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BMW 535i セダン新車試乗記(第605回)

BMW 535i Sedan

(3.0リッター直6・直噴ターボ・8AT・835万円)

数々の新技術を携えて、
6代目に進化。
新型3リッター直6ターボで、
「駆けぬけた印象」は?

2010年08月07日

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キャラクター&開発コンセプト

6世代目のテーマは、もちろん“エフィシエント・ダイナミクス”


新型BMW 5シリーズ
(photo:BMW ジャパン)

3シリーズと7シリーズの中間を担うアッパーミディアムクラスセダン「5シリーズ」が7年ぶりにフルモデルチェンジし、日本では2010年3月25日に受注を開始、4月末にデリバリーをスタートした。

過去38年間で累計555万台を販売した同シリーズの6世代目は、近年「BMW EfficientDynamics(エフィシエント・ダイナミクス)」と呼ばれる様々な低燃費技術や環境対策を盛りこんだモデル。具体的には、各種新型エンジン、8速AT、「マイクロ・ハイブリッド・テクノロジー」と呼ばれるブレーキ・エネルギー回生システム」(回生ブレーキによるバッテリー充電でオルタネーターの負担を減らすほか、加速時にオルタネーターとエンジンを切り離して燃費や動力性能を向上)等々を採用している。

これらの結果、「528i セダン」と「535i セダン」は、新車購入補助金の対象となったほか、「528i セダン」はBMWで初めてエコカー減税対象車(自動車取得税および重量税を50%減税)の認定を取得。さらに7月22日に追加発売された「523i セダン」は、輸入車セダン(ガソリン車)で初の75%エコカー減税対象車(自動車取得税および重量税を75%減税、翌年の自動車税を50%減税)となっている。要するに日本のエコカー減税対策に乗り遅れていたBMWにとっては、待望のモデルでもあるわけだ。

一方、今回の新型においても50:50の前後重量配分を実現するほか、従来のアクティブ・ステアリングに後輪操舵システムを新たに組み合わせた「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」(前後輪統合制御ステアリング・システム)を採用するなど、「駆けぬける歓び」を追求する姿勢には、相変わらずいささかのブレもない。

■新車試乗記>BMW 530i Hi-Line パッケージ (2003年11月)

価格帯&グレード展開

4エンジン、4グレードで、610万~1040万円


今回試乗したのは3リッター直6ターボの「535i」
車両協力:名古屋南BMW

2010年8月現在、新型5シリーズは計4グレードを設定。2.5リッター直6の「523i」、3リッター直6の「528i」、3リッター直6ターボの「535i」、4.4リッターV8ツインターボの「550i」となる。車名は今や排気量をほとんどまったく意味せず、出力レベルを反映することに注意。変速機は全車8速ATとなる。

全車に共通する装備は、「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」、駐車支援を行うPDC/リアビューカメラ、キーを携帯するだけで施解錠からエンジン始動まで行える「コンフォート・アクセス」、車速連動で光軸可変を行う「アダプティブ・ヘッドライト」、HDDナビゲーション・システム+10.2インチ ワイドディスプレイ+iDriveコントーローラー、地デジチューナー、ETC車載器などなど。ハンドル位置は523iが右ハンドルのみで、他は左・右ハンドルを選べる。

メーカーオプションは、523iを対象にした「Hi-Line パッケージ」(ダコタレザーインテリア、電動フロントシート、電動リアウインドウ・ブラインド等。39万円)、そして523i以外の上位グレードを対象とした「コンフォートパッケージ」(フロントシートのバックレスト上部角度/バックレスト幅/サイ・サポートの電動調整機能、ベンチレーション機能、リアシートヒーター。27万円)。その他、ヘッドアップディスプレイ、歩行者検知機能付ナイトビジョン(ナビ画面に表示)、車両を真上から見た画像で駐車支援を行う「トップビュー+サイドビューカメラ」(日産車でいうアラウンドビュー・モニター)などなど。今のところ、ミリ波レーダーによるクルーズコントロール(ACC)の用意はない。

そして全車に3年間または20万kmまで規定内で消耗品の交換等を無料で行うメンテナンス・パッケージ「BMW サービス・インクルーシブ」(7万6000円)が用意される。


■BMW 523i セダン     610万円
・2.5リッター直列6気筒DOHC(204ps、25.5kgm)
・10・15モード燃費:11.4km/L
・JC08モード燃費:11.2km/L

■BMW 528i セダン     715万円
・3.0リッター直列6気筒DOHC(258ps、31.6kgm)
・10・15モード燃費:10.4km/L
・JC08モード燃費:10.4km/L

■BMW 535i セダン     835万円
・3.0リッター直列6気筒DOHC・ターボ(306ps、40.8kgm)
・10・15モード燃費:10.6km/L
・JC08モード燃費:10.2km/L    ★今回の試乗車

■BMW 550i セダン     1040万円
・4.4リッターV型8気筒DOHC・ツインターボ(407ps、61.2kgm)
・10・15モード燃費:8.3km/L
・JC08モード燃費:7.8km/L

パッケージング&スタイル

超ロングホイールベースで50:50を追求

ボディサイズ(先代E60比)は、全長4910mm(+55)×1860mm(+15)×1475mm(+5)。全長が4.9メートルもあって“ミディアムクラス”もないが、それ以上に目立つのがホイールベースが一気に80mmも伸びたことだ。2970mmものホイールベースは、外寸が同程度のEクラス(W212型)より95mmも長く、全長が5メートルを優に超えるレクサスLS(標準ホイールベース)に並ぶ。

 

ロングホイールベース化の目的はもちろん、キャビンスペースを稼ぎつつ、前輪を出来る限りボディ前端に寄せ、逆にエンジンの方はボディ中心側に寄せることで、前後重量配分を50:50に近づけるためだ。ただ理屈では分かっていても、実際に実行してしまうのがBMWらしいところ。何が何でも鉄の掟である50:50を守る、というわけだ。

 

新型7シリーズに似た外観デザインは、キャラクターラインこそ鋭いものの全体に柔和で、特に奇抜な部分はない。先代5シリーズのデビュー当時からすると、今回の方がはるかに受け入れやすい。

ロングホイールベース化は当然スタイリングにも影響していて、フロントのオーバーハングは極端に短く、前輪の後ろには長大なエンジンルームが続き、そのさらに後ろでようやく乗員5人分のキャビンが始まる。言ってみればキャブフォワードならぬ、キャブバックウォード?なスタイルだ。これも50:50の重量配分とスペース要件を満たすための必然的な形で、BMWらしいと言えばBMWらしい。

インテリア&ラゲッジスペース

少々慣れが必要な新型シフトレバー

ダッシュボード周辺は、BMWらしく微妙に(約7度)運転席方向に傾いたもの。とはいえ、それ以前の歴代モデルほどドライバーオリエンテッドではないあたりに、BMWデザインの微妙なさじ加減、芸の細かさが感じられる。仕上げは非常によく、高級感も申し分ない。

操作系で目立つのは、先代5シリーズの最終モデルの他、BMWの最新モデルですでに採用されている新型の電子制御シフトレバー。これは言ってみれば、先代7シリーズの電子制御コラムシフトをフロア側に移し、見た目を従来のシフトレバー風にしたものだ。

 

ただし操作方法は独自で、レバー頂上の「P」ボタンを押すとパーキングレンジ、そして側面のロック解除ボタンを押しながらレバーを前後させると、「D」(ドライブ)や「R」(リバース)に入る、というもの。最初のうちは、ついついロック解除ボタンを押すつもりで「P」ボタンを押してしまったり、何も押さなかったりして、何度もポロロロン♪という警告音と共に、画面で「ロック解除ボタンを押してください」などと注意される。

進化したiDriveコントローラー。取扱説明書も“電子書籍”化

10.2インチのワイドディスプレイを備えるHDDナビは全車標準。ワンセグ/12セグ対応のTVチューナーのほか、便利なPDC(パーキング・ディスタンス・コントロール)やリアビューカメラ機能も付く。

各種操作は、シフトレバー同様に昨年あたりから導入の始まった改良型の「iDrive」コントローラーで行う。進化したポイントは、コントローラーの前方に使用頻度の高い項目として、「CD/マルチメディア」、「ラジオ」、「電話」、「MAP(現在地表示)」という4つの「ダイレクト・メニュー・コントロール・ボタン」が追加されたこと。これでこれらの機能に関しては、コントローラーでいちいち選択・決定しなくても、直接アクセスできるようになった。

 

それを含めて、操作性は格段に良くなり、横方向に超ワイドな画面も大幅に見やすくなった。慣れてくるとブラインド操作も自在に出来る。ただし、スイッチが増えたという点では、アウディのMMI(マルチ・メディア・インターフェイス)に似てきた気も、しないではない。

 

なお各種機能の中で面白いのは、取扱説明書も完全に「電子書籍化」されたこと。インデックスや検索によって必要な部分だけ呼び出すことが出来る。

小柄な人でもまずまず快適に過ごせる後席

ホイールベースが2.9メートルもあれば当然だが、後席は十分に広く、特にフットルームには余裕がある。座面はやや低めだが、ドイツ製の大型セダンにありがちな、高めのウエストラインに囲まれて車内に埋没するような感じは少なめ。背もたれの角度も適切だ。

また535i以上には、リア・サイドウインドウに手動式のブラインドが備わる。写真では後ろ側の小さいガラス部分にブラインドが出ていないが、これは引き出すのを忘れて撮影したためで、ご了承を。

トランク回りはクラス平均。床下は電子制御系パーツがほぼ占有

トランク容量は520リッターとクラス平均。またアームレスト部の貫通トランクスルーや後席背もたれの6:4分割可倒といった機能も、EクラスやアウディA6といったライバル車、そしてクラウンあたりと並ぶものだ。

 

ただし5シリーズの場合は、全車ランフラットが標準ということで、床下にスペアタイヤはない。ならば、そこには広大なサブトランクが、と期待してしまうのだが、実際にはちょっとした小物入れがあるだけで、BMWのトランクルームには付きもののバッテリーも見あたらない。どうやらリアアクスル周辺には、全車標準の後輪操舵システムや例のブレーキ・エネルギー回生システムに対応した専用バッテリー(アクセス不可)、さらにオプションで用意される可変スタビライザー(アダプティブ・ドライブ)やらで一杯一杯の様子。

 

基本性能&ドライブフィール

従来とは似て非なる新型3リッター直6ターボ

試乗したのは「535i」。実は資料をよく読むまで、「ああ、例の3リッター直6ターボね・・・・・・」などと思いこんでいたのだが、実はこれ、従来の直6ターボとは似て非なる新開発ユニット。従来がターボチャージャーを2基搭載する“ツインターボ”だったのに対して、新型は“ツイン・スクロール”式のシングルターボ。しかもバルブトロニックも採用されている。

それにしても、この新旧2種類の直6ターボ、最高出力306ps、最大トルク40.8kgmという数値がまったく一緒の上、メーカーは新型550iに搭載される4.4リッターV8ツインターボと一緒に「ツインパワー・ターボ・テテクノロジー」などと呼ぶせいもあって、どのエンジンも“ツインターボ”だと勘違いしやすい。ま、一般的にはターボが一基だろうが、二基だろうが、どっちでもいい話かもしれないが。

予想に反して刺激的なエンジン


“ツイン・スクロール”式の“シングル”ターボで過給する直6。ヘッドカバーには「ツイン・パワー・ターボ」とある

その新型直6ターボのサウンドは、意外にもちょっとハスキーで、荒々しいというと語弊があるが、少なくともかなり刺激的だ。レスポンス自体は自然吸気エンジンのことを思うと若干モワッとしているが、高回転域ではレッドゾーンの始まる7000回転+αまで、バビュン!と一気に吹け上がる。

しかも8速もあるZF製の新型ATのおかげで、アクセル全開では5000回転から7000回転までを使い、バァン、バァン、バァンと各ギアで間髪を入れず、まるでパワーバンドの狭い高回転型エンジンのように加速してゆく。3速まで入る0-100km/h加速は6.1秒だ。

100km/h巡航は8速トップで約1600回転。そこでノンビリ走るのは、法的にも環境的にも正しいが、いったん高回転域での弾けっぷりを味わってしまうと、そこで淡々と走るのはけっこう退屈。落ち着いて走るなら、528iの方が向いているかも。

 

ちょっと前までBMWの乗り心地と言うと、ランフラットタイヤによる硬めなものが相場だったが、少なくとも試乗した535iの場合、乗り心地は良好。ランフラットとは思えない、と言うよりも、今や乗り心地の良くないランフラットタイヤなど過去のもの、ということか。

アクティブステアリングに、後輪操舵が付いた


(photo:BMW ジャパン)

コーナーとかでの姿勢変化は極小だから、サスペンション自体は決してヤワではない。もちろんこれには見事50:50となっている前後重量配分も大きいはず。ボディ前半の軽量化は徹底していて、ボンネット、フロントフェンダー、そしてフロントドアまでアルミ製。ついでに言うと、前後サスペンションやアクスルまわりのパーツも、ほとんど全部アルミ製だ。

これに加えて新型5シリーズには全車に、「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリング・システム)」、要は従来のアクティブ・ステアリング(車速に応じてステアリングギア比を可変する)に、後輪操舵システム(いわゆる4WS)を組み合わせたものが装備されている。

具体的にはこのシステム、約60km/h未満では、前輪とは逆方向に後輪を操舵して(最大2.5度)、小回り性能や俊敏性を向上。約60km/h以上では、前輪と同方向に操舵して、走行安定性を高めるという。特に小回りに関しては、これによって最小回転半径が0,2メートル小さい5.5メートルに収まったとのこと。実際、ホイールベースが3メートル弱もあるのに、3シリーズみたいな感覚でUターンや切り返しが出来るのは、このシステムのおかげだ。

 

(photo:BMW ジャパン)

また低速コーナーでは、それほど飛ばさなくても(むしろ飛ばさない方がいいのかも)、敏感な人なら後輪がアウト側に出るような動きを感じとれる。デイズスタッフの中には、このシステムの件を知らずに試乗して、「リアが滑る感じがする」と指摘した者がいた。一方、回頭性が良い割に、高速コーナーでの安定感も抜群。逆に「リアが(アウト側に)出る気がしない」ほどだ。

いずれにしても乗り手の好みや状況によって、多少人工的な感覚もないわけではないが、少なくともワインディングでは、回せば回すほど活気づくエンジンと相まって、国産2リッターターボ4WD車を引き離せそうな速さがある。

 

ただ、走行モードを「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ・プラス」と切り替えるシステム(「ダイナミック・ドライビング・コントロール」と呼ばれる)に関しては、回転を高めに保つという点で、「スポーツ」以上は有効だが、それを除くと違いがちょっと分かりにくい。ジャガーの新型XJあたりがスポーツモードでガラッとハンドリングを変えるのと対照的だ。

モード燃費は10km/L台。試乗燃費は7.5km/L

最後に燃費だが、335iの10・15モード燃費は10.6km/Lで、JC08モードは10.2km/L。BMWもついにこのクラスでモード燃費を二桁台に乗せてきた。

また参考までに今回の試乗燃費は、いつもの一般道・高速の混じった区間(約80km)が7.5km/L、空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が約8km/L、高速道路を80~100km/hで流した区間(約20km)が約12km/Lだった。

ここがイイ

保守的なデザイン、使いやすくなったiDrive

いつもと同じようにガンガン走ってこの好燃費。新しいクルマを買う最大のメリットは燃費だと思い知らされる。

誰が見てもベンベーでしょ、というスタイリング。昔ながらの木と革のインテリア。保守回帰。高級車はこれでいいのだ。

ボタンが増えて使い勝手が良くなったiDrive。慣れるとサクサク使えるし、本来のコンセプト通り運転しながらのブラインド操作もちゃんと出来る。

ここがダメ

地図スクロールや文字入力のしにくさ

使いやすくなったiDriveだが、地図をスクロールする場合、一度メニューを引き出して「地図スクロール」を選択というワンアクションを入れないと、せっかくのジョイスティック操作に持ち込めない。またスクロール速度も、もうちょっと速いと良いと思う。

また目的地などを電話番号等で入力する場合、一つ一つ文字や数字を選択・確定していく作業は、コントローラーだとやりにくい。この点は、ポインターをモニター上で自由に動かせるレクサスの「リモートタッチ」の方が優れている。それから、デジタルテレビの感度がちょっと悪いのも気になった(もちろん走行中は映らないし、停止しても切り替わらなかった)。

パドルシフトはオプションで、試乗車には付いていなかったが、せっかく8速もあるのだから、ぜひ装備したい。BMWの場合、シフトレバーによるマニュアル操作が、例によって多くのメーカーとは逆(手前に引いてシフトアップ、奧に押してダウン)となるが、パドルがあればそれも気にならなくなる。またBMWに限らず、走行中マニュアルモードに入っていると勘違いしてシフトレバーを操作し、うっかりニュートラルに入れてしまうことがあるが、パドルシフトならそんな誤操作も防げる。

総合評価

昔からのBMWを思わせる

このクラスのクルマをいいなと思うことはあまりないのだが(いやクルマとしていいのは分かっているが、スマートに乗っていたりする身としては食指が動かないという意味で)、この5シリーズは試乗した後、なんだか少しずついいなと思い始めている。

まずスタイリングが良くなった。先代にあった攻撃性がなくなって、どこかクラシカルな印象がある。昔からのBMWを思わせる端正なカタチは、例えばEクラスが斬新さ、過激さを秘めたチャレンジングなデザインであるのに比べて、安心感がある。キドニーグリルあたりから、流れるようなラインが続き、見ていて惚れ惚れするほど美しい。サイズは確かに大きくなってしまったけれど、このクラスで数センチの差を云々することに意味はないだろう。もちろんインテリアも今まで通りのデザインで、保守的な高級感がある。逆にいえば高級車のインテリアなんて、進化のしようがないということだろうか。あえてシフトレバーを残したのも保守的で、メーター類も見事にアナログだ。

巨大なディスプレイは絶賛

しかし保守的でないのは巨大なインフォメーションディスプレイだろう。これは、大きくて見やすい、という点で絶賛していい。インパネにこういったサイズの物を置くことを最初から意図していないと成り立たない。iDriveと相まって、BMWの一貫した思想や意気込みが感じられる。またここで車両の取扱説明書を見ることが出来るのも素晴らしい。どうしてこれまでなかったのかと思う。ナビの地図表示も詳細で、戸建ての家の形まで分かるという点で、ほぼグーグルマップに比する。

iDriveは、ファンクションボタンの追加でいわゆるキャンセル操作がしやすくなった。分からなくなったら「マップ」ボタンを押せば地図に戻るから楽だ。ただ、前述したように地図のスクロールが一発でできないし、電話番号入力も回転式ダイアルは使いづらい。試乗車の場合は音声入力も可能だったが、さすがにこれ以上はボタン類を増やせないと思うし、そろそろ根本的に見直しが必要かもしれない。ダイアルではなく、スティックあるいはトラックボールにすればいいと思うのだが、そうするとトヨタっぽくなってしまうか。

走りの方はかなり先進的

走りの方は、かなり先進的だ。エンジンは古典的なストレートシックスというより、ターボ過給の味だし、8速もあるATがとにかく燃費のいい走りを目指して低回転を維持してくれる。切り始めにいかにも電動という感覚のあるステアリングは、低速域ではドライバーの意志よりよく切れ、いわゆる4WSと相まって、やや人工的にも思える回頭性を実現している。スポーティに楽しめるのは間違いないが、どこかクルマに支配されている感覚は否めない。プリミティブとは真逆の感覚だが、案外嫌いではない。ドライバーの能力に依存せず速いからいいじゃないか。これぞクルマの進化というものだろう。

 

乗り心地は快適サルーンというよりスポーツセダンに近いと思うが、不快ではない。不快ではないが、ワンパターン。ここまでハイテクであれば、上級グレードに設定のある可変ダンパーや可変スタビライザーで、もうちょっと快適なモードにも切り替えられるといいと思う。セダンなのだから同乗者に快適さを誇示したい時もあるだろう。ランフラットタイヤでこの乗り心地なら、文句を言うべきではないかもしれないが。

10年、10万kmも乗れば

日常使いができる、高級感のあるセダンが欲しい。でも国産車はいや、となると、3シリーズでは小さすぎる(車格的にも)、といって7シリーズはオヤジっぽいしデカすぎ、というニーズはそうとうある。CクラスやレクサスISでは小さすぎるし、SクラスやLSではデカすぎ、という分かりやすい図式も。他に、アウディA4は微妙なクラス感、A8は当然デカすぎる、となる。ということで5シリーズ、Eクラス、A6、ジャガーのXFというあたりの車両価格800万円前後から選ぶことになるわけだ。あ、あとレクサス GSもか。

こうして並べてみると、今ならだんぜん5シリーズがいいと思う。スペシャリティカー的な要素も備えるクルマと比べてしまうと、乗ってすぐに面白いと言えるほどのものはないけれど、毎日乗って10年、あるいは10万kmも走れば、なかなかいいクルマだったなと思えるはずだ。それこそがこのクラスのセダンのあるべき姿だろう。その意味では、満足度と経済性のバランスが取れたクルマともいえる。まあそこそこのお金持ちが買うのだろうから、燃費もこれくらい(ウチの試乗で7.5km/L)なら文句はないだろう。環境面を云々言うお金持ちはハナからこのクラスではなく、スマートにでも乗ればよろしい。ただし、スマートの燃費はエアコンを使いまくるこの時期、10km/Lちょっとしか伸びないのだけど。それを思うと、ますます5シリーズがよく思えてくる。

試乗車スペック
BMW 535i セダン
(3.0リッター直6・直噴ターボ・8AT・835万円)

●初年度登録:2010年4月●形式:CBA-FR35 ●全長4910mm×全幅1860mm×全高1475mm ●ホイールベース:2970mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1840kg( 930+910 )※電動ガラスサンルーフ装着車(+20kg)。標準仕様は1820kg ●乗車定員:5名 ●エンジン型式:N55B30A ● 2979cc・直列6気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ・縦置 ●ボア×ストローク:-×-mm ●圧縮比:10.2 ● 306ps(225kW)/5800rpm、40.8kgm (400Nm)/1200-5000rpm ●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L ● 10・15モード燃費:10.6km/L ●JC08モード燃費:10.2km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン/後 インテグラル・アーム ●タイヤ:245/45R18( Dunlop SP Sport MAXX GT DSST Run-Flat ) ●試乗車価格:-万円 ( 含むオプション:電動サンルーフ 17万円 )●試乗距離:180km ●試乗日:2010年8月 ●車両協力:名古屋南BMW (株式会社モトーレン東海)

 
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