キャラクター&開発コンセプト
コンセプトカー「プロメテウス」のスタイルを受け継ぐ
2000年9月に開催されたパリサロンでプジョーはコンセプトカー「プロメテ」(英語風だとプロメテウス。ギリシャ神話に出てくる巨人)を発表した。206似のつり目ヘッドライトこそ見慣れたものだったが、全幅191cmとスーパーカーもかくやという幅広ボディに、右2枚、左1枚の非対称ドア(しかも前後スライド式)、そして屋根まで回り込んだ巨大なフロントガラスなど、正直現実味は感じられなかった。だからすでにスクープされていた次期307の形がこれに近いものになると言われても、ピンと来なかったものだ。
ところがフタを開けてみると、今回新しく登場した307は確かに「プロメテ」の市販バージョンと言えるものだった。ディテールこそ常識的なものに落ち着いたが、全体のイメージは先代306の古典的美しさから一転して、かなり革新的だ。パッケージング的にも1530mmと、ハッチバックとしては異例に全高が高く(ちなみに「プロメテ」は1500mm)、もはや306とは全く異なったクルマになったと言える。プジョーでさえ自らこのクルマを「ミュータント(突然変異体)」と呼んではばからない。
307はPSAプジョー・シトロエン・グループが開発した新型プラットフォームを利用した最初のクルマとなる。つまりフランクフルトショーや東京モーターショーで発表された307ワゴン(SW)や、3列シートを持つミニバンが続々と登場してくるというわけだ。
景気に関して芳しくない状況が続く中、ここ数年、販売台数を着実に増やし続けているプジョー・ジャポンにしてみれば、この307を現在絶好調の206以上の人気車種にしたいはずだ。ヨーロッパでのライバルはVW・ゴルフ、フォード・フォーカス、あるいはホンダ・シビックなどなど事欠かないが、日本における直接的な競合車種はずばりVW・ゴルフしかない。ブランドイメージや信頼性、そして販売網などをほぼ完全に確立した感のあるゴルフに対して、307がハードウエア面や販売面でどの程度健闘するかが注目される。
価格帯&グレード展開
エンジンは1種類。3種類のグレードは基本的に内外装の差
グレードは「XSi」「XS」「XT」の3種類が用意されるが、その違いは主に内装の違い。XSiにはレザーシート(と17インチのアルミホイール)が付く。XSにはXSiと同じメタリック仕上げのセンターコンソールとカジュアルなファブリックシート。そしてXTには木目調のセンターコンソールにシックなベロア素材のシートが与えられる。ちなみにXS、XTとも16インチのアルミホイールが標準装備される。
XTは5ドアのみだが、ややスポーティなキャラクターが与えられるXSi、XSには3ドアも用意される。また全モデルで5段MTが選択できるのが嬉しい(これも306の人気の一つだった)。4段AT(シーケンシャルモード付き)は販売の主力となる5ドアモデルで選ぶことが出来る。エンジンは1種類。206、406などですでに採用されている2.0リッターDOHC16バルブ(137ps/6000rpm、19.4kg-m/4100rpm)。全車右ハンドルとなる。
価格は、XT(3ドア、5MT)の232.0万円から、XSi(5ドア、4AT)の274.0万円まで。ちなみにゴルフは1600ccのEが229万円から始まり、2000ccのCLiになると257万円、装備の豪華なGLiでは273.5万円、パワフルなターボエンジンを持つGTiは293万円からとなる。内容の違いをどう考えるかは別として、価格的には完全にバッティングする。
パッケージング&スタイル
モノフォルムデザインを採用した一回り大きなボディ
307のサイズは全長×全幅×全高:4210×1760×1530mmと、先代306(4030~4040×1695×1390~1400mm)に比べて一気に大きくなった。とは言え、これは307の安易なサイズアップを意味するわけではなく、206などの登場によりクラスをやや上級に移行させたと考えるのが自然だ。最も注目するべき点は全高が306比で140mmも一気に高くなったこと。ホイールベースは2615mmだ。
ここ数年、このクラスのクルマはモデルチェンジするとほぼ100kgはボディが重くなる感じだが、307はボディが一回り大きくなった分、燃費への影響もあり軽量化には気を使ったようだ。まるでスポーツカーのようなアルミ製ボンネット(スチール比、約マイナス6.5kg)、樹脂製フロントフェンダーなどの採用により重量増は60kg程度に抑えられたという。ちなみに5ドアのATモデルで車両重量は1300kg。
ボディが大幅に大きくなったおかげで室内は目線の高さを除けば小型のミニバンのようだ。特にヒップポイント、そして天井の高さが効いている。先代306はどことなくちょっと前のホンダ・シビックを思わせる低い乗車姿勢だったが、その名残はみじんもない。何となく最近の国産車を思わせる傾斜の強い、しかし圧迫感のないフロントスクリーンや、ぐっと前まで延びたサイドガラスの切り方など、完全にかつてのハッチバック・スタイルとは決別した感じだ。この辺りが基本的に「昔ながら」のゴルフと大きく違うポイントと言える。シートポジションも調節幅の広いアジャスター機構(チルト&テレスコピック・ステアリング、上下50mm、前後230mmアジャスト可能なシート)により、ほぼ満足いく。
小物入れも豊富で、前席シート下には高くなった座面を生かしてアンダートレイが設置される。後席の居住性やフットルームも十分だ。ラゲッジスペースは最大1328リッターとクラス最大級をうたう。
また安全装備としては、膨張速度を2段階に切り替えるスマート・エアバッグ・システム、前席サイドエアバッグ、前後パッセンジャーの頭部を保護するカーテン・エアバッグを全モデルで標準装備。ヨーロッパ車らしく助手席エアバッグのキャンセルスイッチもちゃんと付く。また前席には、追突時に頸椎を保護するアクティブシートバック&ヘッドレストが装備される。
骨太で挑戦的なデザインだが、モダンな美しさと実用性を兼ね備える
「口数の少ない清楚な美人」という感じだったピニンファリーナ・デザインの306に比べると、饒舌かつボディビルダー系筋肉質の307ではあるが、それでも駐車場に駐めた307を探す時など、他のクルマの合間からわずかに覗くちょっとしたラインがぱっと目に入ってくるのは大したものだ。これほど背が高いにもかかわらず、サイドから眺めた時など間違いなくスポーティだと言える。デザインがクルマを差別化する上で最有力になりつつある今、端正な美しさだけでは生き残れない、という時代の流れにのったデザインだ。
基本性能&ドライブフィール
軽快で静かなエンジン。オートマチックはもう一息
試乗車はファブリックの内装を持つXSの5ドアのオートマチック。
乗り込んでまず目に入るインストルメント・パネルは、昼間は白文字、夜になると照明によって赤いレタリングに変化する。大きめの文字で表示されるシフト・インジケーターもメーター内にあり、とても見やすい。ダッシュボード中央には、燃費、走行可能距離、時刻、外気温などが表示されるディスプレイが備わる。オートエアコンの操作スイッチもシンプルで分かりやすい。
リモコンでドアロックをするとハザードの点滅によってアンサーバックすると同時に、自動的にサイドミラーを折り畳むのも便利だ。雨滴感知式ワイパーといい、最近のヨーロッパ車はこのクラスでもハイテク装備満載だ。
さて走り出して感じるのはニューモデルだから当然と言えば当然だが、剛性感と静粛性の高さだ。エンジン音に気になるピークはなく、シュワーンという感じで軽快に回る。ロードノイズもそれほど目立たない。サスペンションのセッティングは固めだが、フランス車らしいしなやかさを感じるもの。タイヤも205/55R16と扁平率のかなり高いものだが、荒れた路面で揺さぶられる感じは許容範囲だろう。
1800rpmで最大トルク(19.4kg-m/4100rpm)の90%近くを発揮するというエンジンは、フラットなトルク特性と静粛性が印象的だ。オートマチックはシフトレバーをDから左に倒すことによりシーケンシャル・モードが可能。ただし街中を流す分にはDに入れっぱなしの方がかえってスムーズなように感じた。
しかしオートマチックのシフト・プログラムにはやや違和感を覚えた。妙にスポーティ(低めのギアを維持する感じ)に感じる時と、逆に加速が思ったように効かないと感じることがあるのだ。2速の守備範囲が広すぎるのがその原因のようだ。また1速と2速の間で微妙な加減速を行うような場合に、強めのシフトショックに見舞われることが何度かあった。このあたりは日常的に気になる部分でもあり、改善を望みたい。
やや重厚にはなったが、スポーティなハンドリングは健在
大幅に背が高くなった307ではあるが、コーナーを速いペースで駆け抜けてもそんなことは微塵も感じさせない。やや安定性重視に振られたセッティングにより、タックインを使ってグイグイ鼻先をインに向ける、という走り方は出来ないが、その分速いペースで高速コーナーを通過することが出来る。ちなみにリアサスペンションはプジョーが長い間採用し続けてきたトーションバー式トレーリングアームから、コイルスプリングの付いたトーションビーム式トレーリングアームに変更されている。
ステアリング・フィールも良い。乗り心地はドイツ車っぽくなったと言われるが、高めの運転ポジションと広いグラスエリアによる見晴らし良さ、軽快なエンジン・フィーリングと相まって、プジョーならではの個性は健在であると感じた。
高速巡航は160km/h程度までは快適。ただその域での直進性や走行安定感は感銘を受けるほどではない。
ここがイイ
インパネの質感はずいぶんよくなっている。シボのあらいざらっとした樹脂のインパネとつや消しウッドパネルが落ち着いた高級感を感じさせてくれる。たいへん静かな室内もまた、広くて快適。最近のクルマにしては珍しくAピラーが異例に細いため、三角窓と相まって右隅視界がいい。
ATのプログラムは初期の206などと比較すると、格段によくなっている。3速で引っ張って4速にはいるときにコンとショックが来るが、減速時にフランス車らしくシフトダウンするときのショックはなく、坂道でのエンブレもよく効く。ブレーキがたいへんよく効くのも印象的だった。
2DINのスペースがあるため1DINタイプのカーナビならいい位置に決まりそう。
ここがダメ
膝裏側が高くなっているシートはホールド、座り心地共にいいが、今ひとつ落ち着かない。小柄な人ならもう少し膝裏を下げたくなるだろう。
1速がローギアード、2速がハイギアードなため、2速ホールドでの低速ワインディングに難あり。マニュアルモードでシフトダウンしたときなど、1速へワンテンポ遅れて入るため、たいへんギクシャクする。といって2速のままだと日常は使いやすいが、スポーティーに走るにはトルクが足りないのだ。
リアシートは広くていいが、中央アームレストは低すぎ、左右は高すぎ。運転席のアームレストは中間で固定できないのが難。フロントウインドウの付け根あたりのガラスが屈曲しているのもちょっと気になる。
総合評価
フランス車もドイツ車っぽくなってきたな、といわれて久しいが、307にもそれは当てはまる。かつてのフランス車らしい過剰なまでの柔らかさはないし、ボディもがっちりしている。リアがトーションバーからコイルバネに代わったあたりも、「当たり前になっちゃったなぁ」とマニアには寂しく感じるだろう。しかし、部品の組み合わせ精度などもキッチリ向上しているし、乗った瞬間にちゃんとした上級車感を感じられるあたり、EU各国で売られる場合の競争力を強く意識しているようだ。そう、フランス車といえども世界で売ることを考えるようになってきたのだろう。ルノーと日産が組んだ現在、プジョーシトロエングループは、どうするのか。独自路線で行くなら競争力のある車両(必然的にかつてのフランス車とは違ってくる)を作る必要があり、その答が307なのだろう。
その結果として日本でもウケる車両となるわけだ。このクラスともなれば、装備に関しては日本車と遜色はないし、おフランスのクルマというおしゃれなプレミアがつくわけで、それはゴルフ並に高いものだ。ゴルフと307を比較すると307の方が輸入車らしいプレミアム感があるのは確か。ただ、VWにはビートルという強力なライバルがあるが。
モデルの女の子達のふだんの足は中古のゴルフが多いそうだが、それは「外車、ブランド力、値段」という選択肢で選ぶ場合の、恥ずかしくない選択結果。中古車が多く出回り始めたプジョーも、その仲間入りする日は近いはずだ。
公式サイトhttp://www.peugeot.co.jp/cars/showroom/307/feline/index.html









