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ローバー 75新車試乗記(第101回)

Rover 75

 

1999年12月03日

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キャラクター&開発コンセプト

BMWとの初合作。英国の伝統を受け継いだローバーのフラッグシップサルーン

75(セブンティ ファイブ)は従来の800シリーズに代わる、ローバーのフラッグシップサルーンだ。同時にホンダとのジョイントを解消したローバーが、BMW傘下に収まってから初となるニューモデルでもある。

全くの白紙状態から開発されたFF駆動のシャシーは親会社となったBMWのサポートを受けており、サスペンションをはじめとする各所にBMW流のテクノロジーが活かされている。一方で、内外装の仕上げはローバー独自の手法に則ったもので、英国調の演出が見事に具現化されている。

本国イギリスでは1.8l~2.5lまで、ディーゼルエンジンを含めて4種類のエンジンをラインナップしているが、日本仕様は最も上位に位置する2.5lV6が5ATと組み合わせられて導入される。ハンドル位置は当然ながらすべて右となる。

価格帯&グレード展開

425万円と469万円。カラーコーディネイトの選択肢が広い「コニサー」は価格差以上に魅力あり

装備面はさすが高級車に位置づけられるだけに、デュアルエアバッグ、サイドエアバッグ、EBD(電子制御動力配分システム)付きABS、本革シート、デュアルオートエアコンなど同価格帯の国産高級車に優るとも劣らない贅沢なものが標準装備される。

グレードは上級の「コニサー」(469万円)とスタンダードの「クラブ」(425万円)の2タイプ。ハード面は全く共通で、装備のみが異なる。その違いは、パワーシート、サンルーフ、6連奏CDチェンジャー、電動リアサンブラインドなどで、DVDナビは全車オプションだ。最大の魅力は豊富に用意された内外装のカラーコーディネイト(外装12色、内装5色)で、「クラブ」はその選択肢が限られてしまう。この差は単なる価格以上に大きいといえるだろう。

事実、販売店でもコニサーが人気の中心という。このクラスになれば価格の多少の差は大きな問題ではなく、それより豪華さをたっぷり味わえるものを、という選択となるようだ。価格的なライバルはボルボS70、サーブ9-5、アルファ156、アウディA4。雰囲気的にはジャガーSタイプも入るだろう。

パッケージング&スタイル

モダンとレトロの見事な融合。見た目は昔っぽくてもCd値は0.29と最新レベル

エレガントでクラシカルなボディは全長4755mm(旧800との比較で-125mm)×全幅1780mm(同+50mm)×1425mm(同+30mm)、ホイールベース2745mm(+20mm)と、クラウン級。

空気抵抗係数は0.29と優れた数値を達成しており、ただのモールに見えるトランクハンドルですらがエアスポイラーとしての機能を果たしているという。単純なレトロ指向とは一線を画しているのだ。内外装では特にメッキモールの使い方は見事なセンスの良さを感じさせる。ただ、ヘッドライトの丸味をバンパーに組み込ませる最新BMW車同様の手法をとっているものの、どこかジャガーのような雰囲気もあり、「フォードとの合作車だっけ?」などと不埒な錯覚をおこしてしまったほど。

アンティーク家具のようなインテリアはお見事の一言に尽きる

このクルマの見せ場といえば、やはり、正円の時計以外は全て楕円で統一された、英国臭ムンムンのインテリアに尽きる。いうまでもなくレザーやウッドが多用されているわけだが、実に手慣れた演出方法は他の高級車では決してマネできないもの。美しく仕上げられたレザーシート(コノリー社製ではない)はパイピングの縁取りが施され、ウォールナットのウッドパネルは飾り品というよりインパネを構成する一要素として成立している。そこに埋め込まれた象牙色のメーター基盤といったら、まるでアンティーク時計。さらに橙色の夜間照明がより雰囲気を高め、ルームランプまで柔らかな橙色という凝りよう。タイムスリップしたかのような錯覚が味わえるとでもいおうか、乗り込んだその瞬間に日常の生活臭が拭い去られるようだ。

仕上がり、質感はフェイク素材の部分も含めて非常に高いレベルにあり、高級車として文句なく認知できるもの。そして何よりもカラーコーディネイトの徹底ぶりが、このクルマの魅力をさらに引き上げている。前述のように12色の外板色に加え、5色の内装色が選べるのだ。色に気を遣うユーザーであれば、恐らく購入時の悩みが1つ増えることになるだろう。

インテリアが、楕円に固執していることもあって、視覚的には角形のナビモニターを組み込みたくないところ。このナビ、一応最高峰のDVD方式を採用しているものの、スイッチの操作性はとても誉められたものではなかった。また収納式カップホルダーも灰皿とソフトノブの干渉を嫌って、くるりと回って出現する凝ったものだが、膝にあたってしまう。

居住空間は流線型の外観デザインに加えて、内装にボリューム感があるので、それほど広さは感じない。後席の頭上高はそう広くないがフロントシートバックが大きくえぐれており、足元の余裕は不満のないもの。とはいえFFながらセンターコンソールが大きく張り出しているので、どちらかといえばフル乗車セダンというより心地良い広さのパーソナルカーといった表現が適切だろう。

トランクは後席が可倒するトランクスルー機構を採用しており(コニサーのみ)、容量は432リッターと、370リッターのジャガーSタイプを凌ぐもの。ただし、絶対的にはそう大きくはないので、トランクスルーしない限り荷物の搭載量はしれており、その意味でもパーソナル色が強い。

基本性能&ドライブフィール

ボディ剛性2.5倍! 随所にBMWの技術が導入された新開発シャシー

FF駆動のプラットフォームは、BMWとの合作となるオールブランニュー。搭載される2.5リッターV6(最高出力177馬力/6500rpm、最大トルク24.5Kgm/4000rpm)は、基本的には800シリーズ用と同じ形式だが、構成パーツの90%は新設計というだけあって、まったく別物といっていいだろう。ATはジャトコ製の5速で、スポーツ、ウインター、ノーマルの3つのモードを持つ。

足回りは前がマクファーソンストラット、後ろがZアクスルという、まさにBMWの典型的手法を採用。タイヤは標準装備のもので195/65R15サイズとなっており、アルミホイールは標準となる。オプションでは16インチ、17インチまで用意され、ホイールデザインも15、16、17インチ合わせて7種類が用意される。この周到なラインナップもBMW譲りといっていいだろう。なお、これらBMWの技術が導入された結果、ボディのねじれ剛性は250%、つまり2.5倍も向上したという。しかしこれは、単に旧々世代のホンダ車をベースとしていた800シリーズがあまりにも頼りなかっただけ、という見方も出来なくはない。

性能的には必要十分のエンジンに、ややしなやかさに欠ける硬質な足回り

新世代エンジンをはじめ、スペック的には特筆するような性能は持っていない。トルクを効率的に引き出せる5速となっているものの、実用域の絶対的なトルクは特に厚くは感じられず、加速にはやや物足りなさを残す。それでもボディ構造の基本は大幅に見直されているから、ステアリングや足回りから伝わってくる剛性感の高さは、「なるほど2.5倍ね」とはっきり分かるものだ。もちろん、エンジンの音や振動、キシミ音の低減にも影響しており、室内は高級車らしい静粛性を保っている。一方、段差の吸収はあまりいいほうではなく、小さなデコボコも細かく拾いがちで、硬質な突き上げが伴うのが気になるところ(新車の硬さ&タイヤのせいかも? )。やや重めのステアリングといい、硬めの足回りといい、一言でいってしまえばかなりドイツ車っぽい乗り味だ。クラシカルな内外装からは少しギャップを感じさせる。

しかしワインディングに持ち込むと、ご想像のとおり、大柄なボディにもかかわらず、この足がなかなかスポーティに楽しませてくれる。ロールは大きめだが回頭性は悪くないし、FFらしいスタビリティの高いコーナリングは、このクルマがサルーンであることを一瞬忘れそうになる。5速ATの恩恵で高速巡航も静かで快適。120km/hあたりからアクセルを踏み込むと2段落ちて6000回転あたりまでタコメーターが上がり、クォーンと良い音色を奏でながら力強く加速していく。けして速くはないが、なかなか気持ちがいい加速感だ。ただ、シフトは全てロックされており、Dからシフトダウンしたいとき、いちいちボタン操作が必要。せっかくの5速なのでマニュアル操作が楽しめるといいのに、とは思った。

ここがイイ

絵に描いたような英国流インテリア。革シートの太く柔らかな曲線のステッチ、メッキや木目を大量に使ってあるのに嫌味が感じられないこの雰囲気は、国産のパイクカーには望めない。ジャガーより、よりイギリス風味が強く、その意味ではあまりに典型的すぎるともいえるが、ではこれを誰がやれるかといえばローバーしかないのもまた確か。

ここがダメ

“D-4-3-2”の切換全てロックボタンの解除が必要なこと。小さな画面で、位置的にも見にくく、ジョイスティック的なスイッチがないため操作性が良くないカーナビ。そしてイギリス車らしい? 小さめのトランク。

総合評価

「畳」に「障子」に「ちゃぶ台」が、外人にとってのイメージする日本であるように、ローバー75も我々がイメージするイギリスを見事に作り出している。本革、ウォールナット・ウッドを多用したインテリアはその代表で、「中の上」向けロールスともいえるもの。フォードの傘下となってしまったジャガーよりは、ローバーは同じヨーロッパのBMW傘下なわけだから、より本物のイギリス色が出しやすいといえるのではないだろうか。その格調高き英国らしさが気軽に味わえるのがローバー75の最大の魅力といっていいだろう。

そして75は、性能云々よりクルマ全体が醸し出す雰囲気に乗るクルマといっても過言ではない。これは性能に大差がなく、個性が勝負となった現在、非常に大きなセールスポイントのはず。この雰囲気に惚れたのなら、絶対に満足できるはずだ。ただ、日本人はコンパクトカーにはお洒落心を求めても、高級車には、押しの効くスタイルやブランド力を求める傾向にあるだけに、ローバー75も販売的にはなかなかたいへんそうだ。

とはいえBMWグループとしては、動のBMWに対する静のローバーという明確なブランド分けができ、ローバーブランドのブランドイメージを浸透させることで、ビジネス的には悪い展開にはならないはず。もう一度はっきりとローバーという「ブランドを立たせる」ことができるか、にかかっている。日本カーオブザイヤー輸入車部門獲得のニュースも飛びこんできたが、これをうまく利用できるかがカギだろう。

 

 

 
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