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アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI新車試乗記(第711回)

Audi A3 Sportback 1.4 TFSI

(1.4リッター直4ターボ・7速DCT・308万円)

10年ぶりにフルモデルチェンジ!
3G搭載の3代目A3で
ドライブ&モバイル!

2013年11月01日

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キャラクター&開発コンセプト

ゴルフ7と同じMQBを採用


新型アウディ A3
(photo:アウディ ジャパン)

アウディ A3は、VWゴルフと主要メカニズムを共有するCセグメントカー。初代は1996年にデビューし、2003年には第2世代へ進化。2013年7月には累計生産300万台を達成したという。

そして今回、10年ぶりのフルモデルチェンジで登場したのが第3世代のA3。欧州では2012年秋に、日本では1年遅れの2013年9月17日に発売された。

 

プラットフォームはゴルフ7と共有。ホイールベースは先代より60mm伸びている

新型A3は現行の7代目ゴルフ(日本では2013年6月発売)と共に、VWグループの新しいモジュール戦略「MQB」に則って開発されたモデルで、プラットフォーム、パワートレイン、装備といった構成要素(モジュール)をゴルフなどと共有化。ホイールベースは先代より60mm拡大されたが、超軽量設計により車両トータルでは最大で60kg軽くなっている。燃費性能も向上し、JC08モード燃費では最高で20.0km/L(1.4 TFSI シリンダー オン ディマンド)を達成した。

3Gの通信モジュールを搭載。Googleアースの表示も可能に


Audi connectを搭載した新世代MMIを採用

新しいIT装備も、目玉の一つ。3G規格の通信モジュールを搭載した新世代のMMI(マルチメディアインターフェイス)ナビゲーションシステムを採用し、インターネット接続による情報サービス「アウディ コネクト(Audi connect)」を導入。これにより、市販車では日本で初めて車内でのWi-Fi接続を可能にしたほか、Google社が提供するGoogleアースやGoogleストリートビューの表示も可能としている。

■過去の新車試乗記
VW ゴルフ 7 (2013年8月)
アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI(2009年3月)
アウディ A3 2.0 FSI スポーツ (2003年11月)

 

価格帯&グレード展開

308万円から、S3の544万円まで


アウディ A3 スポーツバック 1.8 TFSI クワトロ
(photo:アウディ ジャパン)

日本仕様は5ドアのみで、ラインナップは以下の通り。エンジンは全て4気筒の直噴ターボで、1.4リッターが122psと気筒休止機構付の140psの2種類、1.8リッターで180psのクワトロ(フルタイム4WD)、そして2リッターで280psを発揮するS3 スポーツバックと、計4モデルがある。新型ゴルフにある1.2リッターはない。

ミッションは全車Sトロニックと呼ばれるDCT(デュアルクラッチトランスミッション)で、FFモデルが7速、クワトロが6速になる。

MMIは(S3を除いて)30万円のオプション

価格は308万円からだが、MMIナビゲーションシステム(30万円 ※S3は標準装備)や、衝突被害軽減機能(アウディ ブレーキガード)付のアダプティブクルーズコントロール(8万円)はオプション。それらを装備してゆくと、ゴルフ(249万円~。気筒休止機構付1.4リッターで299万円~)との差がどんどん開いてゆく。

 

車両協力:アウディ名古屋西


■A3 Sportback 1.4 TFSI  308万円 ※今回の試乗車

1.4 直噴ターボ(122ps、20.4kgm)+7DCT
JC08モード燃費:19.5km/L

■A3 Sportback 1.4 TFSI with COD(cylinder on demand)  347万円  ※11月発売
1.4 直噴ターボ(140ps、25.5kgm)+7DCT
JC08モード燃費:20.0km/L

■A3 Sportback 1.8 TFSI quattro  393万円
1.8 直噴ターボ(180ps、28.6kgm)+6DCT+4WD
JC08モード燃費:14.8km/L

■S3 Sportback    544万円  ※11月発売
2.0 直噴ターボ(280ps、38.8kgm)+6DCT+4WD
JC08モード燃費:13.9~14.4km/L

 

パッケージング&スタイル

デザインは見事にキープコンセプト


ボンネットやフロントフェンダーはアルミ製

約10年ぶりにフルモデルチェンジしたA3だが、最初は先代A3や現行A4と区別がつかなくて戸惑った、というのが正直なところ。見慣れてくるとそうでもないが、モデルチェンジでガラッと変える一般的なやり方とは対照的。ゴルフの場合、デザインを大きく変える、変えないを、一代おきに行う傾向があるが、今回のA3は「変えない」方向か。

外寸をキープしつつ、ロングホイールベース化


太いCピラーが特徴のゴルフに対して、大きく寝たリアウインドウやクォーターガラスの存在がA3“スポーツバック”らしいところ

全長は先代より35mm長いだけで、大差ないが、ホイールベースは60mm伸びている。プラットフォームを共有するゴルフ7と比べると、全長は60mmほど長いが、全幅は逆に15mmナロー。そんな数値通り、スタイリングは全体にスリークで、ゴルフより低くスポーティに見える。

試乗車はエントリーグレードで、16インチタイヤ(205/55R16)を履くが、上位グレードでは17インチ(225/45R17)を履くので、もうちょっと精悍さが増すはず。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
VW ゴルフ 7 (2013~) 4265 1800 1460 2635 5.2
アウディ A3(2013~) 4325 1785 1435~1465 2635 5.1
メルセデス・ベンツ Aクラス (2013~) 4290~4355 1780 1420~1435 2700 5.1
BMW 1シリーズ (2011~) 4335 1765 1440 2690 5.1
ボルボ V40(2013~) 4370 1785(1800) 1440 2645 5.2~5.7
トヨタ プリウス(2009~) 4460 1745 1490 2700 5.3
 

インテリア&ラゲッジスペース

デザインや作りはゴルフと全く異なる


試乗車はオプションでMMIナビ、パドルシフト、アドバンストキーを装備

インパネデザインはゴルフとはまったく違い、ダッシュボード上面は低く、全体的に複雑かつ微妙な造形でドライバーオリエンテッドになっている。一見、そう見えないところがデザインの妙。

そのダッシュ中央にはMMIナビの電動格納型7インチ液晶モニター(標準はナビ無しで5.8インチ)が突き出し、中段には最近流行りの?ジェットエンジン風エアコン吹き出し口が4つ並ぶ。今のTTにちょっと似た感じ。スイッチ類が少ないのは、MMIによって集約されているからだ。

【Audi connect】 3G通信モジュール搭載で、オンライン情報やGoogleアース等と連携


アウディのMMIは、走行中でも手元のコントローラーでブラインド操作が可能

話題のアウディ コネクトは、オプションのMMIナビゲーションシステム(64GBのSSDナビ)に、ソフトバンクの3G通信モジュールを搭載したもの。これによって、いくつかの情報サービス、例えばナビタイムが提供する天気予報、最寄りの駐車場、ガソリンスタンドとそのガソリン価格情報、そして読売新聞のニュースダイジェストなどが利用できる。

 

アウディ コネクトの各種情報コンテンツ

また、通常のナビ画面に代えて、衛生写真を使ったGoogleアースで地図表示もできる。これは日本での市販車では初。さらに、地図にアイコンが出るところに限られるが、Googleストリートビューの表示も可能になる。もちろん、こういったことはスマートフォンの方がより簡単に出来るわけだが、それが車載ナビとちゃんと連携するほか、MMIのコントローラーで走行中でも操作できるのが画期的な点。

 

地図表示をGoogleアースに切替えたところ。この状態だと施設情報は出ないが、ナビゲーションは普通にできる

最寄りのガソリンスタンドを価格の安い順に表示したところ。通販サイトみたい

新型のMMIコントローラー。ダイアル上の丸い部分はタッチパッドになっている

【Audi connect】 W-Fi接続はおまけ?


「設定」から「ネットワーク接続(Wi-Fi)」を選び(写真)、次の画面で「Wi-Fi設定」を選ぶと、ようやくアクセスポイント名やパスワードが表示される

アウディ コネクトのもう一つの売りは、日本で初めて、車内でWi-Fiによるインターネット接続を可能にしたこと。モバイル端末を8個まで接続できるという。ただし、利用できるデータ容量は月間400MBで、ヘビーなコンテンツを見るには心もない。Wi-Fi機能はあくまでオマケと思った方がよい。

なお、今回、手持ちのモバイル機器でWi-Fi接続を試みたところ、一般的な無線LANとは異なり、手動で車両独自のアクセスポイント名とパスワード(いずれも車両側の「Wi-Fi設定」画面に表示される)をモバイル端末に打ち込む必要があった。初心者が自力で設定するのは難しいかも。ちなみにデータ通信速度は、ネットワーク状態が「非常に強いレベル」で、下りが2.42Mbps、上りが2.22Mbpsと、一般的な3Gレベルだった。

 

アクセスポイント名やパスワードをスマホに入力する

通信費用は3年間無料。4年目以降の利用料はまだ決まっていないようだが(もちろん継続しないという選択も可能)、おそらくそう高額ではないだろう。

 

タッチパッドによって手書きで文字入力も出来るが、左手では難しい

Wi-Fiの通信速度を計測中

Google ストリートビューを表示したところ。地図上にアイコンが出た時のみ表示できる
 

ゴルフ譲りのパッケージング。作りは丁寧


エントリーグレード「1.4 TFSI」の標準ファブリックシート。オプションで電動レザーも選べる

着座位置は、このまま次期TTが作れそうなほど低く感じられるが、ダッシュ自体が低いので見晴らしは良く、頭や肩のまわりにも余裕がある。また、パワートレインを縦置きするA4と違って、センタートンネルの張り出しがなく、自然に左足が伸ばせるのが良い。

後席の空間はゴルフと大差ないが、荷室はゴルフに比べて1割ほど狭い。パーツなどは全くの別物で、ゴルフより丁寧に作りこまれている。MQBコンセプトは共通化というより、作り分けに有効なのかも。

 

荷室容量はゴルフ(380リッター)より1割少ない340リッター。最大1220リッター

フロアボードを上げると、左右のツメで自動的に固定される。スペアタイヤはなく、床下には小物スペースとパンク修理キット

後席はゴルフより頭上がややタイト。シート形状やドア開口部の形状も異なる。座面の下には蛍光色のエマージェンシーベストが入っていた
 

基本性能&ドライブフィール

1.4 TFSI(122ps版)は上品で穏やか


ゴルフ同様、新世代となったオールアルミ製1.4リッターDOHCターボ。これは気筒休止機能「レス」の方

試乗したのは、エントリーグレードの1.4 TFSI(308万円)。もう一つ上の1.4 TFSI シリンダー・オン・ディマンド(347万円)とゴルフのTSI ハイライン(299万円)は、共に気筒休止機構(負荷が小さい時に2番および3番シリンダーのバルブ駆動および燃料噴射を止める)を備えた1.4リッターターボ(140ps、25.5kgm)を搭載するが、このエントリーグレードは気筒休止機構を持たず、パワーも控えめ。最高出力は122ps、最大トルクは20.4kgm。

 

ライバル車同様、A3も電動パーキングブレーキを採用

走りだした時の第一印象は、やはり「ゴルフ7にそっくり」。街中を流す限り、これといって強い主張はなく、特にパワフルでもないが、十分なトルク感とレスポンス。相変わらずシャキシャキ変速する7速SトロニックことDCT、静粛性の高さ、乗り心地の良さなどなど、完成度の高さがビシバシ伝わってくる。一つ気になるのは、アイドリングストップ後の再発進時に一瞬の間(ま)が空くことだが、これは割とすぐに慣れる。ヒルホルダーがちゃんと働くので、坂道発進で落ちることはまずない。

とにかく、走りは全体に上品で、乗り心地も一昔前まで硬い硬いと散々言われていたアウディとは打って変わってしなやか。今やエコタイヤを履く日本のコンパクトカーより、日本の道に合っているかも。

 

試乗車はオプションでパドルシフトやステアリングスイッチを装備

車重は試乗車で1320kgで、先代1.4 TFSI(1380kg)より60kgも軽くなった。これぞMQBの恩恵らしい。ただしパワーウエイトレシオは先代1.4 TFSI(PWRは11.0kg/ps)と同等の10.8kg/psに留まる。ダッシュする時は(パドル装着車ならパドルで)2段ほどギアを落とし、アクセルべた踏みで上までしっかり回す必要がある。

一般道での常用回転域は、だいたい2000回転以下。この1.4 TFSI(122ps版)の場合、65km/hでやっとこさ7速トップに入るので(約1400回転)、合法的には一般道で7速に入ることはない。100km/h巡航は約2100回転でこなす。

シャシー性能に打ちのめされる


タイヤは最新のコンチプレミアムコンタクト、いつの間にか「5」

大人しく普通に走る限りは「いいクルマだなぁ」くらいの印象だが、そんな甘っちょろい感想で済まなくなるのが、ワインディングや高速道路を走った時。試乗した日は、雨が降ったりやんだりだったが、そんなことなどモノともせず、205/55R16のコンチプレミアムコンタクト5はアスファルトに張り付くようなグリップ感を発揮。この限界の高さは一体どこから来るのだと考え込んでしまうくらい、空恐ろしいほどの安定感を発揮する。

また普通なら、どアンダーが出そうな状況でも、しっかり舵が効くし、曲がった後もしれっと安定。LSD効果を発揮する電子デバイス(ESC)も装備されているが、そういうものに頼る感じもない。ちなみにA3のリアサスは、全車4リンクと呼ばれるマルチリンクになる(ゴルフの上級グレードと同じ)。このあたりは短時間のディーラー試乗では体感が難しいが、雨の日に高速道路やワインディングを走れば、ほとんどの人が体感できると思う。

試乗燃費は11.0~15.2km/L。JC08モード燃費は19.5km/L


指定燃料はもちろんハイオク。この日はリッター163円だった

今回はトータルで約250kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が11.3km/L。また、一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを2回計測)が14.6km/Lと15.2km/L。計3日間のトータルは11.0km/Lだった。JC08モード燃費(試乗車)は19.5km/L。これらの数値は、以前試乗したゴルフ7のTSI ハイライン(試乗燃費10.9~15.1km/L、JC08モード燃費19.9km/L)と、ほぼ同等。

 

また、今回の数値は、奇しくも前回試乗したクラウン マジェスタ(試乗燃費:11.0~15.5km/L、JC08モード燃費18.2km/L)とけっこう近かった。片や1.4直噴ターボのコンパクトカー、片や3.5リッターV6ハイブリッドの高級セダンと、まったくジャンル違いなので、比較してもしょうがないのだが。

 

ここがイイ

インターネットに繋がること。圧倒的なシャシー性能

とりあえず、クルマに通信モジュールを搭載することで、携帯電話などに接続しなくても、インターネットにつながること。実際に使ってみると、Googleアースなどにはつながるものの、インターネットにフルアクセスはできないし、通信モジュールが3Gで、またデータの容量制限もあることから、Wi-Fi機能は実用的とは言いかねる。とはいえ、日本市場における車載IT装備にとって、今回のアウディコネクトが行ったことは重要な一歩。こういうことを国産メーカーではなく、アウディにやられてしまうというところが、今の日本を象徴しているが、とにかくこの点は高く評価したい。以下、総合評価にて。

今回試乗したのは最もパワーのないエントリーグレードということで、パワーはちょうどいい(人によっては少し物足りない)レベルだったが、シャシー性能に関しては、打ちのめされるほどの衝撃を受けた。例のMQBコンセプトでもって、こういった性能が低コストで当たり前のように実現されるとすれば、今後さらにVWグループの独走を許すことになるだろう。

ここがダメ

変わった感じがしないスタイリング。やや割高感あり。実質上、使えないWi-Fi機能。

ブランニューの新型車としては、あまりにスタイリングが先代と変わらないこと。それがいいと言う人もいると思うが、もうちょっと個性や新しさを出しても良かったと思う。

試乗した1.4 TFSIは、車両本体価格こそ308万円だが、実はオプション込みだと365万5000円。これに自動ブレーキ付のアダプティブクルーズコントロール(8万円)や、電動レザーシート(28万円)を追加してしまうと、すぐに400万円を超えてしまう。作りの良さを見れば妥当な価格かもしれないが、新型ゴルフと比較してしまうと割高感は否めない。

通信モジュールは3Gで、Googleアースを見るくらいなら問題ないが、Wi-Fiでモバイル端末をインターネットに接続するとなると、通信速度の点でも、また月間400MBというデータ容量制限の点でも無理がある。ただ、この車載モジュールが3GではなくLTEになれば話は違ってくる。車載Wi-Fi機能はまだ始まったばかりということで、今後の展開に期待したい。

アウディ コネクトで様々な情報が表示されるのはいいが、音声読み上げもして欲しかった。技術的にはすでに可能なので、実現されるのはおそらく時間の問題だと思うが。

総合評価

燃費よりも走りが大事

新型A3はクルマを日常使いする人には、とても理想的なクルマに思える。まず、どんどんボディが幅広になるこのご時世に、全幅が1800mmを切っていることだけでも、たいへん喜ばしい。ゴルフのようにいかにもハッチバックというスタイルでなく、といってゴルフワゴンのように本格的なワゴンスタイルでもなく、それでいてワゴン風に見えるデザインは絶妙。こればかりは完全に好みの問題だが、先代が10年経っても商品価値をあまり落とさなかったのは、このスタイリングが評価されていたからだと思う。

それゆえだろう、今回のエクステリアデザインは、とにかくキープコンセプトだ。しかしあまりにキープコンセプト過ぎて、面白みに欠けるのは否めない。そもそもアウディのラインナップ全体が、おおむねサイズやパッケージングが違うだけで、デザイン的にはよく似ているし、同じモデルならモデルチェンジ後も大きく変わらないというのが一種のブランドアイデンティティになっているが、今回のA3はさすがにちょっと辛いと思う。デザインを見てカッコイイなと思って買い替える、あるいは新規で買う気になる人は少ないだろう。そこが微妙だ。

 

しかし何より走りだ。これはもう本文にある通り、ゴルフ7がベースなだけに、ただただ驚くしかない。どうしたらこんなに良くなるのかと考えると、ひとつには燃費スペシャルではなく、走りスペシャル的な作り方をしているからだと思う。チューニングを燃費側に振れば、もっとモード燃費は良くなると思うが、それよりもあくまで走りの心地よさを重視しているあたりが、日本のこのクラスのクルマとは大きく違うところ。やっと日本車が取り組み始めた直噴ターボによるダウンサイジングエンジンもすでに熟成の域に入り、DCTとあいまって、日本よりはるかに先行してしまっている。このあたりは本当にこのままで大丈夫か日本、と思ってしまうところだ。

クルマをIT化することの難しさ

その日本が本来なら、もっと先行しなくてはならないはずのクルマのIT化も、A3にすっかり先を行かれてしまった。通信モジュールを用意して、車内にWi-Fi環境を用意したことは画期的だ。今やどこでもWi-Fiという時代なのに、クルマの中だけはそれがなかったのだが、ついにそれが実現した。たったこれだけのことでも、その実現に尽力したインポーターは大変な労力を要したと想像される。しかも、たとえ3年間といえども通信料が無償なのは素晴らしいことだ。ちなみに、A3にsimを供給しているソフトバンクは、ホンダのインターナビにも3Gを提供しているが、こちらはフローティングカー情報など限定的な使い方になる。

車載ナビゲーションシステムがグーグルアースと連動したり、ストリートビューが表示できたりするのは夢が実現したようで喜ばしい。MMIコントローラーのダイアル上にあるタッチパッドも斬新だ。2回前の東京モーターショーで、コンセプトを見た記憶があるが、ついに実現してしまった。しかもちゃんと日本語に対応していて、左手の指で拙いひらがなを書いても、ちゃんと認識してくれた。助手席の人が右手で書けば、何ら問題なく実用になりそうだ。そういえば音声入力もかなり優秀で、長い住所を一発で聞き取ってくれた。

しかしこのような素晴らしさも、スマホでのテザリングが当り前の昨今では、喜ばしさも半減。グーグルとの連携も一部だけだ。利用できる一ヶ月のデータ量はあまりにも少ないし、通信速度も速くはない。使い方や設定も難しく、ITにかなり精通していないとすぐには使えないだろう。販売店もこれをサポートするのは大変ではないだろうか。

 

こうしたクルマのIT化は、実際のITの進化が速いため、クルマに機器を搭載した途端、どんどん古びていってしまうのが難だ。クルマの寿命に比べて、IT機器の寿命は圧倒的に短いゆえ、クルマというものとなじまない。特にここに来て、スマホが急激に進化・普及したことにより、世の趨勢はスマホベースで車内ITを再構築するという方向へ急速に向かっているようだ。スマホを全てのキーとして、それを操作しやすいようにディスプレイを特化させるという方向性が、今後の主流になるだろう。

しかし、そうすると自動車メーカーには何も恩恵がないことになってしまう。そのジレンマをどう解決するかが、今、各メーカーが苦悩しているところだ。その意味では、この画期的なA3のITも、数年後が心配になってくる。というより現時点でも、この程度の機能のために、相当に高価なこのシステムを購入する意味があるのだろうか、というのが本音だ。

ついにITでも先を越された

ただ、今までのクルマ向けITの中では最も意欲的なものであり、それをドイツ車がやってしまうというあたりに再び、日本、大丈夫かと思わざるをえない。A3が持つタッチパッドも、車内Wi-Fiも、通信モジュールも、グーグルの表示も、日本のメーカーが躊躇している間に、ひとまずドイツ車が先行してしまった。それも日本車のような上級車種ではなく、コンパクトカークラスに投入されている。このクラスのユーザーは上級車のユーザーよりもITに馴染みがある。メーカーはそこをきちんと理解して投入しているわけだ。

今から11年も前に発売されたトヨタ WiLL サイファの試乗記を読み返すと、この頃すでに、ものすごくITで先行しながら、結果的に大きな失敗(実質的にそうだろう)をしたことで、すっかり「日本のクルマとIT」が萎縮してしまったことが分かる。今、A3がやっているようなことは、すでに試みられていたのだが、性急すぎたのか、全くといっていいほど一般化しなかった。先ごろ、新型オデッセイの発表会で、ホンダは10年も前にプリクラッシュセーフティで先行したはずなのに、なぜそれが今のオデッセイでもさほど進化していないのか、というある記者の問いに「少しサボっていたのかもしれない」と苦笑交じりで伊東社長は答えていたが……。

 

日本車の場合、この10年で確かにモード燃費は凄まじい数値になったが、それ以外の部分(ダウンサイジングエンジン、ディーゼルエンジン、DCT、プリクラッシュセーフティなど)では、欧州車に遅れをとっていると思わざるをえない(もちろん、メーカーによっては健闘している分野もあるが)。そしてついにITでも先を行かれてしまった。同クラスの日本車では、A3はもはやどうにも越えられない。このクラスでせっかく買うならいいものを、と思うのであれば、A3はいの一番で候補に挙げられる。むろん、変わらぬスタイリングに共感できるのであればの話だが。

 

試乗車スペック
アウディ A3 スポーツバック 1.4 TFSI
(1.4リッター直4ターボ・7速DCT・308万円)

●初年度登録:2013年8月●形式:DBA-8VCXS ●全長4325mm×全幅1785mm×全高1465mm(※MMIナビ非装着車は1450mm) ●ホイールベース:2635mm ●最小回転半径:5.1m ●車重(車検証記載値):1320kg(770+550) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:CXS ●排気量・エンジン種類:1394cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:74.5×80.0mm ●圧縮比:10.0 ●最高出力:90kW(122ps)/5000-6000rpm ●最大トルク:200Nm (20.4kgm)/1400-4000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/50L ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:19.5km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 4リンク+コイル ●タイヤ:205/55R16(Continental ContiPremiumContact5)

●試乗車価格(概算):365万5000円 ※オプション:メタリックペイント 6万5000円、コンビニエンスパッケージ(アウディ パーキングシステム、リアビューカメラ、アドバンストキーシステム) 21万円、MMIナビゲーションシステム(TVチューナー、Audi connect、パドルシフト等を含む) 30万円 ●ボディカラー:グレイシアホワイト メタリック ●試乗距離:約250km ●試乗日:2013年10月 ●車両協力:アウディ名古屋西(名古屋市中川区)

 
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