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ジャガー Sタイプ 3.0 V6新車試乗記(第78回)

Jaguar S-Type 3.0 V6

(5AT・578万円)

1999年06月11日

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キャラクター&開発コンセプト

現代に甦ったミディアム英国サルーン

ニューSタイプは、1955年発表の「2.4」以来43年振りに投入されるジャガーのコンパクトサルーン。親会社となったフォードの高級車「リンカーンLS」とプラットフォームを共用しながらも、外観は50~60年代の「Sタイプ」「マークII」といった往年のブリティッシュサルーンを感じさせるものに仕上げている。現行XJシリーズよりも全長が150mm短いサイズに、ジャガーとしては初のV6オールアルミ製3リッターエンジンを搭載(4リッターV8もあり)。Sタイプの生産にあたって、ジャガーは4億ポンド(880億円)を投じ、イギリスの生産工場を一新させたのだというのだから、このクルマに賭ける意気込みは半端ではない。昨年10月以来、世界中で3万台以上を受注している。

なお、昨年10月に開催されたバーミンガム・モーターショーで、このニューSタイプと同時に、ローバーの新型サルーン「75」が発表されている。ローバー75はBMW傘下で、駆動方式もジャガーSタイプのFRに対してFFだ。

価格帯&グレード展開

価格帯は578万円~763万円

価格帯は3リッターモデルのベーシックグレード「3・0 V6」が578万円、本革シートなどの豪華装備の同「スペシャルエクイプメント(SE)」が640万円。4リッターモデルの「4.0 V8」が763万円。

価格帯は全車V8エンジンを搭載する現行型XJシリーズ(622万円~1060万円)と一部オーバーラップする。ハンドル位置は全車右だ。ライバルはEクラス、5シリーズの他、サーブ9-5、アウディA6、国産車ではセルシオなども価格的にぶつかる。

パッケージング&スタイル

60年代の名車Sタイプのイメージを織り込んだデザイン

丸い目玉、縦に長い大きな楕円グリル、下がったお尻。1960年代の「マーク2」の流れを踏襲しつつ近代的な味付けをされたニューSタイプ。そのボディサイズは全長4880mm×全幅1820mm×全高1445mm、ホイールベース2910mmと、現行型XJシリーズより全長は150mm短かいが、全幅は20mm大きく、ホイールベースも40mm長い。結果、兄貴分よりも広い居住空間を確保している。

全高もジャガーとしては異例に高く、丸いルーフがさらにクラシックな雰囲気を醸し出す。その姿は確かにジャガールックなのだが、今となってはこのスタイルは、スポーツ系というよりはラグジュアリー系といえそう。表情は個性的だし、ラインだって美しい。嫌みな威張りをきかせない雰囲気は、新しい高級車としては◎で、このクルマのデザインは高く評価したい。

英国の香りはあまり感じられず、趣味性がかなり希薄となった内装

s-type-07-int-small.jpg内装はジャガーお得意の本革、本木目で装飾されたもの。といきたいところだが、今回の試乗車はベーシックモデルだったため、内装地はベロアで、いかにも英国風といった演出は控え気味。どちらかといえばアメ車っぽい(インパネデザインもそんな感じ)。それでも装備のほうは至れり尽くせりで、パワーシート、左右独立調整式エアコン、電動チルト&テレスコステアリング、シートヒーター(除く3.0V6)、オートヘッドライトなどが標準装備。燃費計や可能走行距離などが表示されるオンボードコンピュータは日本向けにカタカナ表記となっている。

品質は高級車としては今一歩と一刀両断したいところだが、木目とインテアリアカラーの巧みなマッチングはとても優雅で、許せてしまえる。傾斜のきついAピラーによる圧迫感はあっても(これもジャガーらしいところ)、弧を描いたルーフラインからも分かるとおり、頭上高は高く、拳2個以上は十分確保されている。後席の頭上、膝元空間も同じで室内は意外に広い印象。リアから見たルーフあたりの造形はかなりリンカーンっぽい。しかし、ジャガーの特徴でもあり、欠点でもあった狭い居住空間は解消されている。そこが魅力でもあったのだが。

このクルマを所有したときに不満が出そうなのが、トランクの大きさだろう。幅、奥行きはあるものの、高さが足りない。それでもとりあえずゴルフバック4個は縦に積めそうではある。トランクスルーができるのはこの狭さを解消するためなのかも。また、禁煙が進むアメリカを意識してか、灰皿はずいぶんコンパクト。タバコ2本も吸ったら一杯になってしまう健康仕様。

基本性能&ドライブフィール

軽量のオールアルミ製エンジンで50対50の理想重量配分を達成

軽量化と低燃費化を図った3リッターV6・DOHC(最高出力243PS/6800rpm、最大トルク31.0kgm/4500rpm)は、意外にもジャガーにとって初のV6。オールアルミ製で、フォードから調達される。エンジンはこのV6と、XJシリーズに搭載されている4リッターV8(最高出力285PS/6100rpm、最大トルク40.0kgm/4100rpm)の2種類だ。どちらも5速ATで、独自のJゲートシフトレバーを採用する。

サスペンションは4輪独立懸架ダブルウィッシュボーンで、オプションとして2段階で電子制御する「アクティブ・ダンピング(CATS)」や滑り防止システム「ダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)」が用意される。前後の重量配分を理想的な50対50としているあたりも見逃せない。

穏やかで慎ましい走り

試乗したのは3リッターモデル。250馬力近くある割に発進加速にパンチはないが、そこがまた気品に満ちた英国らしさというもの。レッドゾーンの7000回転あたりまでスムーズに回り、ホントにフォード系ベース?と思ってしまうほど洗練されている。

乗り心地は全体的にソフトで、シフトショックもほとんど感じさせない。ただし225サイズという太いタイヤのせいか、段差によるゴツゴツ感は伝わってくるので、その分だけ快適性はスポイルされる。

ジャガーの特徴である滑らかなステアリング・フィールはしっかり備わっている。手応えはあるがドイツ車のように重くはなく、軽いがアメ車のように曖昧ではない、といった絶妙な味付けだ。低速ではかなり軽く、高速になるにつれて重くなる、というのもいい。アクセルペダルのタッチも同様で、ドライバーをマナーの良い紳士的な気分にしてくれる。コーナーではかなり大きなロールを感じるが、FRらしい素直な走りが楽しめる。ただ、スポーティというよりは、やはりラグジュアリーな感が先に立つ。

静粛性は非常に高く、その分、高速では大きなドアミラーによる風切り音が目立つ。気になったのが、100km/hあたりから大きくなるステアリングの振動だが、おそらくこれはホイールバランスを調整すれば直るだろう。またキックダウンの反応が2テンポぐらい遅れる感じがある点も、ピックアップの鋭い日本車に慣れた身には気になるところ。これは、あまり機敏にすると穏やかな走りに支障を来すため、あえてこうしたのではないか、と解釈したい。

ここがイイ

エンジンの回りも緩やかで、まさにジェントルな雰囲気に溢れている点。本文にもある通り、紳士的に運転することをクルマの方が要求してくる感じだ。上級ジャガーと違い意外に気負いなく乗れ、運転していてもベンツの顔、ビーエムの顔をしたドライバーにならずにすみそう。窓に黒いフィルムを貼ることは避けたい。

ここがダメ

ジャガーユーザーの平均年齢層である50代をいくらか引き下げるのがSタイプの使命だが、3リッターではかなりおとなしい印象があり、引き下げるというより、乗り換えをすすめそうな印象さえある。スポーツタイプの登場に期待したいところ。

総合評価

s-type-05-small.jpg前を横切ってこのクルマを見た若い男性には、ジャガーの新車と認識していないそぶりがあった。ネオクラシック的なルックス面はさておいて、新しいテクノロジーに満たされたハード面では特に不満はない。ドライビングポジションが案の定「足の長い人向き」でペダルを深く踏み込みにくいことはあったが、走る曲がる止まるに関して、大きな不満はつけられない。

それより、このクルマの真骨頂は、やはりジャガーというブランド力に他ならない。それが手ごろな価格になっている(絶対的にはまだ高いが)。ちょっと小金があれば触手が動きそうだ。これがフォードではダメなわけで、歴史に裏付けられたジャガーであるから価値がある。フォードでなくジャガー、マツダでなくジャガー、もちろんミツオカでなくジャガー。さらに2年後にはいよいよ小型車「X400」も出るわけで、もはやクルマはブランドこそが最重要の商品価値と言ってもいいのではないだろうか。小さなベンツが売れたように、これから小さなジャガーも売れるのだろう。世界の大手メーカーがたいして売れそうもない高級車メーカーを買い競うのは、このあたりにワケがありそうだ。


           

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
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