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ポルシェ 911 カレラ新車試乗記(第15回)

Porsche 911 Carrera


1998年03月13日

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カーデータ

●カテゴリー:スポーツカー
●クラス(排気量):3400cc
●キャラクター:1963年にプロトタイプとしてデビューした911は、4度のビッグマイナーでスタイルこそ若干変更してきたものの、空冷フラットエンジンによるRR(リアドライブ&リアアクスル)レイアウトといった基本設計は頑なに守り貫いてきた。スーパーカーに分類される性能を持ちながら、コンパクトで一応4名が乗車できるなどの日常性の高さも911の魅力である。その基本設計の独自さとモータースポーツでの活躍により、多くのファンを魅了し続けてきたが、社会事情の変化につれてポルシェも変わらなければならなくなった。今回の新型911は、文字どおりの全面一新である。
996型とよばれるニュー911は、RRレイアウトとリアサスペンションの基本形式が変わらなかったぐらいで、ボディもエンジンも内装もオールニューだ。
モデルチェンジされたのはカレラクーペだけであり、他のモデル(S、4S、ターボ、RSなど)はひとまず空冷の993型が継続される。
●コンセプト:従来どおり2+2のRRレイアウトを踏襲し、ボディパネルはまったく変わったが、全体的には従来のイメージを色濃く残すスタイリングとなる。ボクスターにまず載せられてデビューした新型水冷フラットシックスエンジンを開発したのは、ますます厳しくなる排ガス、燃費、騒音などの規制に対処するためだ。
ボクスターとの共用化を図ることでコスト低減が考えられているが、ポルシェの美点であるブレーキ性能などの走りの開発には一切妥協がない。あらゆる面で旧型ポルシェの性能を上まわり、ニュージェネレーション911と呼ぶのにふさわしい仕上がりとなっている。ボクスター同様の新しいフロントフェイスは、これからのポルシェのアイデンティティと受け継がれていくものだ。
●注目度:911といえばやはり930ターボのワイドフェンダー、太股のようなセクシーなフェンダーなど艶やかなボディラインが思い浮かぶ。そのフォルムは993型でやや薄れてしまったが、今回の新型911でさらに大きく変化し、すっかりフラットなものとなった。あまりクルマに詳しくない人は、未だに '90年発売の964型を最新だと思っているようで、街中を流しても、ポルシェ911としての認知は低いようだ。1千万円以上するクルマの割には注目してもらえない。このフォルムを最新ポルシェとわかってもらうには、少し時間がかかりそうだ。
●特筆装備:エンジンが空冷から水冷式に変更され、ボディパネルが変更されたことで、室内の静粛性が飛躍的に向上した。もちろん、あの高回転でフラット6 が奏でる独特のポルシェサウンドは控えめながら聞くことができるが、とにかく静かだ。排気量は3.4リットル(993型は3.6リットル)になり911として初めてDOHCを採用したことも注目したい。シーケンシャルシフトのティプトロニックSも5速化されている。
●燃費:オンボードコンピューターの表示を見る限り、高速道から一般道までの平均的な燃費は6~7Km/リットルといったところ。
●価格・販売:カレラクーペには6速マニュアルと5速ティプトロニックSが設定され、後者は右ハンドル仕様が選べる。価格は6速マニュアルが990万円、ティプトロニックが1070万円。ノーマル車でも基本的な快適&安全装備が標準化されるが、例によってオプション品のオンパレード。コンフォートパッケージは150万円高、スポーツパッケージは165万円高と車一台が買えてしまうさすがの値段。発売記念として、少しお買い得な限定セットも3タイプ用意される。
ミツワから本国ポルシェAGの日本法人ポルシェジャパンへと輸入権が移行し、販売店は従来からのミツワ系がほぼそのまま引き継がれるが、今年6月から全国のスバル営業所の数店舗も扱う予定となっている。ここまでの紆余曲折は本が書けそうなほど色々とあった。

スタイル

ナロー(狭い)ボディをワイドフェンダーで広げたゆえかっこよかったのが過去の911。996型ではボディ全体が広がって大きなサイズのナローボディとなった。したがってフェンダーの起伏は薄れ、全体にボリューム感だけが増したフォルムとなっている。一応911のカタチではあるがグラマラスな妖艶さはどこへやら。CD値0.30のフラッシュサーフェイス化された新型911のスタイルを見て、「最高にかっこいい」とか「迫力がある」などという人はあまりいないだろう。ただし、今後フェンダーが広がっていく可能性はあると見た。そうなるとかなりかっこよくなるかも。

パッケージング

ボディサイズは993型よりも全長185mm、全幅35mm拡大され、ホイールベースも80mm延長されている。最初の頃の911と比較すると、もはやコンパクトなクルマとはいいがたい大きさとなってしまったが、車両重量は993型と比較して約50kgも軽くなっているのはさすが。

室内は確かにちょっと広くなった感じはある。センターコンソールボックスが採用されているが足元も随分と広々としていて快適になった。ただ、二人乗るだけなら今まででも別に狭くて困ったりはしなかったし、またいくらホイールベースが長くなったといっても、後席に長時間乗れると早合点してはいけない。

内装(質感)

photo_3.jpg5連メーターやメッキが施されたドアノブ以外ボクスターのまま。未来的な造形のオーディオ&エアコンの操作パネルやシフトノブは、一見かっこいいと思うが、実際に目にしてみるとさほどでもない。プラスチック類の質感も不足気味。スポーツカーとはいえ、1千万円以上もするクルマなのだからもう少し高級感が欲しいと思う。カップホルダーを付けなかったことは正解(オプションでルーバー取り付けタイプがある)。

雑誌などでは「使いやすくなった操作パネル」とあるが、これはにわかに信じがたい。ポルシェを乗り継いできた人ほど、きっとためらうはずである。ウインカーレバーやクルーズコントロールレバーなど、同じようなレバーが4本あるのもちょっと困りモノ。

ただ、誰にでも受け入れられやすくなった印象のインパネになったことは事実。今までのインパネが古すぎたのは確かだから。

シート・ステアリング・シフト感触

シートは旧型を流用したかのような硬めのシート。一見あまりサポート性がよくないように見えるが、これが結構いい。乗るほどにカラダに馴染む逸品なのは911の伝統通りだ。

試乗車はティプトロニックSで、DレンジからMレンジ(マニュアルモード)に入れるときのシフト感覚は「ガチャ」っとゲーセン的感触。旧タイプの方が重々しかった。ステアリングに取り付けられた+/-のシフトスイッチは、親指一本で操れ、2ボタンのトヨタ式よりずっと使いやすい。

動力性能(加速・高速巡航)

速い!文句なしに速い!フィーリングよりもそのバカッ速さに圧倒されてしまう。100km/hの高速巡航でも騒音が今までより低く、音楽や会話が楽しめる。さらに快適さを約束してくれる高速ツアラー的な乗り心地。最高速度が公称280km/hなので、楽々200km/h をクリアするが、ちょっとしたワダチでも敏感に反応し、大型クルーザーのどっしりとした走りではなく、ちょっと神経質になって運転する必要があるのは今まで通り。

ハンドリング・フットワーク

通常の高速コーナーならさすがに安定感が高い。ワインディングではRRらしい、いつもの911のフィーリングが残っているのがうれしいところ。ただし、やはり安定感がぐっと増していて、走っていて993型より安心感があり、オンザレール感覚でコーナーをクリアできる。

乗り心地

スポーツカーなのだからそれなりに硬いし、路面状況にも敏感に反応する。でも日常的使用に不満が出るほどでないのも従来通り。オプションで用意されている265R18サイズのタイヤは突き上げがきついと思われるので17インチが無難かと思う。

騒音

リア255という極太タイヤのためか、タイヤノイズがやや高め。後ろから聞こえるエンジン音はそれなりにのレベルなのだが、空冷時代に比べれば圧倒的に静か。タイヤノイズの方がうるさいほど。さすがに5000回転も回せば例のポルシェサウンドは楽しめるが、正直なところやや物足りない。ボディが根本的に変わって防音・遮音対策ができたということなのだが、ユーザーはそれを望んでいるのだろうか。

安全性

ボディー一新で50%剛性アップ。ボディサイズが大きくなったのは安全性確保のため。膨らんでもすぐしぼまず、腰から頭部までをカバーする大容量サイドエアバッグも装備。

環境対策

水冷式エンジンになったのは熱管理で排出ガス規制をクリアするため。

ここがイイ

すべてを一新したことで、今までできなかったことがすべてできるようになったこと。つまり快適で安全、そして超高性能スポーツカーが実現した。新型911のトータルな性能は誰もが認めるところだろう。水冷化でメンテナンスも楽になった。これまで1万キロごとに必要だったタペット調整も不要になり、クーラントに至っては交換不要。空冷時代ほどオイルに神経質になることもない。大衆化(価格は大衆化されていないが)された新型911は、かつての意固地な911フリークを裏切ることで新しいユーザー層を獲得することになりそうだ。

ここがダメ

まったく新しくなったこと。過去、964型、993型が新たに登場する度に911は終わったと多くの人に言われてきたが、今回のフルモデルチェンジはそれ以上の衝撃となったはず。新型911は外観といい内装といい、ボクスターと同様の、今までとはまったく違う近代的な工業製品となった。こうなると、ポルシェだからと許されることはなくなり、他のメーカーの商品と同等の土俵で戦うことになるわけで、逆に大変苦しい戦いになるのでは、と心配せざるを得ない。世界一級の性能も、公道でフルに発揮できるはずもなく、スポーツドライビングを楽しむだけならマツダロードスターでも十分。「乗り手を選ぶ911ではない」ところが良くもあり、悪くもある。

総合評価

photo_2.jpg時代の流れに合わせて最高の姿を示したポルシェ911。ポルシェの社長曰く「新型が正真正銘の純血ポルシェ」。売れるクルマにしなければ経営的に危ういポルシェにとって、より多くのユーザーに受け入れられるためのフルチェンジは必然ではあったが、ポルシェ好きとしては複雑な思いも。

日本では911の半額から三分の一のお金で過剰に速いスポーツカーでも、豪華で速いGTでも買えるわけで、ポルシェへは官能的な刺激とか、ブランドの威光が求められるはず。そのどちらもがちょっと希薄になった感があるニュー911はちょっと心配だ。

ただ、そうはいっても一部のマニアにしかうけないクルマより、誰もが乗りやすいクルマの方が必ず絶対数は出るわけで、その意味では間口が広がった911は成功の可能性もぐっと高まっている。売れ行きを見守りたい。

お勧め度(バリューフォーマネー)

クルマの走りの魅力よりもポルシェというブランドにこだわっている人には、「新車の911」は魅力だ。ただ今までのポルシェは毎年毎年、オーナーが気になるような改良が施されるので、大金を果たして購入しても最新型を乗っているという満足感は1年だけしか維持できない。まして、90年代に入ってからは国産車並に4年ごとにモデルチェンジを繰り返しており、先行きは不透明。ただし、性能はとにかく、20年前のモデルでも十分今も通用する寿命の異様に長い911なので、一生モノとして買うなら不動産みたいなもの。セカンドカーとして20年乗れば国産車並の償却だ。

 
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