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サーブ 9-5 セダン ベクター新車試乗記(第643回)

Saab 9-5 Sedan Vector

(2.0リッター直4ターボ・FF・6AT・580万円)

再建の道を探る新生サーブ。
そのブランニューモデルには
北欧の職人魂が宿っていた!

2011年10月01日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

9000、初代9-5に続く第3世代の「大型サーブ」


今回試乗した2代目サーブ 9-5 ベクター

サーブの上級大型セダン「9-5(ナイン ファイブ)が13年ぶりにフルモデルチェンジし、2011年3月18日に日本で発売された。サーブ初の大型セダンとなった「9000」(1984~1998年)、その後継車である初代9-5(1997~2010年)に続くもので、9-5としては2代目となる。

主力をターボエンジン搭載車とする点や航空機メーカーの血筋を感じさせるデザインは伝統的なものだが、新型9-5はハードウエアを一新。と言っても、開発は主にGM傘下で行われたので、シャシーやパワートレインはGMグループ車(特にオペル)と共有する部分が多い。

 

初代サーブ 9-5

エンジンは新世代の2リッター直4ターボと2.8リッターV6ターボ、変速機は6速ATで、「XWD」と称する電子制御4WDモデルも用意している。設計および最終組立は、これまで通りスウェーデンのトロールハッタン工場で行われている。

なお、今回発売されたのは4ドアセダンだが、欧州ではすでに5ドアの「9-5 スポーツエステート」が発表されている。

GMから離脱。独立企業としてリスタート


サーブ初の量産車「92」(1950年)。横は1940年代の推進式(プロペラが後部にある)戦闘機サーブ J-21

1937年に設立されたスウェーデン航空機株式会社(スヴェンスカ・アエロプラン AB、略してSAAB)は、第二次大戦後に乗用車事業をスタート。航空機メーカーのノウハウを生かした軽量モノコックボディや当時は少数派だった前輪駆動を先取りした「92」を1950年に発売。さらにその進化型である「96」「99」「900」等で、高品質を売りとする北欧の小メーカーという地位を確立した。ボルボと同じスウェーデンのメーカーだが、生産規模はサーブの方がはるかに小さく、設計思想や製品キャラクターも大きく異なる。非スポーツカーメーカーでは異例とも言える小規模メーカーだ。

 

サーブ 99 (1967~87年)。2ドアセダンのほか、4ドアセダン、3ドア、5ドアがあった

1990年代にはGM傘下となり、2000年に完全子会社化。これによって航空機メーカーのサーブABとは資本関係を失った。初代9-3や9-5ではプラットフォームや一部のパワートレインをGMグループ内(主にオペル車)で共有するようになったが、北欧車らしいデザインと高品質は維持され、北米などで高い人気を得てきた。しかし2009年には親会社であるGMが経営破綻。紆余曲折の末、サーブは2010年にオランダのスパイカー・カーズ社(スパイカー)の傘下に入り、再び独自路線の道を探っている。

■サーブ オートモービル>ニュースルーム(英語)

販売はヤナセなど全国20店舗で


サーブ 9000。プラットフォームはランチア テーマ、アルファ 164などと共有した

日本での正規輸入販売元は永らく西武自動車だったが、1990年代にはサーブ・ジャパンやミツワに移管。さらにヤナセやGMアジア・パシフィック・ジャパンを経て、2010年9月からはVTホールディングスの子会社であるピーシーアイ株式会社が、ロータスやケータハムなどと共に正規輸入販売を行っている。

2011年9月現在、日本国内での販売は20店舗で行われている。うち過半数はサーブとの縁が長いヤナセ(ヤナセグローバルモーターズ)になる。

※関連リンク
■サーブ公式HP(ピーシーアイ株式会社)>販売店リスト

価格帯&グレード展開

全車ターボで、580万(2.0ターボ・FF)~695万円(2.8 V6ターボ・4WD)


こちらは最上級グレードのエアロ。タイヤは2インチアップの19インチになり、バンパーも開口部を拡大した専用品になる

今回ピーシーアイが日本に導入したのは、2リッター直4ターボ(220ps、35.7kgm)を搭載する「ベクター」のFFと4WD(「XWD」)、そして2.8リッターV6ターボ(300ps、40.8kgm)・4WDの「エアロ」の計3モデル。変速機は6速ATで、ハンドル位置は右のみ。

■9-5 セダン ベクター(FF)  580万円
■9-5 セダン ベクター XWD(4WD) 640万円
■9-5 セダン エアロ XWD(4WD)  695万円

パッケージング&スタイル

サーブ 99のモチーフが復活


試乗車はエントリーグレードのベクター。タイヤは17インチが標準

一目でサーブと分かるのは、1960年代のサーブ99あたりを思わせる「ラップアラウンドウィンドウ」、そしてCピラーやサイドウインドウの形状が見事に「復活」しているから。しかもこれ見よがしのメッキグリルやキャラクターラインはなく、全体のスタイリングや量感で見せるあたりに、スカンジナビアン・デザインの底力が感じられる。

 

Cピラーとサイドウインドウの形状に注目。上のサーブ99の写真と比べてみて欲しい

また艶を抑えたアルミ調のアクセントラインで囲んだグリルやヘッドライト、同じく艶を抑えたモールをサイドウインドウの下だけに入れるセンスも独特。ブルーグリーンに彩られた灯火類も斬新で、さらにこの色はインパネの透過照明やメーター指針の「サーブグリーン」とも呼応している。ガラス製品や照明器具で有名な北欧だが、なるほど確かに巧いなぁと思わせる。

5メートル超だが、威圧感はない


全長5010mm×全幅1870mm×全高1465mm。ホイールベースは2835mm

ボディサイズは全長は5メートル超、全幅は1.9メートルに迫る堂々たるもの。また真正面から見た時にも迫力があるせいか、高速道路ではすぐに前走車が道を譲ってくれるが、実際にはスリークなデザインも手伝って、数値ほど大きくは見えない。威圧感のようなものがないのは、まことに北欧デザインらしく、サーブらしい。

インテリア&ラゲッジスペース

伝統のモチーフをしっかり踏襲

運転席を囲むようなインパネデザインはサーブの伝統通り。格子状のエアコン吹き出し口や、風向きを自由に調整できる「つまみ」も昔通りだ。

またサーブと言えば、キーを運転席と助手席の間に差すのがお約束だが、新型9-5ではキーを携帯するだけでエンジン始動が可能となり、その儀式は不要になった。

 

写真右奥が始動ボタン。スマートキーはドリンクホルダーの隅に置き場所がある

とはいえ、それではサーブらしくないということで、エンジン始動ボタンはかつてキーの居場所だったところに配置。これがちょっと押しにくいのだが、理由を知れば納得できる。またセンターコンソールのドリンクホルダー部分にスマートキーを置く場所があるのも、要するにそういうわけだ。

なお最初にエンジン始動ボタンだと思って押しそうになるのは、サーブ伝統の「ナイトパネル」スイッチ。夜間に速度計などを除いて計器類の照明を消してしまうもので、これも航空機ゆかりの機能。

アイドリング中は燃料消費量を表示


アイドリング時の表示。上が1時間あたりのガソリン消費量だ

メーター中央の液晶情報パネルも多機能だ。瞬間燃費計と平均燃費を同時に表示するのは珍しくないが、車両を停止させると瞬間燃費計の方が一般的な「km/L」から、1時間あたりの燃料消費量を示す「L/h」に変わるのが面白い。要するに1時間アイドリングするとガソリンを何リッター消費するかを示すもので、表示によるとエアコンオフ時には1時間あたり1.2~1.3リッターくらい、エアコン使用時には1.6~1.7リッター前後を表示していた。

 

ボビン式の速度計を表示したところ。もちろん液晶によるバーチャルなもの

それからこの情報パネルは、ボビン式のデジタル速度計に変更することも出来る。ちょっとしたデザインのお遊びだが、10km/h刻みで数字が表示されるので、これはこれで見やすい。また試乗車には無かったが、ヘッドアップディスプレイ(パイロットHUD)も装備できる。

スマートキーや電動パーキングブレーキなどを完備


ナビの画面はトヨタの純正ナビとよく似たもの

装備や操作系は600万円クラスに相応しいレベルで、丁寧に作り込まれている。例えば「パッシブ エントリー システム」と呼ばれるスマートキー機能は、ドアハンドルを引けば解錠(4枚とも対応)、ドアハンドルの一部にタッチすれば施錠(運転席・助手席ドアのみ)するもので、使い勝手がいい。また電動パーキングブレーキもしっかりと採用(前進だけでなく、後退時にも自動でブレーキを解除してくれる)。HDDナビはトヨタ車や日本向けのGM車と似たもので、目新しさはないが、特に支障もない。

 

センターコンソールのスイッチ類は少々煩雑。一つ一つが小さく、運転中は操作しにくい

さらにハーマン/カードン製の11スピーカーサウンドシステムも備わり、音もいい。唯一、装備面で不足を感じたのは、HDDナビでデジタルTVが見られないことくらいだ。

ショーファードリブンとしても使えそう

前席シートは全車に8方向の電動機能付で、クッションの形状や調整範囲も申し分なし。前席のヘッドレストには「SAHR」と呼ばれるサーブ独自のアクティブヘッドレストが装備される。

後席スペースは余裕たっぷり。2835mmというホイールベースは、同じラージFFセダンの日産ティアナや新型トヨタ カムリより60mmも長く、足もと広々。ショーファードリブン用にも使えそう。

 

座り心地や背もたれ角度もいい感じで、まったく不満はない。またヘッドレストを下げたままでも違和感はなく、むしろしっくりくるほど。そして最近のクルマでは珍しく中央席にも大人がちゃんと座れる。

 

サンルーフの電動シェードを閉じたところ。光がうっすら差し込むのが北欧らしい。ガラスの前半分はチルト&スライド可能

サンルーフ仕様の場合、ロールスクリーンを収納する部分の天井が出っ張っているが、ヘッドルームには影響なし。総じて1000万円クラスの高級セダンのような贅沢さはないが、スペース的には問題ない。

トランクは奧に深く、スルーも可能。U字型レールがユニーク


ホイールハウスとサスペンションの侵入は大きいが、手前側は横に広い

トランクは天地が浅く、全長5メートル超の大型セダンとしては小さく見えるが、容量自体は515リッターとクラス水準。また開口部は広く、手前側の横幅も広く、奧行きは深い。しかも大型セダンでは省かれることが多いトランクスルー機能もあるので、長い物を積むのは得意だ。

 

床下にはテンパースペアタイヤを搭載

床には荷物のズレを防ぐために、U字型のカーゴレールに沿って動かせるアルミ製バーも装備している。このバーはレールが狭くなるところでは伸縮してフィットするという凝ったものだが、そもそもレール形状がU字型(馬蹄形)なのは、それがサーブデザインの特徴でもあるから。カタチと機能が一体になっているのが北欧デザインらしい。

基本性能&ドライブフィール

V6要らずの2リッター直4ターボ

試乗したのは2リッター直4ターボの「ベクター」。同じベクターでハルデックス社の電子制御多板クラッチを使った4WDモデルも選べるが、今回はFFの方。価格は新型9-5で最も安い580万円だ。

このエンジンは発進直後から扱いやすいトルクを発生し、ごく自然に1770kgのボディを前に押し出す。ターボラグはほぼ皆無。しかも予備知識なしだと、排気量の見当が付かないないほど力強い。エンジンはサーブ自製ではなくGMオペル系だが、出力特性や感触は昔からターボを得意とするサーブのイメージに沿ったもので、思わず「サーブらしいな」と感心してしまう。アクセル操作に応じてブースト計の針が左右に振れる様子も見ていて面白い。

 

2リッター直4ターボ(ツインスクロール式)。最高出力は220ps、最大トルクは35.7kgmを発揮する

いざとなれば加速力も侮れない。低回転でアクセルを急に踏み込んだ時の反応は少々スローだが、ターボが本格的に過給する領域では、他社の3リッター級V6を上回る地力でグゥーーンと息の長い加速を見せる。単に速いだけでなく、大排気量エンジンのような落ち着いた加速感がいい。新型9-5にはこの上に2.8リッターV6ターボ(300ps、40.8kgm)の「エアロ」もあるが、こうなると正直言って「V6は要らないなぁ」と思ってしまう。

 

そんな出力特性や車両キャラクターもあってか、スポーツモードなるものはなし。またステアリングにはパドルシフトも付いているが、ベクターのものはシフトレバーをシーケンシャルモードに寄せないと有効にならないタイプで、これは最近のトレンドから言っても惜しいところ。

 

100km/h巡行時。エンジン回転数は6速トップで約1750回転

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1750回転と十分に低く、そこからの加速も俊敏にこなす。とりわけアクセル全開、ターボ全開での加速は速い、速い。例えて言うなら、Eクラスや5シリーズが後ろに迫ってきても一泡吹かせそうなレベル。

FFの旨味が濃い。ハンドリングはクイック。足まわりは速度域によってハード


ミシュランのプライマシーHP

サーブと言えば、量産第一号から数年前まで前輪駆動だけでやってきたメーカー。いわばFFのエキスパートであり、新型9-5にもその伝統は受け継がれている。いかにもFF的に前輪で引っ張られる感じ、ガッシリしたボディ、ワイドトレッド&ロングホイールベースなどが相まって、シワやひび割れだらけの舗装を突っ切ってゆく時にも、大いなる安心感がある。ただしステアリングレシオは最初の一切りがビクッとするほどクイックで、慣れるまでは少々過敏に思えた。

 

リアのマルチリンクサス

乗り心地は街乗りレベルではまったく不満なしだが、高速道路を100km/h程度で流す場合には、路面の継ぎ目や凹凸に反応して車体が上下するのが気になった。もう少し常用域でフラット感が欲しいところ。

静粛性に関しては、全開加速時こそ「コォォォン!」とスポーティなエンジン音が割と入ってくるが、ロードノイズや風切り音は車格相応に抑えられている。走っているという実感が得られる程度の音があり、それもハーマン/カードンをごく低い音量で鳴らせば気にならなくなる。

試乗燃費は7.7~8.9km/L

今回はトータルで250kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道と高速道路を合わせた区間(約90km)が7.7km/L。一般道を特に燃費を意識せず走った区間(約30km)が8.0km/L。空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が8.9km/L。また高速道路を80~100km/h+で流した区間では確実に10km/Lオーバーを維持した。

全体としては、運転パターンによる上下は少ないという印象で、渋滞路やストップ&ゴーが極端に多くない限り、割と普通に7~8km/L台は出そうに思えた。また高速道路で法定速度を守れば、12km/Lオーバーは現実的だと思う。指定燃料はもちろんハイオク。

ここがイイ

99や900系のデザイン、FFの良さが実感できる走り、「いいものを長く」の設計思想

見事にサーブらしい、というか昔のサーブ99や900っぽいデザイン。基本的に2車種しかないから出来るともいえるが、今回、9000系ではなく900系のデザインになったのは正解。グリルまわりもシンプルになっているが、今までどおりのイメージが生きている。インパネデザイン、ナビも消えるナイトパネル、キーの位置(始動スイッチの位置)などもまさにサーブ。燃費計やナビは日本でも使いやすくなっているし、ちゃんと右ハンドルだ。

FF車っていいな、と思わせる走り。電子制御の4WDも選べるが、むしろFFの方がサーブらしい。雪国生まれのサーブですら最近までずっとFF一本だったのだから、日本では特殊な事情がない限りFFで十分だと思う。

 

「いいものを長く」の良心的な設計思想。9000や先代9-5は、販売期間が実に13~14年間に及ぶという超長寿モデルだったが、このモデルライフは一般的な欧州車の2倍以上、日本車の3倍以上に相当する。おそらくは新型9-5も従来と同じくらいのモデルライフを想定しているはずで、それを考えると先進的な装備が積極的に採用されているのも頷ける。ぜひ新型も長く販売し続けて欲しいもの。

ここがダメ

速度域を選ぶ乗り心地

ニュルブルクリンクで煮詰めたようなハンドリングは、少々サーブのイメージとは乖離している。もう少し穏やかでもいいと思う。また乗り心地についても速度域や路面によっては、もう少しフラット感が欲しいと思った。ただ、これは走行距離が進めば、しなやかに変化するかも。

細かいところでは、パドルシフトを有効にするにはシフトレバーを左に寄せてマニュアルモードにしなくてはいけない。やはりこれは、パドルシフトを引けばすぐシフトダウンし、しばらく放置するとDに復帰する方式がいい。

前後にパーキングセンサーは装備されているが、全長が5メートルを超える上、車両感覚もつかみにくいので、後付けでもいいからバックモニターは欲しいところ。

総合評価

99と37 ビゲンのこと

サーブというと、やはりまずは99が思い浮かぶ。フロントウインドウからテールエンドへの特徴的なラインは、まさにサーブ独自のもの。残念ながら実際に乗る機会はなかったが、個人的にはサーブというクルマの原風景が99だ。調べてみると99は1967年にデビューしていて、この60年代のカタチは今回試乗した新型9-5にもモチーフとして活かされている。ポルシェ911が最新の991型となってもナロー(911の初期モデル)のデザインを引き継いでいるのと同じ。欧州車の良き伝統で、以前にも書いたように日本車にはないものだ。それだけで「9-5はイイなあ」と思ってしまう。

古きサーブといえば、もう一つ思い出すのがサーブ 37 ビゲンという戦闘機。1960年代の終わり頃、このビゲンと、フランスのダッソー ミラージュ、そしてF4 ファントムが三大カッコイイ戦闘機だった(と思う)。で、また調べてみると初飛行は1967年で、生産は70年から。登場時期は99と見事にかぶる。しかしこの37 ビゲンは米国から一部技術供与を受け、それゆえ東欧などへ売ることはできず、米国の圧力により輸出には失敗。結局スウェーデン空軍でしか使われなかったらしい。ちなみに輸出名はユーロファイターだったという。いずれにしろスウェーデンは、この頃からジェット戦闘機を自前で開発できる先進工業国だったのだ。

 

さてクルマに話を戻すが、実際に乗ったことのあるサーブでは、なんといっても初代900だ。1978年に登場して93年まで作られているが、特に86年にデビューしたコンバーチブル。これは今も時々見かけるが、スタイリングが素晴らしく魅力的。でもボディ剛性の低さ、信頼性の低さもピカイチだった。ちなみに知人が乗っていた900 コンバーチブルは広い交差点の真ん中で止まってしまい、奥さんと二人で大汗をかいて脇に寄せたという。オシャレでカッコイイ外車ライフが、一瞬にして悲しいエンスー道に落ちた瞬間だw。

それはさて置き、試乗した9-5はサーブが米国GMと手を切ってから初の新型車となる。試乗記にあるように最新モデルとして性能的にも装備的にもまったく不満はなく、アッパーミドルセダンとして個性的なクルマを求める人には十分にウケそうだ。北米への輸出状況が現在どうなっているか知らないが、米国に入れば昔のようにNYあたりの「プレッピー」からも趣味の良いクルマとして歓迎されるだろう。まあプレッピーという人々がまだ存在しているとも思えないが・・・・・・・。何にしろ、かつてサーブは知的でオシャレという、米国でそれなりに良いブランドイメージを持っていた。ゆえにGMは傘下に組み入れたのだろう。

片や民族系に、片やグローバル資本に

しかしGMの崩壊と共に、サーブも資本主義の大海を漂うこととなってしまった。GM傘下と言えば、日本のスバルもそう。スバルはインプレッサをサーブ9-2Xとして北米で売っていたこともあったくらいだ。そんなスバルはトヨタの傘下に入り、うまく生き延びた。が、より規模の小さいサーブは、オランダの弱小スーパーカーメーカーであるスパイカーに買われたがゆえ、さらに厳しい状況となっている。サーブが今どうなっているのかよく分からない人も多いだろう。そこでクルマのwebサイト「レスポンス http://response.jp/」の関連ニュースを時系列でまとめてみた(要約および注釈あり)。


・2009年12月 GMは『9-3』と『9-5』の知的財産権と(旧型の)製造ラインを、中国北京汽車に売却すると発表。サーブの企業本体はスパイカー・カーズ社と売却交渉。

・2010年1月26日 GMとスパイカー・カーズが売却合意。サーブ買収費用7400万ドル(約67億円)。

・2010年2月23日 スパイカー・カーズがサーブの所有権移転手続きを完了。7400万ドルを支払い、GMは新生サーブの優先株式3億2600万ドル(約293億円)分を取得。資金はEIB(欧州投資銀行)からで、スウェーデン政府の信用保証により、4億ユーロ(約505億円)を融資。旧型9-5の製造ラインを北京汽車に譲渡でき次第、新型9-5の生産をスウェーデン・トロールハッタン工場で開始。

・2011年2月24日、スパイカー・カーズは本業であるスポーツカーの製造・販売部門を、英国コベントリーに本拠を置くCPPグローバル・ホールディングズに売却すると発表。

・2011年4月 スパイカー・カーズが部品メーカーへの代金支払いを滞らせたため、パーツの供給を止められ一時的に操業停止。サーブの資産売却を検討。

・2011年5月3日 華泰汽車と提携を発表。華泰汽車がスパイカー・カーズの株式を最大29.9%取得し1億5000万ユーロ(約180億円)を出資する。中国に合弁会社を設立し、現地生産を予定。しかし一転、計画は白紙撤回。中国政府の認可が下りなかったとの見方。

・2011年5月16日 中国の大手自動車ディーラー、パンダ・オートモービルトレード社と提携に向けた覚書。新型『9-5』とSUVの新型『9-4X』をメインに中国販売用として3000万ユーロ(約34億円)分を購入し、30日以内に1500万ユーロ分を追加購入。これにより6週間操業を停止しているトロールハッタン工場をできるだけ早期に再開。

・2011年5月17日 パンダ・オートモービルトレード社は第1回分の購入代金として、3000万ユーロ(約35億円)を支払。

・2011年5月23日 パンダ・オートモービルトレード社は中国政府当局との間で、スパイカー・カーズ&サーブ連合に対する出資計画を認めてもらうための協議へ。

・2011年5月23日 スパイカー・カーズ、社名を「スウェディッシュ・オートモービル」に改める。

・2011年8月24日 6月以降、従業員に対する賃金支払いが遅延。IFメタル(IFMETALL:スウェーデン産業労組)とユニオネン(Unionen)の2労組は「賃金支払いが2週間以上遅れれば、我々はサーブの破産を申請する」と語る。

・2011年9月7日 スウェーデンの裁判所に会社更生法の適用を申請。労働組合が破産を申し立てた場合に、資産を保全するのが目的。

・2011年9月9日 資金調達計画が不十分なことを主な理由として、会社更生法申請却下。しかし不服として上訴。

・2011年9月21日 上級裁判所より会社更生法申請承認。

・2011年9月22日 パンダ・オートモービルトレード社、出資した4500万ユーロ(約47億円)が、不良債権化する見込みと発表。

・2011年9月29日 スウェディッシュ・オートモービル、スポーツカー事業を米国の投資会社ノースストリートキャピタルに約3200万ユーロ(約33億円)で売却合意。CPPグローバル・ホールディングズとの契約は破談。

簡単に言うと、スパイカーは国内雇用を守りたいスウェーデン政府の保証で欧州投資銀行から金を引き出し、GMからサーブを買ったものの、1年ほどで苦しくなった。そこで中国に活路を見いだしたが、提携がまとまらず、運転資金が続かなくなって会社更生法に至った、ということのようだ。英語のわかる方は以下のリンクもご参照いただきたい。

■サーブ オートモービル>インサイド サーブ(英語)
■サーブ オートモービル>インサイド サーブ>Q&A(英語)

何にしろ、GMの破綻がすべての始まり。結局、サーブは、戦闘機もクルマも米国の思惑で翻弄され、今は新興資本主義国の中国に翻弄されるということに。製品である新型9-5は良いクルマだが、弱小資本の製造会社はグルーバル経済の中で厳しい舵取りを強いられている。奇しくも中島飛行機の末裔スバルと、スヴェンスカ(スウェーデン)・アエロプラン(航空機)・アキテボラウ(株式会社)の末裔SAABは、似たような戦後60年を過ごして、片や民族系、片やグローバル系の資本下で存在意義を探ることになっている。今後ははたしてどうなっていくのだろうか。まあそんなウンチクを語りながら、9-5に乗れるのであれば、クルマとしては素晴らしいのでおすすめしたい。今のところ、なかなかオシャレで知的な外車ライフが楽しめそうだ。いずれエンスー街道を突き進むことになる覚悟を心に秘めていさえすれば。

試乗車スペック
サーブ 9-5 セダン ベクター
(2.0リッター直4ターボ・FF・6AT・580万円)

●初年度登録:2011年8月●形式:ABA-GA20
●全長5010mm×全幅1870mm×全高1465mm
●ホイールベース:2835mm ●最小回転半径:-m
●車重(車検証記載値):1770kg(1040+730)※オプションのサンルーフ(+20kg)含む
●乗車定員:5名

●エンジン型式:A20
●排気量・エンジン種類:1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・ターボ(ツインスクロール式)・横置
●ボア×ストローク:86.0×86.0mm ●圧縮比:-
●最高出力:220ps(162kW)/5300rpm
●最大トルク:35.7kgm (350Nm)/2500rpm
●カム駆動:- ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/70L
●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク(H-アーム)+コイル
●タイヤ:225/55R17 (Michelin Primacy HP)
●試乗車価格:-円 ※オプション:バイキセノンヘッドランプ、運転席メモリー機能、U字型カーゴレール、チルトアップ機構付電動パノラマガラスサンルーフ、後席サイドエアバッグ、メタリックペイント
●ボディカラー:ジェットブラック メタリック
●試乗距離:約250km ●試乗日:2011年9月
●車両協力:株式会社渡辺自動車

 
 
 
 
 
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