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BMW 328i スポーツ新車試乗記(第658回)

BMW 328i Sport

(2.0リッター直4ターボ・8AT・586万円)

これぞ「第“3”のエコカー」!?
バルブトロニック直4ターボになった
新型3シリーズに試乗!

2012年04月13日

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キャラクター&開発コンセプト

主力エンジンは直4ターボに。燃費性能は大幅に向上


歴代3シリーズ。右奥から初代(E21)、2代目(E30)、3代目(E36)、4代目(E46)、5代目(E90)、そして6代目(F30)
(photo:BMWジャパン)

約7年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型3シリーズは、1975年に登場した初代(E21型)から数えて6世代目。コードネームは代々「E+数字」だったが、新型は新しい流儀に基づき「F30」と呼ばれる。欧州では2011年秋に発表され、日本では2012年1月に発売された。今のところ、新型に切り替わったのは本国でもセダンのみだ。

日本市場に真っ先に導入されたのは、新世代の2リッター直列4気筒・直噴ツインスクロールターボエンジン(N20B20A)を採用した「328i」。このエンジンは従来の直列6気筒NA版に代わるもので、最高出力は180kW(245ps)、最大トルクは350Nm(35.7kgm)と排気量3リッター並み。昨今のダウンサイジング化を象徴するユニットになっている。

 

新型BMW 328i
(photo:BMW ジャパン)

また4月9日には基本的に同型エンジン(形式は末尾が異なりN20B20B)ながら、最高出力を25%減の135kW(184ps)、最大トルクを23%減の270Nm(27.5kgm)に抑えた「320i」を追加している。

いずれも、このクラスでは最も多段の8速AT、そしてアイドリングストップ機構、ブレーキ・エネルギー回生システム、いわゆるエコモードの「ECO PRO(エコ・プロ)」モード等を採用。これらによってJC08モード燃費は328iで15.2km/L、320iでは16.6km/Lと(いずれも8AT仕様)、同クラスの純ガソリン車でトップクラスの低燃費を実現している。

価格帯&グレード展開

ひとまず「328i」と「320i」を導入


新型BMW 320i。と言っても外観における328iとの差はホイールくらいか
(photo:BMW ジャパン)

欧州には各種ガソリンエンジンやディーゼルターボもあるが、日本仕様は前述の通り、2リッター直4ターボと8速ATの「320i」と「328i」。4WDは今のところなく、すべてFR。最も安いのはバイキセノンヘッドライト等を省いたエントリーグレード「320i SE」(399万円)だが、おおむね320iは400万円台、328iは500万円台後半になる。

8.8インチワイドディスプレイやiDriveを備えたHDDナビは320iを含めて全車標準。320i SEと320i(標準グレード)は16インチタイヤを、328i(標準グレード)は17インチタイヤ(225/50R17)を、その他の上級グレードは18インチタイヤ(225/45R18)が標準。1シリーズで始まった「デザイン・ライン」は新型3シリーズにも導入され、内外装は「Sport」「Modern」「Luxury」といったテーマに沿ってコーディネイトされる。

またユニークなのは、320iに関してはSEを除く全グレードで6MTが選べること。6MTを積極的に用意する姿勢はMINIと同じだが、これを3シリーズでやるところがBMWらしい。

 

「デザイン・ライン」に合わせて、リモコンキーもカラーコーディネイト
(photo:BMW ジャパン)

■320i SE    399万円(8AT)
■320i     450万円(↓)・439万円(6MT)
■320i Sport   470万円(↓)・459万円(↓)
■320i Modern    ↓ 円(↓)・ ↓ 円(↓)
■320i Luxury     ↓ 円(↓)・ ↓ 円(↓)

■328i     570万円(8AT)
■328i Sport  586万円(↓)  ※今回の試乗車

■328i Modern    ↓ 円(↓)
■328i Luxury    ↓ 円(↓)

 

秋にはハイブリッドも追加

なお2012年秋には、ハイブリッド車の「アクティブハイブリッド3」も日本に導入予定。これは335i(欧州仕様のみ)に搭載される225kW(306ps)の3リッター直6ターボに、40kW(54ps)の電気モーターを組み合わせたもの。システム全体で250kW(340ps)と450Nm(45.9kgm)を発揮する。動力性能やキャラクターがオーバーラップする335iは、日本には導入されない模様。

パッケージング&スタイル

よりワイド感を強調。例のリングは角丸に


BMWの次世代モデル「i8」に似た顔つき

先代よりヘッドライト位置が低く、キドニー・グリルがよりワイドになったことで、ぐっとスポーティになった新型3シリーズの顔。左右に末広がりのヘッドライトは新型1シリーズほどファニーではなく、キリッとした感じ。ただ、それより先に視線が向かうのは、ほんの少しスクエアになったヘッドライト内のLEDスモール・ライト・リングか。おかげで新旧を見間違えることはない。

 

ここから見ると5シリーズに似ている

BMW伝統のL字型リアコンビランプ、3センチもワイドになったトレッドなど、後ろ姿は現行5シリーズと見紛うばかり。先代クーペのような水平基調のラインやワイド感が盛り込まれたことで、リアも普通にカッコ良くなった。

WBを50mm伸ばすも、サイズアップは最小限


より伸びやかになったシルエット。Cd値は0.29

ボディサイズ(先代比)は全長4625mm(+85)×全幅1800mm(同)×全高1440mm(+25)、ホイールベースは2810mm(+50)。つまり全長とホイールベースが伸びたわけだが、下の表を見ても分かるように、無闇に大きくはなっていない。クラウンどころか、マークXよりも小さいくらいだから、日本でも不自由ないサイズ。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
BMW 先代3シリーズ
(E90型)
4540 1800 1425 2760 5.3
レクサス IS 4585 1795 1445 2730 5.3
メルセデス・ベンツ
Cクラス(W204型)
4595 1770 1445 2760 5.1
BMW 新型3シリーズ
(F30型)
4625 1800 1440 2810 5.4
アウディ A4 4720 1825 1440 2810 5.5
トヨタ マークX 4730 1795 1435 2850 5.2
 

インテリア&ラゲッジスペース

先代から正常進化。手堅い機能、充実した装備


試乗車は「スポーツ」。定番の黒を基調に、アクセントラインやアルミパネルが備わる

インパネはBMWらしくドライバーを取り囲むようにセンター部分が7度傾いたもの。電子制御シフトレバーや改良型iDriveコントローラー等はすでに見慣れたもので、むしろ例の「デザイン・ライン」によるコーディネイトの方が目立っている。試乗車は黒基調に赤いラインが入った「Sport」だが、ベージュ内装と柾目のウッドパネルが張られた「Modern」なども斬新。

320iのエントリーグレードを含めて、HDDナビゲーション・システム、高解像度8.8インチ・コントロール・ディスプレイ、iDriveコントローラー、コンフォートアクセス(いわゆるスマートキー)などは標準装備。またシートの座り心地、ポジション調整幅も完璧。こういうところは本当にBMWは徹底している。

 

8.8インチのワイドモニター。各種の車両設定や情報表示も可能

メーターのレタリングは昼間は白、夜間はオレンジ(赤)
 

電子制御シフトレバー、iDriveコントローラーを標準装備

試乗車のフロントシートは背もたれサイドサポートの幅も電動で調整できた
 

もはや一昔前の5シリーズ並み


もはや広さに不足はない後席。座面は低めだが、それほど閉塞感はない

4代目あたりまでは、フットルーム不足が3シリーズの大きな課題だったが、今やそんな悩みは過去のもの。ホイールベース(以下WB)は3代目E36で2700mm、4代目E46で2725mmだったが、5代目で2760mmになり、新型ではさらに50mm伸びて2810mmと、もはや一昔前の5シリーズ並み。後席ニー・ルームは先代より15mm広くなったとのこと。

座り心地も悪くなく、短時間なら3人掛けも一応可能。たまに欧州車にある「背もたれが立ち過ぎ」感もない。

トランク容量は20リッター増

トランク容量は先代比20リッター増の480リッター。ランフラットタイヤ(スペアタイヤレス)が貢献しているのは確かだが、このあたりの広さも2世代くらい前の3シリーズからすれば隔世の感がある。もちろん後席の背もたれを倒してのトランクスルーも可能(320i SEを除いて40:20:40の分割可倒式)。

 

床下の奥は小物入れ。手前の床下にはマフラーが収まる

なお、全車標準の「コンフォート・アクセス」には、キーを携帯してリアバンパー下部に足を入れるとトランクリッドが開く「トランクリッド・スマート・オープナー機能」が備わる。荷物で両手がふさがっていても大丈夫というもの。

基本性能&ドライブフィール

ほぼ「全域」で最大トルク35.7kgm

試乗したのは「328i スポーツ」。パワートレインは前述の通り、2リッター直4ターボで、「バルブトロニック」「直噴」「ツインスクロールターボ」と、最先端ガソリンエンジンの「三種の神器」が揃ったもの。最大トルクの350Nm(35.7kgm)は1250~4800回転、つまり事実上ほぼ「全域」でフラットに発揮される。まるで電気モーターみたい。

 

「BMWツインパワー・ターボ・エンジン」と称される2.0リッター直4の直噴ターボ
(photo:BMW ジャパン)

実際のところ、その力強さには思わず感心してしまう。低燃費優先の「エコ・プロ」モードで大人しく走る限り、8速ATはこまめに変速して1200~2000回転くらいを律儀にキープするが、この領域で最大トルクを発揮するのは前述の通り。で、実際、1200回転からアクセルを少し踏み込めば、即座に分厚いトルクが立ち上がり、ジワリと加速する。8速もあるのに、安易にキックダウンしないのは、とにかくトルクがあるから。VWアウディの直噴ターボエンジンもすごいが、BMWの場合はバルブトロニックがある分、低回転域(アクセル開度の少ない領域)の効率で一歩リードしている感あり。

また、このエンジン特性を余すことなく引き出しているのが、前述の「エコ・プロ」モード。ノーマルモードに相当する「コンフォート」モードより常に一段高いギアを使い、スロットルに対するレスポンスもボヤッとするが、先を急がなければ、これでも問題ない。エアコン等の制御もエコ優先になるようだ。先回試乗したイヴォーク(あれも2リッター直噴ターボ)にも、こういうのがあればいいのに。

 

1シリーズ同様、アイドリングストップのオフボタンはエンジン始動ボタンと一体化されている。ちょっと押しにくい

エンジンが温まれば、アイドリングストップを開始。新型ポルシェ 911でもアイドリングストップする時代だから今や珍しいものではないが、1シリーズ同様に気になったのは、再始動時にちょっとだけ「ドゥルンッ」とショックがあること。スターターノイズは大きくなく、クランキング時間も短いが、クランクが回るときのトルクリアクションが主な要因という感じ。マツダのi-Stopのように洗練されたものと比べると、もう少し、と思ってしまう。まぁ、丸一日も乗っていると慣れてしまうが。

頭打ち感なし。0-100km/h加速は535iと一緒

新型328iの魅力はエコだけにあらず。最高出力は2リッターターボとしてはトップクラスの180kW(245ps)。そしてトルクも3.5リッター並みなので、中間加速に淀みは一切ない。特に「スポーツ」モードでは、低めのギアで鋭くレスポンスし、「コォォォォン!」と突き抜けるようなサウンドで一気にゼブラゾーン(6500回転以上)まで回り切る。最高出力の発生ポイントは5000回転と低いが、そこを過ぎても頭打ち感はまったくない。

しかも8ATの変速はDCTに迫るほど素早く、ギアが8段もあるから、つながりもやたらいい。シフトアップ直後の息つぎはほぼ皆無。感覚的には3リッター直6ターボの新型535i、あの加速感を4気筒で実現した、みたいな感じ。と書いた後、メーカー発表値を見たら0-100km/h加速は両方とも6.1秒だった。

スポーツ+で「駆けぬける歓び」


右が「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」の切替スイッチ。「エコ・プロ」、「コンフォート」(始動時のデフォルト)、「スポーツ」、そして一部モデルで「スポーツ+」が選べる

もちろんハンドリングもBMWらしく、あくまでドライバーが主役であり、ボディからタイヤの先に至るまでガチッ、ビシッとした剛性感、重量配分の良さなど、素材の良さで勝負している。電動パワーステアリング(ギア比を可変するバリアブル・スポーツ・ステアリングはオプションで、試乗車は未装着)の操舵力は軽く、街中では頼りないほどだが、スポーツモードでは適度に引き締まり、ステアリングと進行方向が直結しているようなダイレクト感が味わえる。この瞬間がBMW。

さらにBMWらしいのがトラクションコントロールを限定的に解除、つまりある程度までリアのスライドを許容する「スポーツ+」モードも備えること(Sport および一部オプション装着車のみ)。路面がウエットだったことを幸いに、あくまでクルマの動きを見る範囲で試したが、この場合は絵に描いたようなFRハンドリングが楽しめる。

ちなみに328iの場合、車検証数値による前後重量配分は見事に50:50(780kg:780kg)。4気筒ということでフロントヘビー感もない。ただ、新型1シリーズの仰天ハンドリングを思うと、今回はまあ期待通り、といったところか。モーターデイズで試乗した116iに比べて、328iは160kgほど重い上、ボディも一回り以上大きい。おまけに馬力はおよそ1.8倍、トルクはおよそ1.6倍もあり、少々持て余した、というのが正直なところ。1シリーズは振り回せて楽しめるが、225/45R18タイヤを履くこの328i スポーツはそこまでやるには限界が高すぎる。

最高速は250km/h(リミッター作動)


タイヤは全車ランフラット。試乗した「Sport」は18インチ

100km/h巡航は8速トップで約1700回転。この8速トップでは約70km/h、約1200回転での巡航も可能で、そこからアクセルを踏み込めば、瞬間的に数段まとめてキックダウンし、「335i、要らんかも」というくらいの勢いでグングン加速してゆく。最高速はリミッターが作動する250km/h(メーカー発表値)。ただ、320iの最高速も233km/h(6MTは235km/h)と十分ではあるが。

高速域の直進安定性も当然ながら問題なし。ただ、一昔前のドイツ車にあったドッシリ感はなく、やはり全体に軽い感じはある。静粛性は高く、特にロードノイズの遮断は入念。今回は土砂降りの中での試乗となったが、大きな水たまりに入った時のスプラッシュ音が、何か別の音に聞こえたほど。高速域ではドアミラー部分に少し風切り音が出たが、それも全体に静かだから聞こえた気がする。

乗り心地に関しては、やはり3シリーズということで決してメルセデスのようにしっとりした滑らかさはなく、やはり硬質だが、先代デビュー時のようなビシバシ感はない。タイヤはランフラットが標準だが、今やそこにネガはない。

試乗燃費は10.1~15.6km/L


空いた一般道を30km走って、15.6km/Lを出した時の図。かなり気合をいれてエコドライブ

今回はトータルで270kmを試乗。参考までに試乗燃費は様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が10.1km/L。「エコプロ」モードでエコドライブに徹した走った区間(約30kmを計3回)が14.0km/L、15.0km/L、15.6km/Lだった(いずれもエアコンはオン)。50〜60km/h巡行時の燃費がすこぶる良いことが、平均燃費を押し上げた格好。

ちなみに328iの10・15モード燃費は、3リッター直6の先代325i(12.6km/L)より24%優れる15.6km/Lだが、エコドライブの基礎知識と好条件さえあれば、実際にモード燃費で走ることは難しくない。下記の表にもあるように、燃費性能はこのクラスの純ガソリン車でトップクラスだ。

 
    エンジン 変速機 最高出力
kW(ps)
最大トルク
Nm(kgm)
10・15
モード
燃費(km/L)
JC08
モード
燃費(km/L)
新型BMW 320i 2.0L
直4ターボ
8AT 135(184) 270(27.5) 16.6
新型BMW 328i 2.0L
直4ターボ
8AT 180(245) 350(35.7) 15.6 15.2
先代BMW 320i(最終モデル) 2.0L
直4
6AT 125(170) 210(21.4) 15.2 14.2
アウディ A4 2.0 TFSI 2.0L
直4ターボ
CVT 132(180) 320(32.6) 13.8
アウディ A4 2.0 TFSI クワトロ 2.0L
直4ターボ
7速DCT 155(211) 350(35.7) 13.6
メルセデス・ベンツ
C200 BlueEFFICIENCY
1.8L
直4ターボ
7AT 135(184) 270(27.5) 14.0 13.6
メルセデス・ベンツ
C250 BlueEFFICIENCY
1.8L
直4ターボ
7AT 150(204) 310(31.6) 13.8 13.2
メルセデス・ベンツ
C350 BlueEFFICIENCY
3.5L V6 7AT 225(306) 370(37.7) 13.4 12.8
先代BMW 325i(最終モデル) 3.0L 直6 6AT 160(218) 270(27.5) 12.6 11.6
レクサス IS250 2.5L V6 6AT 158(215) 260(26.5) 12.2
レクサス IS350 3.5L V6 6AT 234(318) 380(38.7) 10.0
 ※「先代」とあるものを除き、表内はすべて2012年4月現在の現行モデル

ここがイイ

エンジン、熟成のiDriveなど

とにかくエンジン。一度このエンジンを味わえば、直6を懐かしむ気持ちはどこかへ行ってしまうのでは。バルブトロニック+直噴ターボならではの、ほぼ全回転域におけるトルク感、全回転域におけるレスポンスの良さ、さらに高回転域の軽快な吹け上がりといったものが、ステップ比の小さい8速ATによって途切れなく繰り返される。国産メーカーのエンジニアが乗ったら、これに対抗するガソリンエンジンを作ろうとする前に、「こりゃ勝ち目がない。うちはハイブリッドしかない」と腹をくくってしまいそう。VWアウディの直噴ターボもすごいが、バルブトロニック技術を手なづけた感のあるBMWが一歩先を行っている感じがする。

 

使いやすくなったiDrive。今から10年前に出た初期iDriveは、いったいどうなることかと前途多難に思えたものだが、今やショートカットキーも随分増えて、すっかり落ち着くところに落ち着いた感じ。操作スイッチを徹底的に減らす、という当初の理想は崩れ去ったが、機能は驚くほど豊富。今やこの手のものでは一番手堅いものに進化したかも。ディスプレイが横長で二画面表示がしやすく、位置もたいへん良い。また無理に格納式にしなくて正解。

右ハンドルでも、左足のスペースが狭いとは感じないこと。足もとが広いとは言いがたいが、FRながらアウディA4より広いことは確か。

ここがダメ

アイドリングストップ再始動時の振動。プリクラッシュ系安全装備の不備。その他、こまごま

新型1シリーズにもあったアイドリングストップからの再始動時の振動は、この3シリーズにも残っている。本文にあるように、慣れてはしまうが、無いに越したことはない。

走りに関しては、これだけハイレベルでありながら、ハイテク系の予防安全装備に見るべきものがないこと。この価格帯のクルマであれば、ボルボで言えばシティ/ヒューマンセーフティ、スバルで言えばアイサイトのようなプリクラッシュセーフティ系の安全装備をそろそろ標準で搭載しているべきだ。

また「ここがイイ」で評価したiDriveも、スマホやタブレットPCのような直感的な使いやすさがあるわけでなく、今となっては既存技術を最高に熟成・改良した、というもの。新しい提案がほしい。

地デジはサイドブレーキを引いたり、シフト位置をPに入れたりする必要はなく、停止するだけで表示されるが、いかんせん走りだすと画面には「走行中は音声だけでお楽しみください」みたいな表示だけになり、8.8インチディスプレイは無意味になる。ナビを見るには、いちいちボタン操作が必要だが、そうすると今度は停止しても地デジが表示されない。これはBMWに限ったことではないが、他社にあるように停車中は地デジ、走りだせばナビ表示で何ら問題ないので、出来れば方針を変更してもらいたいもの。

 

普段はエコプロモードのままでいい、という人も少なくないはずだが、実際にはエンジン再始動時には(アイドリングストップ時を除く)、デフォルトのコンフォートモードに戻ってしまう。あくまで走りとエコの両立を追求するというBMWらしい設定だが、走りだす度にいちいちエコプロモードを選ぶのが面倒に感じられた。他社のモデルでは、エコモードで終わればエコモードで始まる、というものが多く、それでいいような気がするのだが。もちろん、スポーツモードでエンジンを切っても、始動時にはコンフォートに戻ってしまう。

328iは確かにパワフルだが、こと日本で乗る限りは最高出力184psにデチューンされた320iでも十分かも。

総合評価

今までの「いいクルマ」とは違う

本文にあるように、まあ、ほんとうに素晴らしくよくできたクルマだ。快適で、よく曲がり、速い。一切文句なし、と言いたいところだが、「何だろう、乗った後のこの不思議な違和感は」と自問。どんなタイプのクルマでも、いいクルマは乗ればだいたいすぐに分かるもの。いわゆる「いいクルマ感」というのは、自分の体とクルマが一体になって、四輪が自分の足のように路面をつかみ、その上で思ったように加速し、曲がり、そして止まるという感覚だ。そしてそうした一連の動きを支えるガッシリしたボディ。トルクとパワーは踏むほどに盛り上がり、ギアはスムーズに変わり、しっかり重めのステアリングフィール。今までいいクルマと言ってきたのは、だいたいそんなクルマが多かったと思う。

だがこのクルマは違う。何しろすべてがウルトラスムーズだ。トルクもしくはパワー感はアクセルを踏んだ瞬間からやたら大きく、それが盛り上がることなくフラットに持続する。ギアが8速もあるせいか、何速に入っているかをドライバーには意識させず、まるで無段変速か強力な電気モーターであるかのよう。ステアリングは軽からず重からず、行きたい方向に意識を向けるだけという感覚で操作すればいい。それで軽々と曲がっていく。変に意識した方が挙動はばたつく。極端に言えば操作しなくてもいいと思えるほど。先代の分かりやすいスポーティさとは別物だ。

 

(photo:BMW ジャパン)

4輪は路面をつかんでいるはずだが、その感覚は薄く、それでいてグリップは強大。試乗中は土砂降りだったが、まるでドライのようにコーナーを駆け抜けていく。ランフラットタイヤなのに乗り心地がよく、路面のゴリゴリは伝わってこない。一枚フィルターをかけたような、まさにスマートな走り。燃費もすごくいい。これまで感じてきた「いいクルマ感」などすでに過去のものだ、と言わんがごとく、一段上のレベル(なのだろう、たぶん)にある走りと乗り味を提示する。

このクルマは誰もが「いいクルマだ」と評する類のものだと思う。快適性、上質感、速さ、そして燃費、さらにはブランド力、すべていい。となると、これまで「いいクルマ」と言ってきたのは、所詮クルマ好きのたわごとだったのか、とすら思う。クルマ好きとしてはちょっと悔しい気分の、まさに「次なる世代のクルマ」だ。しかし、これがいいのかと問われると、どうにも「うーん」と唸るしかない。

家電の状況がクルマ業界にもやってくる

この感覚は、そう、出てきたばかりの頃のiPadに似ているかも。オーソドクスなモバイルPCを長年使ってきた身としては、あの新しい感覚のモバイル機器はたしかにいいとは思ったが、馴染めなかった。新しいけど、やってることは別にモバイルPCで十分なのに、と思った。何より、自分でいじれる自由度がないことが不満だった。同じパッドでもアンドロイド系にはまだ未完成の楽しさがあった。

それに似た印象をこのクルマにも感じてしまう。今までのいいクルマは、よくできたPC。このクルマはiPadのようなものだ。同じ情報端末でも、使い勝手はまるで違う。ウルトラスムーズなGUI(グラフィック ユーザー インターフェイス)で、そこにiTunesによって管理されたアプリが載って、誰もが使いやすい機械となったiPad。その結果、苦労を重ねて使うPCというものが過去の遺物、あるいは業務用のツールとなりつつある。クルマもいよいよそういう段階に入りつつあるのかもしれない。

そういえばiPadなどアップル製品の好きな人は、BMW好きであることが多い。デザインや機能に対するこだわり、ブランドイメージなどに通じるものを感じるのだろう。iPadを持ち、BMWに乗るおしゃれなIT関係者は多い。そんな人にはたぶん、旧型よりも新型の乗り味の方がより好ましく思えるはずだ。

 

この方向性は本来、トヨタが目指していたものに近いかもしれない。しかしトヨタがここ数年ウロウロしてる間に、BMWがやってしまった。赤字に陥った日本の家電メーカーがiPadを出せなかったように、クルマに関してもiPadのような別次元の商品がまた海外から出てきてしまっている。ソニー、シャープ、パナソニックと大手家電メーカーが大赤字を出し、韓国勢に追い上げられる状況を尻目に、最高益を叩きだすアップル。このクルマに乗っていると、そんな状況がクルマ業界にもやってくるのじゃないかという危機感を覚えてならなかった。特にこのクラスのセダンが全く弱い日本車にとって、そしてブランドという目に見えないバケモノをコントロール出来ない日本のクルマ業界にとって、新型3シリーズはまさに脅威だろう。

 


試乗車スペック
BMW 328i スポーツ
(2.0リッター直4ターボ・8AT・586万円)

●初年度登録:2012年3月●形式:DBA-3A20
●全長4625mm×全幅1800mm×全高1440mm
●ホイールベース:2810mm ●最小回転半径:5.4m
●車重(車検証記載値):1560kg(780+780) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:N20B20A
●排気量・エンジン種類:1997cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ・縦置
●ボア×ストローク:84.0×90.1mm ●圧縮比:10.0
●最高出力:180kW(245ps)/5000rpm
●最大トルク:350Nm (35.7kgm)/1250-4800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン
●使用燃料・プレミアムガソリン ●燃料タンク容量:60L
●10・15モード燃費:15.6km/L ●JC08モード燃費:15.2km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動)
●サスペンション形式:前 ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット+コイル/後 5リンク+コイル
●タイヤ:225/45R18(Good Year Efficient Grip RunOnFlat)
●試乗車価格:586万円 ※オプション:- -円
●ボディカラー:ブラック・サファイア ●試乗距離:約270km ●試乗日:2012年4月
●車両協力:Nagoya Minami BMW

 
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