Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > サーブ 9-3 スポーツセダン べクター

サーブ 9-3 スポーツセダン べクター新車試乗記(第493回)

Saab 9-3 Sport Sedan Vector

(2.0Lターボ・5AT・450万円)

登場から約5年。
ビッグマイチェンした9-3は
2007年最大の掘り出しものだった!

2008年01月12日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

2代目9-3がビッグマイナーチェンジ

2代目9-3(ナイン・スリー)シリーズが2007年10月24日、いわゆるビッグマイナーチェンジを受けて2008年モデルとなった。主な改良内容はフェイスリフトを含む外観変更、エンジン改良、装備充実(全車HDDナビ標準化)など。過去に9-3シリーズはセダン(日本発売は03年1月)、カブリオレ(同03年11月)、スポーツエステート(同05年11月)と3つのボディタイプが間隔を空けて登場しているが、今回のマイナーチェンジは全車同時。発売は07年11月3日で、セダンとエステートの2.8リッターV6ターボ車「エアロ」のみ、08年1月5日からとなる。

デビューから数年経つが、米国道路交通安全保険協会(IIHS)の衝突安全テストではクラストップに4年連続で選ばれるなど、9-3シリーズの安全性は今なお高く評価されているようだ。プラットフォームは同じGM傘下のオペル・ベクトラと共有する。

ターボ30周年を迎えたサーブ

ターボチャージャーを採用して最初に成功した市販車としてはBMW・2002ターボ(1973~74年)、そしてポルシェ911ターボ(1975年~)が有名だが、一般向け乗用車で、しかもFF車では、サーブの「99ターボ」(1977年)が最も早い。2007年はサーブのターボ30周年だったことから、我々こそ乗用ターボの元祖であるとサーブはアピールしている。

価格帯&グレード展開

直4ターボの「リニア」「ベクター」、V6ターボの「エアロ」

9-3スポーツセダンの日本仕様は以下の3グレードで展開する。もちろん全車FF。

■「リニア(Linear)」(368万円)  2リッターターボ(175ps)・5AT
「ベクター(Vector)」(450万円)   ↑  (209ps)・5AT ※試乗車
■「エアロ(Aero)」(556万円)  2.8リッターV6ターボ(255ps)・6AT

ちなみに9-3スポーツエステートもグレード設定自体は同じで、価格はそれぞれ20万円高。カブリオレは「ベクター」(654万円)のみとなる。ベクターとは物理のベクトル(Vector)のこと。

温厚なだけじゃないサーブ

255psと35.7kgmを誇るトップモデルの「エアロ」は、パワーの点ではマツダスピード・アクセラ(直4ターボで264ps、38.7kgm)やトヨタ・ブレイド(V6で280ps、35.1kgm)に匹敵する高性能FF車。温厚なイメージのサーブだが、昔からこういう尖ったモデルも用意する。なお、航空機の世界でサーブといえば「35 ドラケン(Draken =竜)」や「37 ビゲン(Viggen =稲妻)」といった戦闘機を生み出したメーカー。初代9-3にも「ビゲン」の名を冠した高性能モデルがあった。

パッケージング&スタイル

伝統のボンネットデザインが復活

基本的なスタイルは従来通りだが、フロントグリルは08モデルからヘッドライトと共にバンパーに食い込むかのように大きくなり、メッキ部も太くなった。ここは好みが分かれそうだが、実車を見ていたらすぐに慣れてしまった。従来がちょっと控えめ過ぎだったのかも。

面白いのはエンジンフードの前端が水平に丸く弧を描いていること。実はこれ、往年のサーブ99(1967~87年)やサーブ900(1978~93年)、そして現行9-5(1997年~)でも見られる伝統のモチーフ。前期型は普通の形状だったから一種の先祖帰りで、サーブファンには嬉しいところ。おそらく歩行者安全基準を満たすためにボンネットを高めた過程で可能になったと思われる。

その他、前後バンパーとドアを水平に横切っていた黒いモールがなくなり、面がツルンとすっきりした。残念なのはドアのアウターハンドルがサーブ専用品から、キャデラックBLSと共通パーツになったこと。BLSは9-3とプラットフォームを共有する欧州向けFFモデルで、サーブのトロールハッタン工場で生産されている。従来品の黒い樹脂剥き出しのドアハンドルには、氷点下数十度の超低温でも手が凍りつきにくい、といった意図があったようだ。

ダッシュボードを一新。ワンセグ対応HDDナビが標準に

インテリアの雰囲気は従来とほぼ同じだが、ダッシュボードは別物。計器類が収まる一等地(モールで囲まれた部分)が拡大され、オーディオスペースが倍くらいに増えている。これにより2DINサイズのワンセグ対応HDDナビ(富士通テン製)が全車標準に。音量調節など操作に慣れを要する部分もあるが、7インチ画面のタッチパネルでもあるし機能的には最新レベル。後々のアップグレードも難しくなさそう。マイナーな日本市場向けに、インポーターがここまでローカライズした点は評価できる。

北欧デザイン健在

各部のユニークなデザインも健在。キーを差す場所もサーブの伝統通りセンターコンソールになる。右ハンドルだと左手なので少しやりにくいとは言えるが。その他、コンソールに溶け込んだサイドブレーキレバー、手触りの柔らかな樹脂、独特のホールド感と座り心地のシート(ポジションの自由度も高い)、「プッシュすると回転しながら展開する」ドリンクホルダー(収納時に出っ張ったナビに少し当たってしまうが)など、愛すべきサーブらしさには事欠かない。室内だけでなく、ボンネット上のウォッシャー噴射ノズル(サーブ車の始祖である92プロトタイプ「92001」を模したもの)など、何でもない小物パーツが意味深にデザインされている(ように見える)。

快適性重視のパッケージング

キャビン後部に大きな変化はないが、もともとこの「イプシロン」プラットフォームのパッケージングは優秀で、2008年現在でも十分に通用する。後席は人の座らせ方が適切で、走行中の守られ感や静粛性も高い。窓は全開する。シングルフォールディングでトランクスルーも可能だが、全体としては高級セダンに相応しく、積載性(荷物)より居住性(人)を重視したもの、という感じ。

基本性能&ドライブフィール

トルクフルな走り。しっとりした乗り心地

試乗した「ベクター」のエンジンは2リッター直4ターボ(209ps、30.6kgm)で、前輪を駆動。車重はちょうど1500kgだから、パワーウエイトレシオは7.17kg/psと、ちょっとしたスポーティカーレベルと言える。例えば今回は9-3試乗直後に新型ランエボX(同じく2リッター直4ターボながら280ps、43.0kgm)に乗ったのだが、9-3のパワー感は額面ほどそれに見劣りしない。もちろんランエボの方が圧倒的に速いが、乗用域でのパワー感や気持ちよさはなかなかどうして、9-3も悪くない。

いまどきのターボゆえ、ターボラグがほとんどないのは当然として、ペダルの踏み方一つで自在に緩急がつけられる点では下手な自然吸気V6以上。エンジン基本設計は従来と同じだし、変速機は5ATだし、とスペックは地味だが、パワー感の気持ちよさはクラスベストかも、と思う。

しっとりした乗り心地も人に自慢したくなるほど素晴らしい。アイドリング時の静粛性自体は高くないが、欧州車としては平均的で、特に大きな失点とはいえない。

荒れたワインディングで真価を証明

といった具合に街乗りや高速道路で淡々と流す程度だと「何だかいいクルマだ」と具体性のない表現となってしまうが、郊外のワインディングで走ると真価が見えてくる。

ハンドリングは特別にシャープとかダイレクトとかいったことはなく、むしろ真剣に飛ばすとステアリングの切り始めやブレーキの踏み始めが鈍いタイプ。しかし舗装の荒れた中速ワインディング(日本の田舎によくある道)に行くと、普通ならボディまでドン!とかバシッ!とか入力が入る段差でも、タラララとやり過ごし、FF車らしい直進性で矢のように突っ走る。しかも中回転域のトルクがあるので、エンジンを回すことなくグイグイ加速。なおかつドライバーにストレスがかからない。ドライ路面で普通に乗る限り、トルクステアはない。

ダッシュボードの「S」と書かれたスポーツモードボタンを押すと、5ATの変速ポイントが高まり、出力特性も鋭敏になる。ターボらしい吸い込まれるような加速も味わえるが、おかげでトルクステアも出始める(FFでトルクが30.6kgmもあるので当たり前だが)。いずれにしても、高速道路での直線勝負ならともかく、一般路で走るならSモードは不要。通常モードで十分に速い。

走行パターンで差が出そうな燃費

参考までに車載燃費計による試乗燃費は、高速巡航時の好燃費ゆえか約9.5km/L。一方、一般道で雑に加速減を繰り返していると6~7km/L台、パワーをフルに使って飛ばすと5km/L台まで落ち込む。最新のターボらしく、走らせ方で良い方にも悪い方にも転がるという印象。10・15モード燃費は排気量もパワーも小さいC200コンプレッサー(11.2km/L)と同等の11.0km/L。

ここがイイ

少なくともC200の1.8リッター直4スーパーチャージャー(184ps)より完全にパワー感で優ること。乗り心地は同等。負けるのは低ミュー路面でフル加速した時のトルクステアの有無くらいか。

ダッシュボードのデザインを丸ごと設計し直し、2DINサイズの最新ナビが標準装備になったこと。

GM傘下にあり、見えない部分で部品共有化は進んでいるはずだが、見える部分に関しては今でもデザインコンシャスなサーブ独自の雰囲気を保っていること。部品の共有化を進めながらこうしたことが出来るのなら、大企業のグループ傘下となるのも悪くないかも。

ここがダメ

純正のナビ・オーディオ画面が夜間まぶしく、消さないと自慢のナイトパネルが生かせない。画面の明るさが調整できるといいのだが。

スポーツモードのボタンはブラインド操作がほとんど無理で、走行中の操作は脇見運転になってしまう。また、ステアリングシフトボタン(右がアップ、左がダウン)も押しにくく、ほとんど使えない。もっとも、通常モードでパワーもレスポンスも十分ではあり、燃費もその方がいいのだが。

せっかくナビのモニターがあるのでバックモニターは欲しい。ハイデッキのため後方視界があまり効かないので、あると便利だ。

フロントオーバーハングがかなり長いため、予想以上にアゴを擦りやすいのには注意が必要。

総合評価

しみじみといいクルマ感

いいクルマってなんだろう、と思う。様々な基準があると思うが、乗っていてドライバーの運転感性にフィットするクルマ、というのが基準の一つではないか。個人的には昨年のイヤーカーをゴルフ・ヴァリアントとしたのだが、スタイルはまあたいしてよくはないし、乗っていても誰もが「ふーん、ゴルフのワゴンね」というクルマ。地味なのは間違いない。確かにエンジン系・ミッション系は画期的なのだが、かなりマニアックな世界であり、いわゆるエンスーなクルマの枠からも微妙に外れている。ただ乗っていると乗り心地、パワー感、ハンドリング、サイズというあたりがとても気持ちよくフィットして、いいクルマだなあ、としみじみさせてくれる。昨年たくさん乗ったクルマの中でもその点はピカイチだった。

サーブ9-3もまた同様の印象を持った。乗っていると、しみじみといいクルマ感がある。しかしゴルフ同様、それ以外はほんとうに地味。まあゴルフより長い歴史がある分、エンスーなイメージがあるし、GM系ではあるが内装などオリジナル部品でサーブらしさを出しているのは好感度が高い。特にエアコン吹き出し口のデザインとつまみ、フィンのギザギザはデジャヴ感があった。内装にあまり高級な印象がないのは残念だが。

デジャヴ感はかつて乗ったことのある900ターボや9000ターボ、9000タラデガなどと共通性があるから。インパネ全体のデザイン、センターコンソールキー、ナイトパネルなど、変わらぬ様式を保っているのは、エンスー心をくすぐる。そういえばエクステリアデザインだって、ボンネットフードまわりにはどことなく昔のイメージがある。1967年発売の99から続くサーブのコンパクトクラスのデザイントレンドを確かに保っているのだ。特に今回のマイナーチェンジでその傾向は強まっているが、MINIや911ほど明確でないのは残念。特に日本で人気が高かった900のレプリカっぽいデザインだったら、今ほどマイナーな存在ではないと思う。元々実用セダンゆえ、それは難しい相談か。

しなやかな乗り心地、心地よいフィット感のシートに身をゆだね、ナイトパネルで運転席まわりを真っ暗にして余分な情報を遮断し、オーディオもつけずに高速道路を巡航すると、古典的な「運転」の世界に入れる。それは航空機のコクピット同様、集中力を高め心地よい緊張感に包まれた「仕事」の世界に近い。これが実に新鮮な気分。安楽で騒々しいドライブではなくそうした「運転」そのものを楽しめることが、このクルマをいいクルマだなとさらに思わせた部分だ。

価格的には「リニア」が魅力

手頃なサイズの2リッタークラスのセダンだが、あまりクラス感はなく、希少性もあり、前述のように「いいクルマ」感もたっぷり。こうなるとあとは価格が気になるが、Vectorの450万円はやや微妙なところ(ちょっと高い)。Linearの368万円あたりが食指の動く価格だと思うが、ナビや8ウェイパワーシート(本革)、ステアリングシフトがレスとなり、ホイールも16インチ。排気量は同じだが過給圧が低くなりパワーで34ps、トルクで3.6kgm下がる。今時ナビは必需品だし、体に触れるシートやステアリング、乗り心地や走りに関係するタイヤ、動力系が変わってしまうのでは、比較にならない。乗って確かめてみるしかないだろう。

9-3はほんとにいいクルマだと思う。500万近いお金を出すのであれば、一般的にはメルセデスのCクラス(C200が460万円)やBMWの3シリーズ(320なら400万円前後)あたりのブランド力に流れてしまうだろう。下取りも厳しいのは予想できるし、価格面ではもう少し何とかならないものか。モーターデイズとしてはCクラスや3シリーズよりスポーティすぎない9-3に軍配を上げたい。

試乗車スペック
サーブ 9-3 スポーツセダン べクター
(2.0Lターボ・5AT・450万円)

●初年度登録:2007年11月●形式:ABA-FB207 ●全長4650mm×全幅1800mm×全高1465mm ●ホイールベース:2675mm ●最小回転半径:5.7m ●車重(車検証記載値):1500kg( 910+590 ) ●乗車定員:5名 ●エンジン型式:B207 ● 1998cc・直列4気筒ターボ・DOHC・4バルブ・横置 ● 209ps(154kW)/5300rpm、30.6kgm (300Nm)/2500rpm ●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/58L ●10・15モード燃費:11.0km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 マルチリンク ●タイヤ:225/45R17( Continental SportContact2 )●試乗車価格:461万7600円( 含むオプション:メタリックペイント 8万4000円、フロアマット 3万3600円 )●試乗距離:約200km ●試乗日:2007年12月 ●車両協力:サーブ名古屋

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

最近の試乗記一覧