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BMW 540i M Sport新車試乗記(第813回)

BMW 540i M Sport

(3.0L直6ターボ・8AT・986万円)

軽くなった!
賢くなった!
新型5シリーズに試乗!

2017年04月28日

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キャラクター&開発コンセプト

7代目に進化。軽量化、空力性能向上、運転支援システムの進化など

BMW 5シリーズ(G30)の画像

欧州で2016年10月に発表、日本では2017年2月11日に発売された新型5シリーズは、1972年にデビューした初代(E12型)から数えて7代目。今回は約7年ぶりのフルモデルチェンジになる。開発コードネームはセダンがG30型、発売予定のツーリングがG31型になる。

BMWの旗艦7シリーズと最量販車である3シリーズの間に立つ「エグゼクティブクラス」(Eセグメント)の4ドアセダンであり、ライバルはメルセデス・ベンツ Eクラス、アウディ A6、ジャガー XFなど。過去45年間での累計販売台数は約800万台に及ぶという。

新型の主な特徴は、軽量設計、優れた空力性能、燃費性能の向上、進化した運転支援システム、BMW独自の操作インターフェイス「iDrive」の進化など。

 
BMW 5シリーズ(G30)、生産工場の画像

軽量化については、アルミニウムや超高張力鋼板の積極的な採用によって先代比で約100kg減量。あわせて低重心化や前後重量配分50:50を実現している。量産車でトップクラスのCd値(空気抵抗係数)0.22も自慢の一つ。

運転支援システムについては、ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)の高度化や積極的なステアリング制御等で「部分自動運転を可能とした」と謳うレベルに進化。また、iDriveには画面でのタッチ操作が可能になった新世代の10.25インチワイドディスプレイや最新の音声認識システムが採用されている。

 

■過去の参考記事
新車試乗記>(F10型)BMW 535i セダン(2010年8月掲載)

 

価格帯&グレード展開

599万円~で、販売主力は700万~800万円台

BMW 5シリーズ(G30)の画像

第一便として日本に導入されたのは、直4ガソリンの530i、直6ガソリンの540i、その4WD版の540i xDrive、直4クリーンディーゼルの523d。

遅れて2017年の第3クォーター(7~9月)からはプラグインハイブリッド車の530eが、第4クォーター(10~12月)からはエントリーモデルの523iがデリバリーされる予定だ。

 
BMW 5シリーズ(G30)のプラグインハイブリッド車、530eのパワートレイン画像
BMW 530e

なお、530eは2Lガソリンターボエンジンと容量7.7kWhのリチウムイオン電池を搭載し(ちなみに新型プリウスPHVのバッテリー容量は8.8kWh)、モーターのみで最高速度120km/hを実現、最長50km走行できるという。

トランスミッションは530eを含めて全車8速AT(ZF製)。ラインナップと価格は以下の通り。

■523i
【2.0直4ターボ(184ps、290Nm)】
・523i:599万円
・523i ラグジュアリー:745万円
・523i Mスポーツ:743万円

■523d
【2.0直4ディーゼルターボ(190ps、400Nm)】
・523d:698万円
・523d ラグジュアリー:768万円
・523d Mスポーツ:766万円

■530i
【2.0直4ターボ(252ps、350Nm)】
・530i ラグジュアリー:764万円
・530i Mスポーツ:789万円

■530e
【2.0直4ターボ PHEV(252ps、420Nm ※システム全体)】
・530e ラグジュアリー:778万円
・530e Mスポーツ:803万円

■540i
【3.0直6ターボ(340ps、450Nm)】
・540i ラグジュアリー:972万円
・540i Mスポーツ:986万円 ※試乗車

■540i XDrive
【3.0直6ターボ(340ps、450Nm)・4WD】
・540i xDrive ラグジュアリー:1003万円
・540i xDrive Mスポーツ:1017万円

 

パッケージング&スタイル

3、4、7シリーズそっくりに

BMW 5シリーズ(G30)の画像

BMWの定石通り、キドニーグリル(モデルチェンジする度に大きくなる?)、2灯ヘッドライト、短いフロント・オーバーハング、L型リアコンビランプなどを継承する新型5シリーズ。新型ならではの特徴は、現行3シリーズ、4シリーズ、7シリーズに似たフロントフェイスやキャラクターラインなど。相変わらず端正でスポーティだが、慣れるまでは3、4、5、7のどれか一目で見分けがつかない。

ボディサイズは先代と大差なし

BMW 5シリーズ(G30)の画像

第一印象は「5シリーズも大きくなったなぁ」だったが、ボディサイズは(先代比)は全長4945mm(+25~30)×全幅1870mm(+10)×全高1480mm(+5~10)、ホイールベース2975mm(+5)と、それほど変わらず。全長は日本車で言えばクラウン マジェスタくらいだ。

 
BMW 5シリーズ(G30)の画像

一方で車重は高張力鋼板、アルミ合金、マグネシウム合金などの拡大採用により100kg軽量化したとのこと。確かにモーターデイズで7年前に試乗した535iと比べると80kg軽い。おかげで前後重量配分(車検証記載値)も試乗した540iで51:49(900kg+860kg)と、限りなく50:50に近い値を実現している。

また、Cd値(空気抵抗係数)も0.22と市販車トップクラス。ちなみにメルセデス・ベンツのCLAはこれと並ぶ0.22~0.23、Eクラスは0.23、プリウスは現行(50系)で0.24、先代(30系)で0.25、現行3シリーズ(F30型)は0.29に留まる。ま、あくまでもメーカー発表値だが。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
レクサス GS (2012-) 4850 1840 1455 2850 5.1~5.3
先代BMW 5シリーズ セダン(F10型、2010~) 4910~4920 1860 1470~1475 2970 5.5~5.7
メルセデス・ベンツ Eクラス (2016~) 4923~4950 1850~1852 1455~1468 2940 5.4
アウディ A6 4930 1875 1465 2910 5.7
新型BMW 5シリーズ セダン(G30型、2017~) 4945 1870 1480 2975 5.7~5.8
ジャガー XF(2016~) 4965 1880 1455 2960 5.7
トヨタ クラウン マジェスタ(2013~) 4970 1800 1460 2925 5.6
マセラティ ギブリ(2013~) 4970 1945 1485 3000
BMW 7シリーズ (2015~) 5110~5250 1900 1480~1485 3070~3210 5.8~6.0
 

インテリア&ラゲッジスペース

伝統のモチーフに、最新の技術

BMW 5シリーズ(G30)、インパネの画像

内装デザインも基本コンセプトは不変。シンプルな2眼メーター、ドライバー側にセンターコンソールが傾いた左右非対称デザイン、iDriveコントローラー(ただし最新世代)など、見慣れた意匠で構成されている。

 
BMW 5シリーズ(G30)、フロントシートの画像

一方、そんな伝統的デザインの裏側には、新型7シリーズに続いてフル液晶メーター、タッチパネルになった10.25インチワイドディスプレイ、ディスプレイの前で指を動かすだけで操作できる「BMWジェスチャー・コントロール」機能(オプション)、新しい音声操作インターフェイスなどが採用されている。これらについてはまた後で触れる。

 

後席スペースや積載性もぬかりなく

BMW 5シリーズ(G30)、リアシートの画像

ホイールベースは2975mmと、もうちょっとで3mという長さゆえ、後席スペースは特に不満なし。シート自体のサイズも大きく、体をしっかり支えてくれる。装備も充実しており、サイドウインドウには手動式サンブラインドを装備(「ラグジュアリー」にはリア電動ブラインドも備わる)。試乗車のようにオプションで後席用ディスプレイを装着することもできる。

 
BMW 5シリーズ(G30)、トランクの画像

トランク容量は530Lとまずまず(530eのみ410L)。7シリーズはともかく、このクラスだとトランクスルーは必須で、新型5シリーズでも後席背もたれを3分割で倒すことができる(このあたりはツーリングと共通だろう)。床下収納スペースはないが、その分フロアは低い。

 

基本性能&ドライブフィール

3L直6ターボの540iに試乗

BMW 5シリーズ(G30)の画像

新型5シリーズには多種多様なパワートレインが用意されるが、今回試乗したのは540i Mスポーツ。……と聞いただけで、エンジンが3リッター直6ガソリンターボ(340ps)と分かる人は事情通であろう。

540iにはスポーティな「Mスポーツ」と大人しめの「ラグジュアリー」の二つがあるが、いずれもタイヤはランフラットで、フロントが245/40R19、リアが275/35R19の前後異サイズ。ただしMスポーツにはスポーツサスペンションが標準装備される。

 
BMW 5シリーズ(G30)、540iのエンジン(B58B30A)の画像

エンジンは先代535i同様に3L 直6ターボだが、実際には従来型のN55型(N55B30A)から、新世代のB58型(B58B30A)に変更されている。B58型はいわゆるモジュラーユニットで、84.0×89.6mmというボア×ストロークは同じB系の1.5L 直3(B38型)や2L 直4(B48型)と共通だ。圧縮比はN55型の10.2から11.0にアップしており、最高出力と最大トルクは先代535iの306ps、400Nmから、それぞれ1割増し以上の340ps、450Nmにアップ。また、JC08モード燃費も535iの10.2km/Lから、新型では軽量化や空気抵抗低減も手伝って12.5km/Lと、2割以上も良くなっている。

なお、BMWは自社の新世代ターボユニットを全て「ツインパワー・ターボ・エンジン」と呼んでいるので紛らわしいが、B58型は従来通りツインスクロール式の「シングル」ターボである。直6ツインターボはM3やM4など一部の高性能モデルに搭載されている。

洗練度が高まった直6。運動神経もいい

BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

……といったウンチクなんぞは知らずとも、エンジンの印象は先代535iとずいぶん違う。535iのエンジンは燃焼のせいか、パワフルながら少し荒っぽく回る印象だったが、新型540iはいかにも直6らしくスムーズに、軽快に回る。下手なV8エンジンより、こっちの方が高級ではないかと思えるほどに。

普通に乗る分には、それほどパワフルに感じられないが、それはあくまで仮の姿。走行モードを「スポーツ・プラス」に変更して鞭を打てば、275/35R19サイズのタイヤ(試乗車はミシュランのプライマシー3)を軽々と空転させるなど、実際には素晴らしくパワフル。この時、パワートレインがダダッと揺れたりしないのも素晴らしい。

また、ZF製8速ATの変速も電光石火で、DCTに遜色ないレベル。0-100km/h加速は5.1秒、4WDのxDriveだと4.8秒に短縮と、高性能スポーツモデル並みに俊足だ。

 
BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

そんなわけで、ワインディングを走ってもスキはなく、思いのままに加速し、曲がる。全長5m弱、車重1.7トン超のクルマとは思えないほど運動神経がいい。

なお、新型5シリーズには約60km/h未満ではフロントと逆位相に、約60km/h以上では同位相に後輪を操舵する「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」、いわゆる4WSが採用されている。これにより、最小回転半径は小さく、走行安定性はより高まったそうだが、乗っている間はまったく意識しなかった。このあたりは、2003年に5シリーズ(E60型)で初採用された当時、違和感ありありだった初期のアクティブ・ステアリングとは大違い。ただし最小回転半径は5.7m(540i xDriveは5.8m)あり、特に小回りが効くとも思えなかったが。

新型5シリーズで一番のセールスポイントは、道を選ばず、スムーズにフラットに走ることだろう。ボディ剛性がどうとか、サスペンションがどうとか、そんなことを考えさせる暇も与えず、ミディアムクラスセダンのお手本のように走る。もう少し尖った走りでもいいかな?と思わないでもないが、その辺を望むならMモデルもありますよ、ということだろう。最高速は540iでも250km/h(リミッター作動)とのこと。100km/h巡行は8速トップで約1500rpmでこなす。

「部分自動運転」に向かって進化

BMW 5シリーズ(G30)の画像

新型5シリーズの大きな売りは、7シリーズ同様に、あるいはメルセデス・ベンツ同様に「部分自動運転を可能とした」とする運転支援システム「ドライビング・アシスト・プラス」だろう。

ACC(アダプティブ クルーズ コントロール)については、ミリ波レーダーをフロントに3基(リアにも2基)装備し、よりスムーズに追従走行するものに進化。フロントウインドウ上部にはステレオカメラも装備するため、自動ブレーキ(衝突回避・被害軽減ブレーキ)はもちろん、歩行者検知機能付である。

また、新機能の「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」は、ステレオカメラで車線と前方車両を検知し、車線の中央を走行するように操舵アシストするし、同じく新機能の「アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクション」は、隣の車線を走行する車両がこちらの車線に入ってくるなどして衝突の危険性が高まった場合に、ステアリング操舵を行って衝突を回避するという。いずれも「将来完成する自動運転技術を部分的に実現」したものとBMWでは主張している。

 
BMW 5シリーズ(G30)、ステアリングの画像

で、実際はと言うと、確かにこの手の運転支援システムとしては、かなり積極的に制御介入してくれるものの一つ、という印象。ウインカーを操作すると自動で車線変更してくれる機能が日本仕様で省かれたのが残念だが、操舵アシストは強力で、緩やかなコーナーならステアリングに手を添えているだけで曲がってくれる(高速ランプのようなコーナーは無理だが)。また、逸脱する方向にステアリングを切ろうとしても、特に壁などがある場合には強く抵抗してくる。もちろん、この5シリーズでも手放し運転は許してくれないが、長時間のドライブではかなり心強いと思う。

また、7シリーズに続いて「後車追突警告」を採用。これはリアバンパーに組み込まれたセンサーが後方のクルマを監視し、衝突の危険がある場合にはハザード・フラッシュを点灯し、後続車のドライバーに注意を促す、というもの。いよいよ衝突の危険性が高まった場合には、シートベルトの締め付け、ウインドウとサンルーフの自動クローズが作動し、乗員を保護するという。

タッチパネルを採用。リモコンキーでラジコン操作?も

BMW 5シリーズ(G30)、タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイの画像

今回の新型5シリーズでは、IT系装備でも多くの改良が行われた。その一つは「タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイ」の採用だ。

2001年発売の7シリーズ(E65型)と共にデビューした「iDrive(アイドライブ)」は、センターコンソールのコントローラーでナビや車両設定などを遠隔操作するというもので、タッチパネルはないが、その代わりに走行中でも操作できるのが売りだった。にも関わらず、BMWが今回タッチパネルを遅ればせながら採用し始めたのは、「走行時にはiDrive、停車時にはタッチ・パネルを使うことで操作がより容易になる」からだという。おそらくこれは、来るべく自動運転の時代(走行中でもタッチパネルを操作できる)を見すえたものでもあるだろう。

また、これはオプションだが、3Dカメラでドライバーの手の動きを認識して、ジェスチャーにより車載システムの操作を可能にする「BMWジェスチャーコントロール」機能も採用されている。例えば掛かってきた電話をハンズフリーフォンでとる、といったことができるようだ。今回は試せず。

 
新型5シリーズ、BMWディスプレイ・キーの画像
BMWディスプレイ・キー

そして同じくオプションだが(試乗車は未装着)、リモコンキー本体に液晶ディスプレイのついた「BMWディスプレイ・キー」も新型7シリーズに続いて採用されている。時刻/走行可能距離、ドア、ウインドウのロック/アンロックといった情報を表示する液晶ディスプレイを持つもので、狭いスペースに駐車する際には、このBMWディスプレイ・キーによる遠隔操作で車外から駐車することもできるという。ただし、出来るのは直進とバックのみだ。

音声操作インターフェイス……聞き取りはOK、検索結果はイマイチ

BMW 5シリーズ(G30)、タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイの画像

そしてもう一つ、新型7シリーズに続いて採用されたのが、新しい音声操作インターフェイス(VUI=Voice User Interface)である。

これは、同分野の大手サプライヤーであるニュアンスコミュニケーションズ社(米国マサチューセッツ州)が基盤技術を開発したもの。人間の自然な話し言葉を理解したり(自然言語理解)、発話された文章をテキストで書き起こしたり(ディクテーション機能)することで、ナビゲーション、音楽、通信などの車載システムを音声操作するものだ。

さっそくステアリングスイッチの発話ボタンを押して「〇〇に行きたい」とか「〇〇が食べたい」と話しかけると、スマホ並みに正確に言葉を認識し、意図を推測して、目的地の候補を画面上に表示にしてくれる。特に「株式会社〇〇」「〇〇自動車」などと法人や事業の正式名称を言ったときの検索結果はなかなかいい。

なお、音声認識と自然言語理解の機能は、車載器内で行うものと、スマホのようにクラウドサーバーと通信して行う方法のハイブリッドになっている。車載器側で行う場合は素早く、クラウド側でやる場合はレスポンスが若干遅くなるが、複雑な意味理解を行ってくれるという。単純な目的地検索くらいなら車載器側で返すようだ。電話番号くらいなら一気に話しても、一発で聞き取ってくれる。

 
BMW 5シリーズ(G30)、タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイの画像

また、ガイダンス音声をさえぎって音声指示ができるバージイン機能もあるので、某社のように「ピッと鳴ったらお話しください」というセリフが終わるのを待つ必要はない。そして音声を拾うマイクは、運転席側と助手席側の天井に一つずつあるのだが、これは助手席側の発話をキャンセルして誤認識を防ぐ「PIC(Passenger Interference Compensation)機能」のためだという。

さらに、階層構造を意識せずに様々な機能に音声でアクセスできる「ALL-IN-ONEメニュー構造」を持つため、いきなり「暑い」「寒い」などと言っても、ちゃんと空調操作パネルをディスプレイに表示してくれる。ただし、やってくれるのはそこまでで、温度調整は自分でやってね!という対応ではあるが。同様に「シートヒーターをつけて」とか「取扱説明書が見たい」といった車両に関する操作は、基本的に操作画面(メニュー画面)を出すまで、である。

 
BMW 5シリーズ(G30)、タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイの画像

そんなわけで、音声認識技術の完成度は高かったが、課題は検索結果だ。

例えば「ガソリンスタンド」と話すと、最寄りのガソリンスタンドをいくつか表示するのはいいとして、その中には20km以上離れたところのガソリンスタンドが入ってしまう。あるいは「スターバックス」と話した時も同様で、近くのスターバックスを検索したのはいいが(ただし最寄りではなく、もっと近いお店が4~5軒以上あった)、2番目に出たのが250km以上離れた川崎市のスターバックスだった。

また、「レストラン」と話すと、名称に「レストラン」と入っている飲食店や会社が優先的に出てくるため、デニーズとかガストはまったくヒットしないし(つまり「デニーズ」という固有名詞で検索したほうがいい)、ずいぶん前に閉店してしまったお店も出てきてしまう。検索エンジンというより、データベースがイマイチな感じ。とはいえ車載器側やクラウド側の機能やデータベースや曖昧検索の性能がアップデートされれば、この辺はどんどん改善されるかもしれない。

運転中でもショートメールを作成・送信できる

BMW 5シリーズ(G30)、タッチ・パネル機能付き10.2インチ ワイド・コントロール・ディスプレイの画像

この音声認識技術を使えば、手持ちのスマートフォンとBluetoothで連携させて、運転中でも声でSMS(ショートメール)の作成・送信ができるほか、Twitterなどの投稿も可能だという。

この日は残念ながらTwitterは利用できなかったが、ショートメールは試すことができた。長文の入力には、複雑な音声認識や自然言語理解に長けるクラウド側が主役になるが、そのディクテーション機能(発話書き起こし)はまだ発展途上という感じ。ただし「今から帰ります」とか「少し遅れます」くらいの短文なら特に苦労なく作成できた。家族や知り合いに、なるべく早く連絡したい時には便利だ。

ただし問題は、走行中に受信しても車両ディスプレイに通知が出ないこと。受信したメッセージの読み上げ機能もあるようだが、いったん停車しないとメールの返信に気付けないのは少なからず不便だ(スマホを直接見れば分かるが……)。

なお、音声操作に関しては、あくまでも半日くらいの間に試した限りの印象。なので使いこなせば、また違った感想になるかもしれない。

試乗燃費は8.6km/L。JC08モード燃費は12.5km/L

BMW 5シリーズ(G30)、給油中の画像

今回はトータルで約160kmを試乗。参考までに試乗燃費は、いつもの一般道と高速道路を走った区間(約80km)が8.6km/L。高速巡行(70~100km/hで約30km)が約16km/L。撮影区間を含めた160kmトータルでの燃費は7.8km/Lだった。

JC08モード燃費は、試乗した540iで12.5km/L(xDriveも同値)。また、高出力型2.0Lガソリンターボ(252ps)の530iは15.4km/L、2.0Lディーゼルの「523d」は21.5km/L、523iと530eの数値は2017年4月現時点で未発表である。

燃料タンク容量はパワートレインによって異なり、523i、530i、540iは68L、523dは66L、プラグインハイブリッドの530eはガクッと少なくて46L。ガソリン車はもちろんハイオクを要求する。

ここがイイ

「エグゼクティブ・セダン」として完璧

BMW 5シリーズ(G30)の画像

何をやらせてもソツなくやってしまう「完璧なクルマ」。優等生が嫌いな人には受けないかもしれないが、今回試乗した540iは、走りよし、乗り心地よし、燃費よし、装備よしと、欠点がない。いわゆるエグゼクティブ(経営幹部、重役)・セダンと呼ばれるジャンルのクルマだが、Eクラスよりも若々しいし、ヤンエグ(これ以上死ねないほど死語)にいかにもぴったり。

音声操作で目的地を検索・設定し、フル液晶メーター内に表示されるガイドに従って走行。クルマの諸操作を音声でクルマに尋ねると、その内容に応じて設定画面が表示される、という流れはとても理にかなっている。

ここがダメ

iDriveコントローラーが遠くて使いにくい。位置情報の検索結果

BMW 5シリーズ(G30)、インパネの画像

登場から16年経ち、その間に何度も改良されて、とりあえずストレスなく使えるようになったiDriveコントローラーだが、新型5シリーズの場合は右ハンドルにしろ左ハンドルにしろ、その位置はシフトレバーの向こう側、幅広いセンターコンソールの反対側にあり、つまりドライバーから遠く、はっきり言って使いにくい。手を伸ばすのが億劫に思える位置だ。また、シフトレバーもジャマ。BMWはE65型7シリーズでiDriveと共に、いち早く電子制御コラムシフトを採用したのだが、どうしてさっさと止めてしまったのだろうか。

そんなわけで、iDriveコントローラーの上面を指でなぞって文字入力する、なんてことも、右ハンドル車の場合は左手でやることになるので、右利きには困難だ。仮に左利きであっても、やりにくいと思う。

 
BMW 5シリーズ(G30)、シフトレバーとiDriveコントローラーの画像

そもそも、初期のiDriveコントローラーは、銀色のツルンとした見た目で、ボタンも「MENU」の一つしかないシンプル極まりないデザインだったが、改良されているうちにどんどんショートカットボタンが増えて、当初のコンセプトからずいぶん離れてしまったように思う。その辺の問題を解決する手立てが、新しく採用されたタッチパネルや音声操作インターフェイスということだろうが。

本文でも触れた通り、音声操作インターフェイス自体は優秀だが、出てくる検索結果はかなりいまいち。施設情報などはハードウエア内のデータベースとクラウドの両方を使っているようだが、もはや情報を検索して的確に提示することに関しては、Googleの検索エンジンの方が優秀だ。BMWに限らず、すべての自動車メーカーが抱える問題だろう。

総合評価

2021年にはレベル5が実現?

BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

久々の直6エンジンはやっぱり良かった。こういうスムーズなエンジンで軽快にとばすと、これぞクルマの醍醐味と思えてくる。車両が軽量化され、エンジンも新設計され、実燃費もまあこのクラスとしては十分というところ。5シリーズにはディーゼルもハイブリッドもあるし、BMWにはパワーユニットはなんでも用意できる強みがある。その意味で540iはガソリンエンジン車としても最先端となるわけだ。

そして何といっても注目のポイントが、半自動運転を実現しているということだろう。BMWは今年(2017年)のCES(国際家電ショー)で、この5シリーズをベースとした自動運転車のプロトタイプを披露している。これにはインテルや、その子会社となったモービルアイがからんでいるようだが(そのためか、音声入力エンジンはマイクロソフトのコルタナ)、2021年までにはレベル5(完全自動運転)の車両を市場投入すると言っている。それは次期5シリーズが出る頃になりそうだが、いよいよ本当にそういう時代が来るのだろうか。

 
BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

この新型5シリーズも、現時点で最も進んだクルマの一つと評価されているわけで、試乗してみれば高速道路においては日本車と違って「どの速度域」でも先行車について自動で走るし、BMWの威光か、妙な割り込みもされなかった。一般道でも先行車について走り、自動で止まり、アクセル操作で再び追従走行を開始する。ステアリングの操舵アシストも強力だ。と同時に、それらの動作は自然でもある。追従走行に関しては、すでに自動運転がほぼ実現しているとも言えそうだ。

ウインカー操作により自動で車線変更するという機能は、なぜか日本向けには装備されていない。メルセデス・ベンツ(Eクラスのアクティブレーンチェンジングアシスト)やテスラ(モデルSやモデルXのオートステアリング)では日本でも実現しているだけに不思議だが、国土交通省との間で何かあったのだろうか。高速走行で自動ステアリング操作を許した場合、もし事故が起きたら、誰の責任となるのだろう。操舵しろと命令したのはドライバーだが、その操舵をして事故を起こしたのはクルマだ。運転手の責任なのか、クルマを作ったBMWの責任なのか。

 
BMW 5シリーズ(G30)、メーターの画像

ドイツではどうなっているのか知らないが、日本でもそのあたりの法的整備を進めていかないと、自動運転への道はまだまだ厳しいと思う。国土交通省の有識者会議が、4月26日に自動運転システムの欠陥で事故が起きた場合の責任に関して、法的な論点整理を行った、という報道があった。それによると現在は3案が検討されているとのこと。

まず事故はドライバーの責任という基本枠を維持しつつ、メーカーにも保険料や基金など一定負担をさせるという案。次に、メーカーに負担を求めず、事故調査体制を充実させ、ドライバーからメーカーへ負担求めやすくするという案。そして事故の責任主体をメーカー側とし、被害者が直接賠償請求できるという案。来年3月までに国交省はこれのどれかに絞り、その上で法令改正するという。

 
BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

完全自動運転の実現はあとわずか8年後の2025年、というのが政府の方針だし、現実にこの5シリーズのようなクルマが登場している以上、法整備を急ぐのは分かるが、ドライバー責任を強めれば商品力が落ちて売れなくなるだろうし、メーカー責任を強めれば製造販売リスクが高まって開発意欲にも響くわけで、実に相反する話だ。玉虫色の第2案あたりになったとしたら、ますます混乱が広がるだけのような気もする。果たしてどういうことになるのか、来年3月を楽しみ待ちたい。

また、当然ながら、この結果によって自動車保険の仕組みも大きく変えざるをえないだろう。事故率で保険料率は決まるが、前例がない自動運転はどうするのだろうか。その意味では特区での自動運転実験においては、適度に事故が起きたほうがいいのかも、などとも思ってしまう。自動運転のハードウェアは今後急速に進化するはずだが、法律や保険、さらにはドライバーの意識(というか教育)といった周辺の整備がそれに追いつくかが、何よりの課題と言えそうだ。しかしまあ、そんな日本での論議の間にも、海外では開発がどんどん進んでしまいそうだ。ホンダやFCAが組んでいるウェイモ(Google)はハードウェアメーカーではないわけで、事故の責任問題は後回しにしておけそうだし。

「過渡期の終わり」はいつ訪れる?

BMW 5シリーズ(G30)、BMW コネクテッド・ドライブの画像

そのGoogleといえば、音声認識技術がすごい。今や原稿の口述筆記すら可能なほど。それに比べてカーナビ(車載器)の音声認識技術ははっきり言って遅れていたが、この5シリーズでは、Googleに並ぶほどの認識能力を持っていた。これまでの音声認識と比べたら格段の差で、不満はかなり解消されている。特に音声でショートメールが打てるのは便利だと思った。「何時に帰るよ」なんてのは、もはや電話するより、メールで伝える方が世のスタンダードというものだろう。プリウスPHVの試乗記でも書いたとおり、カーナビのこの部分の遅れは本当に厳しいものがあったが、この音声認識エンジンはBMWだけでなく各社で採用されるシステムのようだから、これからはちょっと期待していいのかもしれない。

また、試乗車では試せなかったが、BMWコネクテッド・ドライブはかなりおもしろそうだ。オプションとなっているBMWコネクテッド・ドライブ・プレミアムまでフル加入すれば、事故時のSOSコール、車両情報をディーラーへ通報するテレサービス、有人オペレータサービスなどに加えて、ニュースに天気、グーグルマップのオンライン検索、レストランなどの8項目の検索、スマホ用アプリを導入してのスマホ連携(ドライビング解析、Twitter読み上げ、予定表示、駐車位置表示、遠隔ベンチレーション&ロック&ライト点滅コントロール、Googleマップ検索のナビ連携)といった、クルマとして想定されるたいていのことができるようだ。

■外部リンク
BMW コネクテッド・ドライブ サービス
BMW コネクテッド・ドライブ ファーストガイド WEB版 (PDF)

 
BMW 5シリーズ(G30)、iDriveコントローラーの画像

ただ、説明を見る限り、iPhoneが利用の中心のようで、Androidにどう対応しているのか、よく分からない。BMWではApple CarPlayは採用されているが、Android Autoは採用されていないようだ。しかしながら専用アプリをスマートフォン(iPhoneおよびAndroid)にインストールして利用する「BMW リモート・サービス」では、iPhoneの標準マップではなく、Googleマップに対応しているようだし、そのあたりはどうなっているのだろう。

いずれにしても、Apple CarPlayやAndroid Autoでやれることは限られている。ゆえにBMWコネクテッド・ドライブ・プレミアムの多機能を使いこなせる人であれば、これはやはり最も進んだ類のコネクテッドカーとも言えるのだろうが、このあたり、まったくテストもできないままに書いているのをお詫びするしかない。

ところで、5シリーズではジェスチャーコントロールやタッチパネルといった、スマホのように使えるディスプレイが採用されたことによって、手元のコントローラーでロジカルに遠隔操作するiDriveコントローラーは、一時代を終えつつあるようにも思える。代わってタッチパネルと音声入力ですべて操作するのがスタンダードな時代が間もなく来るだろう。そしてそのナビは、取り外してタブレットのように使えることにもなると思う。ただ、クルマは全世界のどこでも走れるが、どこでもネットにきちんと繋がるわけではないから、移動体の命令系統のすべてをネット接続に依存するわけにはいかない。そこが難しいところで、今後もスタンドアローンの音声認識機能はさらに進化していくのだろう。

 
BMW 5シリーズ(G30)、540iの画像

「自動運転の、つながるEV」に向かって自動車業界はひた走っている。プラグインハイブリッドも用意される新型5シリーズは、その最先端を走る「過渡期のクルマ」だ。このクルマが車両寿命を迎えるだろう10年後には、法的整備も整って「自動運転の、つながるEV」がバンバン売られているはずだ、と締めくくりたいところだが、諸事情を鑑みると、どうにも確実にそうとは言えないように思う。確実なことは、確かに今よりは進化したクルマが売られているということ。過渡期の終わりはいつ訪れるのだろうか。

 

試乗車スペック
BMW 540i M Sport
(3.0L直6ターボ・8AT・986万円)

●初年度登録:2017年2月
●形式:DBA-JB30
●全長4945mm×全幅1870mm×全高1480mm
●ホイールベース:2975mm
●最低地上高:145mm
●最小回転半径:5.7m
●車重(車検証記載値):1760kg(900+860)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:B58B30A
●排気量:2997cc
●エンジン種類:直列6気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボ・ガソリン・縦置
●ボア×ストローク:82.0×94.6mm
●圧縮比:11.0
●最高出力:250kW(340ps)/5500rpm
●最大トルク:450Nm (45.9kgm)/1380-5200rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●アイドリングストップ機能:有り
●使用燃料:プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:68L

●トランスミッション:8速AT

●JC08モード燃費:12.5km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR)
●サスペンション形式(前):ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):インテグラルアーム+コイルスプリング
●タイヤ:前 245/40R19、後 275/35R19 (Michelin Primacy 3)

●試乗車価格:-円
※オプション合計:-円
※オプション内訳:ボディーカラー(ブルーストーン) 9万円、リアエンターテインメントシステム 31万円、Bowers & Wilkinsダイヤモンドサラウンドサウンドシステム 56万円、BMW Individualリーディングライト 5万4000円

●ボディカラー:ブルーストーン
●試乗距離:約160km

●試乗日:2017年4月
●車両協力:BMW ジャパンニュアンス・コミュニケーションズ・ジャパン

 
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