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ジャガー Xタイプ 3.0 V6 SE新車試乗記(第189回)

Jaguar X-Type 3.0 V6 SE

(3.0L・4WD・525万円)

 

2001年09月23日

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キャラクター&開発コンセプト

フォード車と車台を共有するスモールジャガー

世界中の高級車メーカーが生き残りをかけて販売台数の増加やシャシーの共有を推し進める今、1990年から米国フォード傘下に入ったジャガーもその方向に向かうようだ。そうした拡大路線の推進役が今回のXタイプということになる。

量産モデルの開発には潤沢な資金が必要だが、幸い今は親会社がフォード。ジャガーSタイプがリンカーンLSとシャシーを共有したように、Xタイプはフォード・モンデオのシャシーを使う。とはいえジャガーによると、部品共有率は20%に過ぎないという。

価格帯&グレード展開

全車V6・4WDで、価格は425~525万円

グレードは2.5リッターが3種類、3.0リッターが1種類の計4種類。価格は「2.5 V6」が425万円、「2.5 V6スポーツ」が455万円、「2.5 V6 SE」が475万円。「3.0 V6 SE」が525万円。

「2.5 V6」はファブリックシート。「2.5 V6スポーツ」は部分革シートで、17インチアルミホイール、スポーツサスペンション、リアスポイラー、8ウエイ電動シート付き。「2.5 V6 SE」と「3.0 V6 SE」はレザーシート、オートヘッドランプ、雨天感知式ワイパー、クルーズコントロール、バックソナーといった快適装備を持つ。全車で前席サイドエアバッグやオートエアコンを標準装備するが、電動サンルーフや7インチVICS対応DVDナビはオプションとなる。

パッケージング&スタイル

“ジャガーらしさ”をコンパクトに再現

ボディサイズは全長4685mm×全幅1790mm×全高1420mm。コンパクトとは言え、CクラスよりEクラス、3シリーズより5シリーズに近いサイズだ。もちろん上級モデルのSタイプ(4880×1820×1445mm)に比べれば小さく、特に全長が短い。伝統的なスタイルを再現するにはこれぐらいのボリュームが最低必要だった、という感じだ。XJを思わせるスタイルはかなりジャガーらしく、名車ジャガーマークII風のSタイプよりも、それらしい。

インテリアもXJ風

インテリアもXJのモチーフを活かしたもの。ダッシュボードに張られたウッドパネルや、ウッドシフトノブ、伝統のJゲートなどがジャガーならではの感覚だ。古風なレタリングのメーターも嬉しい。ちょっとあざといかもしれないが、ジャガーに憧れるユーザーの期待は裏切らないだろう。スイッチ類も使いやすく、ほとんど説明書の助けを借りずに操作できる。この辺りはフォードとのコラボレーションがうまく作用しているところだ。 レザーシートのデザインは平板だが、ポジションは不満のないものにできる。ただし頭上空間はルーフが回り込んでいるため広くない。

後席はかなり落とし込まれた姿勢で座ることになり、足元スペースも広くない。大柄な人の4人乗車にはあまり向かないだろう。もともとジャガーは広さを売り物にしていないが、Xタイプもサイズ相応なパーソナルなセダンという印象を受ける。

基本性能&ドライブフィール

チョイ乗りにも使えるジャガー

試乗したのは「3.0 V6 SE」。3リッターエンジン(234ps、29.0kgm)はSタイプの縦置きから横置きに変更され、出力もSタイプ(243ps、30.6kgm)より若干ダウンしている。トランスミッションはJATCO製の5ATだ。

乗り込んで思うのは、ボディの見切りが意外に良いこと。実際のサイズも小さいわけで、これはチョイ乗りにも使えるジャガーだ。ハイデッキ・スタイルではなく、ジャガーらしい低めのトランクは、後方視界にも貢献している(ただし荷室容量は歴代で最大)。最小回転半径も5.3mと意外に小さく(ちなみにモンデオは5.8mだ)、これは小回り性能で定評のあるメルセデス・ベンツ、例えばCクラスの5.0mと比べても悪くない数字だ。

スムーズなエンジン。スタビリティも高い

動力性能は、低速では可もなく不可もない、と言った印象。3リッターという排気量から想像される絶対的パワー感はない。ただ、低速でアクセルを踏み込めば、JATCO製オートマチックがスムーズかつ素早くシフトダウンを行い、イメージ通りの加速を見せる。高回転は好まないものの、2速ならほぼ一瞬でレブリミットの6500rpmに到達。5ATの出来の良さが大きいようだ。

Jゲートはインジケーター内にシフトポジションが表示されないのがやや不便だが、レバーの動きは滑らかでシフトショックも少ない。ただ、左側ゲートのマニュアル操作は節度感がなくてイマイチだった。

軽快感と4WDらしいオンザレール感

前ストラット、後マルチリンクのフットワークも悪くない。固めの足ながらゴツゴツした動きは腰下で軽くいなし、うねりなどで煽られることもない。一般的なレベルから言えば、乗り心地も良い部類だ。俗に「猫足」と呼ばれる、ジャガーらしい乗り心地を持つかどうかとなると、残念ながらそこまでスペシャルなフィーリングがあるとは言えない。

パワーステアリングは全域で軽めだが(コーナーなどでは、もう少し重い方がいいだろう)、違和感のないもの。4WDシステムはビスカス・カップリングで前後40:60にトルク配分するもので、トルクステアはほとんどない。回頭性も高く、コーナーでは意外に軽快。締まった足、4WDらしい接地感で、FFとは一足違うオンザレール感覚が楽しめる。

高速域のスタビリティも高く、快適だ。巡航時のエンジンの静粛性も高い。ただしロードノイズはそれなり。150km/hくらいまでならさほど気にならないから、実用上不満は出ないだろう。

ここがイイ

ほとんど申し分のない装備のジャガーが、この価格で買えること。たいへん乗りやすい(日常的に使いやすい)こと。

ここがダメ

タイトな室内が伝統とはいえ、ルーフが内側に絞り込まれているので4座とも感覚的な頭上空間はあまり大きくない。後席の足元も広くはなく、4人乗りサルーンとしての居住性は高くない。また些細なことだがフロントにカップホルダーがないのも、現代のクルマとしては不満なところだ。

総合評価

ジャガーのチョロQとも言うべきスタイルは、写真で見たり、止まっているところを眺めたりする限り「なんだかなぁ」という感じなのだが、これが走り出すと意外や美しい。止まっているとジャガー特有の優雅さ(長さが生み出していると思う)がないのだが、走り出すとボディに映る光が流れ、美しさすらを醸し出す。いや、これはホント。ショールームではあまりこの良さは感じられない。ぜひ外で、運転するのでなく、走っているところを眺めてみて欲しい。そうすれば「モンデオのジャガー版でしょ」などという意地悪な見方ではなく、「これはジャガーだ」という感を強くするだろう。印象はずいぶん変わるはずだ。

ただ走ってみると重厚感はなく、現代のミディアムクラスサルーンらしい、無国籍な乗り味を感じずにはいられない。試乗した3リッター車はスペックほどの力強さがなく、むろん不足はないものの感動もない。足回りは固さの中にもしなやかさのある好ましいものだが、これまた感動するほどでもない。

インテリアも高級車としては中の中といったところだし、今はなきローバー75の方がより英国を感じさせるインテリアだった。つまりベーシックに、よくできた無国籍中級サルーンにさまざまな色を付け、アイデンティティを与えるという最近のクルマ作りの産物という感が強い。

ではそれが悪いのかというとそんなことはなく、メルセデスCクラスよりは個性的であるし、割安感もある。ジャガーらしさをぎゅっと凝縮してコンパクトなサイズにしたことで、ユーザーの間口を大きく広げた。ジャガーブランドの大衆化、量販化であり、本当の金持ちのクルマから小金持ちが気軽に楽しめる高級車になったわけで、庶民にも努力すれば手に入る(可能性のある)クルマになった。

古くからの本物のジャガー愛好家に好かれるとは思えないが、ディンクス(この言葉、もはや死語?)や都会の中小企業の経営者(および奥様)あたりには、ファッショナブルなシティカーとしていい選択肢になる。「BMWやベンツもいいけどジャガーもいいわね」というわけだ。ずっとジャガーに乗るわけではなく、今度乗り換えるときはアルファロメオかもしれない、という人のためのジャガー。そこそこよくできたハードウェアに冠された伝統のブランド。今後の売れる高級工業製品とはそういうものだし、今後の売れるクルマもまたこれが王道だろう。付け加えれば、今後クルマ好きからの好感度は現行Cクラスより高くなるはずだ。

●車両協力:渡辺自動車 ジャガー名古屋中央

公式サイトhttp://www.jaguar.com/jp/ja/home.htm

 
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