キャラクター&開発コンセプト
プレミアムハッチバック
初代A3の日本発売は97年1月。フォルクスワーゲン・グル-プでプレミアムクラスを担うアウディの「高級」ハッチバック車だ。初代A3はVWゴルフ4(98年に日本発売)とプラットフォームを共有し、アウディの特徴だったエンジン縦置きのFFではなく、一般的な横置きとなった。
2003年3月に本国で発表された2代目は、同年9月6日に日本発売。欧州で発売済みのゴルフ5と基本メカニズムを共有。ゴルフが大衆車から高級小型車へと進化する中、A3はスタイル、クオリティ感、スポーツ性などで、さらに上のクラスを目指す。BMWの3シリーズ「ti」やアルファロメオ147などと並び、今もっともプレミアム性の高いハッチバック車と言える。
ちなみに、日本ではA3がアウディの最小エントリーモデルだが、欧州ではさらに小さいA2がある。こちらは総アルミボディのプレミアムな低燃費コンパクトカーだが、オートマがないことやサイズの割に高価格なため日本には正規輸入されていない。
RJCカー・オブ・ザ・イヤー輸入車部門受賞
A3は2003年11月に発表されたRJC(日本自動車研究者・ジャーナリスト会議)の2003年度カー・オブ・ザ・イヤーの輸入車部門で受賞。理由としては、内外装の質感の高さ、優れた走行性能、クラスを越えたプレミアム性やコストバリューなどが挙げられている。
アウディは欧州や北米、その他の地域で販売台数を確実に伸ばしているが、日本ではメルセデス・ベンツやBMWに遅れをとっている。先頃モデルチェンジした旗艦A8、アッパーミドルのA6、主力のA4、イメージリーダーのTT、そしてエントリーユーザーが多く見込めるA3で、国内シェアの拡大にのぞむ。
価格帯&グレード展開
2.0リッターFSIと3.2クワトロ
日本仕様は3種類。FSIと呼ばれる直噴2.0リッターエンジンを積む「2.0 FSI」(299.5万円)と「2.0 FSI Sport」(330万円)。そして12月に発売の「3.2 クワトロ」(437.5万円)だ。全車右ハンドルの3ドア。先代のように5ドアが1年以上遅れて追加される予定だ。
2.0 FSIと2.0 FSI Sportの違いは、後者がスポーツサスペンションや17インチホイール、スポーツシートなどを持つ点のみで、パワートレインに差はない。いずれもアイシンAW製の6速AT仕様となる。
3.2クワトロは、TT 3.2クワトロと同じ250ps、32.6kgmのパワーを発揮する3.2リッターV6と2ペダル・マニュアルトランスミッション「DSG」(ダイレクト・シフト・ギアボックス)を搭載。ツインクラッチを持つDSGは、この種のセミAT(フルオートモードも備える)で評価がもっとも高いシステムの一つだ。最高速は250km/hとポルシェ・ボクスター2.7に匹敵する。
パッケージング&スタイル
「官能美」と「精密美」
A4が2代目に進化した時と同じく、A3も先代のアウトラインを大筋で継承。目元鋭いフロントに目が行くが、それよりも高品質感やボリュームが印象的。アウディの他モデルと同様、好感度高し。デザインテーマは「官能美」と「精密美」。率直なところ、セクシーと言うにはあまりに控えめだが、そこがアウディの魅力か。同じ3ドアハッチバックでも、アルファ147の奔放さとはある意味で対極。
A4が2代目に進化した時と同じく、A3も先代のアウトラインを大筋で継承。目元鋭いフロントに目が行くが、それよりも高品質感やボリュームが印象的。アウディの他モデルと同様、好感度高し。デザインテーマは「官能美」と「精密美」。率直なところ、セクシーと言うにはあまりに控えめだが、そこがアウディの魅力か。同じ3ドアハッチバックでも、アルファ147の奔放さとはある意味で対極。
全長4215mm×全幅1765mm×全高1430mm(標準サス仕様)で、先代比で各々+65mm、+30mm、+10mmアップ。ボディサイズはシャシーを共有する次期ゴルフにほぼ準ずる。ホイールベースは60mm伸びて2575mm。
一分のスキもなく
インテリアもアウディらしく質感で勝負。独特のシボが付いたソフトパッド式ダッシュ、アクセントのアルミパーツ、艶消しの樹脂パーツなど、まさに一分のスキもない。仕上げの技術だけなら国産メーカーも負けないだろうが、素材感とデザインに対するアウディの気遣いは服飾デザインと同レベルのように思える。室内のドアノブは本物のアルミ製で、しかも仕上げがいい。丸い形の空調吹き出し口やセンターコンソールのトラス状デザイン、空調コントロールはTTのモチーフを受け継ぐ。夜間、センターコンソールの照明が赤く輝き、目に痛い。
試乗車はオプションのアルカンタラ(人工スエード)/本革コンビシートを装備(15万円)。調節はすべて手動だが、電動式ランバーサポートとシートヒーターが付く。テレスコ(前後)調節可能なステアリングと相まってドラポジの自由度は高い。アクセルペダルは足が疲れにくいというオルガン式を採用。
3ドアにはもったいない
ホイールベースの+60mmは、後席足元スペースに当てられる。先代は後席足元が少し窮屈だったが、新型で不満はもう感じられない。3人分のヘッドレストが備わり、特に左右の2つはとても立派。後席への乗降が不便な3ドアには、もったいないと感じるほどだ。
逆に言えば5ドアが当たり前の今、3ドアはそれだけでちょっと贅沢な感じ。今の日本ではTTのようなクーペではなく3ドアでも十分「遊びグルマ」の資格があると言えるだろう。
基本性能&ドライブフィール
ルマン優勝車譲りの直噴
試乗したのは「2.0 FSI Sport」。ベース車比15mmダウンのスポーツサス仕様で、タイヤは205/55R16から225/45R17と太く薄い。直噴エンジンや変速機などドライブトレインは共通だ。
直噴というと日本では今ひとつ主流になり切れなかった印象があるが、欧州ではアルファロメオの2.0リッター「JTS」エンジンなど、最近採用が増えつつある技術。アウディのFSIは、ルマン24時間で3連覇したアウディR8のV8ターボで採用という触れ込みが付く。直噴のレーシングエンジンというのは他にあまり例がないが、最大のメリットはルマンでも威力を発揮した燃費だ。
低回転でのレスポンスに課題
150ps、20.4kgmというスペックは2.0リッターのスポーツエンジンとしては平均的。1410kg(車検証記載値)とボディが重いので加速はたいしたことないが、全回転域で静かなことは特筆できる。振動やノイズが非常に小さく、快適性が高い。同乗者に気兼ねなくガンガン上まで回せるエンジンだ。
弱点は試乗車の場合、減速した後の3000回転以下の再加速で一瞬レスポンスが遅れることがある点。直噴にありがちな低速トルクの細さを指摘する専門誌もあるが、発進時に時々ホイルスピンするくらい低速でもパワーがあるし、粘りもある。いずれにしても低回転でのレスポンスは街乗りの印象に直結するので、ちょっと惜しい感じだ。
快感のサーボトロニック
スポーツサスということで引き締まった乗り心地だが、お腹を揺するような突き上げは体に伝わってこない。重厚な乗り味はハッチバックのレベルを越えて完全に欧州アッパーミドル級セダンのものだ。ただ、街中でちょこまか走るだけには、ちょっとオーバースペックな足ではある。
それゆえにコーナリング性能はスポーツカー並み。特に「サーボトロニック」とアウディが呼ぶ電動パワステが素晴らしい。控えめに言っても、この種の電動パワステでベストの一つだ。パーキングスピードでは軽く、それでいてワインディングでは鋭くかつ自然で正確。だから安心してコーナーに入って行ける。しかも回した時の滑らかさがほとんど快感と言えるレベル。これは販売店での試乗でも体験できるはずだ。
マニュアルモード(だけど自動)がお勧め
TTに搭載されたものと基本は同じアイシンAW製6速ATには「D」の下に「S」(スポーツ)モードがあるが、本気で走るならレバー左側のマニュアルモードがお勧めだ。マニュアルと言いつつ、アップもダウンも自動でやってくれる。マニュアルでシフトダウンしようとしても過回転防止のため反応しないことが多いので、変速はいっそ機械任せでステアリングとブレーキ操作に専念するのがいい。そうするとほとんど誰でもゴーカート感覚で走りが楽しめる。かなりのハイペースが可能だ。
6速ATで快適&スポーティ
高速道路の100km/h巡航は6速トップで2250回転程度と低い。しかも先に書いたようにエンジンの静粛性がとても高く、5速:2900回転はもちろん、あるいは4速でも喧しいと感じることはない。ただ、おそらくタイヤのせいだろう、ロードノイズは気になる。100km/hからアクセル全開にすると3速まで落ちて加速体制に移る。6速ATで5000回転弱から6500回転までを使いながら切れ目なく加速する感じは、F1みたいでちょっぴりレーシーだ。本国仕様の最高速度は209km/hとある。
6速トップで穏やかに走れば直噴の燃費性能が発揮されるかもしれないが、今回は残念ながら渋滞に巻き込まれて80~120km/h巡航は11km/リッター程度だった。参考までに230kmの試乗(高速区間は約100km、撮影、ワインディング走行を含む)で消費した燃料は32リッター。満タン法によるおおよその燃費は7.2km/リッター(オンボードコンピューターは7.4km/リッターを表示)だった。
ここがイイ
楽しいFFハッチバック。今年も押し詰まっているが、走りは今年乗ったクルマの中では出色の楽しさ。RJCの絶賛も分かる。先回の試乗車である5シリーズより良かった。
内装の質感は素晴らしい。外装のチリ合わせ、ボディの剛性感、荷室の「美しさ」などさすがに良くできている。オプションのカーナビもトヨタと同じもの(ATと同じアイシンAW製)が使われ、使い勝手がいい。テレビ画面は走行中は消えるが、停止すると(ブレーキを踏んでいればサイドブレーキなしでも)見ることが出来るのもうれしい。
ここがダメ
マニュアルモードで停止したとき、1速に落ちる際にいささかショックが大きい。これは個体の問題か?また本文で指摘したように、一瞬感じられる失速感もちょっと残念。これまた個体の問題と思われるが、運転席背もたれを前倒しするレバーのあたりから終始「コトコト」と異音が聞こえてきた。品質をうたうのであれば、こうしたあたりはちょっと残念。
何よりボディデザインに華がない。プレーンなハッチバックを好む人にはこれでいいかも知れないが、せっかくプレミアムなクルマに乗るなら、もうちょっとプレミアムなデザインに乗りたいもの。この部分で質実剛健なドイツ車ですといわれても説得力に欠ける。
総合評価
知り合いの男性アウディA4ユーザーは、ベンツやBMWは権威的で嫌、ラテン車は不安、英国車やアメ車は論外、国産車では個性が演出できない、といってワーゲンでは「外車に乗る意味がない」ということでアウディという選択となった。このあたりが日本の男性アウディユーザーの「落ちどころ」だろう。となると、A4以上が選択肢であり、A3というのは実に微妙なクルマ。まして3ドアハッチバックとなると、いったい誰が乗るのか、という感じだ。
そこで結局このA3は、かつてのように、メルセデスに乗っているお父さんのお嬢様&奥様御用達ということになるだろう。自分でお金を出して買う人にとっては、このクルマへの300万円の投資は、かなり慎重になると思う。300万円あれば他にもいろいろ買えるクルマがある。
そうした販売事情(推測)ながら、乗ってみると実にスポーティ。ホットハッチなのだ。試乗では思わずワインディングを楽しんでしまったが、お嬢様にはどう考えても乗り心地が固いし(それを不満に思うほど意識的なお嬢様は少ないはずだが)、ここまでの高性能は不要(と断言)。その点でもやっぱり微妙な評価をしてしまいたくなるクルマだ。
BMWの3シリーズにしても147にしても、プレミアムなクルマはスポーティ、というのが昨今の欧州流クルマ作りのようだが、エレガントな方向へ振ったプレミアムカーがあってもいいのでは。A3の場合、内装の上質感はたいしたものだが、オシャレさは不足気味だ。
それにしても、ヤナセ系アウディ店の店頭CIには時代の変遷を感じざるを得ない。アウディのCIに基づいた黒いヤナセマークは、葵の御紋と並ぶ「黄色と青」のヤナセマークに畏怖を感じた世代には複雑な思いがある。とはいえ、これでヤナセはベンツとアウディを売るかつての体制が戻ってきたわけで、古くからの顧客リストがついに生きるはず。それに乗っかってA3もそこそこ売れるのだろう。
さらに今はファーレン系・トヨタ系のアウディ店もある。アウディがヤナセと袂を分かって約10年、結局うまいことやったのは民族系のヤナセでなく、外資系のアウディというあたりが、この10年の日本経済を反映している。大丈夫か、日本!?
試乗車スペック
アウディ A3 2.0 FSI Sport
(2.0リッター・6AT・330万円)
●形式:GH-8PAXW●全長4215mm×全幅1765mm×全高1415mm●ホイールベース:2575mm●車重(車検証記載値):1410kg(F:860+R:550)●エンジン型式:AXW●1984cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●150ps(110kW)/6000rpm、20.4kgm (200Nm)/3500rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/55L●10・15モード燃費:ーkm/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:225/45R17(ミシュラン製 Pirot Primacy)●価格:330万円(試乗車:384万円 ※オプション:ナビ&6連奏CDチェンジャー 29万円、アルカンタラ/本革コンビシート 15万円、キセノンヘッドランプ&ヘッドランプウォッシャー 10万円)
公式サイトhttp://www.audi.co.jp/models/a3/a3.html









