Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ポルシェ 911 ターボ(Type 997)

ポルシェ 911 ターボ(Type 997)新車試乗記(第499回)

Porsche 911 turbo(Type 997)

(3.6L水平対向6気筒ターボ・6MT・4WD・1858万円)

挑戦状を突きつけられた
スーパースポーツの雄、
新型911ターボに試乗!

2008年02月23日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

911シリーズの高性能・最高級モデル

2006年2月にジュネーブショーでデビューした新型911ターボは、現行ポルシェ911(通称997)をベースに新開発の可変タービン・ジオメトリー・ターボを2基装着した高性能モデル。同時に911シリーズで最も豪華なモデルでもある。日本では06年3月に受注がスタートし、順次デリバリーが行なわれている。

エンジンはもちろん水平対向6気筒で、リアに搭載。駆動方式は電子制御多板クラッチ式フルタイム4WD。最高速度310km/hの高性能車だが、2+2のパッケージングや5ATの用意といった高い実用性も備える。

911ターボの歴史を簡単におさらい

1974年に通称930モデルとなった911シリーズの3リッターユニットに、KKK製ターボチャージャーを装着して生まれたのが初代911ターボ(75年、通称930ターボ)。260ps、35.0kgmの性能は圧倒的で、永く世界最速の市販スポーツカーの座に君臨した。3.3リッターとなった第2世代(77年)では300psを達成している。

ベースとなった911シリーズと共にターボも進化し、964ベースの964ターボ、993ベースの993ターボ、996ベースの996ターボへとモデルチェンジ。ポルシェAGの言葉を借りれば最新の997ターボは「第6世代」となる。もちろん正確なモデル名はすべて「911ターボ」だ。

価格帯&グレード展開

6MTと5ATで2000万円前後。GT2は約2600万円

911ターボの2008年モデルは、新型「911ターボ カブリオレ」やニュルブルクリンクで7分32秒をマークした「市販911史上最速」の新型GT2などが加わり、以下のラインナップとなる。

「911ターボ」(6MT・左ハンドル・480ps):1858万円 ※今週の試乗車
■「911ターボ」(5AT・左右ハンドル・480ps):1921万円
■「911ターボ カブリオレ」(5AT・左右ハンドル・480ps):2093万円

■「911 GT2」(6MT・左ハンドル・530ps):2607万円 ※GT2のみRR(2WD)、08年内にデリバリー予定

ちなみにノンターボ・4WDの911カレラ4Sは1427万円(6MT)、911カレラ4S カブリオレは1663万円(5AT)だから、シャシーや装備の強化分を含む「ターボ代」は430万円くらいか。ただしこれらと911ターボでは、4WDシステムのメカニズム、排気量、ベースエンジン自体も異なる。

カーボンブレーキの「PCCB」は153万7500円

オプションリストの長さで有名なポルシェだが、中でも高価なのがカーボンファイバーにシリカを化合したディスクを使う「PCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)」(153万7500円)。また、ボディカラーはスタンダードカラー(ソリッド4色、メタリック8色)なら無償だが、スペシャル塗装(5色)だと26万2500円高、オーナーの希望通りの色に塗るカスタムカラーが42万6500円となる。内装色や素材もかなり自由に選べる。

パッケージング&スタイル

サイズは普通の911とほぼ同じだが

全長4450mm×全幅1850mm×全高1300mmの外寸は、RRの911シリーズに比べて全長が若干長く、リアフェンダーが約40mm(片側22mm)膨らむ程度。ホイールベースも911シリーズ共通の2350mmだ。911のホイールベースの短さは今に始まったことではないが、軽自動車でさえ2400mm前後が一般的な昨今、最高速300km/h超のスーパースポーツとしては冗談のように短い数値だ。とはいえスポーツカーの場合、長ければいいというものでもない。Cd.値(空気抵抗係数)は揚力抑制(ダウンフォースを強化)を図りながら、従来通り0.31をキープしている。

たたずまいには凄みがある

ターボの目印は、リアフェンダーの開口部(カレラ4Sにはない)、専用バンパー、LEDのウインカー、ターボ用ウイングなど。ただしこれらを目ざとく見つけなくても、独特の迫力ゆえクルマ好きなら「普通の911じゃない」と気が付くはず。19インチホイール(前は8.5J、後ろは11J)に収まる黄色のキャリパーはオプションの「PCCB」の証で、これは911ターボ以外でも選べる。

試乗車のボディカラーはスタンダードカラーの「マカダミアメタリック」。チョコレートのような濃い茶系のメタリックで、911ターボの大人っぽいキャラクターに合っている。

「スポーツクロノパッケージ」は必須?

基本的にはインテリアも普通の911と同じ。試乗した車両は、新型911ターボでは意外に少ない6速マニュアル仕様(日本仕様は左ハンドルのみ)だ。シートヒーターやクルーズコントロールはオプションで、試乗車のクラリオン製 2DIN型HDDナビゲーションも販売店オプションと、セミオーダーのような設定。エアバッグは前席用の前面×2、頭部用サイド×2、胸部用サイド×2の計6個が標準となる。

ダッシュボード中央のストップウォッチは、オプションの「スポーツクロノパッケージ・ターボ」(28万1500円)だが、911ターボ用のそれは、「スポーツ」モードでアクセル全開時にターボの過給圧を10秒間限定でGT2並みに引き上げる機能が付随するので、選択されることが多いはずだ。

使い勝手の良さも911そのもの

おなじみの+2(プラスツー)シートは、ライバル車として登場してきた新型GT-R(R35型)の後席より明らかにクッションが小さく、構造も簡素。それゆえにフットルームの余裕はあり、小さな子供なら割と無理なく座ることができるが、やはり基本的にはGT-R同様に荷物置きだ(容量は約205L)。荷物が前にずれ落ちにくかったり、背もたれを倒すと目隠し用のトノカバーになるなど、911独特の使い勝手の良さがある。

アルミ製ボンネット下のトランクは911ターボの場合、オーディオ用のハイパワーアンプがある分、容量は普通の911より30L減って105L。ただし深さ自体は変わらない。アンプの下が燃料タンクで、容量は67L。GT-R(71L)より4Lほど少ない。

基本性能&ドライブフィール

馬力はGT-Rと同じ。トルクは最大69.4kgm

試乗車は6速MT車。さらにカーボンブレーキの「PCCB」、スポーツクロノパッケージ、リア機械式LSD(ロック率:加速時22%、減速時27%)など、パフォーマンスに関するオプションをすべて装着したもの。先の日産GT-R 試乗記でも触れたように、弊社ポルシェ専門誌「911DAYS」の富士スピードウエイ対決(2008年3月7日発売号掲載予定)に使った車両そのものだ。

997ターボが搭載する3.6リッター水冷・水平対向6気筒ツインターボエンジンは、先代996ターボの60ps増しとなる最大出力480ps/6000rpm、最大トルクは63.2kgm/1950-5000rpm、オーバーブースト時(「スポーツ」モードのアクセル全開で最大約10秒)は69.4kgm/2100-4000rpmを発揮する。なお、同時期に試乗した日産GT-Rの最大出力は、911ターボと同じ480ps、最大トルクは60.0kgmだ。

車重は6MT仕様で1580kgと、GT-R(1740kg)より160kgも軽く、パワーウエイトレシオは驚異の3.29kg/psとなる。0-100km/h加速(6MT)はGT-Rの3.6秒に対して3.9秒(5AT:3.7秒)、最高速度は6MT/5AT共に310km/hだ。

911シリーズのフルタイム4WDシステムは、永年ビスカスカップリングを使ったアナログ的な(回転差による受動的な)4WDだったが、997ターボは能動的にトルク配分を行なう電子制御多板クラッチ式4WD「PTM(ポルシェ・トラクション・マネージメントシステム)」を新採用している。基本的にはGT-Rの「アテーサE-TS」と同種のものと考えていいだろう。

油断を誘う従順さ

富士での取材は晴天だったが、名古屋での試乗はあいにくの雨天。「911ターボ」と言えばクルマ好きならご存知の通り、数々の「武勇伝」があるクルマだ。それゆえ国産コンパクトカー並みに踏力が軽い油圧サーボ付のクラッチに拍子抜けしつつ、慎重にそろそろと走り出す。いくら最新の安全デバイスを備えたモデルといっても油断は禁物だ。

遮音やターボの消音効果のせいか、エンジン音は通常の自然吸気ユニットよりむしろ静かな印象。圧縮比も9.0と低く、普通のカレラよりも従順で、運転もイージーだ。普通に走る分には、まったく凶暴さはなく、高めのギアならアクセルをグイと踏み込んでも、ボォーーとエンジン音を高めて普通に加速する。雨で冷え切った路面でも、トラクションコントロールが働く気配はほとんどなく、前輪が蹴る感じもほとんどない。もともとRRで後輪に接地荷重がばっちりかかる911ゆえ(車検証記載の重量配分は前軸620kgに対して、後軸は960kgもある)、トラクションは十分だ。

とはいえヘビーウエットにして、ツインターボ480psのリアエンジン車ゆえ、いつものワインディングで元気に走るというわけにはいかない。GT-Rだと多少濡れてても行けそうな気がしてしまうのだが、911ターボの場合は、やはり何となく接地感が薄く、さらにはRRの伝説やら、2000万円という価格やらが心理的なブレーキとなって、アクセルペダルを思い切って踏み込みにくい。とはいえ、そこそこのペースなら、普通の911より走りやすく、前輪の駆動力が期待できる分、2WDの911より安心感もある。また完全冷間時でもPCCBは強力に制動力が立ち上がり、日常域でのブレーキフィールという点ではGT-Rに優るかもしれない。バネ下が軽いのもPCCBの長所で、資料によるとブレーキシステム全体で通常の鋳鉄ディスクより約50%軽量という。

「スポーツ」モードで激変

と、ここまではあくまで「ノーマル」モードの話。慣れてきたところでそろそろ911ターボらしい走りを、と思い、意を決してセンターコンソールにある「スポーツ」モードを押すと、911ターボの隠れた本性が現れる。

具体的にはフルスロットル時にブースト圧を最大10秒間、0.2bar上昇させる「オーバーブースト」が有効になり、トルクは6.2kgmもアップ(63.2kgm→69.4kg)。4WDシステムは「コーナーへの進入時や脱出時のオーバーステアを許容」(カタログ)すべく、より多くの駆動トルクをリアに配分し、電子制御サスペンションの「PASM」も自動的にハード設定に移行する。

これらの効果は甚大で、この「ノーマル」と「スポーツ」モードの落差は、ある意味GT-Rの「ノーマル」と「Rモード」の比ではない。従順だったターボエンジンは、中回転域から高回転域(と言っても6000回転前後だが)まで、グワッとパワーが噴出する特性となり、昔のドッカンターボを思い切り洗練させた鋭さで加速しつつ、ドライバーには繊細かつ正確な運転操作をはっきりと要求してくる。特に2速、3速あたりでターボバンに入った時の挙動は要注意、というより、コーナー脱出時などでヨーが残っている時には基本的に避けるべきだ。

もちろんそんな時には、電子制御デバイスの「PSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメントシステム)」(日産で言えばVDCに相当)が介入し、車両を安定させる。また仮に「PSM」をカットオフしていた場合でも、ABSが前輪の左右同時に作動する危機的な状況。つまりすでにドライバーはコントロール不能でブレーキを踏んでいる状況では、「PSM」が自動復帰し、主に4輪それぞれの制動力を制御してリカバリーを行なうという。つまりは命綱なしで落ちても最後の最後で手を差し伸べてくれる、わけだ。ちなみにニュルブルクリンク・オールドコースでタイムアタックする場合は、ポルシェにしてもGT-Rにしても、スタビリコントロールは「オフ」だそうだ。

911days-31-200.jpgさらにサーキット等での限界特性については、「911DAYS」(2008年3月7日発売号)掲載予定の、レーシングドライバーの中谷明彦氏による「911ターボ vs. GT-R」のインプレッションが詳しい。富士スピードウエイを舞台とした真剣勝負のしびれるタイムアタックとなっている。ぜひお買い求めください。

乗り心地はノーマルの911以上か

日常的な話題に戻ると、乗り心地は決して悪くなく、初期の997カレラより明らかにいい。DAYSスタッフ内では「GT-Rの方がいい」という声もあったが、重量配分の違いによるピッチングの出方(どっちも小さいが)や揺れの「質」の違いをどう捉えるか、というところで、印象は分かれそうだ。両車より上下動が激しいスポーツセダンはいくらでもあり、両車とも性能や車両キャラクターを考えれば乗り心地は悪くないわけだが、911ターボの適度にポルシェらしい硬派感を残した設定は特に絶妙と言えるのでは。

911ターボもGT-Rも減衰力を電子制御で可変するタイプで、ポルシェのものは「PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)と称し、GT-Rは「ビルシュタイン ダンプトロニック」となる。いずれも「スポーツ」モード(GT-Rでは「R」モード)では一般道で跳ねてしまうので、標準モードがいい。GT-Rは「コンフォート」を含む3段階で、「R」モードは最大減衰力で固定だが、911ターボは2段階のみで「スポーツ」は一定範囲内で可変、といった具合に、各モードの仕様にも違いがある。

大人だけに許されるリミットレス

911ターボのメインステージとなる高速道路(本来はアウトバーンだろうが))では、当然ながらめくるめく速さが味わえる。今回はウエットだったが高速安定性は抜群で、特に乗り心地がすばらしい。最新の某400ps級高性能セダンが(意外にも)上下動が高速域でも止まらないのに対して、911ターボは路面にピタリと吸い付くように走る。

正直、日産GT-Rのような超高速コーナーでの超絶的な安心感、万能感はないが、同時にGT-Rはよくもわるくも国内仕様は190km/h止まり。まったくそういう縛りがない911ターボだと、どこまで出すかはドライバー次第で、そういう意味でも「オトナ」であることが要求される。そもそも「スポーツ」モードにさえしなければ、助手席の人に悟られず速やかに加速し、さりげなく速く目的地に到達する、といった走りが自然と促される。911ターボは高級GTカーである、と実感する瞬間だ。

ここがイイ

独特の形、エンジンの位置、マニュアルシフト・・・

今さらながら思うことだが、911はあまりに独自の形をしている。ほかのどんなクルマにもないこの形の魅力に惹かれてしまったが最後、抗(あらが)うことはできない。そしてその古典的なボディのリアに、エンジンが載っているという事実。ビートルも、発売されたばかりのフィアット500も、スタイルこそ昔のイメージだが、エンジンは前にある。古典的な形のまま最新開発のGT-Rと比較できるあたりは、奇跡的な工業製品としか言いようがない。同時にこのパッケージングであるがゆえの、スーパースポーツにまるまじき小回り性能。最小回転半径は何と5.1メートル。GT-Rは5.7メートルもある(これが平均的だが)。

クラッチペダルの適度な重さ(十分な軽さ)とマニュアルのシフトフィールの良さ。渋滞ではティプトロニックが欲しくなるが、それ以外のシーンではマニュアルである方が、やはり「らしい」のだ。0-100km/k加速など数値的にはティプトロの方が速いようだが、ある意味古典的なスポーツカーである911には、マニュアルシフトがやはりよく似合う。

切っておいても最終的に現れるPSMのセーフティネットはやはり安心だ。もはやリスキーであることを楽しみにしなくていいのは大きな進歩だろう。

そしてただただ高価なことがいい。高価なことで絶対的な価値をもつのがスーパーカーたる所以。誰にでも手が出せるのではスーパーカーではない。

ここがダメ

高価だということが、知られ始めてしまったこと。GT-Rが半値以下で出てしまった以上、工業製品としての原価は見えてしまったわけで、このところ報道されるポルシェの景気の良さ(フォルクスワーゲングループの大株主になったあたり)をみるにつけ、原価の上に相当な利益が乗っているのではないか、と素人目にもわかるようになってしまった。これはポルシェにとって、あまり喜ばしいことではないだろう。ポルシェのような小規模メーカーがスペシャリティーカーを出し続けてクルマ好きを喜ばせてくれる対価として、それなりの利益を得ることはまったく悪いことではない。またその価格を一つの価値として買う人たちがいることで、この手のクルマが生き残ってきたわけだ。そういう相場感覚が崩れて、何でも安くなってしまうことは、一見、消費者にとって喜ばしく見えるが、先行きを考えるとけして好ましい話ではない。GT-Rは特別(に安い)なクルマで、追従するクルマはないと期待したいところだ。

総合評価

今昔ターボ事情

ポルシェ好きにとって、「911といえばNA」というのが、ごく当たり前と言っていい。ターボは930時代の「ドッカン」がトラウマになり、特に911好きの間では敬遠されがちだった。それは997の時代になっても、そう変わってはいない。カレラよりカレラSの人気は高いが、それより高性能なターボはそれほどでもないのだ。それにはむろん価格の高さも関係しているが、何より911の楽しさは絶対的なパワーではなく、研ぎ澄まされた運動性にある、と思われているからだろう。ターボは速いが、あくまでGT的なクルマで、ドッカン直線番長である、という共同幻想が911好きには今もあると思う。

しかし昨今のターボ車がドッカンであるはずはない。911ターボや日産GT-Rはもちろんのこと、サーブやゴルフ一族のターボは、NAにプラスアルファのナチュラルな力を与えるスーパーチャージャー的な性格だ。最近は軽自動車のターボもそういう性格で、NAでは絶対的に不足するトルクを補って、排気量がアップしたような自然な走りを得る仕掛けとなっている。またターボの場合、過給圧の制御でクルマの性格を変えられるのも大きなメリットといえる。レガシィのように、過給を3段階にして一台のクルマで3通りの性格を持たせる、あるいは低燃費モードを設ける、といったことも可能だ。

今のところは、過給をいくつかのセッティングの中から選ぶという段階(911ターボはノーマルとオーバーブースト)だが、やがて可変ターボで様々なパワーを作り出し、可変ダンパーで乗り心地を自在に変え、ドライバー自身で走りのセッティングを調整し、好みのチューニングを楽しむ、なんてこともできるようになるだろう。その意味では今更だが、ターボは今後のクルマの可能性をより高めてくれる重要な技術になってきた。ターボを作り続けて30余年、さすがポルシェはわかっているとほめるべきか。

あらかじめ「全部入り」のGT-R

それから4WD。GT-Rも911も、やはり4WDによって480psの絶対的な大パワーをコントロールする道を選んだ。300km/hを超える速度で安全に走るためには、あるいは今回試乗したウェット路面でこのパワーを生かすためには、やはり四駆ははずせない。これにPSMが加わり、公道を走るクルマとして絶対的な安全を確保しているわけだが、911ターボの場合は、GT-Rよりはそこはかとなく「危うさ」が演出してあり、そこが味とか、楽しさという部分になっている。さらに911には、「GT2」という2WDのターボ車がさらに控えており、またサーキット全開アタックではPSMを解除するのが当たり前、といったあたりからも、四駆や電子デバイスを廃したプリミティブなクルマへの志向をポルシェは排除していない。そこが、とにかく速く走るためにあらかじめ「全部入り」で作られたGT-Rあたりとは異なるところだろう。高級GTカー的な性格のターボであっても、研ぎ澄まされた運動性こそがスポーツカーである、というNAの911と同じ主張を秘めているわけだ。

クルマは進化したが・・・

いずれにしても、100km/hでしか走れない日本において、あるいはごく当たり前のウデしか持たないドライバーにとっては、観念の上で語るしかない領域の話。30年以上も前の、今となってはたいしたことはない260psの930ターボですら、現在の日本の公道では存分に楽しめないという状況の下で何を言わんやというところ。当時から30年もたてば、貧乏だったスーパーカー少年の中からも一旗揚げて997ターボを買える人が出てくるのだが、世の状況は30年前と何も変わっていないのが悲しい。たまたま今日(2008年2月23日)は第2名神高速開通の日。997ターボで、そしてGT-Rで、0-100㎞/h加速3秒台後半という、ごくごくわずかな時間のめくるめく快感を味わった後、2000回転以下の退屈な巡航を、高額な通行料金とガソリン代と、そしてもちろん高額な車両代を支払って、当初は140㎞/h設計と言われたこの道で楽しむことにしよう。

試乗車スペック
ポルシェ 911 ターボ(Type 997)
(3.6L水平対向6気筒ターボ・6MT・4WD・1858万円)

●初年度登録:2008年1月●形式:ABA-99770 ●全長4450mm×全幅1850mm×全高1300mm ●ホイールベース:2350mm ●最小回転半径:5.1 m ●車重(車検証記載値):1580 kg( 620+960 ) ●乗車定員:4名 ●エンジン型式:70 ● 3600cc・水平対向6気筒ツインターボ・DOHC・4バルブ・水冷・縦置(リア搭載) ● 480ps(353kW)/6000rpm、63.2 kgm (620Nm)/1950-5000rpm <オーバーブースト時:69.4kg(680Nm)/2100-4000rpm>●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/67L ●10・15モード燃費:- km/L ●駆動方式:電子制御フルタイム4WD ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 マルチリンク ●タイヤ:前 235/35/ZR19、後 305/30ZR19( Michelin Pilot Sport N1 )●試乗車価格:2088万円 ※販売店装着オプションのHDDナビ含まず( 含むオプション:PCCB<ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ> 153万7500円、スポーツクロノパッケージ 28万1500円、LSD<リミテッドスリップデファレンシャル> 19万9500円、アダプティブスポーツシート 17万8500円、シートヒーター 7万3500円、フロアマット 2万9500円、HDDナビ -円 )●試乗距離:約 200km ●試乗日:2008年2月 ●車両協力:ポルシェジャパン株式会社

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧