。AL4には学習機能があるので、ある程度それを織り込んで乗ってやる必要はある。直接比べないとはっきり言えない程度だが、ハッチバックよりキビキビ感は薄れているかもしれない。
知らず知らずに速く走れる
シャシー関係も207譲りだが、特にSWでは前後重量配分がハッチバックの63:37から61:39となりフロントヘビーが緩和されているから、心なしかコーナリング時のバランスや後輪の接地性はいい感じがする。サスペンションは「多くの荷物を積んで走る可能性を考慮し」、207SW専用チューンを実施。具体的には多少スプリングレートを高めて、ダンパーの減衰力を強化、といったところだろう。
いつものワインディングでは、タイヤが以前試乗した207シエロと同じ195/55R16のコンチネンタル( PremiumContact2 )、つまりドライグリップ性能がそこそこのタイプということもあって、強めのアンダーステアから弱アンダーステアまで容易に変化しつつ(時々ESPの作動灯が光り、穏やかに介入してくる)、一貫して安定感がある。体感的にはそう速く思えないが、舗装の荒れた路面でもサラーと知らず知らず誰でも速いペースで走れるのはフランス車らしくプジョー車らしいところだ。
マニュアルモードでも自動シフトアップするので、3速に上がる時は要注意。回転を高めに保つ「S」モードは走りやすいが、走行中にそのスイッチを押すのには慣れが要る。
実燃費は8km/L台か
今回はいつものコースを中心に120kmを試乗。参考ながら車載燃費計による燃費は撮影時の移動を含めて7.7km/L、純粋な試乗区間で8.6km/Lとなった。10・15モード燃費はハッチバック(11.6km/L)より0.4km/L低い11.2km/Lなので、8km/L台という目安は現実的と思う。指定燃料はもちろんプレミアムだ。
ここがイイ
万全の後席シートベルト、ディレクショナルヘッドランプ
日本車にとっては耳の痛い、全席3点式シートベルトの採用。しかも全席ベルトフォースリミッター付きで、全席シートベルト警告灯付き。いちいち「シートベルト締めた?」と後席の乗員に聞かなくて良い。
以前207シリーズやルノー・ルーテシアの時にも触れたが、フランス車が割とよく採用する「固定式ディレクショナルヘッドランプ」、分かりやすく言えばコーナリングランプの採用。光軸可変タイプのAFSよりも、こちらの方が明るさを実感しやすい。走行中には車速やステアリング舵角に連動して点灯するが、停車時でもステアリングを切れば点灯するから、一旦停止後の右・左折に便利。国産車にも採用例はあるが、もっと広まることを期待したい。
207シリーズで共通の部分だが、ダッシュボード中央のドライビングコンピューター。特に、簡単に手元のスイッチで切り替えが出来る2つの平均燃費計を備えているのがいい。平均燃費計が一つしかない、あるいは給油すると自動的にリセット、トリップメーターと連動など、様々なものがあるが、このタイプが一番使いやすいと思う。
ここがダメ
後席の居住性、4AT
後席の居住性はあまり考えられておらず、長時間の乗車は厳しいと言わざるを得ない。日本車ですら、座面に沈み込み機構を収める方式をやめて、座り心地がまずまずの単純なシングルフォールディングに戻りつつある今、プジョーが同じ轍を踏むとは。荷物優先ゆえの確信的な判断だろうが、ならば何のためのパノラミックサンルーフなのか。
これでMINIの(というかアイシンAW製の)6ATがあれば・・・・・・とやはり思わずにはいられないこと。
ダッシュボードのメタル調縁取りが明るいシルバー(ベーシックグレード)で、フロントウインドウ上部に反射するのが、気になると言えば気になる。
総合評価
プジョーとシトロエン
またまたフランス車のインポーターが変わってしまった。今度はプジョーとシトロエンが一緒になったのだから、本国のメーカー同様という意味では違和感はないとも言える。しかし実際のところ、そのしわ寄せはプジョーよりシトロエンに大きいのではないか。シトロエンからは、売りやすく、現実にも売れていた小さなクルマのラインナップが無くなってしまったわけで、ディーラーはそうとう大変だ。シトロエンは再びマイナーな道を行くしかない、という感は強い。
ラインナップの整理をしたのだから、合併によってプジョーとシトロエンを同じディーラーで売ればおもしろいのに、とも思うが、実際には各ブランドの地方ディーラーはまったくの別会社であるのが普通で、しかもプジョーでは「ブルーボックス」という新しいCIに基づいた店舗作りが、合併前からすすめられてきた。シトロエンもCIの徹底とまではいかなくてもそれなりの店舗になっている。つまり販売店も店舗に投資をしているわけで、今さら別のブランドを扱うわけにもいかない。このあたりのジレンマがどうにも歯がゆい。販売が落ち込む中で前向きに合併したはずだが、全体的な印象としてはかえって後退。何となくプジョー重視という感じもしてしまう。
魅力はワゴンであることに尽きる
となれば、プジョーはなんとしても売らなくてはならないだろう。今回試乗した207 SWに続き308も投入され、新車効果が期待されるところだが、実際には同じようなサイズゆえに、かえってマニア以外には今ひとつ違いが分かりにくいのが現状。207 SWが269万円で、308プレミアムは299万円。確かに30万円も違うが、この手のクルマを買おうという人に、この程度はたいした差ではない。SWによほど大きな価値を見出さない限り、308に行ってしまう人は多いのではないか。排気量にも差はないし、ディーラーはなかなか難しい売りわけを迫られている。またフランス車好きはシトロエン(場合によってはルノーも)も検討するわけで、1.6リッタークラスに様々なフランス車がひしめき合っている状況は、共倒れを心配せざるを得ない。クルマ販売そのものが落ち込んでいる昨今、1.6リッタークラスの日本車ともバッティングする、ある意味高価なフランス車がたくさん売れるとは思えないのだ。
となれば、207SWの価値は何か。それはワゴンであることに尽きる。実際の積載性ではなく、ワゴンの持つ記号性こそが最大の価値だ。輸入車ワゴンに乗っている、輸入車ワゴンが自家用車、というライフスタイルを評価する人にとっては、何物にも代え難いだろう。さらにそれがコンパクトであるということも、今の時代にはマッチしている。実際のところ、207SWのスタイリングは本当にオシャレ。アルミ製ルーフレールひとつにしてもその取り付け方からして独自だし、そのレールを握ると吸い付くような独特の感触があるなど、仕上げも細かい部分まで個性的だ。ガラスハッチとか、後席側からもリアゲート側からも荷物が取り出せるトノカバーとか、とても使いやすい。おシャレでアウトドアなカップルといったあたりには満足されそうだ。
クルマ好き向けではなく
反面、クルマ好きにとっては高速道路でもう何速か欲しくなる4ATのこととか、上りのワインディングで3速に入って失速気味になるクセとか、そのあたりがとにかく気になってしまって、5MTがあれば、だのと御託を並べることになりそうだ。まあ、そういうことを言う人には乗って欲しくない、というのがインポーターの本音かも。オシャレなワゴン、そこを評価してくれる人のためのクルマなのだから。実際、207でもハッチバックより、SWの方が売りやすいかもしれない。繰り返すが、クルマ好きより、おしゃれな人が乗るクルマ。その意味では快適性や電動シェード付パノラミックルーフなどの装備はとてもいいし、走りにもひとまず大きな不満はない。十分な質感、快適な前席シートなど不満はないはず。ブツブツ文句ばかり言うフランス車オタクは、シトロエンに行け(そのつもりで分けた)ということだろう。
こうしたやり方が功を奏するかはしばらく様子見だが、207SWが一時期のプジョーより、しなやかなフランス車らしさをかなり取り戻している点は好感が持てた。4速ATのプログラムだってフランス車らしいもの、と言えなくもない。プジョーのおフランス度が高まってきたことに関しては間違いなく、歓迎したいところだ。
試乗車スペック
プジョー207 SW
(1.6リッター・4AT・269万円)
●初年度登録:2008年3月●形式:ABA-A7W5FW ●全長4150mm×全幅1750mm×全高1535mm ●ホイールベース:2540mm ●最小回転半径:5.3m ●車重(車検証記載値):1320kg( 800+520 ) ●乗車定員:5名●エンジン型式:5FW ● 1598cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:77.0×85.8mm ●圧縮比:10.5 ●120ps(88kW)/ 6000rpm、16.3kgm (160Nm)/ 4250rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:11.2km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム ●タイヤ:195/55R16 (Contineantal PremiumContact2 ) ●試乗車価格:-万円( 含むオプション:- )●試乗距離:約115km ●試乗日:2008年6月 ●車両協力:株式会社ホワイトハウス プジョー名東










