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プジョー 508 SW グリフ新車試乗記(第648回)

Peugeot 508 SW Griffe

(1.6L直4ターボ・6AT・437万円)

1.6ターボで新登場!
昔の面影をたずさえて、
プジョーの旗艦が戻ってきた!

2011年12月16日

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キャラクター&開発コンセプト

プジョーの新型フラッグシップ


プジョー 508/508 SW
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

4ドアセダンの「508」とステーションワゴンの「508 SW」は、プジョーの新型フラッグシップ。クラスを表す三桁台の数字は「5」だが、名実共に407シリーズの後継車であり、またかつての旗艦セダン「607」の販売がフランス本国でもすでに終了しているため、実質的にはその後継でもある。日本では2011年6月9日に発売された。

メカニズム面での特徴は、最上級セダンでありながら日本向けを1.6リッター直4・直噴ターボに統一し、排気量を大幅にダウンサイジングしたところ。ちなみにPSAにとっては、今やこれがガソリンエンジンの最大排気量。これ以上の上位エンジンは全てディーゼルになる。

 

プジョー SR1 (2010年)
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

またフロントサスペンションを新開発した新世代シャシーも採用。デザイン面では2010年に発表したコンセプトカー「SR1」で提示された新しいプジョーデザインを採用した初の量産モデルでもある。

価格帯&グレード展開

計4モデルで、374万円からスタート


508 セダン グリフ
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

日本仕様のパワートレインは全車共通で、1.6リッター直4ターボの6ATのみ。ボディタイプはセダンとワゴンの2種類。グレードも2種類で、ファブリックシートや16インチホイール仕様の「アリュール(Allure)」、レザーシート、17インチホイール、バイキセノンヘッドライト、ヘッドアップディスプレイ等を標準装備する上級グレード「グリフ(Griffe)」がある。

全車共通の装備は、パドルシフト(プジョーの6AT車として初)、スマートキー、フルセグTV&ETC付きHDDナビ、バックソナーなど。価格を考えると、装備はかなり充実している。メーカーオプションには、アリュールに光軸可変式キセノンヘッドライト(15万円 ※グリフには標準装備)、グリフには18インチホイール(6万円)を用意。ボディカラーは主に寒色系で全8色から選べる。

 

508 SW アリュール
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

【4ドアセダン】
・508 アリュール    374万円
・508 グリフ      414万円

【ステーションワゴン】
・508 SW アリュール  394万円
・508 SW グリフ    437万円  ※今回の試乗車

パッケージング&スタイル

新世代のプジョーデザイン。ボディサイズは607に匹敵


試乗した508 SW グリフ(18インチホイール装着車)。ボディカラーはパールホワイト

全長は407よりもセダンで105mm長く、SWでは40mm長い。ホイールベースも90mm伸びて2815mmもある。実はかつての旗艦セダン607と大差ない大きさだ。

新世代プジョーデザインの特徴は、メーカーの言葉を借りれば「ひとつの塊から削り出されたような面構成」、「ロングノーズが生み出す疾走感」、「均整のとれたプロポーション」、「小さめのグリルが浮き上がって見えるフローティンググリル」とのこと。特に最後のグリルについては、昔のプジョーやピニンファリーナを思わせる上品なもので好感度が高い。ボンネット先端のライオンマークも、従来はメッキで囲んだ黒背景に配していたが、今回はぐっとシンプルになった。

 

リアバンパーは最近では珍しいすっきりしたデザイン。リアクォーターまで一枚ものに見えるサイドウインドウも効いている

試乗したSWのスタイリングは、ステーションワゴンとしては割と一般的なものだが、ノーズはプジョーの主張とは違って短めで、リアオーバーハングも短め。それでいてキャビンにはボリューム感があるので、何となく背の低いワンモーションフォルム風でもある。スポーティさや空力を重視して、ルーフを後方でスラントさせるのは今のトレンドだ。

 

グリルの中に気付かないくらいに小さく「PEUGEOT」のロゴがある

Cd値(空気抵抗係数)はセダンで0.26、SWで0.27と優秀
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm) 最小回転半径(m)
■プジョー 407/407SW 4685/4775 1840 1460/1510 2725 5.8
■VW パサート/パサート ヴァリアント 4785 1820 1490/1530 2710 5.3
■プジョー 508/508SW 4790/4815 1855 1455/1505 2815 5.9
■シトロエン C5/C5 ツアラー 4795/4845 1860 1470/1490 2815 6.1
■プジョー 607 4875 1830 1460 2800 5.7

インテリア&ラゲッジスペース

質感で勝負。パドルシフトやナビは全車標準


写真はレザーシートやHUDを標準装備する「グリフ」。内装色はブラックのみ

インパネは特に奇をてらわず、質感で勝負という感じ。操作系もソツなくまとめられ、装備も充実。電子制御パーキングブレーキは当然として(日本車ではまだ当然ではないが)、スマートキーも全車標準。ドアハンドルに指をかければ解錠、ドアハンドルに触れれば施錠、という最近多いパターンで(トヨタ車などと同じ)、エンジン始動もダッシュボード右端のボタンで行う。

 

PSAが最近採用するキーは大型で、けっこう重い。落とさないように注意が必要

またHDDナビゲーションシステムも全車標準。パナソニック製(ストラーダベース)と思しきもので、60GBのミュージックサーバー、フルセグデジタルTVチューナー、Bluetooth、iPod 対応USB、VICSビーコン用受信アンテナ、ETCが装備されている。操作はもちろんタッチパネル。

 

またプジョーのトルコンAT車では初採用というパドルシフトも嬉しいところ。RCZの6AT車にも無かったものだが、これから他モデルにも装着されてゆくのだろう(たぶん)。パドルはコラム固定式なので、ステアリングのギアレシオが遅い508の場合、コーナリング中は手元からレバーが離れがちだが、操作感そのものは良い。もちろん、Dレンジのままでもパドルシフトは有効で、放っておくと再びオートに復帰する。

 

前席用のドリンクホルダーはここ。ただし日本で一般的な500mLのペットボトル(緑茶など)には入らないものが多い

ステアリングホイールにはオーディオやクルーズコントロールなどの操作スイッチを配置。なにぶんシトロエンではC4クラスでもステアリング上がスイッチだらけだから、このあたりは当然か。オーディオの操作スイッチは(特に選局・選曲)は慣れが必要だが、クルーズコントロールは使いやすい。

 

グリフに標準装備のヘッドアップディスプレイ
(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

そして上級グレードの「グリフ」にはヘッドアップディスプレイも標準装備。ポリカーボネート製スモークパネルに、速度、クルーズコントロール/スピードリミッター設定速度などを表示する。ただ、メーター自体の視認性が高いので、特に必須ではない。試乗中、ほとんど見ることはなかった。

「アリュール」はファブリック、「グリフ」はレザー


フランス車には珍しく? 日本仕様の内装色はブラックのみ

シート素材は「アリュール」がファブリック、上級モデルの「グリフ」がレザーだが、両方ともシートヒーター付で、フル電動。座り心地は同社の最高級セダンゆえ文句なし。ヘッドレストはそら豆型で、追突時のむち打ち症リスクを軽減する。

 

後席のサイドウインドウにはシェイドも備わる

後席のフットルームは、前述のようにホイールベースが407より90mm、607より15mmも長いおかげで十分。ニースペースは407より53mm大きくなったという。座り心地は硬めだが、こちらも前席同様、長時間座っていても疲れそうにない。

 

ガラスルーフにはもちろん電動シェイド(100%遮光タイプ)も備わる

またSWには「パノラミック ガラスルーフ」も標準装備。先代407SWでも十分に巨大だったガラスルーフだが、508SWではさらに300mmも前後に長くなり、「今にも落ちてきそうな空」が頭上に広がる。夏場はシェイドを閉めっぱなしにしそうだが、この眺めは捨てがたい。

エアバッグは6個を標準装備。欧州衝突安全評価EuroNCAPでは最高評価の5つ星を獲得している。

荷室容量は407より大幅にアップ


SW グリフのテールゲートは電動になる

トランク容量はセダンが407(407リッター)より108リッター増えて515リッター、SWは407 SW(453リッター ※トノカバーより下のことだと思われる)より112リッター増えて565リッター(カタログや一部広報資料には560リッターとあるが、ここではプレスリリースの数値を記した)。

 

フラットにしたところ。寝転がると、ガラスルーフ越しに空が広がる

SWの場合、後席の背もたれを荷室側のレバーでワンタッチで畳めば、容量は1598リッターに拡大。荷室長は2メートル近くある。またSWのグリフはスイッチ一つで開閉できる「エレクトリックテールゲート」も標準装備する。スイッチを押してからの反応が遅いのが玉に瑕だが、もちろん便利。

 

床下にはフルサイズ(ただし16インチ)のスペアタイヤを搭載

細かいところで気になったのは、トノカバーやラゲッジネットを内蔵するバーの脱着が面倒だったこと。コツを要する上に、けっこう重いので、非力な女性には辛い作業だと思う。

基本性能&ドライブフィール

1.6ターボは、予想外に活発


もう何度このエンジン搭載車に乗ったことか・・・・・・。PSA・BMW共同開発の1.6ターボ

試乗したのはワゴンの上級グレード「508SW グリフ」。エンジンは全車、プジョー・シトロエンとBMWが共同開発したユニットで、最高出力156ps(115kW)、最大トルク24.5kgm (240Nm)の1.6リッター直噴ツインスクロール式ターボ。要するに現行のシトロエンC5と同じだ。先代407はC5前期型と同様に2.2リッター直4もしくは3.0リッターV6だったから、典型的なダウンサイジング。ただし変速機は407やC5と同じアイシンAW製6ATでも、改良型の第2世代に進化している。

車重は先代407よりセダンで40kg、SWでは70kg軽く、それぞれ1520kgと1560kg。つまりSWのパワーウエイトレシオはちょうど「10kg/ps」だ。ちなみにC5のセダンは1620kg、ツアラー(ステーションワゴン)は1680kgだから、508はC5より100~120kgも軽いということになる。

 

C5ではやや非力な感じがした1.6ターボだが、そんな車重の軽さもあってか508の動き出しは軽い。1400回転から最大トルクを発揮するエンジンも手伝って、力強く滑らかにスタートし、ステップ比の小さいギアをつないで小気味よくスピードを乗せて行く。特にスポーツモードやマニュアルモードで高回転まで引っ張った時のサウンドは、なかなかスポーティ。どこかで聞いた音だなぁ、と思ったら、そうかBMWの新型1シリーズか、と思い当たった。

また改良型の6ATは変速プラグラムやギア比を見直して変速をよりスムーズにしたというもので、心なしかトルコンATにありがちなパワーロス感も従来型より減っている感じ。1シリーズのような8速ATに比べてカバーする領域は狭く(特に6速トップは回転が上がりがち)、ステップ比も大きめだが(なかなか2速に落ちないことがある)、大きな不満はない。

ハイドロにコイルスプリングで対抗

試乗車はオプションで235/45R18という大径ワイドタイヤを履くため(標準サイズはアリュールが215/60R16、グリフが215/55R17)、路面の凹凸を律儀に伝えてくるが、さすがにこのボディサイズ、このクラスだけに、フラット感は高い。少なくとも街中での常用速度域でなら、ハイドロのシトロエンC5に対して見劣りする部分は無いと思う。

フロントサスペンションは、407のドロップリンク付ダブルウィッシュボーンに代えて、マクファーソンストラットを新採用。リアは407と同じマルチリンクサス。ホイールベースはシトロエンC5と同じ2815mmなので、フロア自体はC5と共通する部分が多そうだが、要はコイルスプリングでハイドロ並みのシャシー性能を追求した、というものか。できれば、タイヤのサイズや銘柄を揃えて、一度C5と乗り比べたいところ。

 

タイヤのグリップが強力なため、ワインディングロードでは基本的にアンダーステアを維持しつつ、ステアリングを切れば切っただけグゥーンと曲がって行くタイプ。ステアリングギア比がスローなのでシャープではないが、高速コーナーへは安心して入っていける。特にスポーツモードでの走りはおすすめ。いい感じで高回転を維持してくれるので、ほとんどパドルシフトに触れる必要はない。

パワステはステアリングフィールと燃費改善を両立する電動油圧式、つまり電動ポンプを必要な時だけ動かして油圧を発生させるタイプ。今や「フル電動」もありだと思うが、PSAの判断はこのクラスにはまだ尚早というか。

 

燃料計の左隣にあるのは、今どき珍しい油温計。水温計(右)より上がり方は遅いが、最終的には同じ90度C程度に落ち着く

ただ、試乗車の場合は鷹揚なハンドリングに対して、タイヤの反応だけが妙にクイックで、この点でも穏やかな16インチや17インチタイヤの方がマッチングは良さそう。その方が「プジョー伝統のしなやかな乗り心地」(プレスリリース)も味わえると思う。

ESPに関しては、最新世代の「ESP8.1」を搭載。わざとアンダーステアを出したり、ブレーキを残しながらコーナーに入る、といったことをすると、ESPが各輪個別にブレーキ制御するのが体感できるが、介入の仕方はごくスムーズ。また雪道などでトラクションを確保する「インテリジェント・トラクションコントロール」や傾斜3%以上の坂道発進で2秒間ブレーキを保持する「ヒルスタートアシスタンス」も採用されている。

ハイ・ローを自動切替。夜間の視界もさらに良くなった


グリフに標準装備(アリュールにオプション)のLEDポジションランプ付キセノンヘッドライト

ここ数年のプジョー・シトロエン上級車で感心するのが、早くから最新のライティングシステムを採用していること。グリフに標準装備の「ディレクショナル・ヘッドライト機能」付キセノンヘッドライトは、時速5~160km/hの範囲内で、ヘッドライト光軸を車速や舵角に合わせて左右に可変してくれるし、また40km/h以下では舵角やウインカーに連動して固定式コーナリングライトも点灯する。また同じくグリフには、片側7つのLEDから成るポジショニングランプも付き、被視認性も高められている。

グリフにはさらに、ルームミラー裏のカメラで先行車のテールランプや対向車のヘッドライトを感知し、ハイビームとロービームを自動的に切り替える「インテリジェント ハイビーム」も標準装備。これは欧州車では最近一斉に採用が始まっているものだ。

少なくとも508のものは、郊外の真っ暗な道を走ると、見事に先行車のリアコンビライトや対向車のヘッドライトに反応してハイとローを切り替えてくれる。初めて体験するとなかなか感動的だ。ただし手動でハイビームを使用してしまうと、作動がキャンセルされるので、その時はスイッチを押して再びオンに戻す必要がある。また街灯や信号がある街中では、基本的にロービームのままだ。おそらくは単純に「前方の光」に反応して切り替えていると思う。

試乗燃費は8.7~13.6km/L

今回はトータルで230kmを試乗。試乗燃費はいつものように一般道と高速道路を特に燃費を意識することなく走った区間(約90km)が8.7km/L。燃費を意識して一般道を走った区間(約120km)では12.0km/Lを維持した。また高速巡行(80~110km/h)での燃費は、区間が20km程度と短く、アップダウンもあったのであくまで参考ながら13.6km/hだった。100km/h巡航時のエンジン回転数は約2200回転と少し高めだ(1.6ターボとしては低め)。

 

10・15モード燃費/JC08モード燃費は、セダンが11.0/11.0km/L、SWが10.8/10.6km/L。さらにアイドリングストップ機能をもあれば・・・・・と思うのだが、PSAはまだそこまでは対応していない。タンク容量は72リッターと大きいので、足は長そうだ。

ここがイイ

スタイリング、価格、エンジン

真正面からの見た顔は、端正かつ上品。威張った感じがしないのがいい。でもワイド感はあるから、それなりに存在感もある。ドイツ車を含めて最近の欧州車はグリルデザインを控えめにしてきており、この508の顔もそのトレンドに合ったもの。今になってアグレッシブな顔つきになり始めている一部の日本車が何だか心配だ。

知る人ぞ知るイイモノ感があって、374万円からという価格設定。クルマ好きからそうじゃない人まで、予備知識がなければ、もっと高価なクルマだと思うのでは。

エンジン。出足から力があるし、ピークパワーも十分。回した時のサウンドもいい。そして改良型6ATとのマッチングも良好。燃費性能もこのクラスとしては十分だと思う。

ここがダメ

アイドリング時の微振動、標準装備のHDDナビ

Dレンジでのアイドリング時、シトロエンのC5(1.6ターボ+6AT搭載車)でも少し気になった微振動がこの508にもあること。主にステアリングから伝わってくるもので、助手席では気付かないくらい軽微なものだが、いちおう参考までに触れておく。

本文にある通り、オプションの18インチタイヤはスタイリング面では映える半面、乗り心地やハンドリング面では相応のネガが出る。プジョーらしさを味わうなら、標準タイヤが良さそう。

標準装備のHDDナビは操作性など使い勝手がいまいちで、これならオプションの方が良いのでは、と思う。またヘッドアップディスプレイも必要なし。詳細は以下で。

総合評価

茶髪だった娘が黒髪に戻ったような

実は密かに今乗っている11年落ちメルセデス・ベンツ Cクラスステーションワゴン(W202)の後釜になるクルマを探している。別に密かにやらなくてもいいのだが、代えようかな、などとマジで考えるとW202がそれに気づいてぐずり始めそうなので、密かに数年後に買い替える時の目星をつけようとしている段階だ。W204(現行Cクラス)が出たときには、これは、と思ったのだが、乗ってみて正直なところ、W203よりはいいかなという程度。一方で、シトロエン C5のツアラー(ワゴン)は気になって仕方なかったのだが、この歳になってまた泥沼にハマリたくないという気持ちが心のどこかにあって踏み切れないでいた。カミさんも乗る日常使いのクルマなので、信頼性や整備性も重要。10年乗ってきたW202はその点では優秀で、先日もアイドリングでの微振動が気になったが、プラグコード交換で一発完治。ヤレも少ないほうだと思う。

となると、気になるのはビッグマイナーチェンジしたW204だ。今年のCOTY(日本カー・オブ・ザ・イヤー)で輸入車部門獲得というのは、ニューモデルでもないのにちょっと変だと思うが、見る限り随分良くなっていて、フルモデルチェンジにも近いのだろう。まだ乗ってないので、年明けにはぜひ試乗してみたい。またそのCクラスにCOTYの得票数で肉薄していたのが508だった(Cクラスの174点に対して170点)。モーターデイズで絶賛したBMWの新型1シリーズ(90点)を圧倒していただけに、年内になんとか試乗しておきたいと思った次第。しかも今回の試乗車はSWなので、C5 ツアラーの非ハイドロ版という感じでもあり、個人的にも欲しいか欲しくないか、気になるモデルということになる。

 

で、試乗の結果だが、508 SWは後釜候補入りを果たした。いくつか気に入った点を挙げてみると、まずはスタイリングだ。モノフォルムっぽくもありながら、ちゃんとワゴンらしいスタイルになっているのは、セダンが存在しているから。セダンなしでデザインすると、単なる5ドアハッチバックになってしまいがちだが、508 SWはいかにもステーションワゴンらしくていい。マークX ジオに似ているという意見もあったが、あちらはあくまでモノフォルム。これはまさにワゴンだ。

グリルもエグさが無くなって、素直に良くなったと思う。昔のプジョーみたいな奥ゆかしさが戻ってきた。フォルクスワーゲンもプジョーも、やっと本来の控えめな雰囲気を取り戻した。茶髪だった娘が黒髪に戻ったような気分。グリルが主張しすぎる時代が終わって良かった、と思うのは我々だけではないはず。そしてパッケージング面でも装備面でも、そして全体の質感の面でも不満はない。つまりクオリティ、ブランド力、「いいもの感」といった要素を含めて、道具としてのクルマとして不満なし。

 

(photo:プジョー・シトロエン・ジャポン)

そしてなにより、走りが良かった。オプションの18インチタイヤを履き、それゆえ「猫足」には思えなかった試乗車だが、その分、FFらしい素直でスポーティな走りが楽しめた。アイシンAW製の6ATが全くフランス車らしからぬ的確な変速をするし、今年乗った試乗車の中では最も多く搭載されていた1.6ターボエンジンも、軽量化が効いているのか、大柄なボディに見合わない軽快な加速を見せてくれる。はっきりドイツ車っぽい乗り味だと思った。試乗燃費が今ひとつだったのも、スポーツモードで走りまわったがゆえ。ちょっと高めの回転を維持するSモードが楽しいクルマだったのだ。

しかし、こういった4気筒の直噴ターボで欧州のガソリンエンジンは開発終了なのかと思うほど、今はどのクルマに乗ってもこの手のエンジンが載っている。VW・アウディの1.4直噴ターボ+DCTとか、PSA・BMWの1.6直噴ターボ+多段ATとか。あちらではディーゼルが主力ゆえ、ガソリンエンジンに今さら投資しても効果はないとでも思っているかのよう。逆に言えば日本のメーカーには、まだガソリンエンジンの分野で勝機があるかもしれない。

昔のフランス車のように緩々とした足ではないが、エンジンやATも定評があるものとなれば、信頼性も整備性も高そうだ。車幅がワイドなのは昨今もはや致し方ないと諦めて、W202の後釜候補に入れておきたい。

欲しいのは「つながるガソリン車」

ただ、一つ大きな疑問を感じたのはナビゲーションシステム。プジョー・シトロエンは組み込みナビを持たないようだから、508もストラーダの2DINサイズHDDモデルをコンソールセンターの低い位置に収めているが、これは正直見にくい。また渋滞情報もVICSからだが、同時にスマートフォンで見たGoogle Mapの渋滞情報のほうが詳細で正確だった。このように、ナビ環境はここ数年で一変するのではないか。その意味では後付ナビの標準装着はやめてオプションとし、その分だけ価格を引き下げた方がいいと思う。今でも十分安めの価格設定だが、ここからさらに30万円くらいは下げられるのではないか。セダンなら348万円で出せるはず。これなら相当なインパクトがある。ついでに言えばヘッドアップディスプレイもほとんど必要を感じなかったので、それを省けばさらに安くできると思う。

そんなわけで508は、ガソリン車としてはとても素晴らしいクルマだった。日本車がつまらないガソリン車と、実用性に乏しいEV&選択肢の少ないHVとPHVという極端なラインナップとなる中で、欧州車は素晴らしくよく出来た楽しいガソリン車(と本国ではディーゼル車)で勝負している。ただ、21世紀も10年以上過ぎて、まだこれか、という感は否めない。日産が電気自動車リーフを市販し、トヨタがまもなくPHVを市販しようという時期に、ガソリン車として素晴らしいクルマを出されても、面白みは少ない。

ということでCOTYでは、リーフとCクラス(あるいは508)のどっちがイヤーカーにふさわしいか、という投票になったようだ。ネットにつながる電気自動車(でもクルマとしての実用性は脆弱)と、外付けナビのダウンサイジングガソリン車(クルマとしては文句なし)との戦いは、勝負がつきにくい。あまりに両極端だからだ。未来への可能性に賭けてのリーフ受賞だったのだろうが、EVの航続距離を伸ばすこともまだまだ難しいし、ガソリン車をEVほどの環境性能にするのも、これまたかなり難しい。

 

ということで、実は今一番欲しいのは「つながるガソリン車」ではないか。これは現在の技術で、すぐに実現できるものだと思う。その意味ではダイハツのミライースやスズキのアルトエコ、またはマツダのスカイアクティブ車(デミオなど)を「つながるクルマ」にできたら、と思う。来年はPHVの年になりそうだが(ハチロクはマニア向けだし)、ガソリン車も「つながるクルマ」にすれば、まだまだ需要は喚起できるはずだ。そしてそれができるのは日本のメーカーのはず。来年こそ、そのあたり、ぜひがんばってもらいたいものだ。

試乗車スペック
プジョー 508 SW グリフ
(1.6L直4ターボ・6AT・437万円)

●初年度登録:2011年6月●形式:ABA-W2W5F02
●全長4815mm×全幅1855mm×全高1505mm
●ホイールベース:2815mm ●最小回転半径:5.9m
●車重(車検証記載値):1520kg(-+-) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:-
●排気量・エンジン種類:1598cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置
●ボア×ストローク:77.0×85.8mm ●圧縮比:10.5
●最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
●最大トルク:24.5kgm (240Nm)/1400-3500rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/72L
●10・15モード燃費:10.8km/L ●JC08モード燃費:10.6km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル
●タイヤ:235/45R18 (Michelin Primacy HP ※オプション。グリフの標準サイズは215/55R17)
●試乗車価格443万円 ※オプション:18インチアロイホイール 6万円
●ボディカラー:パールホワイト
●試乗距離:約230km ●試乗日:2011年12月
●車両協力:プジョー名東(株式会社ホワイトハウス)

 
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