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新車試乗記 第662回 トヨタ 86 GT リミテッド Toyota 86 GT Limited

(2.0リッター水平対向4気筒・6AT・FR・305万円)

四半世紀ぶりに蘇ったハチロクは
スポーツカーに春を告げるか?

2012年06月15日

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キャラクター&開発コンセプト

スバルと共同開発したFRスポーツ


トヨタ FT-HS (東京モーターショー 2007)

トヨタの「86(ハチロク)」は、トヨタと富士重工業(以下スバル)が共同開発した小型FRスポーツモデル。企画・デザインは主にトヨタが行い、生産はスバルが担当。デザイン等が若干異なるスバル版は「BRZ」として発売されている。

トヨタブランドでは久々の本格スポーツモデルであり、後輪駆動車としてはミッドシップ・オープンスポーツのMR-S(1999-2007年)以来、約4年ぶり。FRスポーツモデルとしてはスープラ(2002年で販売終了)以来、約10年ぶり。また車名の由来であるAE86型カローラ・レビン/スプリンター・トレノ(1983-1987年)から数えれば、25年ぶりの「復活」になる。

 

トヨタ FT-86 コンセプト(東京モーターショー 2009)

またトヨタでは86のルーツとして、トヨタ 2000GT(1967-70年)のほか、86と同じ水平対向エンジン(ただし790ccの空冷・2気筒)を積んだ軽量FRスポーツのトヨタ スポーツ 800(1965-69年)も挙げている。

86の原型は2007年に発表されたハイブリッドスポーツのコンセプトカー「トヨタ FT-HS」。2008年にはトヨタとスバルが共同開発を発表し、2009年の東京モーターショーでコンセプトカー「FT-86」がデビュー。その後も世界各地のモーターショーで発展型が発表され、2011年の東京モーターショーで市販バージョンが登場。翌年の2012年2月2日に正式発表された。発売は4月6日から。

水平対向4気筒+「D-4S」を搭載


トヨタ 86 コンセプト(東京モーターショー 2011)

86/BRZは、新開発の2リッター水平対向4気筒・自然吸気エンジン「FA20型」をフロント・ミッドシップに搭載。エンジンは新型インプレッサ用の「FB20型」がベースだが、ボア×ストロークが異なるほか、燃料噴射システムに直噴(シリンダー内直接噴射)とポート噴射を併用するトヨタの「D-4S」が採用されている。なお水平対向4気筒エンジンはスバル以外にも、VW(ビートルなど)、ポルシェ(356など)、アルファロメオ(スッドなど)、シトロエン(GSなど)などで採用されているが、FRモデルでは極めて珍しい。

販売はトヨタ全店。うち283店舗に「AREA 86」を設置

 

スバル BRZ(東京モーターショー 2011)

生産は富士重工業の群馬製作所・本工場(群馬県太田市)。国内の販売目標は月間1000台だが、受注は発売後1ヶ月で7000台を突破。トヨタの発表によると、6月1日時点での納期は、人気グレードの「GT」の場合で11月以降とのこと(約6ヶ月待ち)。

国内の販売チャンネルはトヨタブランド全店(トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、ネッツ店)。うち283店舗に「スポーツカー好きが集う大人のたまり場」をコンセプトに、専門スタッフと86の試乗車・展示車を配置する「AREA 86」を設置。また2013年には86ワンメイクレースの開催も目指している。すでにアフターパーツ業界は、ちょっとした「86バブル」に湧いている。

 
86_01pr_ae86_200.jpg
AE86型カローラ・レビン(写真)/スプリンター・トレノ。もともと1600ccクラスのスポーツモデルとして人気があったが、しげの秀一のマンガ「頭文字(イニシャル)D」(1995年~連載中)でブレーク

なお、海外での販売も順次スタートしているが、車名は地域によって異なり、北米では「サイオン FR-S」、欧州では「トヨタ GT86」、アジア・オセアニアでは日本と同じ「トヨタ 86」になる。

■外部リンク
・トヨタ自動車>ニュースリリース>TOYOTA、86(ハチロク)を発売(2012年2月2日)
・トヨタ自動車>ニュースリリース>86 納期目処についてのご案内

価格帯&グレード展開

販売主力は279万円~。競技ベース車も用意


ボディカラーは計7色。写真はサテンホワイトパール(3万1500円高)

グレードは計4種類で、一番安いのが競技用ベース車両の「RC」(6MTのみで199万円)。次が標準グレードの「G」(6MT:241万円、6AT:248万円)、そして上級グレードの「GT」(6MT:279万円、6AT:287万円)。最上級グレードは「GT APEX」ならぬ「GT リミテッド」(6MT:297万円、6AT:305万円)になる。

「RC」は、いわゆる廉価版ではなく、バンパー無塗装、エアコンレス(ヒーターのみ)で、オーディオ配線や遮音材も省かれた競技用ベース車。「G」は16インチアルミ&タイヤを履き、エアコンはマニュアル式、ステアリング等はウレタン、トルセンLSDはオプション(3万1500円 ※MT車のみ)になり、AT車ではパドルシフトが付かないなど、装備が細々削られる。実際の初期受注は、装備が揃う「GT」以上に集中している。

 

競技車両のベース車として用意されるRC
(photo:トヨタ自動車)

最上級グレードの「GT リミテッド」は、本革とアルカンターラ(東レの人工スエード)のコンビシート、シートヒーター、リアスポイラー、スポーツブレーキパッドを標準装備する。

■RC        199万円(6MT)
 ※競技用ベース車。前後バンパー無塗装、エアコンレス、16インチスチールホイール
■G         241万円(6MT)/248万円(6AT)
 ※マニュアルエアコン、16インチアルミホイールを標準装備
■GT        279万円(6MT)/287万円(6AT)
 ※ディスチャージヘッドランプ、トルセンLSD、17インチアルミ、本革巻ステアリング等を標準装備
■GT “Limited”
  297万円(6MT)/305万円(6AT) ※今回の試乗車

 ※本革×アルカンターラシート、シートヒーター、リアスポイラー等を標準装備

パッケージング&スタイル

ハチロクというより2000GT風


ボディサイズは全長4240mm×全幅1775mm×全高1300mm(全高はアンテナベースを含む数値で、実際のルーフ高は1285mm)

ボディサイズは現代の2+2・FRクーペとしてはかなりコンパクト。またボンネットもフロントエンジンとは思えないほど低い。これは搭載位置が低く、前後長が2気筒分で短い水平対向4気筒だから出来ること。86/BRZでは前輪用のデフがない分、既存のスバル車よりもエンジン搭載位置はさらに低くなっている。おかげで、これだけボンネットが低いにも関わらず、歩行者衝突時の安全基準も、ポップアップ式ボンネットといった特別な工夫なしにクリアしている。

 

中央が凹んだパゴタルーフは空気抵抗低減とルーフパネルの剛性アップが目的。写真はリアスポイラーを標準装備したGT リミテッド

スタイリングは決してロングノーズではないが、ボディ後半は名車トヨタ 2000GT風。特にリアクォーターガラス、Cピラー、リアフェンダーは、明らかに2000GTをモチーフにしている。この関連性は日本では積極的にアピールされていないが、欧州ではジュネーブショーで86と2000GTを並べて展示したり、車名を「GT86」にしたりと、多少2000GTのイメージが利用されている。

 

Cd値(空気抵抗係数)は、アンダーカバーをフルに装備した状態(GT リミテッド)で0.27

一方、車名の由来となった元祖86との共通点は見当たらず、ちょっと寂しいところ。白/黒とか、赤/黒の2トーンカラーでも用意すると、ハチロクっぽかったと思うが。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
マツダ ロードスター RHT(NC型) 4020 1720 1255 2330 4.7
ホンダ S2000 4135 1750 1285 2400 5.4
トヨタ 2000GT 4175 1600 1160 2330
トヨタ カローラレビン/
スプリンタートレノ(AE86)
4180 1625 1335 2400 4.7
トヨタ 86 4240 1775 1300 2570 5.4
日産 フェアレディZ(Z34型) 4250 1845 1315 2550 5.0
マツダ RX-8 4470 1770 1340 2700 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

操作性にこだわったデザイン


前席は横方向に広く、助手席のドアがやや遠く感じられる

大きめのセンターコンソール、直立した水平基調のダッシュパネル、近めのフロントウインドウ、といった眺めはFRスポーツの典型。さらに運転席からフェンダーの峰がはっきり見えるところや回転計を中央に配したメーター、操作性へのこだわりなど、随所に走りオタク的な設計思想が見える。

ちなみにアナログ速度計は260km/hスケールだが、視認性はイマイチ。逆に回転計の中にあるデジタル速度計は見やすく、運転中はここしか見なくなる。実は開発途中まではデジタルだけの予定だったようだ。ただしこのデジタル速度計は「GT」以上にしか付かない。

小技としては、フレーム(枠)を廃して鏡の面積を増やした世界初の「フレームレスインナールームミラー」(ルームミラー)も注目のポイント。鏡の周囲はきれいに面取りされていて、横から見た時の透明感がいい。これも「GT」以上の装備。

ステアリングは真円の365mm径


ステアリングのリムも、操作性にこだわったフラットな形状。AT車のパドルはステアリングと一緒に回るタイプ

ステアリングはトヨタ最小の365mm径で、真円タイプ。最近はスポーツカーでもメーター視認性や乗降性などの兼ね合いで下側がフラットなタイプや偏心タイプが多いが、86では操作性が優先されている。

センターパッドはエアバッグを内蔵しながらコンパクトで、慣性モーメントを小さくするためにステアリングスイッチも一切排除。おかげで操舵感はMOMOなどの真円タイプに似ていて悪くない。またMONOでよく使われる350mmより、ちょっと大きめの365mmという径にも、こだわりが感じられる。

ホーンボタンのあるセンターパッドには「86」のロゴが入る。ただ、BRZでは六連星のバッジ、北米仕様のFR-Sでは「SCION」のバッジが入るので、日本仕様でも普通にトヨタバッジで良かったような気もする。

 

エンジン始動ボタンはトヨタでは異例のセンターコンソール下。サイドブレーキの位置は引きやすさ優先

ドリンクホルダーはシフト操作のジャマにならない位置。さらに前後にずらすことが出来る

「GT」以上はデジタル速度計、レブインジケーター、ホワイトメーターを装備
 

ヒップポイントは400mm。乗降性も悪くない


GT リミテッドはアルカンターラと本革のコンビ。写真は黒内装

シートはトヨタ紡織(株)製で、ヒップポイントは量産スポーツカーでは最も低いレベルの400mm。フロアが低いので、室内高も十分にある。またシートリフターの上下調整幅は40mmもあり、もちろんステアリングはテレスコとチルト付きなので、身長150センチ台から180センチ台まで、適切な乗車姿勢が取れる。ホールド性もなかなかいい。国産車のシート、特にこの価格帯のクルマでは出色の出来では。

また日常的にスポーツカーに乗る場合、億劫になるのが乗り降りだが、86の場合はサイドシル(敷居の部分)が低いので、足運びにも無理がない。乗降性もスポーツカーとしては最上レベルだと思う。

すべらないシート地で、走りを追求


こちらはGT リミテッドの赤内装
(photo:トヨタ自動車)

シート地は素材別に4種類。RCとGは全面スエード調トリコット。GTは赤いステッチ入りで全面スエード調トリコットか、センター部を通気性の高い織物にしたタイプの2種類。GT リミテッドは本革×アルカンターラになる。

いずれのシート生地にも共通するのは、トリコットやアルカンターラといった、体が滑りにくい素材を選んでいること。要するにここでもスポーツドライビングのことが考えられている。

後席は身長170センチまで想定


普段は手荷物スペースに最適。背もたれを倒した時にも収納スペースが残る

後席はいわゆる「+(プラス)2」だが、「乗員2名(身長170cm)が着座可能」と資料にある通り、割と実用的なもの。足の置き場は前席の人に少し遠慮してもらえば、とりあえずOK。座面が深くえぐられている分、ヘッドルームもそこそこある。

ただ、身長が170センチ以上だと、頭がリアウインドウに当たるため、首を少し斜めにする必要があり、長時間は苦しい。また昼間は当然ながら頭が直射日光に晒される。感覚的にはCR-Zより実用的で、今のポルシェ911(996~991型)と同程度といったところか。

なおエアバッグは前席フロント、前席サイド、前後席カーテンシールドの計6個を標準装備する。

定員4名よりタイヤ4本


その気になれば車中泊も可? 背もたれの肩口にあるロックを外すのが少し面倒

トランクは開口部こそ狭いものの、奥に深い構造。VDA方式の容量は公表されていないが、米国仕様のスペック表には「6.9cu.ft(立法フィート)」とあったので、これを換算すると195リッターになる。マツダ ロードスターの150リッターより広い。

 

ヒンジは荷室への侵入が少ないダブルリンク式

さらに背もたれを倒してトランクスルーにすれば、タイヤを4本積めるのが86/BRZの売り。これはサーキットへタイヤを積んで行くことを想定したもので、開発時には乗車定員4名よりタイヤ4本の方が課題だった、との話も。ゴルフバッグ(9インチ)なら2つ収納できるようだが、「ゴルフ場へ行く暇があったらサーキットへ行け」という荷室になっている。

 
日本仕様はスペアタイヤレスで、床下にはパンク修理キットや小物入れが備わる

なお、トランクリッドを開ける方法は、トヨタの上級セダンとおおむね同じ。「GT」以上のスマートキーの場合は、運転席のボタンを押す、スマートキーのボタンを押す、あるいはスマートキーを携帯してトランクリッドのボタンを押す、スマートキーに内蔵された金属キーで開ける、の4通り。「G」と「RC」のリモコンキー(非スマートキー)の場合は、運転席のボタンを押す、リモコンキーのボタンを押す、金属キーで直接開ける、の3通り。

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