Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ポルシェ 911カレラ S カブリオレ (Type 997)

ポルシェ 911カレラ S カブリオレ (Type 997)新車試乗記(第379回)

Porsche 911 Carrera S Cabriolet

(3.8リッター・5速AT・1504万円)

 

2005年08月20日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

911シリーズの約45%がカブリオレ

930(911の第2世代)ベースで始まったポルシェ911カブリオレは、964、993、996ベースを経て、今回(2005年発売)の997で5世代目。クーペ同様、先代996を大きく進化させたメカニズムやパフォーマンス、先祖帰りしたデザインが特徴だ。ソフトトップの進化も目覚しく、996の後期型や新型ボクスター(987)と同じく、50km/h以下なら走行中の開閉操作が可能なほか、新型では骨組みの一部にマグネシウムを使ってさらに軽量化している。

なお、1963年に始まる911シリーズの歴史で、オープンモデルは1965年の「911タルガ」(タルガトップの由来でもある)からスタート。完全なオープンタイプのカブリオレは1983年に登場している。以来、米国西海岸を中心に人気を集め、メーカーによると2003-04年度は911シリーズの世界販売台数の約45%をカブリオレが占めたという。エントリーモデルのボクスターもあるポルシェにとって、オープンモデルは販売上欠かせない存在となっている。

価格帯&グレード展開

「オープン代」は約200万円

クーペと同じ3.6リッター(325ps)の「カレラ」と3.8リッター(355ps)の「カレラ S」の2本立てで、それぞれに6MTと5ATを用意。価格はカレラ カブリオレ(6MT/5AT)が1250/1313万円、カレラ S カブリオレ(6MT/5AT)が1441/1504万円。

クーペとの差額は193万~204万円もあり、これだけで国産オープンカーが1台買える値段だ。年内には4WDの「カレラ 4 カブリオレ」と「カレラ 4Sカブリオレ」が発売される予定。

パッケージング&スタイル

洗練された幌のデザイン

ボディサイズはクーペと同じで、全長4427mm×全幅1808mm×全高1300mm、ホイールベースが 2350mm。試乗車は3.8リッターの「カレラ S」で、標準車との識別点はリアのバッジやマフラーの形状、ブレーキキャリパーが赤に塗られる点(セラミックブレーキのPCCBをオプションで選ぶとカレラもカレラSも黄色になる)。

 

幌を閉めた時の姿もスマートだ。滑らかな曲面の幌は空力性能にも貢献し、Cd値は6MT車で0.29、5AT車で 0.30(アンダーフロアの形状の違いか?)とオープンカー離れした数値を達成。一方、996カブリオレに標準装備だったアルミ製ハードトップはオプションになった。

親指でシフトアップ&ダウン

インテリアは基本的にクーペと同じ。従来のティプトロニックに対して、「ティプトロニック S」と呼ばれるATには、ステアリング上にシフトスイッチが備わる。フェラーリなどが採用するパドルスイッチの操作感も捨てがたいが、親指一つでアップ/ダウン操作できるポルシェのステアリングスイッチもなかなか使いやすい。

 

オプションでスポーツ・クロノパッケージ(エンジンやダンパー、AT、ABS等の制御をスポーツモードに切り替え可能)を追加すると、ダッシュボード中央にストップウォッチが付く(試乗車は未装備)。

なくてはならない「後席」

幌や横転時に飛び出すロールバーに場所を取られて、後席はクーペよりさらに狭い。特に背もたれの角度は逆反り状態で、ほとんどシートの機能を果たさない。

しかし荷物置き場(背もたれを倒すと205L)として使えるのは便利だし、ポルシェ純正チャイルドシートを使えばリアシートに子供を乗せることも可能(汎用品は大きすぎて無理)。ここがミッドシップ車に対して絶対的に優位な点だ。助手席はISOFIX規格のチャイルドシートに対応しているが、装着時は助手席エアバッグの解除が必要となる。

フロントのトランクは135L

ボクスターと違ってリアシートがある代わりに、トランクはフロントのみ。基本的にはボクスターと同じ構造だが、CDチェンジャーやアンプのおかげで容量は少し減って135L(ボクスターは150L)。真夏はかなりの高温になるので、食料品など熱に弱いものはリアシートに積んだ方が良い。

基本性能&ドライブフィール

軽量にこだわる

試乗車はカレラ S カブリオレの5AT。3.8リッター(355ps、40.8kg-m)の高性能バージョンだ。車検証記載の車重は半年前に試乗した997クーペ(Sではない)より50kg重い1550kg。資料によるとオープン化による重量増は85kgほどという。フル電動のソフトトップ(資料によると42kg)に加えて、屋根を切り取ったことで必要になった補強(同7kg)、横転時にスプリングでリアシート背後から飛び出すロールオーバーバーも合わせて、この重量増に抑えたところがポルシェらしい。もしメタルトップを採用していたら1600kg台は避けられなかったはず。そうしなかったことで低重心設計が可能になり、スポーティ性が強調できるというわけだ。

多少重くなったとはいえ、エンジンパワーは街中ではあり余るほど。一般道でアクセル全開を味わうチャンスはそう多くない。しかし低回転でもレスポンスが鋭く、ゆっくり走っていても911らしさは味わえる。

しなやかな乗り心地

乗り心地は期待以上に良い。前輪:235/35ZR19、後輪:295/30ZR19という凄まじい扁平タイヤ(現行の 911ターボより外径で1インチ大きい)にも関わらず、気になる突き上げや荒さはほとんどない。当然、カブリオレ用に足回りの微妙な設定変更があるほか、試乗車がすでに5000km走っていたせいもあるかと思う。いずれにしても乗り心地はまったくスパルタンではない。カレラSに標準装備のPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)の通常/スポーツの違いはけっこうはっきりしているが、そのスポーツモードのまま街乗りしても不快ではなかった。

限界の範囲内では意外に穏やか

これだけの高性能車なので公道で限界を試すのはほぼ無理。ワインディングを走ってみたが、さすがに最新モデル、いわゆるポルシェの緊張感をまったく感じさせず、楽しく、しかも快適にコーナーをクリアできる。996カブリオレに比べ、捻り剛性で5%、曲げ剛性で9%の向上を果たしたボディとPASMが組み合わされており、オープンにして走っても常識的な走りの範囲では、ボディに関して不満はまったくない。たまたま同じ日に BMWの新型330i(E90型)を試乗したが、ステアリングの応答性の差が印象的だった。こぶし一つ分切るだけでシャープに反応するBMWの後では、カレラSカブリオレの反応はかなり穏やか。もちろん、RRの特性やパワーの出方は911の方がはるかに過激で、それを補うように微妙な操作を受け付けるようになっているわけだ。

オートマチックでも最高速285km/h

タコメーターの右半分を使った走りは豪快だ。280psで車重1500kg前後の国産車はもう珍しくないが、フラット6 の噛み付くようなレスポンスと迫力のサウンドはポルシェ以外では味わえない。場所が場所ならオープンで200km/h巡航も可能だろう。メーカー発表値は、試乗車のティプトロニックSで最高速度285km/h、0-100km/h:5.4秒。6MTなら293km/h、4.9秒。クーペに比べて発進加速は0.1秒遅いが、最高速はリアスポイラー(120km/hで自動的に上がる)のポップアップ量を20mm増やし、ドラッグを減らしたことで互角にしたという。カブリオレでもクーペには負けませんよ、ということだ。

ここがイイ

photo_9-s.gif スタイリングは歴代カブリオレの中で最も美しいのでは。特にリアビューは89年のスピードスターのような艶めかしさがあり秀逸だ。フェンダーの拡幅はもちろん、ソフトトップカバーの部分が盛り上がっているのがそのデザインワークのキモだろう。スタイリング重視の997らしいところで、魅力は大幅にアップしていると思う。

987ボクスターの時も書いたが、50km/h以下なら走行中でも幌が電動で開閉できること。開閉時間はたったの20秒だ。これなら信号待ちの時間切れも心配ないし、走行中に雨が降ってきても閉められる。特に今時のオープンカーは80km/hくらい出ていれば雨にほとんど濡れないので、スピードを落とさず閉められるのは心強い。もちろん、ギミックとしても面白い。ただ、当然ながら風圧が強ければ幌骨に要らぬ負担がかかってしまうので、多少の配慮は必要だろう。

今流行りのメタルトップにしなかったことも、一つの見識か。ポルシェとしては軽量化や低重心化に配慮した結果としているが、理由はともかく、幌には幌の良さがある。防犯性や耐候性、そして耐久性ではメタルトップに敵わないが、新車に乗っている限り遮音性も高く空調にも不満はなかった。そもそもこのクルマを買うようなお金持ちの家には堅牢なガレージがあり、雨の日に乗ってゆく別のクルマがある。それならいっそオープンカーらしいオープンカーが欲しい、となるはずだ。

ティプトロニックのステアリングスイッチ。大きめのスイッチは指の腹で押せるため、実に操作しやすい。987ボクスターの場合、スイッチ部分の面積は同じだが、2つに分割され、左側はスイッチではなく右半分だけが可動する。なぜ同じ年式のモデルに2つのスイッチ形式があるのか分からないし、今後どちらがスタンダードになるのかもわからないが、カブリオレの方が数段使いやすい。ティプトロニックを選ぶ場合は大きな選択ポイントだと思う。

ここがダメ

試乗のあと、ふと気づいたのはこのクルマの恐ろしいまでの価格。今時1500万円を超えるクルマというのはかなりのもの(クーペでも1300万円もするのだが)。その価格ほどの凄まじい高級感があるかというと、そこはポルシェの伝統どおり!? まあ不満はない、という程度。仕様の差はあると思うがアメリカでは、9万2320ドル(同じカレラSカブリオレの5AT)というし、レクサス SC430(日本では680万円)は6 万4000ドルで買える。価格の高さこそプレミアム性というものだが、それにしても、と思わざるを得ない。

このクルマの性能に似合わない5AT。街中で走る時はスリップ感もあるし(おかげで乗りやすいが)、ステップ比が大きくてシフトアップ時のドロップが気になる。

総合評価

今回の試乗では高速道路を300kmほどクルージングした。ところがその道路が混雑。渋滞するほどではなかったが100km/hを切る流れだ。ちょっと前が空いたと思えば、今度は後ろから赤い回転灯を消した白黒のクルマが待ってましたとばかりに接近してくる。仕方ないのでそのクルマに先行してもらい、つかず離れず100kmほど走ったが、相当疲れた。100km/hで走ることがこんなに苦痛なクルマも珍しい。

むろん、屋根でも開けて走れば(その速度域でも風の巻き込みはごく少ない)このクルマ本来の使い方なのかもしれないが、屋根なしの長距離クルージングは夏のドライブでやることではないだろう。実際には150km/hを超えるあたりがこのクルマのリラックススピード域。その意味では、日本の道路事情ではまったく無用のクルマなのかもしれない。合法的にその高性能を活かせるシーンは、正直なところ皆無だ。それでもオープンで爽快に公道を流すという使い方ができる分、クーペよりは実用性が高いとも言えるが。

それにしてもたいへん高価だ。試乗車は1500万円をゆうに超えているのだから。名古屋あたりなら新築はムリにしても中古のマンションならボチボチの物件が買える価格だ。普通はそんなマンションをローンで買うわけで、そのローンも20年とかかけて返すわけだ。

ちょっと計算してみよう。マンションを買うため1500万円を3.9%で借りると20年返済なら月9万円ほどの返済である。まあ20年後でもそこそこの値段で売れるはずだから、それは修理費や税金、買うときに使った手数料に当てたとすると、だいたい月10万円以下でファミリーマンションに住めるわけだ。

ではこのクルマの場合はどうか。ポルシェの残価設定ローンで5年後に500万円の残価が残るとして計算してみる。1000万円を3.9%の5年ローンとすると月18万5000円。いやはやという数字になってしまう。

つまりこのクルマは「相当なお金持ち」しか買えない。中小企業の経営者が経費で買おうと思っても、形状からしてなかなか税務署には認めてもらえないはず。つまり自腹で毎月20万円ほど使える人のクルマということだ。むろん、カイエンのような実用性はない。実質的に2シーターだし、屋根付の駐車場もいるだろう。セカンドカーかサードカー以下として持つクルマだ。

最近、どこかのアンケートで、お金のことを考えずに乗りたいクルマのナンバー2にポルシェが入っていた(1位は BMW)。フェラーリより実用性を認められていて、それなりに敷居が低いからこういった所にポルシェが出てくるわけだが、その「乗れるかもしれない憧れのクルマ」の象徴的存在がカブリオレということになる。

そう、まさに象徴。ポルシェは実用性よりスポーツ性を重視して、トップが軽くて低重心にできるソフトトップを選んだと言うが、やはりこのクルマはスポーツ性や実用性ではなく象徴として乗るのがふさわしい。お金持ちになったら、5台くらい入る室内ガレージに、常時オープンで止めておき、天気のいい日だけに乗ろう。でもいくらお金があっても、忙しければ乗れないから、お金があって閑がある人にならなくてはならない。これはなかなか難しい。今のホリエモンではきっと乗れないだろう。

といってフェラーリのように乗らなくても所有する喜びで満足できるクルマでもないから、日本では買うことがすごく難しいクルマの最高峰といってもいいかもしれない。いや、真のお金持ちなら足代わりに使い倒すのかも。フェラーリではクルマの性格上そんな乗り方はできないのだから、毎日乗れるという点で案外安い買い物なのかも。お金持ちじゃないから考えは混乱するばかりだが、ポルシェというブランドの立ち位置を象徴しているクルマ、とはいえそうだ。

試乗車スペック
ポルシェ 911 カレラ S カブリオレ (Type 997)
(3.8リッター・5速AT・1504万円)

●形式:GH-997M9701K●全長4427mm×全幅1808mm×全高1300mm●ホイールベース: 2350mm●車重(車検証記載値):1550kg (F:580+R:970)●乗車定員:4名●エンジン型式:M9701●3824cc・DOHC・4バルブ・水平対向6気筒・縦置●355ps (261kW)/6600rpm、40.8kgm (400Nm)/4600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:後輪駆動(RR)●タイヤ:F:235/35ZR19、R:295/30ZR19(MICHELIN Pirot Sport)●価格:1504万円(試乗車:-円 ※オプション:ー)●試乗距離:約600km

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧