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サーブ 9-5 SE 2.3t エステート新車試乗記(第77回)

Saab 9-5 SE 2.3t Estate

1999年06月04日

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キャラクター&開発コンセプト

サーブ久々の本格ワゴン

サーブのフラッグシップモデルである9000シリーズがフルモデルチェンジを受けて9-5(ナイン・ファイブ)と名前を変えたのが1997年6月。その9-5セダンをベースにしたワゴンとなる「9-5 SE 2.3t エステート」が今年1999年3月、内装を簡素にした「2.3t エステート」が6月に発売された。

9-5エステートは、サーブ社として1959年の”95”の発表以来40年ぶりのステーションワゴンで、9-5セダンと同じ2.3l低圧ターボと4ATを組み合わせている。シャシーは、同じGMグループのオペル・ベクトラからの流用といわれている。航空機メーカーでもあるサーブだけに、エアロダイナミックスにも優れ、Cd値は0.31とクラス最強を誇る。また、サーブはセダンやハッチバックでも広大な荷室を備えているが、ワゴンは当然それよりもさらに広い。これが9-5エステート最大の武器といえるだろう。

価格帯&グレード展開

高級装備を充実させて価格は533万円

セダンには2.3リッター直4ターボと3.0リッターV6ターボの2種類が用意されるが、エステートは前者のみを搭載するモノグレードとなる。価格は533万円。装備はセダンの”SE 2.3t”と同じで、デュアル&サイドエアバッグ、アクティブヘッドレスト(セダンでは世界初の標準装備だった)ABS、クルーズコントロール、前後ヒーテッド付き本革シート、オートACなどの充実した装備となっている。ハンドル位置は右 /左の選択が可能。

パッケージング&スタイル

昔も今もエアロダイナミックスボディは健在、Cd値はクラストップレベル

9-5エステートはセダンのフロント回りだけを残し、ルーフやリアゲートを新設計してワゴン化されている。ボディサイズは全長4820mm×全幅1750mm×全高1495mm、ホイールベース2705mmで、セダンよりも全高が45mmも高いのが特徴だ。エステートのCピラーはド太く、セダンの重厚さをより強めている。ライバルのベンツEクラスワゴンはもとより、世界で最も骨太感のあるワゴンといってもいいだろう。それでいてCd値(空気抵抗係数)がクラス最高の0.31なのだから、航空機メーカー技術の凄さに感服させられる。

航空機のコックピットを彷彿させる個性的なインテリア

photo_3.jpgインパネはセダンと共通で赤茶色の木目パネルがあしらわれた大きな計器板となっており、航空機メーカーらしい造作が特徴的。夜間走行時にボタンを押すと速度計以外の計器がすべて消灯する”ナイトパネル機能”など、いかにも航空機のコックピットを思わせる雰囲気だ。スピードメーターは140km/h以下では目盛り間隔が広くなっており、常用速度域を見やすくしている。また、極寒育ちのクルマらしくスイッチ類はどれも手袋をしたままでも操作できる大きなもの。センターコンソール配置のイグニッションキーも健在で、走らせるまでもなく、”ガイシャ”ということを認識できるものだ。このように大量生産、大量消費を目指して個性が失われがちな大メーカーとは違い、昔からのオーナーも納得できる個性が受け継がれているのは小規模メーカーだから成せるもの。ただ、木目パネルや本革シートを装備しているものの、価格の割に全体的な質感が今一歩に感じられるのは、小規模メーカーの悲哀なのだろうか。

荷室にも航空機メーカーの技術を応用

荷室は通常の容量(VDA方式)は416リッターで、6対4分割可倒の後席を畳めば1490リッターにもなる。タイヤの張り出しは大きいが、これだけ広大ならば、さして問題にはならない。

フロアには左右2本のアルミ製レールがあり、脱着可能の4個のフックとカーゴネットで確実に荷物を固定できるようになっている。これは航空機技術を応用したものだ。特にユニークな仕掛けは、オプションのスライディングフロア。これはフロアがクルマの外へ50cm引き出せることができ、積載重量が最大 200kgの荷物を楽に出し入れできるというもの。ヘッドライトワイパーやシートヒーターがサーブから広がったように、このアイデアもワゴンのスタンダードとなるかもしれない。

この他、各種アタッチメント、後続車に注意を促すテールゲートイルミネーション、ロードノイズを低減させる効果のある頑丈なパーセルシェルフなど、最新のワゴンもモデルとして数々のアイデアが満載される。小技の多い国産ワゴンに対して、大技を得意としているのがこの9-5エステートの特徴といえそうだ。

欠点は全開時にリアゲート高が高いこと。取っ手が高いので閉めるとき、小柄な女性だと少しばかり苦労させらそう。せめてヒモ状の取っ手を付けてほしい。

基本性能&ドライブフィール

サーブ自慢のエコパワーエンジン

エンジンはセダンにも搭載される2リッター直4・DOHCインタークーラー付き低速ターボ。ターボはパワー追求型ではなく、低速域でのトルクを増幅させるもので、最高出力170ps/5500rpm、最大トルク28.5kgm/1800rpmを発生する。サーブはこのエンジンをエコロジー・エコノミーを意味する”エコパワーエンジン”と呼んでいる。ギアボックスはノーマル、スポーツ、ウインターの3つのモードが選択できる4速ATでギア比はセダンと同様だ。サスペンションもセダン同様で、前ストラット式、後マルチリンク式。最新のワゴンではもう珍しくなくなってきたものだ。

トルクフルな走り

車格を考えれば2.3リッター直4というのはちょっと頼りないのではと思ったが、自慢のターボ技術によって発生させられる分厚いトルクは3リッター車に匹敵するもので、それをわずか1800rpmで発生させているだけに、70kg軽いセダンと乗り比べない限り、非力だとは感じないはず。フィーリングにも荒々しさはほとんどなく、実に高級車っぽい加速をしてくれる。これだけの加速性能ならば、フル乗車かつ重い荷物を載せていても、そこそこの期待に応じてくれそうだ。

乗り心地は少し柔らかめで、段差による突き上げがあるものの、ワゴンに乗っている気がしないほど剛性が高いので不快感はない。ステアリングは中立付近がややダルな感じを受ける曖昧なもので、ハンドリングの応答性は優れているとは言い難いもの。しかし、これはアイスバーンでの走りを考慮したものらしく、サーブはあえてこのようなセッティングにしているのだという。この極寒仕様ともいえる走りがサーブの味なのだ。

意外だったのはワインディングをハイペースで気持ちよく走らせることができたこと。低回転重視の太いトルクが功を奏し、たとえ上り坂であっても全くもどかしさを感じさせないのだ。パワーが控え目だということもあるが、挙動を大きく取り乱すこともない。これが安心感につながっている。今回は高速試乗はできなかったが、0.31というCd値からみても、風切り音の少ない快適な走りが望めるだろう。

ここがイイ

トルクフルなターボエンジンは、段つき感もなく、下から力があって排気量を忘れさせてくれる。ワインディングでもトルクがあるため、Dポジションのままでオンザレール感覚で走れ、意外に速いのには驚かされた。そうしたハードの良さはもちろん、サーブというブランドイメージも、ちょっと手垢が付いてきたボルボより希少価値が高く、同じ金額を支出するなら、こちらがオススメだろう。ワゴンとしても使い勝手に不満はない。

ここがダメ

輸入元では装備の充実などにより相対的に安くなっているとか、値下げすることは今まで買ってくれたユーザーに対する背信と説明してこの価格を正当化するが(それは確かに正しいが)、客観的に考えると、533万円という価格はかなり高い感じがする。まあ、このクラスは法人需要も多いため、500台という販売予定台数はからすれば妥当な値付けとは思うが、サラリーマンではちょっと手が出しにくいし、無理してでも買うべきクルマというほどでもない。セダンの個性的なリアスタイルは好ましかったが、ワゴンになったらちょっとリアスタイルが普通になってしまったのは残念。

総合評価

photo_2.jpg50%の株式をGMが持つグループ企業とはいえ、サーブらしさは十分あり、今時その個性は貴重。10年ほど前、五木寛之の後押しで「ポストBMW」を演出したこともあったサーブだが、当時の主力900は3ATしかない、そうとう古くさいセダンで、看板に偽りあり、という感じだった。しかしこの9-5では、ハードウエアの仕上がりは特に問題がなく、十分ポストBMWがねらえそうだ(もはやそんな論議は虚しい時代ではあるが)。先代の9000も後期のモデルに乗ったことがあるが、アッパークラスセダンとして、不満のないもので、人にすすめていたくらい。ドイツ車に食傷、他の欧州車は不安、アメ車は言語道断というアッパー志向のユーザーには自信を持ってオススメできる。売ってるのはヤナセだし。

 
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