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サーブ 9-3 スポーツセダン アーク 2.0t新車試乗記(第261回)

Saab 9-3 Sport Sedan Ark 2.0t

(2.0リッターターボ・415万円)

2003年03月22日

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キャラクター&開発コンセプト

3/5ドアをやめて4ドアセダンに

2003年1月20日に日本で発売された新型9-3は、サーブ車の大きな特徴だった3/5ドアというボディ形状を捨て、4ドアセダンとなった。サブネームにも「スポーツセダン」と入る。シャシーの基本構造は、昨年日本で発売された新型オペル・ベクトラと同じ。しかしサーブ自製のエンジンなど、随所にオリジナリティが盛り込まれている。

販売はヤナセと、今春スタートするサーブ専売店

サーブの輸入権は今年からヤナセから日本GMに移ったが、販売主力がヤナセであることに変わりはない。一方、今年に入ってサーブ専売ディーラーも全国でオープンしている。1号店は滋賀県栗東市の「サーブ滋賀」。年内には名古屋を始め、いくつかの専売店がオープンする予定だ。

2002年の国内販売台数は1149台。同じスウェーデンのボルボに比べ、台数的には大きく水をあけられているサーブだが、魅力をうまくアピールできれば大きく飛躍する可能性がある。サーブにとって最大マーケットである北米東部では大きな成功を収めており、日本でも同じ展開を目指しているはずだ。今はなき新西武自販からヤナセ、そして日本GMとここ数年で次々とインポーターが変わったことが、ボルボとサーブの現在の差を生んでいると言えるだろう。

サーブの歴史を簡単におさらい

サーブはボルボとともに北欧を代表する自動車メーカー。「Saab」の名は、1937年から軍用航空機を生産してきた「スウェーデン航空機株式会社(Svenska Aeroplan Aktiebolaget AB)が由来だ。本格的な自動車生産は、戦後の「92」からスタート。続く「93」や「96」はラリーで活躍し、Saabの名を一躍有名にした。1969年には「99」がデビュー、1979年には大ヒット車「900」へ発展してロングセラーとなった。その900も1993年にフルモデルチェンジし、さらに1998年のマイナーチェンジと同時に車名を「9-3(ナイン・スリー)」に変更している。したがって、今回の新型9-3は2代目、初代900から数えれば3代目と言える。現在サーブは上級の9-5(ナイン・ファイブ)、小型の9-3という2モデルで展開中だ。

なお、1990年からサーブの乗用車部門はGM傘下となり、同グループのオペルと部品共有化を進めているが、一方で航空機メーカー出身らしいデザインやこだわり、北欧らしい丁寧で温かみある作りも堅持している。GMグループ内でも独特のスタンスが許されるブランドだ。

価格帯&グレード展開

3モデルで展開。360~470万円。

新型9-3スポーツセダンのグレードは3種類。ベーシックな「リニア(Linear)1.8t」(360万円)、上級の「アーク(Arc)2.0t」(415万円)、スポーツモデル「エアロ(Aero)2.0T」(470万円)。リニアは「1.8t」とあるが、他と同じ2.0リッター。ヤナセらしく? どれも左右ハンドルが選べる。参考までにオペル・ベクトラ(2.2リッター)は自然吸気で335~362万円。

ちなみに、4シーターオープンである9-3カブリオレは先代ベースのまま継続販売。5月には、現行の「9-3カブリオレ SE 2.0t」(480万円)に加えて、ブーストアップで55馬力アップした205馬力版「カブリオレ Aero 2.0TS」(530万円)が登場する。

ライバルは同じスウェーデンのボルボS60(365~548万円)。そしてドイツ勢のBMW・3シリーズセダン(368~570万円)、アウディA4(369~598万円)。もちろん、同じヤナセでCクラス(395~610万円)という手もあり。いずれにしても、サーブの値付けは、ライバルに比べて決して高くない。

パッケージング&スタイル

個性は薄まるも、やっぱりサーブ

初代900(1979~93年)のような強烈なデザインは、望むべくもない。2代目900(初代9-3)より、さらに個性の薄まった2代目9-3の外観は、それでもやっぱりサーブらしい。伝統のラジエイターグリルや上品なたたずまいに独特のプレミアム感あり。好感度の高さは相変わらずだ。

 

全長4635mm×全幅1760mm×全高1465mmのボディは新型ベクトラとほぼ同じだが、全幅は40mm狭い。ホイールベースは25mm短い2675mm。ホイールベースの短さが示すように、このシャーシは長さ方向ではなく、どちらかと言うと3次元的ユッタリ感が特徴。特に、後席の居心地が良い。

伝統は守られた

各スイッチや室内ライト、カップホルダー、シートなど、触れるだけで何となく「サーブって良いな」と思わせる。試乗した「アーク」は革シートが標準。このシート、山道でのホールド性はまったくないと言っていいほど低いが、掛け心地はいい。シートポジションも電動で驚くほど大きく動く。温度設定の出来るシートヒーターも気持ちよかった。

サーブと言えば、何はなくともイグニッションの位置だろう。通常通りドライバーの右側に無いのは、伝統的にポルシェ(ドライバー左側)とサーブ(センターコンソール)のみ。この位置にある理由は、衝突時に鍵が膝を傷付けることがないように、ということらしい。鍵自体は近代化されていて、金属部分が表に出ない電子式。鍵穴は助手席側にしかなく、キーシリンダー構造やイモビライザーなど、防犯対策にも力が入っているようだ。

その他、空調吹き出し口の調節ノブや、「ナイトパネル」モード(速度計以外のインパネ照明をオフにする。さらにメーター類の針もキーオフと同様になる。夜間ドライブの集中力を高める航空機系のアイディアらしい)は、サーブならでは。

また、オオシカ(エルク)との衝突事故が年間6000件以上あるという北欧らしく、対オオシカ衝突安全性(フロントウインドウを直撃する)の高さもカタログでアピール。日本でも北海道地区では鹿との接触が珍しくないから、まったく関係のない話ではない。衝突安全性はメルセデスCクラス、ルノーラグナに続いて3台目となる、ユーロNCAP・5つ星だ。

基本性能&ドライブフィール

一次曲線的な加速

左手でエンジンを掛けた後は、予備知識なしでも戸惑うことはない。ステアリングや各ペダル類の重さもごく標準的。発進時のみ、一瞬わずかに「モワァー」とレスポンスは鈍い。が、いったん動き出せば、ちょっと他に例がないくらいフラットな加速を見せる。試乗車は「アーク」だったが、加速はリニア。インパネのブースト計を見て「やっぱりターボだ」とあえて再確認したほどだ。自然吸気2.3リッターくらいの感じでレッドの始まる6500回転までシャープに回る(自動シフトアップなし)。ターボエンジンらしく、音や振動も低い。トルクステアもほとんどない。

エンジンはサーブ自製の新型オールアルミ製。3モデルともボア/ストローク共通で、パワーの差は加給圧でコントロールするのがサーブ流だ。試乗した「アーク2.0t」の場合、ギャレット製GT20タービンによる0.7バールの加給で175ps。「リニア1.8t」だと0.5バールで150ps、高圧ターボ「Aero 2.0T」だと三菱製TD04タービンの0.85バールで、210psを発揮する。

オートマチックはボルボやオペル、ルノーなど、欧州車に多く搭載される日本のアイシンAW製5速で、「サーブ・セントロニック」と呼ばれるシーケンシャルモードが付く。穏やかなエンジンの性格もあって、変速マナーで気になるところは皆無。Dレンジのままでもスポーティに走れる。

不思議な居心地の良さ

新型9-3はエンジンもさることながら、シャーシも印象的。「新型ベクトラと同じ良さ」と言うと誤解を受けるかもしれないが、このGMのミドル級シャーシ「イプシロン」の完成度はすごく高い。従来モデルの2倍と言われる剛性と低圧ターボエンジンの実直さ、それとやり過ぎないスポーティ感の演出のミックスが絶妙。ドライバーだけでなく、乗っている人全員が「なんだかよく分からないけど、良いクルマに乗せてもらってる」と感じてしまう、そんな心地よさがある。

一方で、スポーツセダンの名に恥じないよう、ハンドリングもそれなりの味付け。ロックtoロックは2.97回転で、実際の印象もまずまずクイック。アンダーステアを減らすためにリアには「ReAxs(リアクシス)」というトーコントール機能を備える。とはいえ、少なくとも2.0tの場合は、ワインディングを攻めて楽しいという設定ではない。ステアリングをこじったりするような乗り方には、あやふやな動きで返してくる。それより日常的なシーンで「ああ、意外とスポーティだなあ」と思えるような、ほどよいスポーティ感。街乗りでもその良さは十分に伝わってくる。

むろん高速巡航は快適だ。クルーズコントロールもあり、高速セッティングが効くから空いた道路では便利。180km/hに達すると警告音が鳴る。ただ、風切り音はかなり大きく、日本車的静粛性が保てるのは120km/hあたりまでだ。

ここがイイ

インテリア全体のクォリティがずいぶん向上した。かつてサーブの内装は、北欧風のセンスでカモフラージュされてはいたが、どことなく安っぽい雰囲気があったもの。しかし新型ではGM系のスタンダードな高級感(このあたりはベクトラにも通じる)でまとめられ、大きな不満はない。特につや消しの控えめな木目パネルなどは、いいセンスだ。

他に列記すれば、程良いサイズと軽快なハンドリング、適度なトルク感。エアコン連動の冷蔵グローブボックスなど日本車並の快適装備(ステアリングはオーディオリモコン付)、伝統の垂直近くまで開くボンネットフード(と言って、今や手を入れることはほとんどないはずだが)。

ここがダメ

ダメというより注文を。まずトランクスルーになるリアシートバックは室内側からも開けられるといい。トランク側からしか開けられないのは盗難防止の意味だとは思うが、万一の盗難防止と日常の使い勝手のどちらをとるかは難しいところだ。同様にオーディオにも盗難防止用の電子キーがあり、外しても他のクルマにつかない。と言うか、実質的にアフターパーツとの交換は不可というのもいかがなものか。1DINという概念もサーブにはないから、カーナビもつけられない。カーナビは純正部品カタログにもなく、どうしたらいいの、というしかない。ETCも今後は必要になるはずだから、プレミアムカーを標榜する以上、このあたりは早急に対策して欲しいところだ。

総合評価

かつての900とか、9000タラデガなど、個性的なサーブと比較すると、いきなりあたりまえのクルマに見えて第一印象は薄い。スタイリングも平凡(特にリアスタイル)であり、オペルベクトラと同じプラットフォームなんて話を聞いてしまうと、ちょっと萎えてしまう。走るとさすがに低圧ターボはリニアで、ターボ嫌いでも許せるスムーズさが光るが、一般道を走る限り特に感銘は受けなかった。

ところが、ちょっと気合いを入れて走ると、心地よいスポーティさが際だつ。いわゆるスポーツカーとは異なり、あくまでスポーツセダンと言う範疇に収まる走りではあるが、ワインディングをニュートラルステアでハイペースで駆け抜けられ、限界点でESPがうまくアシストしてくれる。走りを極めるには全く不足だが、普段は街乗りセダンとして使い、時にワインディングを楽しむという使い方には最適なレベルに調整されているのだ。

昨今の欧州小型セダンは基本的に皆この方向。9-3もその仲間に加わって「勝負」するわけだ。トルクがほどよく太く、しかもターボチャージャーは低回転からターボラグなしで効くから、中パワーNA車的な力強さ。「普通のテクニックのドライバーにはちょうどいいさじ加減」を演出してあるため、試乗すればライバルとなるスポーツセダンといい勝負になることがわかるだろう。

願わくばシートの改善(高圧ターボのエアロはスポーツシートだが)、エンジンサウンドの演出、何よりブランド自体の広報宣伝活動が欲しい。月間販売わずか100台程度では予算がかけられないことは分かるが、一桁違う販売台数は可能なクルマに仕上がっている。まあ、この希少性こそがサーブの魅力といえなくもないが、ブランドイメージの向上だけはもう少し努力が必要だろう。バブル時に900がポストBMWをめざしてうまくいかなかったことを記憶する身としては、特にそう思う。

試乗車スペック
サーブ 9-3 スポーツセダン・アーク 2.0t
(2.0リッターターボ・415万円)

●形式:GH-FB207●全長4635mm×全幅1760mm×全高1465mm●ホイールベース:2675mm●車重(車検証記載値):1500kg(F:920+R:580)●エンジン型式:B207●1998cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒ターボ・横置●175ps(129kW)/5500rpm、27.0kgm(265Nm)/2200rpm●10・15モード燃費:9.8km/L●タイヤ:215/55R16(グッドイヤー EAGLE-NCT5)●価格:415万円(試乗車:427万円 ※オプション:電動サンルーフ 12万円)

公式サイト
http://www.saab.co.jp/cars/model_intro_93s.html

 
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