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BMW 530i Hi-Line パッケージ新車試乗記(第294回)

BMW 530i Hi-Line Package

(3.0リッター・6AT・710万円)

2003年11月22日

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キャラクター&開発コンセプト

BMWの中核モデル

1972年に登場した初代5シリーズは、ミドルセダンのBMW・1800/2000系の後継モデル。初代3シリーズは1975年、初代7シリーズは1977年の登場だから、5シリーズは一桁の数字を車名にした最初のモデルであり、その3と7の間をカバーする中核モデルだ。ちなみにZ4、Z8、そして新型6シリーズが加わることで、BMWのラインアップは3、4、5、6、7、8と揃う。1ないし2シリーズ登場の噂もある。

8年ぶりにモデルチェンジされ、欧州では2003年4月に発表、7月末に発売された今回の5代目5シリーズ「E60型」は、日本では8月から予約受付が開始された。新型は最近のBMWらしく先端技術を満載しており、ステアリング・ギア比を状況に応じて可変する「アクティブ・ステアリング」や7シリーズで採用したハイテク操作系「iDrive」(アイドライブ)、レーダーで車間を自動調節する「アクティブ・クルーズ・コントロール」、そしてパンクしても走行可能な「ランフラットタイヤ」、光軸可変システム「アダプティブ・ヘッドライト」などを採用している。

シャシーはアルミとスチールを複合した「ハイブリッドボディ」で、BMWらしく前後重量配分50:50を踏襲。エンジンはV型8気筒のほか、BMWが誇る直列6気筒を2種類ラインナップ。伝統のストレートシックスにこだわっている。オートマチックは7シリーズに続いて6速化された。

価格帯&グレード展開

570万円(2.5リッター直6)~880万円(4.4リッターV8)

ラインナップは525i(570万円)、530i(675万円)、545i(880万円)。また545iに標準装備されるレザーシート(シートヒーター付き)を装備した「525i Hi-Lineパッケージ」が600万円、「530i Hi-Lineパッケージ」が710万円となる。全車、左右ハンドルの選択が可能だ。

アクティブステアリングや6速AT、BMW純正ETCやハンズフリーテレフォン、ナビなどは全車標準。オプションは、レーダーで車間を自動調節するアクティブクルーズコントロール、光軸を左右に可変するアダプティブ・ヘッドライト、疲労軽減のため座面の一部が上下動するフロント・アクティブシートなどだ。

なお、欧州では他に2.2リッター直6「520i」や3.0リッター直6ディーゼル「530d」がある。高級セダンと言えど、現地では6速MTが標準で、6ATと6速シーケンシャルマニュアル「SMG」がオプションとなる。

パッケージング&スタイル

一目で5シリーズと分かる

最近のBMWがとる流儀に従って挑戦的なデザインが与えられた5シリーズだが、ピカソの絵のように超モダンな7シリーズに比べればずっとオーソドクスに見える。似たり寄ったりになりがちな中型セダンだが、5シリーズには一目でそれと分かるインパクトあり。切れ長のヘッドライト、計算ずくのキャラクターラインやパネルのつなぎ目が見どころ。BMWのシンボル「キドニー・グリル」(腎臓のように一対の形をしたフロントのグリル)は、先代よりさらに大きくなった。

大型化しつつ軽量化

全長4855mm×全幅1845mm×全高1470mmと全項目でサイズアップしつつ、ボディ前半(Aピラーより前)にアルミ、それより後ろにスチールを使った「ハイブリッドボディ」を採用し、車重が増えるのを抑えたという。フロントのサイドパネル、エンジンフード、サスペンションもアルミ製だ。

アルミとスチールの接合では、電位差による腐食が問題になるが、BMWは絶縁性接着剤によってその問題を解決、鉄とアルミの熱膨張率の違いには計599本のパンチング・リベット結合で対応したという。

7シリーズ風のインテリア

室内デザインは基本的に7シリーズを踏襲している。BMW=ドライバーを囲むコックピット風、というのは昔話で、今やスポーツカーのZ4でさえ、ダッシュボードを弓のように反らせて広々感や寛ぎ感を演出する。試乗車には「ブラウンポプラ」のウッドパネルが付き、モダンと伝統のミックスという雰囲気。

530iに標準の電動シートは、前後と背もたれの角度、シート高、座面の角度、さらにヘッドレストの高さを電動で行う。オプションでは、前席シートの座面と背もたれに埋め込んだブロワーでクッション内を換気する機能や、座面の一部が上下動して背中や腰のコリをほぐすという「ハイドロリック・マッサージ・システム」付きのフロントアクティブシートが選べる(試乗車は残念ながら非装備)。さらに旅客機のシートのような可変式大型ヘッドレストや衝突時の鞭打ちを防ぐ着火式ヘッドレスト付きシートも用意される。

運転系のiDriveは省かれた

7シリーズで採用された人間工学に基づく操作系インターフェイス「iDrive」には2種類ある。一つはクルマの運転に関わる部分のiDrive、もう一つがナビゲーション操作や様々な車両設定を行う、運転に直接関係ないiDriveだ。

5シリーズに採用されたのは後者のみ。つまり、クルマを動かすだけなら特別な点はほとんどない。7シリーズではスロット式のキーから始まって、電気式パーキングブレーキ、電子制御シフトレバーなどなど慣れるまで一つ一つ指差し確認が必要なほどだが、それに比べて5シリーズは気楽。反面、最先端カーに乗っているという自負は7シリーズほど感じられない。

依然手強いiDrive

運転に関係ない方のiDriveは、5シリーズへの搭載にあたって操作方法が改良されている。大きな違いは例の銀色のコントローラーの脇にメニューボタンが付いたこと。これによって、深い階層で迷子になってもメニュー画面にすぐに戻れるようになった。コントローラーの操作方法は前後左右の4方向(7シリーズは8方向だった)、そして「回す」「押す」の6つだ。

しかし、実際の操作は相変わらず手強い。ナビやオーディオの設定など、説明書を読んでも分からないことが多々あった。自在に使いこなせれば快感だろうが、2日間の試乗では到底マスターできなかった。また、明るいところでも画面が明るくて見やすいという「半透過型液晶モニター」は何となくピントがボケたような感じで、正直言って通常の液晶に比べて見やすいとは言いがたい。

大型化は後席のため

ホイールベースは58mm伸びて2890mmとなり、これによって後席足元スペースも45mm拡大した。後席の広さはボディサイズに相応しく、特に横方向の広さが印象的だ。

 

トランクは60リッター増えて520リッター。欧州のランフラットタイヤ仕様(スペアタイヤレス)ならさらに増えて555リッターというが、日本仕様はすべてスペアタイヤが付く。

基本性能&ドライブフィール

ストレートシックス健在

日本仕様は2.5リッター直列6気筒(192ps、25.0kgm)、3.0・直6(231ps、30.6kgm)、4.4・V型8気筒(333ps、45.9kgm)の3つだが、試乗したのは真ん中の530i。車検証記載の車重は1610kgで、それに基づく馬力荷重は6.97kg/psとなる。

その可変バルブタイミングシステム「ダブルVANOS」付き直列6気筒エンジンは、BMWらしく気持ちいい。レッドゾーン手前までスムーズかつ瞬間的に回り、トルクの谷間もない。日産のVQ35DEのような怒涛のトルク感こそないが、その分落ち着いた感じがある。ちなみに直列4気筒とV8、V12に投入されたバルブトロニック(スロットルバタフライの役目を吸気バルブのモーター制御で行う)は、6気筒にはまだない。

変速機は7シリーズやジャガーで採用されているZF製の6HP26の発展型である6HP19型。軽量とギアのワイドレンジ化、パワーの伝達効率に優れるという。ただ、街中でせっかちにアクセルを踏み込んだ時は、ATのキックダウンが一瞬遅れるのが気になった。せっかくの6速だが、このせいで走りが少しギクシャクする。このマニュアルモードのステップトロニックを備えるが、レッド手前で自動シフトアップする。

ステリング制御で安定性とクイックさを確保

注目のアクティブステアリングは、ステアリングのギア比とアシスト量を調整するもので、ホンダがS2000 type Vで世界初採用した「VGS」(バリアブル・ギヤレシオ・ステアリング)と基本的に同じもの。BMW版の特徴は、ヨー・レート・センサー(クルマの旋回Gを感知するセンサー)を備える点と、電子制御の車両安定装置(DSC:ダイナミック・スタビリティ・コントロール)と協調する点だ。車両が不安定になると即座に「ステアリング・アングルを修正する」点が新しい。要するに、わずかであっても実質的にステアリングを自動制御する、ということだ。考え方としては新型プリウスのS-VSCに近い。BMWの説明によれば、DSCの介入が減らせる点がメリットだという。その方がより自然で安全という意味だ。

アクティブステアリングの効果は駐車場から動き出す時点で、すぐに分かる。据え切りから極低速までは、ロックtoロック:1.7回転と、つまり左右どちらか一杯に切っても一回転しないほどで、慣れないうちは、思ったより曲がりすぎちゃって困るくらいだ。

交差点でもかなりクイックで、普通のクルマの調子でステアリングを切ると、ノーズがフッと瞬間的に内側を向く感じ。慣れないうちは少し戻し気味になる。違和感がないと言えばウソになるが、切り返しが何度も必要な駐車時やUターン時、九十九折れの山道では、バタバタとステアリングを回さずに済んで楽ではある。

ワインディングでは違和感

スポーティなハンドリングにこだわるBMWとしては、低速でのシャープさと高速での安定感の両立はジレンマだったはず。アクティブステアリングによってこの問題を解決できる可能性は魅力だ。さらにBMWは「曲がりくねった山岳道路をドライブする場合でも、ステアリングホイールを握りかえる必要はほとんどありません」と資料で訴える。

しかし、実際にワインディングで走ってみると、コーナーや速度などの状況によってクイックだったり、そうでなかったりと反応がまちまち。フロントの接地感も薄く、思い切って走ることができなかった。ハイスピードでステアリングを切った時のレスポンスが感覚とずれるのも気になった。

ランフラットタイヤを装備

乗り心地は、高級セダンとして考えるかスポーツセダンとして考えるかで分かれる微妙なところ。十分に快適だが、舗装の荒れたところでは小刻みに跳ねる感じがあった。クルマの雰囲気と使われ方から言って、一般のユーザーはもう少し滑らかな乗り心地を期待するだろう。

原因の一つに530iと545iに標準装備されるランフラットタイヤが考えられる。試乗車のダンロップ製ランフラットは、サイドウォールの補強などによって完全にエアが抜けても80km/hで150km以上走行可能というもので、基本的にはミシュランから技術供与を受けたもののようだ。乗り心地など課題はあるが、パンクにまつわる様々なリスクが回避できるのは大きなメリットで、BMWはすでに7シリーズ、Z8、MINI、Z4に採用している。なお、同じホイールで普通のタイアを装着することも可能だ。

アクティブクルーズコントロールは必須

100km/h巡航時のエンジン回転数は、6速で約2000回転。メーカー発表の最高速は250km/hだ。日本で走行可能な速度域では当然ながら直進性も快適性も問題ない。ただし、轍(わだち)の深い路面では、ワンダリング(路面の影響でステリングが取られる現象)が出ることがあった。この時の修正のやりにくさも、アクティブステアリングの熟成不足を感じるところ。

7シリーズも採用する、自動で車間調節する「アクティブクルーズコントロール」は試乗車には装備されていなかった。国産車と違って、普通のクルーズコントロールでも30~180km/hの範囲で設定可能な点は便利だが、はっきり言って渋滞の多い日本の高速道路では、自動ブレーキ付きのレーダー式じゃないと使い物にならない。アクティブクルーズコントロールの標準装備を強く希望する。

ここがイイ

7シリーズに続いて、普通の人が見ると違和感のあるデザイン。試乗中、多くの人から「これがビーエム?」と違和感を持たれた。でもこれって重要。あたりまえのデザインでは、ブランドの記号性を保てない時代に入っているからだ。7シリーズもZ4も、そしてこの5シリーズも、並べてみれば一目でBMWと分かるアイデンティティをもっている。現在の3シリーズに対して旧3シリーズは見事に古く感じられるが、それがいよいよ5シリーズにも当てはまる。クルマのデザイントレンドが新しい時代に入った、とつくづく思う。

少し使いやすくなったiDrive。ジョイスティックで操作するという思想そのものは高く評価したい。今回はこれにクリックボタンが一個ついたわけで、よりパソコン的になった。これに「戻る」ボタンを付けると、パソコンのマウス同様になると思う。縦横斜めの8方向から縦横の4方向に改まったのは残念だが、ジョイスティックで方向を決め、決定ボタンと戻るボタンの2つで動かすというインターフェースが今後進化することを期待する。

ピンボケ風に見えてしまうナビ画面も、位置そのものは申し分なく、また横に広いため、3画面表示が可能。左画面で何かをしながらでもベーシックな地図がちゃんと見られるのがいい。

ここがダメ

アクティブステアリングの熟成度。現状の違和感は、工業製品としてどう考えても不満がある。

大柄な人でないと決まりにくいシートポジション。旦那の5シリーズに乗る日本の奥さん族はポジションが決めにくいだろう。

ナビの地図移動が分からなかった。その場で拡大縮小はできるのだが、地図のスクロールがどうしてもできない…。と悩んでいたら、メニューで矢印の方向を選び、それを選択して動かすことが判明。当然、使いにくいが。

それはそうとしても、7シリーズではセンターコンソールからシフトレバーすらなくした操作系が、5シリーズではまったく採用されていないことは残念至極。7より進化したものがついてしかるべきだと思うのだが。

総合評価

意欲作、だと思う。独立したメーカーとして生き残っていくのなら、これくらい個性が必要なのは当然。iDriveにしても、アクティブステアリングにしても、そのチャレンジに対しては敬意を表したい。ただし熟成はどれもこれからという感じだ。

BMWとメルセデスは輸入車の2大巨頭だ。そしてBMWを選ぶ人はアンチメルセデスだろう。どこか知的で革新的な感覚のあるBMWに対して、権威的なメルセデス。自民党に対する民主党といった感じ。総選挙で民主党が躍進しながらも自民党に勝てなかったように、盤石の体制のメルセデスがあるがゆえなかなか本流にはなれないが、いいところまではいっているという存在。あるいは高速道路無料化政策(5シリーズに例えるとiDriveなど)は画期的なのだが、多くの支持を集めるには至らないというあたりもイメージが重なる(となると唯我独尊の共産党はアルファロメオあたりになるのか?)。

民主党に一票を投じる感覚があるなら、新しい5シリーズも好意的に乗れるはず。できればインテリジェントなオプション装備を満載にして乗って欲しい。特にアクティブクルーズコントロールを装備して100km/hを超える速度で前車を追走してみると、高速道路を無料化することの意義が見えてくるだろう。アウトバーン同様にハイスピードで走れる無料の高速道路、新型5シリーズの性能を満喫するなら、そうしたインフラの整備こそ重要だ。クルマの革新と同時に道路インフラの革新を、と訴えずにはいられない。

試乗車スペック
BMW 530i Hi-Line パッケージ
(3.0リッター・6AT・710万円)

●形式:GH-NA30●全長4855mm×全幅1845mm×全高1470mm●ホイールベース:2890mm●車重(車検証記載値):1610kg(F:820+R:790)●エンジン型式:30 6S●2979cc・DOHC・4バルブ・直列6気筒・縦置●231ps(170kW)/5900rpm、30.6kgm (300Nm)/3500rpm●使用燃料:プレミアムガソリン●10・15モード燃費:8.8km/L●駆動方式:後輪駆動●タイヤ:225/50R17(DUNLOP製 SP SPORT 01 DSST)●価格:710万円(試乗車:ー万円) ●車両協力:Nagoya-Minami BMW

公式サイトhttp://www.bmw.co.jp/Product/Automobiles/5/saloon/

 
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