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ジャガー XJ8 3.2-V8新車試乗記(第20回)

Jaguar XJ8 3.2-V8

(3.2L・5AT・622万円)

1998年04月17日

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カーデータ

●カテゴリー:高級サルーン
●クラス(排気量):3252cc
●キャラクター:89年にフォード傘下となりつつも頑なに伝統を貫き通してきた英国高級サルーンの象徴、ジャガー。主力はサルーンとはいえ、スポーツカーメーカーの生い立ちをも持つ名門だ。そのジャガーの主力車種であるXJシリーズは、長い間、直列6気筒とV型12気筒という2種類のエンジンを搭載していたが、昨年10月、ビッグマイナーチェンジを受けると同時に全車種に新開発V型8気筒エンジンを搭載。エンジンラインアップは3.2リットル、4.0リットル、4.0リットル・スーパーチャージャーの3タイプ、グレードは下からXJ8(3.2リットルのみ)、XJ8エグゼクティブ(3.2リットルと4.0リットル)、125mmロングホイールベース化したソブリン(4.0リットルのみ)、そして4.0リットルスーパーチャージャーのXJRとなる。今回は3.2リットルのベーシック版となる、最もリーズナブルなXJ8 3.2-V8モデルに試乗した。
●コンセプト:94年登場の新型ボディは、クラシックなジャガーの雰囲気を復活させたヒット作。このボディを生かし、先にクーペに搭載した新型V8を載せて、最新の技術ですべてを作り替えた超ビッグマイナーチェンジが新V8シリーズ。古いエンジンを一掃して、燃費や環境対策を見直すというのは、ポルシェ911などと同じ。ある種クラシカルなボディに、最新テクノロジーを詰め込み、質を高めるという手法はさすが分かっているといえそう。直列6気筒、V型12気筒エンジンに別れを告げたこのシリーズは、ジャガーの歴史を語る上でとても重要なターニングポイントとなることは間違いないだろう。
●注目度:シリーズ全体で年間3000台ほどの販売目標(日本国内)、しかも最低600万円を超える高級車、外観上の変更点は最小限に止まっていて新旧の区別は難しいと、かなりのクルマ好きにしか分かってもらえないクルマ。いいクルマだが、当然、一般の人は誰も注目していない。
●特筆装備:プラットホームなどは従来型をそのまま引き継いでいるが、V8エンジンをはじめ5速AT、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションなどクーペのXJ8に採用された技術を応用し、最新のものに変更されている。他にもダッシュパネルが一新され、すっかりモダンになるなど、およそ30%もの変更が行われた。
●燃費:10・15モード 6.8km/リットル
●価格・販売:3.2-V8の価格は622万円。意外と安いと感じた人もいるのでは。この安さも(庶民にとっては、これでも十分に高価なのだが)3.2-V8の魅力のひとつである。メルセデスベンツのS320(830万円)よりも安く、セルシオ(525万円~670万円)と十分競い合える価格なのだ。ただし最上級グレードXJRは1000万円を超える。ハンドル設定は英国車だから当然、標準はすべて右となる。ただし3.2リットルモデル以外は左ハンドルの設定もある。ただあえて左を選ぶ意味無し。

スタイル

エレガントにして、この存在感。セダンなのにその居住性を誰も批判しようとしないロープロポーション、伝統から生まれる貫禄は誰が見てもジャガーと認識できるはず。86年からのXJ40型があまりに魅力に乏しかっただけに、現行ボディは見事に美しく、魅力的だ。

新型と従来型の外観上の変更点は、フロントバンパー、フロントグリル、ターンシグナルランプ、フォグランプのやや丸みが増したこと。余談となるがボンネット先端についたお馴染みのジャガーマスコットは、諸外国では危険な突起物と見なされているため装着されない。日本では5万8000円でオプション設定される。

パッケージング

スペックで語れば、高級車としてパッケージングが優れているとはいえない。高級セダンでありながら全高はわずか1360mmにしかすぎず、前席の足元は狭く、後席のニースペースもさほど広くはない。ラゲッジルームは前後には広いのだが深さは浅く、ゴルフバック4セットはなんとか収納できるものの容量は決して大きくない。こんなにもNG箇所があるのに、なぜか不快感がないのがジャガーの魅力。適度なタイト感が、かえってくつろぎを生むという不思議な空間だ。

内装(質感)

xj-07int.jpg例によりウォールナットのウッドパネルにコノリー社製のレザーシート、一見、贅沢に奢られたように思えるこれらの高級素材だが、実は目の届きにくい箇所には合成革を使用し、上手くコストを抑えている。しかしどれが合皮か言い当てるのは難しいだろう。インテリアの演出が見事で、英国流のムードは室内の隅々までにゆき渡る。この英国流センスこそジャガーの醍醐味なのは言うまでもない。

伝統と様式という刷り込みは怖いもので、イギリスに旅行したことのない人でもジャガーのインテリアを見れば「まさに英国車」と感動してしまう。そのくらい日本人(や欧米人)が考えるところの英国風仕立てとなっている。

インパネは大きく変わり、ジャガー独自のTピースインパネを踏襲しながらもドアトリムなども含めて若干丸みを帯びたものに変更されている。ナビの取り付けを全く考慮していないインパネは、「流行など追うな」という職人気質が息づいているようで、どこか安らぎを感じてしまう反面、これでいいのかという疑問もわく。

シート・ステアリング・シフト感触

試乗した3.2-V8はレザーとファブリックのコンビネーションシートだったためか、「レザーの香り漂うインテリア」と俗に言われるほどの豪華さは無い。しかし雰囲気から伝わる香りは十分過ぎるほどに堪能できる。

シートポジションは低く、高級サルーンでありながらどこかスポーツカーの趣を感じる。柔らかい印象のシートは、1時間程のドライブでは疲れを感じなかったが、ロングドライブでどうなるかは疑問だ。特に後席ではシートバックが立っているものの腰が沈んでしまうのでちょっと快適度という面では不満があった。これらは背の低い日本人には合わないということかも。なお、低いヘッドクリアランスは気にならなかった(これも日本人ゆえ?)。

5速ATとなったシフトは、もちろんJゲート。驚かされるのはシフトタッチまでがエレガントなこと。節度感がありながらスーと滑らかに動く。

動力性能(加速・高速巡航)

力強くしてエレガント。4.0リットルV8に比べ50馬力劣るが、旧型の4.0リットル直6(245馬力)に匹敵する243馬力となっているので、加速感は十分満足できる。4.0リットルのクーペに乗ったことがあるが、あちらは強烈なパワー感。それに比べれば必要十分で好ましい感すらあった。3.2リットル・8気筒のショートストローク・ユニットゆえに、スポーティーな鋭い吹け上がりを実現している。

ハンドリング・フットワーク

高速道路中心の試乗だったので、あまり走り込んでいないが、エンジンの重さを感じさせない軽いフットワークが光った。ステアリングには適度な重さがあり、日本の高級車とはひと味違った味付け。

乗り心地

これもエレガントで上品。妙なフワフワ感ではなく、しっとりとした柔らかさ。つまり猫足。助手席に座っている限りは、さすが高級サルーンといった快適なもの。リアではフロントより乗り心地が悪くなった感があったが、気にするレベルではない。

騒音

高級車なのだから静粛性に優れているのは当然(実際に超高速域まで実に静か)だが、無音とは違う心地良い静けさとなっている。シフトショックは意識しても感じるのが難しいほど少ない。アクセルをグッと踏み込めば2段のシフトダウン、そして4000回転以上になるとさすがにエンジン音が大きくなるのだが、騒音と言うよりはスポーティーでほのかな音色といった表現がマッチする。ただ、こもり音が前席よりも後席の方で気になるのがちょっと残念。

安全性

デュアルエアバッグ、サイドエアバッグ、ABSを標準装備

環境対策

特筆事項なし

ここがイイ

すべてがエレガントという言葉で表現できるスタイル、インテリア、走り。特にインテリアに関しては他の高級車(ロールスやマセラティを除いて)では絶対味わえないものだ。今回は廉価版ともいえる最もリーズナブルなグレードだったが、ジャガー独特の雰囲気は全く損なわれていない。確かにベンツやセルシオの高度な品質は評価できるが、エレガントという点ではジャガーの方が一枚も二枚も上手。このインテリアゆえ買っても悔いはない。

ここがダメ

ブレーキフィーリング。ハードなブレーキ性能は試せなかったものの、ブレーキのタッチが曖昧で、頼りなさを感じた。しかし、ジェントルな走りさえ心得てれば特に性能に不満はないだろう(個人的な意見としては、ジャガーに乗ると私のような庶民でもなぜかジェントルを気取ってしまい、相応の大人しく紳士的な走りをしてしまって、実際にはちょっと疲れてしまった。このあたりも横暴な運転をしたくなるベンツとは違うところだろう)。

総合評価

xj-05rear.jpgフォード傘下となったことで生産性の合理化が一気に進み、信頼性も格段に向上しているという。今こそジャガーの魅力に触れるチャンスではないだろうか。3.2リットルモデルの廉価版といえどもコノリーレザーやウォールナットをふんだんに使ったインテリアをはじめジャガー伝統の魅力は十分に堪能できる。むしろドライバー自ら走りを楽しみたいのなら、この3.2リットルモデルがベストチョイスといえよう。

ただ正直、このクルマにジャガーとしての格別の新しい魅力は感じられなかった(XK8は乗ってかなり興奮できたのだが)。とはいえ馬鹿でかい高級車の存在が疑問視される現代、横暴なお金持ちの高級車とは違い、クルマ趣味を感じさせるジャガーの存在は「許せる」ものではある。

お勧め度(バリューフォーマネー)

今回の3.2-V8は随所にカジュアルな面も備えているから、30代の若きリッチマンにも似合うはず。価格も622万円とセルシオの最上級グレードC仕様Fパッケージよりも安く、排気量、装備面は劣るものの趣味性に関しては圧倒的にジャガーの勝ち。所有する喜びも大きいはずだ。この価格で世界に名だたる高級サルーンが手にはいるのなら(お金持ちには)安いもの。

かつては中古の値落ち率が無茶苦茶に大きかったジャガーも、ここにきてドイツ車並になってきたので下取りの安心感もマル。

         

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
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