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ポルシェ 911 タルガ新車試乗記(第207回)

Porsche 911 Targa

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2002年02月09日

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キャラクター&開発コンセプト

クーペの閉鎖感もなれけば、カブリオレの軟派なイメージもない、全天候型オープンエアモデル

911には1960年代からルーフだけを取り外しできるセミオープンモデルが「タルガ」の名でラインナップされていた (初期モデルはビニール製のリアウインドウも外せた)。このタルガは空冷エンジンの最終型(993型)で、巨大なガラスサンルーフを開閉する方式に改められるが、'98年、エンジンが水冷に切り替わった現行型(996型)のデビューと同時に消滅した。従って今回のタルガは3年ぶりの復活というわけだ。

基本的な成り立ちは先代タルガと似ていて、ルーフいっぱいに開けられたガラス製サンルーフを持つ。しかし先代がオープンモデルをベースにしていたのに対して新型はクーペモデルがベース。そのためボディ剛性は先代より飛躍的に向上。また開閉できるガラスハッチを採用したのも大きな違いで、リアウインドウが開くというのは911史上初!

911のエンジンは伝統の水平対向6気筒で、2002年モデルから排気量が3.4リッターから3.6リッターに拡大されている。当然、タルガもこの新エンジンを積む。ミッションは6速MTと5速ティプトロニックの2タイプ。クーペにはある4WDの設定はない。乗車定員は 4名だ。

価格帯&グレード展開

価格差約2.5倍。超ワイドレンジの911シリーズ

911と一口に言ってもバリエーションは幅広い。「カレラクーペ(990万円)」にはじまり、そのオープンモデルの「カレラカブリオレ(1150万円)」、ガラス製ルーフを持つ「タルガ(1110万円)」、ターボエンジン搭載の「ターボ(1680万円)」、ロードゴーイングレーシングカーの「GT2(2344万円)」。さらに「カレラクーペ」と「カレラカブリオレ」には4輪駆動モデルがあり、2輪駆動に比べてプラス 100万円アップとなる。ちなみに「タルガ」は2駆のみ、「ターボ」は4駆のみ。また「911 GT2」以外、全てのモデルにオートマティック(ティプトロニックS)の設定がある。価格はどのモデルもマニュアルモデルの80万円アップとなる。

一番安いモデルである「カレラクーペ」が990万円で、一番高い「GT2」が2344万円。クルマに詳しくない人が見たら同じように見えるクルマだが、その差は実に2.5倍、額にして1354万円! パフォーマンスが圧倒的に違うのは確かだが、この差を正当化できるのがまさに「性能&スペックフェチ」のポルシェならではというところか。

今回試乗した「タルガ」は、普通のクーペの120万円高、カブリオレの40万円安。昔ながらの硬派なポルシェフリークには、おそらく今回もタルガは中途半端な存在に思え、目もくれないことだろう。しかし、最近の911は性格が変わってきており、ブティックの女性オーナーといった、これまでポルシェとは縁のなかった人までがあたりまえのように購入するようになった。そういう層にとって、ちょっとミーハーで贅沢な付加価値を持つタルガは魅力に映るだろう。

パッケージング&スタイル

ついにカップホルダーが…… ボディ剛性は高い

ボディサイズは全長4430mm×全幅1770mm×全高1305mm、ホイールベース2350mm。タルガも含めて 911シリーズは02年モデルから996型となって初めてのフェイスリフトを受けており、“ターボの目玉”となったのが特徴。これで前からでもボクスターと見間違えることはなくなったが、空冷時代の面影はますます薄れ、全体としてはよくあるスポーツカーのカタチになったともいえそうだ。
室内での改良点では、ポルシェとは思えない華奢な2段階引き出し式ドリンクホルダーが目を引く。「あ~あ、やっちゃった」という気がしないでもないが、現実にはちょっと嬉しかったりもする。

先代のタルガはカブリオレ・ボディにスライディング・ルーフ付きの大きな屋根を載せていたのに対し、新型はクーペ・ボディがベース。その証拠にフロントスクリーンのところにツナギ目がない。だからボディ剛性が先代より格段に向上しているのだという。曲げ剛性は現行型のクーペと同じ。ねじり剛性はクーペとカブリオレの中間ぐらいなのだという(厳密にはクーペに近い)。
スライディングルーフの構造自体は先代と同じ。ルーフからリアにかけてすべてがガラス張りになっており、センターコンソールにあるスイッチをオープン側にするとルーフガラスが後方にスライドし、リアガラスの内側にしまわれるという仕組みだ。

屋根のガラスだけではなく後ろのガラスまで開きます。これで積載性アップか?

硬質ガラスの面積は1.5平方メートルというから、ほぼ畳1畳分ほどもある。開口部の広さは0.45平方メートル。つまりガラス面積の約3分の1が開くことになる。ガラスの重量は、リアワイパー込みで55kg。さらにルーフやウインドウフレームの強化で15kg増しとなり、車両の重量はクーペ比で70kg重い1470kg(ティプトロS)となる。ルーフの開閉に費やす時間は約8秒。
欠点は、ルーフを開けるとルーフガラスがリアガラスと重なって(濃いスモークガラスのようになる)後方視界が悪くなることだ。しかもルーフガラスの囲い板が、リアガラスの下半分をさえぎってしまうのだから始末が悪い。

もうひとつ新型タルガの大きな特徴となるのがリアウインドウが開閉式になったことだ。ハッチバックのようにガバっと開くのである。しかもシートベルトユニットに付いた照明がリアスペースを明るくし、荷物を手探りで探さなくても済む。閉める時もやさしくタッチするだけで充分、あとは電気モーターがリアウィンドウをきっちり閉めてくれる。だから後席を畳めば、ゴルフバッグのようなかさばる荷物の出し入れもラ~クラク…とは問屋が卸さない。後ろから積もうとするとエンジンがジャマだし、横から積むと開口部が高いからあんまり重いものだと、ボディにゴン! オーナーには強靭な体力と慎重な対応が望まれる。

基本性能&ドライブフィール

排気量を3.4リッターから3.6リッターにアップするとともに、ターボ譲りの可変バルブリフトシステムを採用

水平対向エンジンは02年モデルからストロークを延長することで200cc増しの3.6リッターとなった。また従来から用いられてきた吸気側の可変バルブタイミングシステム「バリオカム」に加え、ホンダ「VTEC」ばりの可変リフトシステムも加えられた。ターボモデルに一足先に搭載された「バリオカムプラス」がそれ。最高出力は従来型に比べ20馬力アップの320馬力/6800rpm。最大トルクは2kgmアップの 37.7kgm/4250rpm。0~100km/h加速はMT車でクーペより0.2秒遅い5.2秒となるが、最高速度は285km/hのまま。

タイヤサイズは前205/50ZR17、後ろ255/40ZR17。オプションとして18インチが用意されている。車重アップにともなってダンパー、スプリング、スタビライザーなどはタルガ専用のチューンニングが施されている。

試乗したのはティプトロニックS。走りはほぼ現行型クーペそのもままといっていい。車重増加による動力性能は多少なりともスポイルされていることは間違いないが、それでも5%ほどの違いは、直接乗り比べなければほとんど気づかない程度のものだ。
ルーフを開けたときの感じは、正直、フツーのサンルーフとあまり変わらない。強いて言えば「開口部がちょっと広いかな」というレベル。法定速度域なら風の侵入もほとんどない。だったらフツーのサンルーフで十分ではないかと思ってしまうところだが、ルーフを閉じた状態でも室内が明るいということは他のクルマではまず味わえない。また、以前試乗した初期型クーペに比べて、消えていた水冷対向エンジンならではのサウンドが復活しているも好印象だ。ルーフが開いたり、リアガラスが開いたりと、隙間が増えている(むろんそんなことはないが)タルガだからではなく、クーペでも同様のようで、スポーツカーに乗っている実感を感じられる。
前述の排気量アップもあって、加速性能はよりアップしている。2000回転にも満たないほどの低速からモリモリと湧き上がるトルクのおかげで、街中ではエンジンはそのあたりの回転でゆるゆると回るだけ。非常に扱いやすい。もともと996型は絶対的な性能の割に軽快感を表面に出さない性格であり、マーク IIみたいなイージーさで、体感的なメチャ速さもない。特に試乗車がAT車ということもあってか、「320馬力って、こんなもの? 」とその実力を疑ってしまうほど。

しかし、マニュアルモードにして積極的にエンジンを回してやれば、さすがポルシェ。空冷時代の乾いた金属的な音とは音質が変わり、静かにもなったエンジンだが、トップエンドではやはり猛々しいサウンドを発しながら吹き上げる。
どこからアクセルを踏んでも即座に加速体制に入り、恐ろしく強力なパワーを発揮する。特に新採用されたバリオカム・プラスの効果は明確で、5000回転より上が非常に良くなっている。エンジンの許容範囲は7300rpm止まりだが、あと1000rpmはなんのストレスなしで回るのではないかと思ってしまうほど。大排気量、NAにしてこのフィーリングは素晴らしい。
歴代の911のしきたりどおり、これだけのパフォーマンスと日常使用に耐える実用性および信頼性を両立させているのはさすが。それに加えてのオープンルーフ。お金があったら買っておきたい、と思わせるクルマだ。

ここがイイ

996の初期物は、全体に安っぽい印象があったが、2002モデルは驚くほどクォリティが上がっている。特に内装の質感は、豪華とはいえないものの、1000万円を超えるクルマとして認められるものとなっている。

アクセルで爆発するパワーを、親指の腹で操作できるティプトロニックSで操るのは、ATポルシェの醍醐味。様々なステアリングスイッチを使ってみたが、ポルシェのものは今だピカイチだ。直感的にシフトできるこのスイッチの方式を、他社はなぜ真似しないのか。

先代タルガはオープンボディベースゆえの「ギシギシ」音が気になったが、今回は剛性が高く、ミシリとも言わないのがいい。もちろん開放感はクーペの比ではない。ハッチバックもないよりはあるにこしたことはない。

ここがダメ

シートポジションを後方へ下げられる身長170㎝以上の人でないと、やはりタルガの恩恵は受けられない。というか、小柄な人が911に乗るのは、そのポジションからしてちょっと滑稽な感すらある。シートバックが前の方にあるのはカッコ悪いのだ。

さてスタイルだが、Cピラーが流れ、リアウインドウの後端が尖っている造形には、ちょっと違和感がある。911はリアウインドウの角が丸く、そこからリアフェンダーが流れるように張りだしているのがカッコイイのだが、Cピラーのラインがルーズにリアに流れており、オープンにハードトップを乗せたような造形に見えるのが残念。クーペボディのままで屋根が開くと良かったのだが。

ルーフを開けるとリアが見にくくなるのは、何か早急に手をうってもらいたいところだ。

総合評価


小型ボディのAT車ゆえ街乗りを快適にこなせ、屋根を開けてオープンクルーズが楽しめ(雨が降ってきたらすぐ閉められ)、歴代初のハッチバックで荷物も積め、足回りは固いものの不快なほどでなく、内装は豪華でオーディオの音も良く、オートエアコンももちろん効く。ティプトロを駆れば、そのパワーを生かした豪快な走りも楽しめる。PSMがあるからリアエンジンゆえの運動性の問題もクリア。などなど、クルーザーとして 911(996)を求めるなら、タルガは究極の姿だろう。本当はカブリオレとクーペが欲しいが、さすがに2台は無理というもの。それならタルガだ。ボクスターがあるゆえ、911はポルシェの中では、スポーツカーと言うよりかつての968のようなGT的位置付けになってきている。その意味ではタルガは現在の 911の理想型といってもいいだろう。もちろん走りたいなら、他のタイプの911を選べばいい。

ポルシェは1000万円、と誰もが思っているが、実際にはポルシェというブランド力がその価格の大きな割合を占めている。それはこのご時世、実に大切なこと。ポルシェブランドの伝統にこそ、対価が生じる。そして製品もそれをけして裏切らない。もっと高くても実用にならないブランドは多いが、ポルシェだけはマニアックでありながら実用的なブランド、製品なのだ。「ポルシェを着る」という昔からの諺? にふさわしい911 のあり方は、確かに現行996であり、その象徴ともいえるのがこのタルガだ。くどいようだが、走りたいなら他の911を選べばいい。ポルシェはそれを用意しているのだから。

http://www.porsche.co.jp/公式サイト

 
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